自分でもできる契約書の作成

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自分でもできる契約書の作成と注意点あれこれ

 ここでは,契約書に登場する一般の人にわかりにくい点や注意すべき点について,いくつかピックアップして解説をしています。ご自分で契約書を作成する際には是非参考にしてください。

1.瑕疵担保責任

 瑕疵担保責任とは,売買契約の売主に課される責任で,売買目的物に隠れた瑕疵(欠陥,数量不足など)があった場合にはそれを売主が補うという,常識的な責任をいいます。瑕疵担保責任は民法によって当然に発生するものですが,中古品の売買などには契約書に 売主の瑕疵担保責任を免除するという規定が盛り込まれることがしばしばあります。瑕疵担保責任が免除されてしまうと,目的物に瑕疵があっても買主は売主に責任を追及することができなくなってしまいますから十分に注意する必要があります。

2.手付金と内金の違い

 契約書に一部お金の先渡しが定められる場合がありますが,これが手付金なのか内金なのかは,大きな違いがあります。手付金の場合は,渡した方は手付金を放棄することにより,受け取った方は手付金を倍返しすることにより契約を解除することができるようになります。これに対して内金は単なるお金の一部先渡しにとどまりますから,契約が守られなかったなどの理由がない限り内金を放棄,また倍返しにより解除することはできません。

3.支払いの名目

 契約書に金銭の支払いを定める場合,○○として××円支払うなどと定められることがあります。しかし,この○○をどのような名目にするかによって,意外な法的効果が発生する場合があります。例えば,「△△売掛債権の一部として」とした場合には,売掛債権の一部支払いとなりますから,この売掛債権についての消滅時効(一定期間の経過により債権が消滅する制度)が中断されることになります。また,「損害賠償として」とした場合には原則課税関係は発生しませんが,「売買代金として」とした場合には状況によっては課税対象となり得ます。さらにこの場合は,売買契約が成立していることを双方が認めていることが前提となりますから,契約が 売買なのか賃貸借契約なのかが後日争われた場合には,売買契約成立についての重要な証拠となります。

4.解除と解約

 解除と解約も法的効果は大きく異なります。契約が解除された場合,契約関係は当初から無かったことになりますから,契約関係が生じる前の状態まで権利義務関係を巻き戻す必要があります。例えば,売買契約の場合,目的物の引き渡しを受けていたときには,相手方に目的物を返還する必要があり,相手方はお金を返還する必要があります。また,会社は目的物使用による利益を相手方に返還する必要があります。これに対して,解約は将来に向かってのみ契約関係が解消されるだけで,権利義務関係の巻き戻しを行う必要はありません。

5.強行法規

 民法のほとんどの取り決めは任意規定です。任意規定とは,当事者が別の取り決めをすればそれが優先されるが,何の規定もないときは,法律にしたがって権利義務が発生する旨の規定をいいます。しかし,一部の規定は当事者が規定と異なる合意をしてもその合意は無効となり,民法の規定が強制的に適用されるものがあるのです。これが強行法規です。例えば,時効が完成してもこれを主張しないというような取り決めは,強行法規違反で無効となってしまいます。どのような取り決めが強行法規違反になるかは十分注意する必要があります。

6.一方にあまりにも不利益な内容

 一方のみにあまりにも不利益な内容は,場合によっては実質的な合意が認められないとして無効となってしまう場合があります。例えば,「契約に伴う費用はすべて相手方が負担し,当方は一切の費用を負担しない。事故が起こった場合にも当方は一切責任を負わない。当方が事故によって生じた損害は,発生の原因を問わずすべて相手方が負担する。本契約によって得た一切の利益はすべて当方に帰属する。相手方は公的機関に対して,当方の行為について一切の不服を申し立てることができない。」のような極端な契約は無効となる可能性が高いのです。

7.善管注意義務

 多くの契約書には,善管注意義務という内容が定められます。これは,簡単にいえば依頼された仕事を誠実に行うべき義務を認めるものです。もっとも,この善管注意義務が問題となるのは, 主に委任契約,請負契約,雇用契約,準委任契約などですが,これらの契約については民法で善管注意義務もしくはこれに似た義務が定められているため,特にこのような内容を契約書に盛り込まなくても,不真面目な仕事に対しては当然責任を追及することが可能です。したがって,善管注意義務の定めは,当事者にそのことを明確に意識させるというような事実上の効果を期待する場合が多いのです。

8.委任契約,請負契約,雇用契約,準委任契約の違い

 委任,請負,雇用,準委任の4つの契約類型は,いずれもある仕事を依頼する点で共通し,会社でも一般的な契約です。ただ,この4つの契約はそれぞれ異なる内容を持っていますから,依頼する仕事の内容に併せて使いわけることが必要です。

  目的 裁量の程度 指揮命令関係 下請,復代理 労働法の適用 契約が終了できるか 結果に対しての責任
請負 仕事の完成 手段には制限なし × × 損害賠償すれば
いつでも可
委任 法律行為の委託 高い × × 損害賠償すれば
いつでも可
×
準委任 事実行為の委託 高い × × 損害賠償すれば
いつでも可
×
雇用 指揮命令下で従事 低い × 解雇事由が必要 ×

 まず,4つの類型は,仕事の完成を目的とする請負とそれ以外の3つに分けることができます。請負は仕事の完成自体を目的としますので,どのような手段によろうとも,仕事が完成さえすれば義務を果たしたことになります。第三者に下請に出すことも自由です。ただ,仕事の完成ができなかったときには責任を負うことになります。システムの開発,建物の建築などが代表例です。次に残りの3つについては,依頼内容を特定の仕事に限定する委任・準委任と特定の仕事に限定しない雇用に分けることができます。委任・準委任の違いは,法律行為を依頼する場合が委任,それ以外の行為を依頼する場合が準委任です。会社と取締役・監査役との委任契約や弁護士に訴訟を委任するような場合以外では,会社で委任契約が登場する機会はそう多くないでしょう。

 会社にとって,おそらく最も頻繁に登場する契約は,準委任と雇用でしょう。この2つの違いは,特定の仕事を依頼するか,そうではなく会社の指揮命令下で従事させるかです。したがって原則として準委任の場合は,勤務場所や勤務時間を指定することができず,仕事についての指示も包括的限定的なものとなります。また,雇用の場合には,労働法が適用され,社会保険料の負担が発生し,解雇事由も制限されるなどの制約が会社に生じてきますから,雇用を選択する際は十分な注意が必要です。この2つの類型の区別が必ずしも明確でないことから,雇用による会社負担を逃れる目的で形式上,準委任(業務委託)が選択されることも多いのですが,区別は名目ではなく実態によって判断されることになります。近年業務のアウトソーシングが顕著に見られるのも雇用契約に伴う会社の負担を回避することがひとつの理由となっています。

9.第三者に義務を課す契約

 相談でよく,相手方の親会社もしくは代表者についても相手方と同様の義務を負わせるにはどうすれば良いかという質問を受けます。しかし,契約は,両当事者間の合意により債権が発生するのですから,当事者でないものに同意もなく義務を負わせることはできません。仮に当事者でない者に義務を負わせる旨の契約がなされた場合でも,この内容は無効となります。このような場合には,三者間での契約とするか,親会社,代表者と保証契約を結ぶ,もしくは同様の契約を別途取り交わす必要があります。

10.債権の譲渡

 意外に思われるかも知れませんが,民法では債権の譲渡は基本的に一方の当事者が自由にできると定められています。例えば,準委任契約に基づき発生した相手方の会社に対する報酬請求債権は,相手方が任意の第三者に自由に譲渡することが可能です。もちろん相手方が委託した業務を行わない場合は,第三者に対しても報酬債権の支払いを拒むことができますが,ある日突然知らない者から通知が来て報酬債権を請求されることは権利関係が複雑となりますし,報酬債権を譲渡してしまった相手方が今後委託業務を誠実に行ってくれるのだろうかという事実上の問題も生じてきます。このような不利益を事前に回避するために,特別の事情がない限り,債権の譲渡は禁止しておくことが適当です。

11.無効と取消と撤回

 一般の方の作成した契約書を見ると無効,取消,撤回を混同して用いられていることがよくあります。無効とは,ある契約や行為が効力を生じていない状態をいいます。これに対して取消とは,ある人が持っている権利,すなわち取消権であり,取消権を行使しない限りはその契約や行為は有効です。取消権が行使された場合に,その契約や行為は遡って当初から無効の状態となるのです。また撤回とは,将来に向かって契約や行為の効力を否定する行為であり,取消とは異なり当初から遡及的に無効とならない点が異なります。どの文言を用いるのかによって,法的効果は大きく異なり,万一紛争となったときでも大きな争点となってしまいますから,契約書を作成するに当たっては十分に注意する必要があります。

12.対抗要件

 一般の方に非常に理解しづらいのが対抗要件です。対抗要件とは,物権や債権の移転を契約当事者だけでなく,第三者にも主張するために必要な手続要件のことをいいます。契約の当事者に対しては契約書を作成していれば,契約の成立を主張できるため,対抗要件を備える必要がありません。この対抗要件が特に問題となるのは,財産が二重に譲渡されたような場合です。例えば,貴方の会社が相手方から不動産を購入したとします。この場合,会社は相手方に契約を主張して不動産を引き渡すことを請求できます。しかし,引き渡しの前に相手方が第三者にその不動産をさらに売却してしまった場合には,貴方の会社と第三者は対抗関係となり,先に対抗要件を備えた方が不動産を取得できることになります。早い者勝ちではありませんので注意が必要です。
 不動産については登記,動産(不動産以外の物)は引き渡し,債権は債務者への通知がそれぞれ対抗要件となりますが,例外もありますので,法律家に確認することをお勧めします。

13.専属的管轄

 専属的管轄とは,万一紛争が生じて裁判になった場合,どこの裁判所で裁判をするのかについて,予めその管轄を取り決めておくことです。大した問題ではないように感じるかも知れませんが,実際訴訟となった場合はこの規定が非常に重要となります。例えば,貴方の会社が東京にあり,相手方の会社が北海道にある場合,札幌が専属管轄となっていると,貴方が相手方に訴訟をするには,札幌で訴えを起こす必要があります。訴訟は短いものでも4 ~6回程度は裁判所に赴く必要がありますから,管轄が遠くの場合は交通費,移動時間等,裁判の費用が大きく変わって来ることになります。紛争の金額によっては,訴訟費用倒れとなり,事実上裁判の道が断たれる可能性もあります。また,裁判所が地元企業をひいき目で見ることもまったくないとはいえません。そうならないよう管轄の定めについては,十分に配慮しておく必要があります。

 このように,契約書の問題は会社経営者の皆さんにとって大変身近な問題であることがご理解いただけましたでしょうか?ご自身で対応されることに不安がありましたら,ぜひ一度,私ども専門家にご相談ください。

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