年間休日100日以下は違法の可能性あり!法律の規定と対処法を紹介

  • 作成日

    作成日

    2023/11/16

  • 更新日

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    2023/11/16

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目次

年間休日100日以下は違法の可能性あり!法律の規定と対処法を紹介
休日は、会社によってそれぞれ異なる日数が設定されています。

では、1年365日のうち、休日が100日以下という場合、これでは少ないと会社に対して言うことができるでしょうか。
そもそも法律には違反していないのでしょうか。

今回は、労働者が与えられるべき年間の休日数として、100日のラインを例にとって、違法・適法の判断基準や、違法・不当と考えられる場合の対処法などについて解説していきます。

年間休日が100日以下になる場合は法律違反の可能性がある

年間休日が100日以下しかない場合は、労働基準法違反の可能性があります。

以下では、まず休日の定義を確認し、労働基準法に定められた休日のルールを解説していきます。

(1)そもそも「休日」とは?

年間休日の「休日」とは何か、その定義から確認していきましょう。

(1-1)休日と休暇は異なる

「休日」とは、労働者が労働契約において労働義務を負わない日のことをいいます。
休日には労働義務がないので、休日に労働者を働かせた場合、会社は割増賃金を支払う必要があります。

それに対して、「休暇」は、有給休暇など、本来は労働義務がある日に取る休みのことをいいます。
そのため、休暇の労働は、割増賃金の対象ではありません。

年間休日にカウントされるのは「休日」です。
「休暇」は基本的にカウントされませんが、会社が就業規則で夏季休暇や年末年始休暇などを「休日(公休日)」と定めている場合は、年間休日に含まれることになります。

(1-2)休日には種類がある

「休日」は、以下に挙げる1〜4に分けられます。

1. 法定休日
労働基準法第35条で定められている休日がこれにあたります。
毎週少なくとも1日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を設ける必要があります。
1項 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
2項 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用:労働基準法第35条
2. 法定外休日
法定休日とは別に、それぞれの会社が定めた休日のことをいいます。
たとえば土日が休みの会社の場合には、法定休日を日曜日としていれば、土曜日は法定外休日となります。

3. 振替休日
「前もって」休日を労働日にする代わりに、別の労働日に定める休日のことをいいます。
この場合の休日出勤は、割増賃金の支払対象ではありません。

4. 代休
休日に労働した代わりとして、「事後に」別の日に定めた休日のことをいいます。
この場合の休日出勤は、割増賃金の支払対象となります。

(2)年間休日100日以下は違法の可能性がある

上に記したとおり、労働基準法第35条においては、毎週少なくとも1日、または4週を通じて4日以上の休日を設けることが求められています。

1年間の週数は「365日÷7日≒52.1週」であるため、会社は年間52〜53日の休日を与えれば、労働基準法第35条の法定休日の基準はクリアしたことになります。

もっとも、労働基準法第32条では、1日8時間、1週間に40時間(「法定労働時間」)を超える労働が禁止されています。
1項 使用者は、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日については8時間を超えて、労働させてはならない。
引用:労働基準法第32条
このルールも加味すると、休日が年間52〜53日では少なすぎるということになってしまうのです。

なぜなら、1年間の労働時間は「40時間×(365日÷7日)=2085.7時間」以内に抑える必要があり(労働基準法32条)、1日の労働時間が8時間の場合、「2085.7時間÷8時間≒260日」となるので、1年に働ける日数は約260日ということになります。

したがって1日の労働時間を8時間と定めている場合、基本給で労働者を働かせることができるのは、約260日程度に限られるということになります。
そのため、104〜105日の年間休日を与えなければなりません。

つまり、法律上必要となる104〜105日よりも年間休日が少ない場合で、休日が少ない分の割増賃金が支払われていない場合には、賃金不払いとして、労働基準法に違反している可能性があるのです。

(3)36協定が締結されている場合は例外だが、労働時間には上限あり

「36協定」(労働基準法第36条の規定に基づく、法定労働時間よりも長い時間の労働を可能にする協定)が労使間で締結されますと、会社は時間外労働や休日労働をさせることができます。
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条(労働時間)から第32条の5(変形労働時間制・フレックスタイム制)まで若しくは第40条(労働時間及び休憩の特例)の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
引用:労働基準法第36条1項
また、特別条項付き36協定(特別な事情がある場合に、通常の36協定の上限よりもさらに長く労働時間を延長する協定)が結ばれる場合もあります。

もっとも、36協定を締結しているからといって、労働者を無制限に労働させられるというわけではありません。特別条項付き36協定が結ばれている場合にも、労働時間には限度があります。

具体的には、協定によって労働時間を延長させることができる限度時間は、原則として、1ヶ月について45時間及び1年について360時間と規定されています(労働基準法第36条4項)。
特別条項付きの協定により、上記の限度時間を超える時間を定めることはできますが、この場合でも、1.「1ヶ月100時間未満かつ2ヶ月ないし6ヶ月平均で80時間以内」、2.「1年について720時間以内」、3.「月45時間を超えることができる月が1年のうち6ヶ月以内」とされます(労働基準法第36条5項、6項)。

なお、タクシーやバスなどの自動車運転業務や、建築、医師、研究開発業務など、一定の職種については、労働時間の上限についての異なるルールが定められています。
もっとも、2024年4月1日から労働時間の上限規制が広がることに伴い、これらの一定の職種についても無制限に残業させられるわけではなく、労働時間の上限が設定されることとなります。

年間休日100日以下は日本企業の平均よりも多い?少ない?

厚生労働省による「令和2年就労条件総合調査」のデータをもとに、日本の年間休日の現状について考えてみましょう。
これによると、日本における全企業の年間休日の平均日数は109.9日ということになっています。
したがって、年間の休日が100日以下である場合は、日本企業の全体の平均よりも少ないということになります。

企業規模別に休日の平均日数を見ますと、従業員が1000人以上の会社では116.6日、300〜999人の会社では114.9日、100〜299人の会社では113.0日、30〜99人の会社では108.3日となっています。
この数字で分かる通りに、規模が大きい企業の方が休日は多く、規模が小さくなればなるほど休日は少なくなる傾向にあります。

また、業種によっても、休日の日数の傾向には違いが見られます。
業種別の年間休日の平均日数は、上記した厚生労働省による「就労条件総合調査」の平成30年版にデータがあります。
これによると、電気・ガス・熱供給・水道業が多く、宿泊業、飲食サービス業が少ないなどの数字が出ています。

年間休日100日以下の会社で悩んでいる場合の対処法

年間休日を100日以下としている会社に入ってしまい、労働環境に悩んでいる場合の対処法について、以下では3つの方法を紹介します。

(1)労働基準監督署に相談して環境改善を目指す

労働問題を相談できる公的機関としては、労働基準監督署があります。
労働基準監督署は、会社が労働基準法などの法令に違反していないかを監督する厚生労働省の第一線機関であり、各都道府県に置かれています。

労働者が労働基準監督署に労働問題について相談すると、問題を解決するための手続きについてのアドバイスをもらうことができます。
また、もし実際に会社が法律に違反している場合には、会社に対して是正指導や勧告などを行い、労働環境の改善を促すなどの措置をとってもらうこともできます。

(2)弁護士に相談して未払いの休日手当や残業代を請求する

また、弁護士に相談することによって、環境を改善したり問題を解決したりしていく方法もあります。
たとえば、休日に働いた分の賃金をきちんと受け取れていない場合、未払い賃金を会社に請求することができます。
このとき弁護士のサポートがあれば、スムーズかつ正確に交渉や手続きを進めることができます。
この場合には、労働問題を扱った経験が多い弁護士や法律事務所に相談するのがポイントです。

(3)転職して働く環境を変える

年間の休日が100日以下というのは、日本の平均よりも少ないことになります。

休息を十分にとることができないと、精神的にも体力的にも継続が難しく、体調を崩す原因にもなります。
ですから、状況が許す限り、今の会社よりも休日が多く、労働環境のよい会社への転職も視野に入れると良いでしょう。

今の会社で未払い賃金があったとしても、その未払い賃金は転職してからでも請求することができますので、その点は気にせずに転職を進めても問題ありません。
ただし未払い賃金の請求権には時効がありますので、請求するにあたっては、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

【まとめ】労働環境についてお悩みの方はお早めにご相談ください

これまで述べてきたように、年間休日が100日以下になる場合は労働基準法違反の可能性があります。

ただ、実際に違法かどうかを判断するには、ケースごとに労働契約の内容や労働環境を確かめなければなりません。

労働基準監督署の窓口に問い合わせたり、労働問題に関する法律に詳しい弁護士へ相談したりするなどして、ご自身の労働環境の改善を検討してみましょう。

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この記事の監修弁護士

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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