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36協定で月60時間の残業は可能?割増賃金と未払い残業代請求方法

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「最近、残業が月60時間を超えてるな…。これって合法なの?」

労働基準法では、36協定と呼ばれる労使協定を結んで適切に届け出れば、法定労働時間を超えて労働者に労働(残業)をさせることができます。
ですが、36協定で定められる残業時間には上限があります。
実は、月60時間を超える残業は、36協定を結んでいる場合であっても、労働基準法に違反して違法である可能性があります。
今回は、月60時間の残業をしているケースを念頭に置いて、次の内容について弁護士がご説明します。

  • 法定労働時間と36協定の関係
  • 1ヶ月60時間の残業が違法になるケース
  • 月60時間の残業の残業代の計算方法
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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法定労働時間と36協定の関係性

労働基準法32条において、労働時間は1日8時間、週40時間、法定休日は毎週最低1日と定められています。

これを『法定労働時間』と呼び、この範囲を超えた時間外労働(以下では法定労働時間を超えた時間外労働のことを単に「残業」としてご説明します)は原則として労働基準法違反ということになります。

1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法32条

ただし、使用者が労働者との間で、残業を了承する『労使協定』を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることで、合法的に残業をさせることが可能となります。

この労使協定は労働基準法36条に基づくため、36協定(サブロク協定、サンロク協定)と呼ばれています。

36協定を締結すれば月60時間の残業は可能?

それでは、36協定による残業の上限や月60時間の残業が違法になるケースなどについて解説します。

(1)36協定による残業の上限は?

36協定による残業の上限は、原則として月45時間・年360時間を超えることはできません(労働基準法36条4項)。

もっとも、次の条件をいずれも満たせば月45時間を超える残業が認められます。

  • 36協定に『特別条項』を定めた上で労使が合意すること
  • 臨時的な特別の必要性がある場合に限ること

臨時的な特別の必要性とは、例えば、次のようなケースです。

  • 予算、決算業務
  • ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • 納期のひっ迫
  • 大規模なクレームへの対応
  • 機械トラブルへの対応

他方、恒常的な業務に対応させるために月45時間を超える残業をさせることはできません

かつては、厚生労働大臣の告示により労働時間の上限自体は定められていましたが、罰則による強制力がない上に、36協定の特別条項によって上限なく残業をさせることが可能でした。

しかし、働き方改革関連法の成立により労働基準法が改正され、特別な事情があっても超えられない上限時間が定められたのです。

(2)36協定の「特別条項」で認められる残業時間の上限は?

さらに、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、無制限に残業時間を定めることはできません

特別条項によっても、残業時間について、次の上限規制を守らなくてはなりません。

  1. 残業は年720時間以内
  2. 残業及び休日労働の合計が、複数月(2~6ヶ月のすべて)平均で80時間以内
  3. 残業及び休日労働の合計が、1ヶ月当たり100時間未満
  4. 原則である1ヶ月当たり45時間を超えられるのは1年につき6ヶ月以内

これらに違反した場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されるおそれがあります(労働基準法119条)。

これらの上限規制を踏まえると、年に6回までであれば、1ヶ月当たり45時間を超えた、月60時間の残業が可能になるということになります。

これらの上限規制の適用は、中小企業に対しては1年の猶予期間が置かれていましたが、2020年4月より適用が始まっています。

参考:時間外労働の上限規制|厚生労働省

(3)労働時間の上限規制が適用されない労働者

特定の事業や業務においては、残業の上限規制が除外、また適用の猶予が認められる場合があります。

【適用猶予・除外の事業・業務】

自動車運転の業務2024年3月31日までは上限規制が適用されません。
(2024年4月1日以降、適用後の上限時間は年960時間になります。上でご説明した2~4の上限はありません。将来的な一般則の適用については引き続き検討します)
建設事業2024年3月31日までは上限規制が適用されません。
(2024年4月1日からは、災害の復旧・復興の事業を除いて、上限規制が全て適用されます。ただし、災害時における復旧・復興の事業については、2024年4月1日以降も、上でご説明した2と3の規制は適用されません。この点についても、将来的な一般則の適用について引き続き検討します)
医師2024年3月31日までは上限規制が適用されません。
(2024年4月1日以降は、一般の医師については、時間外労働・休日労働の上限が原則年960時間・月100時間未満(例外あり)とされます。一定の医療機関については、上限が原則年1860時間・月100時間未満(例外あり)とされます。)
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業2024年3月31日までは2、3の上限規制が適用されません。
(ただし、2024年4月1日以降は、上限規制1~4が全て適用になります)
新技術・新商品等の研究開発業務医師の面接指導(※)、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、残業の上限規制は適用しません。
※残業が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととします。

参考:働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~|厚生労働省

参考:医師の時間外労働規制について|厚生労働省

(4)1ヶ月60時間の残業が違法になるケース

1ヶ月60時間の残業が違法になるのは、次のようなケースです。

  • (36協定の特別条項に定めがあったとしても)1ヶ月45時間を超える月が年6回の上限を超えた場合

  • 36協定で定められる残業の上限時間が月60時間未満であるにもかかわらず、月60時間の残業をさせていた場合

  • 残業で発生した割増賃金が支払われていない場合

働き方改革以前の感覚で働いていると、月60時間の残業時間はあっという間に超えてしまうかもしれません。
労働基準法や36協定の上限を超えた労働をさせた場合、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
月60時間を超えて残業されているという方は、違法なケースでないかしっかりご確認ください。

36協定の要件など詳しくはこちらの記事もご参照ください。

36協定をわかりやすく解説!締結における時間外労働の上限は何時間?

(5)月60時間の残業に対する割増賃金の計算方法

残業が月60時間を超える・超えないは別として、労働基準法上、「残業」「休日労働」「深夜労働」に対しては、次の表のとおり、適切な割増賃金を支払われなければいけません。

2023年4月1日からは、中小企業も含めて全ての企業で、時間外労働が月60時間を超えた部分についての割増賃金率が1.5倍となります。

なお、中小企業とは、次の要件を満たす企業です。

業種資本金の額又は出資の総額又は常時使用する労働者数
小売業5000万円以下又は50人以下
サービス業5000万円以下又は100人以下
卸売業1億円以下又は100人以下
その他3億円以下又は300人以下
※業種分類は日本標準産業分類(第12回改訂)に従っています。

参考:改正労働基準法 法定割増賃金率の引上げ関係|厚生労働省

月60時間の残業をした場合の計算例

割増賃金(残業代)は、原則として次の計算式によって算出されます。

1時間あたりの賃金は、例えば月給制の場合、「月給÷1ヶ月の平均所定労働時間」で算出されますが、この計算の際、個人的な事情に基づいて支給される手当等は月給から除かれます。

除かれる手当等の種類は、次のとおりです。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

次のサイトでは、簡単な残業代の目安を調べることができます。
ご自分の残業代がいくらくらいか気になるという方は、お試しください!

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

残業60時間は長い?短い?違法性や残業代の計算方法なども解説

月60時間の残業で未払い残業代があるときの対処法

それでは、月60時間の残業を行ったにもかかわらず残業代に未払いがある場合の請求方法や、弁護士に依頼するメリットについて解説します。

(1)未払い残業代を会社に請求する方法

月60時間分の残業代を計算し、適切な割増賃金が支払われていない場合は会社に対して未払い分を請求することが可能です。

請求にあたっては、まず未払い残業代がある証拠を集める必要があります。

未払残業代の証拠となるものには、次のようなものがあります。

  • タイムカード
  • タコグラフ
  • 日報
  • web打刻ソフト
  • 出勤簿        など

証拠を集めたら会社と話し合うことになります。
話し合いで解決しない場合や、会社が話し合いに応じてくれないような場合は、未払いの残業代を請求する旨の内容証明郵便を会社に対して送ることが考えられます。

残業代の請求には時効があります。
2020年4月1日以降に支払日が到来する残業代の時効は3年です。
時効が完成すると会社は残業代の支払いを拒否できますから、残業代があるという方は、早めに請求することをお勧めします!

(2)未払い残業代の請求は弁護士に相談

未払い残業代を請求するためには、弁護士に相談や依頼をするのが効果的な方法といえます。

残業代の計算は複雑なものになりがちですし、実際に残業が行われたことや残業代が未払いであることを証明するための証拠集めに関しても適切なアドバイスが必要です。

また、会社への請求では解決につながらず、労働審判や訴訟などの法的手続きに進んでいく場合もあります。

そのような場合は特に、弁護士の法的知識が役立ちます。

残業時間が60時間/月~に及んでいた方が弁護士に依頼して残業代を請求した事例について、詳しくはこちらの解決事例もご参照ください。

【まとめ】月60時間の残業は36協定を締結していても違法になる可能性がある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 36協定を締結し適切に届け出ると、法定労働時間(1日8時間、週40時間、法定休日は毎週最低1日)を超える残業が可能となる。
  • 36協定を締結しても、残業の上限時間は原則として月45時間のため、月60時間の残業を行うためには、「特別条項」付きの36協定を締結する必要がある。
  • また、月45時間を超える残業をさせるには、臨時的な特別の必要性がある場合でなければいけない。
  • さらに、残業が45時間を超える月は年6回までなどの制限がある。
  • 月60時間を超える残業の割増賃金率は50%、深夜の時間帯で労働するとさらに25%が上乗せされる。
  • 未払い残業代の請求は、証拠を集めて残業代を計算した上で会社に対して行う。

働き方改革によって労働基準法が改正され、残業の上限規制は法律に規定されました。ですから、これに反する残業は違法です。

厚生労働省によれば、残業が月45時間を超えると、脳疾患・心疾患の発症と業務との関連性が強くなるとされており、実際につき60~80時間を超える残業が続く場合に脳疾患・心疾患を発症される方も少なくありません。
働き方改革以前の感覚のまま、月60時間の残業をこなしている方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ、今働いている現場で月60時間の残業が適法なのかどうかご確認ください。

さらに、月60時間の残業が違法であれ適法であれ、適正な残業代は受け取っていらっしゃいますか?
もしかしたら、違法な残業をさせている職場であれば、適正な残業代も支払われていないのではありませんか?

アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。

そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。

※以上につき、2022年9月時点

残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。

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