「お休みである土曜日に出勤したのに休日出勤扱いになっていないのはおかしくないか」
「休日出勤と平日の残業って何が違うの?」「休日出勤したら手当がでるものなの」
こうした疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか?
実は、一言で休日といっても、法律上で取得が義務付けられている休日のことを「法定休日」といい、法定休日に加えて会社が独自に設定する休日のことを「所定休日(法定外休日)」といい、両者には違いがあります。
法律上の休日労働は、法定休日に行う勤務・労働を指します。所定休日は「法定外休日」なので、所定休日に勤務をしたとしても、法律上の休日労働には当たりません。その分の労働は法定労働時間内での労働時間や、時間外労働の時間としてカウントされることになります。
ですので、土日祝休みの仕事の場合、法定休日における労働を休日労働(休日出勤)と呼び、土曜日出勤は法定外休日(所定休日)の労働として、休日労働に当たらない場合があるのです。
この記事では
- 36協定と休日労働の定義
- 休日労働した場合の代休、割増賃金、残業
について弁護士が解説します。
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
- 36協定を結ばない状態での休日出勤は、労働基準法違反
- 36協定における休日労働のポイント1|法定休日に勤務することを「休日労働」という
- 36協定における休日労働のポイント2|休日労働で代休を取得できるかどうかは、会社次第
- 36協定における休日労働のポイント3|休日労働の割増賃金率は35%以上
- 36協定における休日労働のポイント4|休日労働には「時間外労働」が発生しない
- 36協定における休日労働のポイント5|特別条項では、休日労働の時間数も「時間外労働の上限規制」にカウントされる
- 【まとめ】法定休日における労働を休日労働(休日出勤)と呼び、土曜出勤は法定外休日(所定休日)の労働として休日労働にあたらない場合がある
36協定を結ばない状態での休日出勤は、労働基準法違反
まず、休日労働(休日出勤)という言葉の意味について説明いたします。
(1)休日に関する法律上の規定
労働基準法では、労働時間の上限(第32条)及び休日の付与(第35条)に関する規定が定められています。
それによると、労働時間は「1日8時間・1週40時間」が上限とされています(この法律上の上限を「法定労働時間」といいます)。
そして、休日については、「1週間当たり1日以上又は4週間当たり4日以上」の休日を、使用者は労働者に与えなければならないと規定されています。
法律で取得が義務付けられているこの休日のことを、「法定休日」といいます。
1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
引用:労働基準法32条
2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
1項 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
引用:労働基準法35条
2項 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
(2)休日労働と36協定
法定労働時間を超えて働くことを「時間外労働」といい、法定休日に働くことを「休日労働」といいます。
一般的には「休日出勤」という言葉も使われることがありますが、法律的には「休日労働」という用語が使われます。
そして、使用者が労働者に対し、時間外労働や休日労働をさせる場合は、次のことを行わなければなりません。
- 労働基準法36条に基づく「時間外・休日労働に関する労使協定」(「36協定」といってご説明します)を労働者の代表と締結し、労働基準監督署に届け出ること。
- 雇用契約書や就業規則等に「36協定の範囲内で時間外労働や休日労働を命じる」旨を明記すること。
このような36協定の締結・届出の手続きをせずに労働者に時間外労働や休日労働をさせると、労働基準法32条や35条に違反したとして、使用者は罰則(労働基準法119条)を受ける可能性があります。
参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
36協定における休日労働のポイント1|法定休日に勤務することを「休日労働」という
ここからは、休日労働に関して、自己の権利を守り、かつ適切に主張するための5つのポイントを説明していきます。
まずは、労働基準法で「休日労働」と扱われるための条件についてです。
(1)「法定休日」と「所定休日」
ご説明したとおり、労働基準法35条では、会社は労働者に「1週間につき1日の休日」または「4週を通じて4日以上の休日」を与えなければならないと定めており、法律上で取得が義務付けられているこの休日のことを「法定休日」といいます。
法律上の休日労働は、法定休日に行う勤務・労働のことを指します。
これに対し、法定休日に加えて会社が独自に設定する休日のことを「所定休日(法定外休日)」といいます。
所定休日は「法定外休日」なので、所定休日に勤務をしたとしても、法律上の休日労働にはあたりません。その分の労働は、法定労働時間内での労働や、法定労働時間を超えた場合は時間外労働の時間としてカウントされることになります。
なお、週休2日制で、土日を休日としている会社においては、日曜日を法定休日、土曜日を法定外休日と定めるなどしますが、次のようなケースでは土曜日が法定休日となります。
- 就業規則等で週の起点となる曜日の定めがない場合(この場合、労働時間管理上は「日曜日〜土曜日」が1週間の区切りとなる)かつ、就業規則等で法定休日の定めがない場合(この場合、暦週の後に来る休日が法定休日と扱われる)
(2)変則的な労働時間制でも、法定休日の勤務は休日労働となる
労働時間の設定において弾力的な運用が認められている、次の労働時間制においても、法定休日の勤務は休日労働として扱われます。
- 変形労働時間制
- 裁量労働制
- フレックスタイム制
(3)法定休日は、事前に他の労働日に振替可能な場合がある(振替休日の指定)
36協定で振替休日に関する労使間の合意がある場合、会社は前日までに労働者に連絡することによって、法定休日を他の労働日と入れ替えることができます。
このことを「振替休日の指定」といいます。
振替休日の指定によって、当該日の勤務は休日労働ではなくなり、通常の労働日と同様の扱いとなります。
また、振替休日にも、法定休日に関する規定(「1週間につき1日の休日」または「4週を通じて4日以上の休日」)が同様に適用されます。
36協定における休日労働のポイント2|休日労働で代休を取得できるかどうかは、会社次第
「振替休日」と似たものとして、「代休」があります。
「代休」は、休日労働をした労働者に対して、会社が事後的に与える休日のことをいいます。
代休の付与は労働基準法等の法律で義務付けられたものではないので、代休の制度があるかどうかは会社次第(就業規則等に定めがあるかどうか)ということになります。
そして、代休の付与があったとしても、すでに休日労働は行われているため、会社は労働者に対してすでに行われた休日労働について休日手当を支給しなければなりません。
この点で、振替休日とは扱いが異なります。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
36協定における休日労働のポイント3|休日労働の割増賃金率は35%以上
休日労働をすると、会社は労働者に、所定の割増賃金率を加算した賃金(休日出勤手当)を支払わなければなりません。
休日出勤手当は、「1時間あたりの賃金×休日労働の時間数×割増賃金率」という計算式によって算出されます。
割増賃金率は会社ごとに36協定で定めることになりますが、休日労働の割増賃金率は35%以上(22~5時の深夜労働時間帯にあたる部分は深夜手当の25%が加算されて60%以上)でなければならないとされています(労働基準法第37条第1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

これまで述べてきたとおり、次のケースは休日労働に該当しないため、休日出勤手当の対象外となります(時間外労働にあたる場合は、時間外労働としての割増賃金が支払われます)。
- 所定休日の勤務
- 振替休日が指定されていた場合
また、「代休を付与したから休日出勤手当は支払わない」という扱いは、休日労働に対して規定の割増賃金を支払っていないことになるため、労働基準法違反となります(未払い賃金が発生していることになります)。
36協定における休日労働のポイント4|休日労働には「時間外労働」が発生しない
休日労働には、「1日8時間以内」といった労働時間の上限の定めがありません。
したがって、休日労働には「時間外労働」が発生しないことになります(深夜労働は別です)。
すなわち、休日労働をした場合に、労働時間が法定労働時間を超えたとしても、超えた部分は時間外労働とはならないため、休日労働と重複しての割増率が適用されることにはなりません。
つまり、休日労働をした場合の割増賃金率は、労働時間の長短に関係なく、一律の35%以上ということになっています(なお、法定休日に深夜労働をした場合、割増率は60%以上になります)。
36協定における休日労働のポイント5|特別条項では、休日労働の時間数も「時間外労働の上限規制」にカウントされる
働き方改革関連法が2019年4月に施行されたことに伴い、労働基準法等の法律が改正され、長時間労働の是正に向けたルールとして「時間外労働の上限規制」が設けられました。
時間外労働の上限は原則として「月45時間・年間360時間」とされていますが、「臨時的な特別の事情」があって労使が合意する場合には、特別条項付き36協定を結ぶことで、時間外労働の上限の引き上げが一定程度可能になります。
この上限の引き上げは、かつては制限がありませんでしたが、この法改正によって、特別条項付き36協定を結んだ場合にも超えることができない時間外労働の上限規制が導入されたのです。
この上限規制の中には、休日労働の時間数が関係するものも含まれています。
具体的には、次のような規定となります。
- 時間外労働と休日労働の合計が月間100時間未満(労働基準法36条6項2号)
- 時間外労働と休日労働の合計について、複数月(2〜6ヶ月)平均がいずれも80時間以内(労働基準法36条6項3号)
なお、その他の時間外労働に関する上限規制には、次のようなものがあります。
- 時間外労働は年720時間以内(労働基準法36条5項かっこ書き)
- 原則である1ヶ月当たり45時間を超えられるのは1年につき6ヶ月以内(労働基準法36条5項かっこ書き)
これらの上限規制に違反した場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されるおそれがあります(労働基準法119条)。
【まとめ】法定休日における労働を休日労働(休日出勤)と呼び、土曜出勤は法定外休日(所定休日)の労働として休日労働にあたらない場合がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 労働者を法定休日に労働させるには、36協定における休日労働の定めが必要となります。
- 法定休日における労働のことを休日労働といい、所定休日(法定外休日)における労働とは区別されます。変形労働時間制や裁量労働制等の変則的な労働時間制においても法定休日にした労働は休日労働となりますが、事前に法定休日を振替休日と入れ替えて労働日にした場合には休日労働にはなりません。
- 休日出勤をした後に代休を取得した場合には、当該休日出勤は休日労働と扱われますが、代休の制度があるかどうかは会社によって異なります。
- 休日労働をした場合には、通常の賃金に35%以上の割増率を上乗せした額の割増賃金が支払われなければなりません。
- ただし、休日労働には法定労働時間の定めがないため、時間外労働が発生しません。
- 休日労働は、時間外労働との合計時間数によっては、法律上の上限規制に抵触する場合があります。
適切な割増賃金が支払われていない等、休日労働の制度が不当に運用されている場合には、労働トラブルに精通した弁護士にご相談ください。
また、休日労働をしているにも関わらずその分の給与の支払いがなくお困りの方は、残業代請求を扱っているアディーレ法律事務所にご相談ください。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年3月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。