不倫は不法行為?不貞行為における慰謝料請求と求償権の注意点

  • 作成日

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    2023/06/15

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    2023/06/15

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浮気・不倫の慰謝料に関するご相談は何度でも無料!

不倫は不法行為?不貞行為における慰謝料請求と求償権の注意点
不倫相手から不倫における慰謝料を支払ってもらった場合に、逆に不倫相手からあなたの配偶者に対して金銭の支払いが求められる場合があります。
それを「求償権」といいます。
配偶者とは離婚をせずに、不倫相手に対して慰謝料請求を検討している場合には、あとから配偶者に対して金銭の支払いが求められることがないように、「求償権」についてもきちんと理解している必要があります。
この記事を読むことで、浮気や不倫で慰謝料請求できる場合やさらに求償権についても知ることができます。
この記事では、
  • 浮気や不倫のうち、慰謝料の対象となる「不貞行為」とは
  • 「不貞行為」を理由に慰謝料請求をするための要件
  • 不貞行為の慰謝料請求は誰にするのか
  • 不貞行為の慰謝料請求ができないケース
  • 不貞行為の消滅時効に注意
  • 不貞行為の慰謝料請求の「求償権」とは
  • 不貞行為の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
について、弁護士が詳しく説明します。

「不貞行為」は慰謝料の対象となる不法行為

浮気や不倫をされたといってもすべてについて慰謝料の請求ができるわけではありません。
浮気や不倫のうち「不貞行為」にあたるものが「不法行為」(民法709条)といって、人の権利を侵害する行為として慰謝料の請求の対象となるのです。

(1)「不貞行為」とは?

不貞行為
では、どういった浮気や不倫が「不貞行為」にあたるのでしょうか。
「不貞行為」とは、一般的に、配偶者のある者が、配偶者以外の異性と自由な意思で性行為・肉体関係を持つこととされています。
もっとも、性行為・肉体関係とまではいかなくても、性的に密接な関係(一緒に風呂に入る、性器を愛撫をするなどの性交類似行為など)をもつことも、「不貞行為」にあたるとされています。
2人きりで会う、食事をする、手をつなぐという行為だけでは、基本的に「不貞行為」にはあたりません。

(2)「不貞行為」を理由に慰謝料請求をするための要件

「不貞行為」を理由に慰謝料請求をするためには、次にあげる要件を満たす必要があります。
  • 「不貞行為」の故意・過失
  • 「不貞行為」による権利侵害
詳しく説明します。

(2-1)「不貞行為」の故意・過失

浮気・不倫を理由に慰謝料を請求するためには「故意・過失」、つまり、
  • 浮気・不倫だとわかっていながら、自由な意思で浮気・不倫を行ったこと
  • 浮気・不倫が夫婦の婚姻生活の平穏を害するものであるとわかっていながら、自由な意思で浮気・不倫を行ったこと
が必要となります。
この「わかっていた」とは、「既婚者だとわかっていた」、「婚姻生活の平穏を害するものだとわかっていた」場合のみならず、「既婚者だと気づく状況にあった」、「婚姻生活が破綻していないと気づく状況にあった」、場合も含みます。
そのため、浮気や不倫相手が「既婚者だと知らなかった」、また、「婚姻生活が破綻していると思っていた」場合であっても、「既婚者だと気づく状況にあった」、「婚姻生活が破綻していないと気づく状況にあった」場合には、「故意・過失」ありとされます。
なお、「自由な意思で浮気・不倫したこと」が必要ですので、無理矢理性的関係を迫られたような場合には、浮気・不倫相手に対して慰謝料請求することはできません。
具体的には、次のとおりです。

故意・過失
〇認められるケース
・既婚者であることを知りながら、肉体関係をもった
・浮気・不倫相手は、既婚者と浮気・不倫をしていると気づく状況であるにも関わらず、把握していなかった
・既婚者だと知っていたが、婚姻関係がすでに破綻していたと勘違いし、注意を払えば破綻していないことに気づく状況であったにもかかわらず肉体関係をもった
×認められないケース
・マッチングアプリなどで知り合い、お互いの素性を知らず、既婚者であることに気づく余地のないまま肉体関係を持った
・既婚者だと知っていたが、婚姻関係がすでに破綻していたと聞かされており、実際夫婦は別居しているなど夫婦関係はすでに破綻していると思わざる得ない状況で、肉体関係をもった
・浮気・不倫相手の自由な意思で肉体関係を持ったわけではなかった(無理矢理肉体関係を持たされた、脅されて肉体関係を持つしかなかった、など)

(2-2)「不貞行為」による権利侵害

浮気・不倫を理由に、慰謝料を請求するためには、浮気・不倫によって「権利の侵害」を受けたこと、つまり、浮気・不倫によって婚姻生活の平穏が害されることが必要となります。
これを分かりやすく言い換えると、浮気や不倫によって、夫婦の仲が悪化してしまうことが必要であるとされています。
浮気や不倫された時点で、すでに婚姻生活が破綻していた(別居状態、夫婦仲が冷め切っているなど)状況である場合、浮気や不倫が行われたとしても、すでに婚姻生活が破綻している以上、浮気や不倫によってさらに夫婦仲が悪化して精神的ショックを受けることはないと考えられているため、浮気や不倫をされた時点ですでに婚姻生活が破綻していた場合には、慰謝料を請求することはできないとされています。
具体的には、次のとおりです。

権利の侵害
〇認められるケース
浮気・不倫により、それ以前は円満だった夫婦関係が悪化し、離婚した
×認められないケース
浮気・不倫が行われた時点で、夫婦の仲が悪く、夫婦の共同生活がすでに破綻していた(浮気・不倫が行われた時点ですでに夫婦が別居している場合、婚姻関係が破綻していたと判断される可能性が高い)

「不貞行為」における慰謝料請求

「不貞行為」における慰謝料請求
「不貞行為」の慰謝料請求は誰に対してできるのか、また、慰謝料請求ができないケースについて説明します。

(1)不貞行為の慰謝料請求は誰にする?

不貞行為の慰謝料請求は、不貞行為を行った当事者である配偶者とその不貞相手に対してすることができます。
しかし、以下の不貞行為の慰謝料請求ができないケースに当てはまる場合は、不貞行為の慰謝の慰謝料請求ができないことがあります。

(2)不貞行為の慰謝料請求ができないケース

これまで説明した不貞行為の慰謝料請求の要件を満たしていても、次のケースに当てはまる場合には、慰謝料請求をすることはできません。
  1. 浮気・不倫相手の連絡先がわからない
  2. すでに精神的な損害を補う十分な慰謝料を受け取っている

(2⁻1)浮気・不倫相手の連絡先がわからない

浮気・不倫相手の連絡先がわからない
浮気・不倫相手の連絡先(氏名、電話番号、住所など)がわからなければ、浮気・不倫相手と連絡を取り合うことができないため、話合いによる慰謝料交渉を行うことはできません。
また、裁判で慰謝料を請求する場合にも、少なくとも、相手のフルネーム、住所がわからなければ、裁判をおこすこともできません。
そのため、残念ではありますが、相手の氏名、住所、(少なくとも電話番号)がわからなければ、相手と慰謝料交渉を行うことはできないのです。
なお、個人で調査しても浮気・不倫相手の連絡先がわからない場合には、弁護士や探偵などに調査を依頼し、浮気・不倫相手の連絡先が判明することもあります。

(2⁻2)すでに精神的な損害を補う十分な慰謝料を受け取っている

「不貞行為」は、配偶者とその浮気・不倫相手の2人が行うものです。そのため、浮気や不倫の慰謝料を支払うときはその配偶者と浮気・不倫相手の2人が支払うものとされています。

仮に、不貞行為によってあなたが受けた精神的ショックを償うためには慰謝料として200万円が相当であると考えられる場合には、配偶者と浮気・不倫相手が共同で慰謝料200万円を支払うことになるのです。
浮気・不倫に対する精神的苦痛ですでに配偶者から十分な慰謝料を受け取っている場合には、浮気・不倫相手に二重で請求することはできないのです。

つまり、配偶者からすでに十分な慰謝料を受け取った場合、浮気・不倫による損害の賠償が済んでいるとされ、浮気相手に慰謝料を請求することはできないとされているのです。
(例)Aさん(妻)が浮気・不倫をしたAさん(夫)から200万円の慰謝料を受け取った場合、客観的に妥当な慰謝料金額200万円の場合には、Aさん(妻)はすでに不貞行為によって被った損害の全額の支払いを受けているため、浮気・不倫相手に対して慰謝料を請求することはできません。
求償権の行使
ただし、慰謝料が支払われた理由が、不貞行為だけではなく、暴力などの理由もあった場合、配偶者から支払われた慰謝料が十分とはいえない場合には、配偶者だけではなく浮気・不倫相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
なお、配偶者から受け取った慰謝料が十分といえるかどうかは、専門的な判断が必要ですので、弁護士への相談をおすすめします。

(3)不貞行為の消滅時効に注意

不貞行為の消滅時効に注意
浮気や不倫の慰謝料にも「時効」といって請求することができる期限があり、期限を超えてしまうと請求できなくなってしまいます。

(3-1)配偶者に対して慰謝料請求をする場合(離婚した場合)

配偶者に対する慰謝料請求の時効は、次のように定められています(2020年4月1日民法改正に対応)。
  • 離婚が成立したときから3年
  • 最後に浮気や不倫があった時から20年
⇒いずれか早い時点が時効の完成日となります。

(3-2)配偶者に対して慰謝料請求をする場合(離婚しなかった場合)

配偶者に対する慰謝料請求の時効は、次のように定められています(2020年4月1日民法改正に対応)。
  • 配偶者が浮気や不倫をしていることを知ったときから3年
  • 最後に浮気や不倫があった時から20年
⇒いずれか早い時点が時効の完成日となります。
すでに、時効が経過してしまったという方は、残念ですが、配偶者に対して慰謝料を請求することはできません。

(3-3)浮気・不倫相手に対して慰謝料請求をする場合

浮気・不倫相手に対する慰謝料請求の時効は、次のように定められています(2020年4月1日民法改正に対応)。
  • 浮気や不倫をしていることに気づき、かつ、不倫相手の名前や住所(連絡先)を知ったときから3年
  • 最後に浮気や不倫があった時から20年
⇒いずれか早い時点が時効の完成日となります。
すでに、時効が経過してしまったという方は、残念ですが、浮気・不倫相手に対して慰謝料を請求することはできません。

浮気・不倫の慰謝料に関するご相談は何度でも無料!

不倫慰謝料の求償権とは

慰謝料の支払いにおいて、新たなトラブルの元となりやすいのが「求償権」です。
「求償権」とは、当事者2人(配偶者と不倫相手)の一方が自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者に対して自己の責任を超える部分を請求できることをいいます。
たとえば、不倫相手であるBさんがAさん(妻)から100万円の慰謝料を請求されて、100万円を支払った場合、不倫相手であるBさんはAさん(夫)に対して、「私は慰謝料の全額を支払った。あなたの負担分(たとえば50万円)を私に支払って」と請求することができるのです。
求償権の行使
Aさん夫婦が離婚しない場合、Bさんから慰謝料を支払ってもらっても、後日求償権が行使されれば、Aさん(夫)からBさんにお金を支払うことになるので、Aさん夫婦の財布が一緒の場合には、結果として夫婦の財産が減ってしまう可能性もあります。

求償権を放棄させることが重要

求償権トラブルを回避するにはどうすればよいのでしょうか。
求償権トラブルを回避するには、浮気・不倫相手に対して求償権を放棄させておくことが必要となります。
求償権を放棄させるには、慰謝料の支払いについて定めた合意書や示談書、公正証書に「求償権を放棄する」旨を条項として記載しておくことです。
もっとも、浮気・不倫相手から、求償権を放棄する代わりに、慰謝料の減額を求められることがあるかもしれないということは心にとめておきましょう。
合意書、示談書、公正証書の記載例は次のようになります。

記載例
・「乙は、〇〇(配偶者の名前)に対する、本件不貞行為に基づく慰謝料支払い債務に関して、求償権を放棄する。」

不貞行為の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

浮気・不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットは、次の3つが挙げられます。
  1. 弁護士からの請求であなたの本気の怒りを伝えることができる
  2. 高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まる
  3. 浮気相手や配偶者と連絡をとらなくてもよい
  4. トータルでサポートしてもらえる
順番に説明します。

(1)弁護士からの請求であなたの本気の怒りを伝えることができる

浮気・不倫をしている本人たちは、「妻(夫)が相手をしてくれないからしょうがない」、「好きになった人がたまたま既婚者だった」など、浮気や不倫を軽く考えていることも少なくありません。そのため、あなたから慰謝料請求が来ても無視したり、適当にあしらったりすることもあります。
しかし、弁護士からの書面が届くと、あなたの本気度が伝わって態度が一変し、事の重大性が気付いてきちんと対応するケースが多いといえます。

(2)高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まる

少しでも高額な慰謝料を獲得するためには、過去の裁判例や法律の知識、交渉のテクニックが必要となります。
高額な慰謝料を請求する場合には、相手からの反発も当然大きくなりますので、その反発をおさえるためにも、慰謝料請求に詳しい弁護士等による交渉が必要となるのです。
弁護士であれば、法律の知見を駆使して、配偶者や不倫相手と粘り強く交渉し、少しでも高額な慰謝料の獲得を目指しますので、高額な慰謝料を獲得できる可能性があります。

(3)浮気相手や配偶者と連絡をとらなくてもよい

弁護士が慰謝料の支払い交渉を行う場合、弁護士が交渉すべてを代行しますので、あなたが自ら浮気相手や配偶者と連絡を取る必要はありません。
浮気・不倫をされたことによって慰謝料の請求を検討するといった場合、当然相手に対する怒りも大きい場合が多いと思います。
そのような場合に、慰謝料交渉のために、自ら浮気相手や配偶者と連絡をとらなければいけないということは、肉体的にも精神的にも大きい負担がかかります。
弁護士が交渉を代行することで、あなたにかかる負担を減らすことができます。
また、怒りを抱えた状態で相手と連絡をとることは、冷静な交渉を妨げる要因ともなり、かえって他のトラブルを招く要因にもなりかねません。

(4)トータルでサポートしてもらえる

弁護士は、慰謝料請求に限らずに、浮気相手と配偶者の関係を断ち切ったり、慰謝料の未払いなど後々に起こりうるトラブルを防ぐための和解書なども作成したりすることもできます。
弁護士は、依頼者の悩みに寄り添い、依頼者にとって一番よい解決を目指します。

【まとめ】不倫でもすべては不法行為に該当するわけではない。不倫の慰謝料には求償権にも注意!

今回の記事のまとめは次のとおりです。
  • 「不貞行為」とは、一般的に、配偶者のある者が、配偶者以外の異性と自由な意思で性行為・肉体関係を持つこと。
  • 「不貞行為」を理由に慰謝料請求をするための要件
  • 「不貞行為」の故意・過失
  • 「不貞行為」による権利侵害
  • 不貞行為の慰謝料請求は、不貞行為を行った当事者である配偶者とその不貞相手に対してすることができる。
  • 不貞行為の慰謝料請求ができないケース
  1. 浮気・不倫相手の連絡先がわからない
  2. すでに精神的な損害を補う十分な慰謝料を受け取っている
  3. 時効が経過してしまった場合
  • 「求償権」とは、当事者2人(配偶者と不倫相手)の一方が自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者に対して自己の責任を超える部分を請求できること。
  • 求償権トラブルを回避するには、浮気・不倫相手に対して求償権を放棄させておくことが必要。求償権を放棄させるには、慰謝料の支払いについて定めた合意書や示談書、公正証書に「求償権を放棄する」旨を条項として記載しておくこと。
  • 浮気・不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
  1. 弁護士からの請求であなたの本気の怒りを伝えることができる
  2. 高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まる
  3. 浮気相手や配偶者と連絡をとらなくてもよい
  4. トータルでサポートしてもらえる
不倫の慰謝料は請求して終わりではありません。その後のトラブルを回避することにも気を付ける必要があります。
もっとも、不倫の慰謝料請求の経験が何度もある人はそういませんので、個人で慰謝料請求を行う際には、そこまで気を付けることは難しいかもしれません。
弁護士に依頼することで、今後のトラブル防止にも繋がると同時に、あなたの意向を踏まえた一番良い解決を目指すことができます。
アディーレ法律事務所では、浮気・不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。

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この記事の監修弁護士

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

林 頼信の顔写真
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