交通事故で顔に傷あとが!後遺障害認定基準と受け取れる賠償金を解説

  • 作成日

    作成日

    2023/08/17

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    2023/08/17

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目次

交通事故で顔に傷あとが!後遺障害認定基準と受け取れる賠償金を解説
Uさんは、自動車を運転中の衝突事故で、おでこの部分を10針ほど縫うケガを負ってしまいました。主治医によれば、傷は将来にわたって消えずに残るだろうとのこと。Uさんは、おでこという人目に付きやすい部分に大きな傷が残ってしまうことに大変ショックを受けています。
このように、交通事故によるケガで身体に傷あとが残ってしまうことがあります。この場合、傷あとが後遺障害と認められると、被害者は加害者に対して後遺症慰謝料などの賠償金を請求することができます。
この記事では、交通事故により身体に傷あとが残ってしまった場合について、
  • 後遺障害とは
  • 傷あとが後遺障害に認定される基準
  • 加害者に請求できる賠償金
  • 賠償金請求を弁護士に依頼するメリット
を弁護士が解説します。

後遺障害とは

交通事故でケガを負った場合、治療してもこれ以上回復できない状態で症状が残ることがあります。これを「後遺症」といいます。
身体に傷あとが残ることも、後遺症の一つといえます。
「後遺障害」とは、このように交通事故で負った後遺症のうち、自賠責保険の基準に基づき、所定の機関(損害保険料率算出機構など)により障害を認定されたものをいいます。
後遺障害は1~14級(および要介護1級・2級)の等級に分かれており、1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。
各等級で、視力・聴力・四肢・精神・臓器など部位に応じた障害の認定基準(各号)が定められています。
後遺障害が認定されると、被害者は加害者に対し、治療費や休業損害(ケガのために仕事を休んだことによって失った収入)などに加え、後遺症慰謝料や後遺障害逸失利益も請求できるようになります。
なお、身体に傷あとが残ったことで認定される可能性のある後遺障害等級には、

ア 7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
イ 9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
ウ 12級14号 外貌に醜状を残すもの
エ 14級4号 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
オ 14級5号 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

の5つがあります。
等級が高い方が、請求できる慰謝料や逸失利益の額も高くなります。

「外貌(がいぼう)」「醜状(しゅうじょう)」などの意味

身体に傷あとが残れば常に後遺障害に認定されるというわけではありません。傷あとが後遺障害とされるためには、各等級に定められたいずれかの基準に該当する必要があります。
このうち、ア~ウは「外貌」の「醜状」に関するものです。
「外貌」とは、頭部・顔面部・頸部(首)といった日常生活で常に露出している部分、要するに首から上の部分を指します。
また、「醜状」とは、人目に付くほど目立つ傷あとのことをいいます。
つまり、ア~ウは、首から上の部分に人目に付くほど目立つ傷あとが残る状態があてはまります(ア~ウをまとめて「外貌醜状」(がいぼうしゅうじょう)と呼ぶこともあります)。
これに対し、エ・オは上肢または下肢に関するものです。
上肢とは腕、下肢とは足のことです。
露出面とは、ふだん露出されることが多い部分のことです。具体的には、上肢については上腕から指先まで、下肢については大腿から足の背の部分とされます。

傷あとが後遺障害に認定される基準

それでは次に、どの程度の傷あとが残ればどの等級とされるのか、その認定基準を見ていきましょう。

(1)ア 7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの

7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
まずは7級12号です。
後遺障害7級12号は、「外貌に著しい醜状を残すもの」とされています。
具体的には、次のような傷あとが残った場合にこれに該当します。
  1. 頭部に残った手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  2. 顔面部に残った鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没
  3. 頸部(=首)に残った手のひら大以上の瘢痕
「瘢痕」とは、外傷ややけどによる傷あとのことです。
「欠損」とは、一部が欠けることです。
「組織陥没」とは、くぼみができることです。
「鶏卵」とはニワトリの卵のことです。

7級12号に該当するのは、外貌醜状の中でも最も大きな傷あとであるといえます。

(2)イ 9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの

9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
次に、9級16号です。
9級16号は、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とされています。
具体的には、以下のような傷あとが残った場合にこれに該当します。
  • 顔面部に残った長さ5センチメートル以上の線状痕
「線状痕」とは、線状の形をした傷のことです。
9級16号は、外貌醜状の中でも「顔の傷あと」のみが該当することになります。

(3)ウ 12級14号 外貌に醜状を残すもの

12級14号 外貌に醜状を残すもの
12級14号は、「外貌に醜状を残すもの」とされています。
具体的には、
  1. 頭部に残った鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
  2. 顔面部に残った10円硬貨以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕
  3. 頸部に残った鶏卵大以上の瘢痕
がこれにあたります。
12級14号に該当するのは、7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」に比べてやや軽い傷あとであるといえます。

(4)エ 14級4号 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

14級4号 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級4号は、「上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」です。
これは、上腕から指先までの間に手のひら大の瘢痕を残す状態を指します。

(5)オ 14級5号 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

14級5号 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級5号は、「下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」です。
これは、大腿から足の背の部分に手のひら大の瘢痕を残す状態を指します。

(6)その他の場合

上記のア~オ以外にも、例えば次のような場合に障害等級が認定されることがあります。
<上肢・下肢の露出面以外の醜状>
  • 胸部または腹部……全域
  • 背部(背中)および臀部(お尻)……全面積の2分の1程度を超えるもの
→この場合、12級相当と認定されることがあります。
  • 胸部または腹部……各部の2分の1程度
  • 背部および臀部……全面積の4分の1程度を超えるもの
→この場合、14級相当と認定されることがあります。

<顔面神経麻痺>
顔面神経麻痺は傷あとそのものではありませんが、それによる口の歪みは「外貌に醜状を残すもの」として12級が認定されることがあります。

(7)後遺障害等級認定のため面接が行われるケースがある

身体の傷あとによる後遺障害等級認定にあたっては、損害保険料率算出機構内にある自賠責調査事務所において面接審査が行われることがあります。
面接では、事前に提出した診断書や写真などをもとに、調査員が傷あとの大きさや長さを測ったり、形状・色などを確認します。その際、傷あとの大きさや長さが基準に少しでも満たないと、後遺障害の認定がされなくなってしまいます。

(8)性別による差はない

上記の各障害等級については、それぞれの基準にあてはまれば性別に関係なく認定されます。
かつては男性と女性との間で等級の認定基準に差が設けられていましたが、2011年にこの区別は撤廃されました。

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加害者に請求できる賠償金の種類

これまで述べてきたいずれかの傷あと(醜状)が残った場合、担当医から症状固定(=これ以上治療しても傷あとが回復しないこと)の診断を受け、所定の機関(損害保険料率算出機構など)から等級認定を受けると、治療費などに加えて
  • 後遺症慰謝料
  • 後遺障害逸失利益
を請求できるようになります。
以下、一つずつ見ていきましょう。

(1)後遺症慰謝料

交通事故で受けたケガが完治せず、後遺症が残った場合に請求できる慰謝料です。
慰謝料とは、精神的損害(=痛い・つらいといった精神的苦痛)に対する賠償のことをいいます。
後遺症慰謝料は、後遺症が所定の機関(損害保険料率算出機構など)により「後遺障害」として認定されると請求できます。
どの障害等級に認定されるかによって慰謝料の金額が変わってきます

後遺症慰謝料の相場とは?~算出基準は3つある~

後遺症慰謝料の金額を算出する基準としては、
  • 自賠責の基準……自動車損害賠償保障法(自賠法)で定められた、必要最低限の賠償基準
  • 任意保険の基準……各保険会社が独自に定めた賠償基準
  • 弁護士の基準……弁護士が、加害者との示談交渉や裁判で用いる賠償基準(「裁判所の基準」ともいいます)
の3つがあります。
どの基準を用いるかによって慰謝料の額が変わってきます。
3つの基準を金額の大きい順に並べると、一般に

弁護士の基準>任意保険の基準>自賠責の基準

となります。
傷あとによる後遺症慰謝料の相場について、自賠責の基準と弁護士の基準を比較すると次のようになります(2020年4月1日以降に起きた事故の場合)。
自賠責の基準 弁護士の基準
7級12号 419万円 1000万円
9級16号 249万円 690万円
12級14号 94万円 290万円
14級4号・5号 32万円 110万円
交通事故の被害者が、加害者に対して慰謝料などの賠償金を請求する場合、その金額について、通常は加害者が加入する保険会社と示談交渉を行うことになります。
その際、被害者本人(加入する保険会社の示談代行サービスを含む)が加害者側の保険会社と示談交渉すると、加害者側の保険会社は自賠責の基準や任意保険の基準による低い慰謝料額を提示してくるのが通常です。
これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉や裁判を行う場合は、最も高額な弁護士の基準が用いられます。
これにより、慰謝料の増額が期待できます。

(2)後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺障害によって仕事などに支障が生じ、得られなくなった将来の利益のことをいいます。
例えば、大工として生計を立てている人が、交通事故による手指の機能障害のため仕事ができなくなってしまった場合、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入をいいます。

逸失利益の金額は、

基礎収入×後遺障害による労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

という計算式で算出します。

「基礎収入」は、原則として事故発生前の収入の金額が採用されます。
「労働能力喪失率」とは、後遺障害により労働能力がどれだけ失われたのか、その割合をいいます。後遺障害等級ごとに目安が定められており、
  • 7級の場合……56%
  • 9級の場合……35%
  • 12級の場合……14%
  • 14級の場合……5%
とされています。
例えば7級の場合、100%の労働能力のうち56%が失われたとみなさることになります(具体的な障害の内容によって、この数字は変わってくることもあります)。
「ライプニッツ係数」とは、被害者が将来得られたはずの利益を前もって受け取ったことで得られた利益(利息など)を控除するための数値です。

傷あと(醜状)による逸失利益の請求は一定の場合に限られる

後遺障害が認定された場合、後遺障害逸失利益を請求できると述べましたが、実は傷あと
(醜状)による後遺障害の場合、逸失利益を請求できるのは一定の場合に限られます。
手足の機能障害などと異なり、身体の傷あと(醜状)によって労働に支障が生じる職業は限られるからです。そのため、傷あとによる後遺障害により逸失利益を請求するには、傷あとの程度とその傷あとが仕事に及ぼす影響の程度を説得的に主張する必要があります。逸失利益を主張しうる代表例としては、俳優業やモデル業などですが、その他の業務の場合でも個別具体的な状況によっては請求できる可能性があるため、適切な賠償金額を獲得するためには弁護士に依頼するのがいいでしょう。

傷あと(醜状)による賠償金の請求を弁護士に依頼するメリット

傷あと(醜状)により請求できる賠償金として、後遺症慰謝料と逸失利益について説明してきました。
いずれについても、加害者側に対する示談交渉や請求については、弁護士に依頼するのがおすすめです。その理由としては、
  • 後遺症慰謝料については、弁護士の基準を用いた交渉により慰謝料の増額が期待できる
  • 逸失利益についても、傷あと(醜状)が仕事に与える影響や、適正な労働能力喪失期間を主張することで、妥当な賠償を受けられる可能性が高まる
などが挙げられます。

【まとめ】交通事故により、顔などに傷あとが残った場合はアディーレ法律事務所にご相談ください

交通事故により顔などにケガをし、傷あとが残ってしまった場合、それが後遺障害と認定されれば後遺症慰謝料や逸失利益を請求できるようになります。
その際、加害者側との示談交渉は被害者自身(または、加入している保険会社の示談代行サービス)でも可能ですが、弁護士に依頼すれば、慰謝料の増額や適正な逸失利益が認められるよう、さまざまなサポートを受けることができます。
交通事故による傷あと(醜状)でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修弁護士

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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