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借金を理由に「養育費を支払えない」と言われたときの対処法

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厚生労働省が公表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によると、ひとり親世帯のうち、約86%が、母子世帯でシングルマザーです。また、ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%で、全体平均の15.7%と比べると高く、ひとり親世帯では子どもたちにも経済的な影響があると考えられます。もし養育費がきちんと支払われていれば、両親がそろっている世帯に比べてひとり親世帯が際立って貧困化することはないはずです。
子どもの監護をしていない親が養育費の支払いを拒む理由はさまざまですが、今回は借金を理由に養育費を支払わないと言われた場合の対応策について、弁護士が解説します。

シングルマザーが受けられる公的な支援について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。

シングルマザーの貧困化|母子世帯の現状や受けられる支援について

参照:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告|厚生労働省
参照:国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフでみる世帯の状況|厚生労働省

「借金がある」との理由で、養育費の支払いは拒めない!

私たちは、生きていくうえで、ご飯を食べ、飲み物を飲み、時には病気になって治療を受けるなどしてお金を使います。精神的にゆとりのある生活をしようとすると、趣味に使うお金も必要です。それは、大人だけでなく、子どもにとっても同様で、お金が必要です。親は子どもに対して扶養義務を負っているので(民法877条1項)、親は子どもの養育費を負担しなければなりません。

養育費とは、未成年の子どもが生活するために必要な費用のことをいい、衣食住の費用、教育費、医療費などが含まれています。もし親が「借金の返済で追われているからお金を支払えない」と養育費の支払いを拒んだら、子どもたちは満足な生活を送ることができません。そのため、養育費は「お金があるから支払う」ものではなく「支払わなければならない」ものなのです。「一緒に暮らしていないから支払わなくていいもの」でも「親権者がきちんと働いているから支払わなくていいもの」でもありません。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

養育費とは?支払い期間から金額の算定方法、不払いへの対処法までわかりやすく解説

自己破産をしても養育費を支払わなくてよくなるわけではない!

借金があるだけではなく、自己破産をした場合には、養育費の支払いを免れるのでしょうか。

(1)そもそも自己破産とは?

「自己破産」とは、財産、収入が不足し、借金返済の見込みがないことなど(支払不能)を裁判所に認めてもらい、原則として、法律上、借金の支払義務を免除してもらう手続です。
しかし、税金など一定の支払義務は自己破産をしても免れません。自己破産によって支払義務を免れないものを「非免責債権(ひめんせきさいけん)」といいます。

(2)法律上、養育費は「非免責(非減免)債権」となる

養育費は、親の子どもに対する扶養義務および監護義務に基づく請求権として、非免責債権にあたります(破産法253条1項4号ハ・ニ)。つまり、自己破産で借金の返済義務を免除されたからといって、養育費を支払わなくてもよくなるわけではありません。

ただし、公正証書など客観的な書面で養育費の支払額が定められていなかった場合、養育費の支払義務を負う親が自己破産を弁護士に依頼したことで、従来どおりの金額の養育費を支払ってもらえなくなる可能性があります。また、養育費算定表に照らして高額な養育費であった場合には、養育費の減額を求められることがあります。

参照:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所 – Courts in Japan

個人再生の場合も同様に支払義務がなくなるわけではない!

個人再生の場合も同様に、個人再生の開始決定前に発生していた養育費の請求権は非減免債権として、再生手続き開始決定後に発生する養育費の請求権は共益債権として扱われ、いずれにしても個人再生をしたからといって支払わなくてよくなるわけではありません。

借金を理由に、養育費の支払義務を果たしてもらえないときの対処法

養育費の支払いを拒む親に対し「借金を理由に養育費の支払いを免れることはできない」と伝えてもなお、養育費の支払義務を果たしてもらえないときの対処法を解説します。

(1)強制執行の手続きをとる

養育費について強制執行力のある書面(債務名義)がある場合には、地方裁判所に対して強制執行の申立てをすることで、相手方の財産から強制的に支払いを確保することができます。
債務名義としては、次のようなものがあります。

  • 確定判決
  • 和解調書
  • 調停調書
  • 審判調書
  • 公正証書(執行認諾文言有) など

離婚の際に公正証書を作成せず、口頭や公正証書以外の書面で養育費の合意をしたにすぎない場合には、すぐに強制執行の手続きをとることはできません。この場合には、まず相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費支払いの申立てをして、債務名義となる調停・審判調書を得る必要があります。通常、まず調停を申立てて、話し合いによる合意が難しい場合に審判に移行します。もっとも、養育費の支払いがなく子どもを育てるのが困難な経済状況に陥っている場合には、調停または審判を申立て、併せて審判前の保全処分の利用を検討するとよいでしょう。審判前の保全処分手続きでは、迅速に案件を検討し、仮差押えや仮払仮処分が認められることで早期に養育費を支払ってもらえることがあります。

では、強制執行により、どれくらいの額を回収できるのでしょうか。
たとえば給与を差し押さえる場合には、基本的に税金等を控除した残額の2分の1までとなっています(民事執行法151条の2第1項3号・4号、152条第3項)。給与等の差し押さえは、一度手続きを行えば、将来分も継続的に差し押さえることができます(民事執行法151条の2第1項3号・4号)ので、相手が退職しない限り、一度の手続きである程度の期間お金をもらい続けることができます。

参考:将来発生する養育費の差押えについて|裁判所 – Courts in Japan

(2)履行勧告・履行命令の制度を利用する

履行勧告・履行命令は、家庭裁判所の調停・審判調書などに養育費の支払いについて記載されている場合のみ利用できます。
公正証書を作成しただけの場合には利用できませんので、注意しましょう。

履行勧告は、家庭裁判所により、履行状況を調査し、相手方に対して合意のとおりに支払うよう履行を勧告し、督促してもらう制度です(履行勧告、家事事件手続法289条)。
勧告に強制力はありませんが、相手方は、裁判所から直接督促を受けることになるので、一定の効果が期待できるというメリットがあります。

履行勧告によっても支払われない場合、家庭裁判所が相当と認めると、一定の時期までに支払うよう命令を発してもらうこともできます(履行命令、家事事件手続法290条)。
正当な理由なくこの命令に従わない場合は、10万円以下の過料に処せられるという制裁があるので、間接的な強制力を有します。
履行勧告・履行命令は、あくまで裁判所から相手方に対して、自主的に支払うよう促す制度なので、強制執行のような直接的な強制力は欠くものの、手続き費用もそれほどかからず、手続き自体も簡単で口頭での申立ても受け付けてもらえるというメリットがあります。強制執行をする前に一度利用を検討してみるのもよいでしょう。

(3)弁護士に相談する

養育費の未払いがある場合、どのような対処法が適切なのか、慎重に判断する必要があります。
例えば、相手方の職場が分かっている場合には、給与債権を差し押さえることが最も効果的かつ確実な回収方法ですが、相手方が差押えを嫌がって仕事を辞めてしまうと、差し押さえる対象の給与自体がなくなってしまいます。
弁護士であれば、事案の内容・性質を踏まえて、突然強制執行の手続きをする前に、交渉によって自主的な支払いを求めたり、裁判所による履行勧告の手続きを利用したりした方がよいかについて、的確にアドバイスすることができるでしょう。
また、強制執行する場合は、まず、相手方の財産を特定する必要があります。
例えば、預金口座であれば、基本的に銀行名と支店名まで必要です。本人が分からない場合でも、弁護士であれば、職権により調査することで、支店名を特定できることがあります。
弁護士であっても、銀行の支店や、職場などを特定できないこともあります。その場合は、裁判所の「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」という制度を利用することで、相手方の勤務先や、銀行口座を把握することができる可能性があります。
相手方の職場や預金口座などの財産の情報が分からない場合には、弁護士に相談・依頼することで、相手方の財産を特定できる可能性が高まるでしょう。

【まとめ】養育費の受け取りでお悩みの方は弁護士にご相談ください

法律上、借金を理由として養育費の支払いを拒むことはできません。しかし、残念ながら借金があるとの理由で養育費の支払いを滞納してしまう人が一定数いるのも事実です。養育費が支払われなくなった場合には、給与の差押えなどを含めて、今後の対応を検討する必要があるでしょう。養育費の受け取りでお悩みの方は弁護士にご相談ください。