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ケアハラスメントとは?未然に防ぐ方法や受けたときの対処法を解説

作成日:更新日:
kiriu_sakura

「最近、親の健康状態が心配……。介護が必要になったらできる限りのことはしたいけど、仕事とうまく両立できるかな」

働きながら介護をしている人が、職場で嫌がらせを受けたり、介護と仕事の両立のための制度を利用させてもらえなかったりするケースがあります。
このような、介護に伴う職場での嫌がらせや不利益な扱いのことを、「ケアハラスメント」といいます。

ケアハラスメントが起こってしまうのは、介護やケアハラスメントについての問題意識がまだまだ浸透していないことなどが原因です。
ですので、今後介護休業などを取りたい場合には、同僚や上司などに介護の事情を説明して理解を得ておくことで、ケアハラスメントを防げる可能性があります。
また、実際にケアハラスメントを受けてしまった場合にも、公的機関や弁護士などに相談することができます。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • ケアハラスメントが起こる原因
  • ケアハラスメントの具体例
  • ケアハラスメントを未然に防ぐための3つの方法
  • ケアハラスメントを受けたときの3つの対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

ケアハラスメントが起こる原因

ケアハラスメントが起こってしまうことの一因には、ケアハラスメントについての問題意識を持っていない人が、まだまだ多いということがあります。

例えばセクハラやパワハラなどといった他のハラスメントについての言葉に比べて、「ケアハラ」を耳にすることは少ないのではないでしょうか。
ですので、介護をしたことがなく、周囲に介護経験者もいない人などの場合、「ケアハラスメントがよくないことだ」という認識自体が不十分なケースがあります。

そのため、例えば同僚が介護休業などを取った影響で周囲の人の仕事量が増えてしまうと、「介護休業なんて迷惑だ」と感じて、嫌がらせなどにつながってしまうことがあるのです。

また、育児などとは異なり、介護は「いつまで続くか」が明確ではありません。そのため、「あの人の介護のしわ寄せは、いつまで続くんだ」と感じることで、嫌がらせなどに拍車がかかってしまいがちです。

さらに、「介護は女性がするものだ」という固定観念も未だに強いです。そのため、男性が介護休業などを利用しようとすると、「妻に任せておけばよい」などと言われて利用できなくなってしまうケースもあります。

ケアハラスメントの具体例

それでは、ケアハラスメントの具体例をご説明します。

(1)介護の支援制度の申請への妨害

介護と仕事の両立のために、残業時間への制限や、介護休業などの支援制度(※)が設けられています。

しかし、そうした支援制度を利用するために会社で申請しようとすると、難癖をつけて妨害することが起きています。
例えば、「いつまで介護休業を利用するのか。同僚にも迷惑がかかるし、長引きそうなら退職も考えた方がよいのではないか」などと言って、制度を申請しにくくしてしまうケースが考えられます。

※主な支援制度には、例えば次のようなものがあります(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律。ここからは、「育児・介護休業法」と表記します)。

制度の名称制度の概要
介護休業・介護が必要な家族(対象家族)1人につき、原則として「3回・通算93日まで」取得できる。
(育児・介護休業法11条)
介護休暇・対象家族の介護などのために、原則「1年度につき5日まで」取得できる。
(同法16条の5)
所定外労働への制限・要介護状態の対象家族を介護している労働者が、一定の場合に所定外労働の免除を請求できる。
・免除を求めることのできる期間は、1回の請求につき1ヶ月以上1年以内。
(同法16条の9、同法16条の8)
時間外労働への制限・要介護状態の対象家族を介護している労働者が、一定の場合に「1ヶ月24時間・1年150時間」を超える時間外労働の免除を請求できる。
(同法18条、17条)
深夜業への制限・要介護状態の対象家族を介護している労働者が、一定の場合に22~5時までの労働の免除を請求できる。
(同法20条、19条)
解雇などの不利益な取扱いの禁止・事業主は、労働者が上のような制度を利用したことを理由として解雇などの不利益な取扱いをしてはならない。
(同法16条、10条等)

参考:仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~|厚生労働省

(2)職場での嫌がらせ

また、介護休業などの制度を利用できたとしても、職場で嫌がらせを受けるおそれもあります。
例えば、「介護しないといけないと言っても、あなたが残業しないせいで私たちの負担が増えている」などと同僚や上司から言われることなどが考えられます。

(3)解雇や不当な配置転換など

さらには、介護の支援制度を利用していることなどを理由に、次のような不利益な取扱いを受けるおそれもあります。

  • 降格
  • 配置転換
  • 解雇

介護休業などの支援制度を利用していることを理由に、こうした不利益な取扱いをすることは違法です(育児・介護休業法16条、10条等)。
しかし、こうした不利益な取扱いが実際に起こってしまった場合、覆すためには会社との交渉や裁判などの手続きを踏まなければならないおそれがあります。

また、実際にこのような不利益な扱いまではしないものの、「このまま介護を理由に周囲に迷惑をかけるなら、降格なども考えないといけないな」などと示唆することで制度利用を妨げるケースもあります。

ケアハラスメントを未然に防ぐための3つの方法

ケアハラスメントを受けないようにするための方法としては、例えば次の3つが考えられます。

  • 介護の事情を理解してもらう
  • 介護保険サービスなどを利用する
  • 家族や近所の人とコミュニケーションを取っておく

それぞれについてご説明します。

(1)介護の事情を理解してもらう

先ほど述べたように、職場でケアハラスメントが起こってしまうのは、介護やケアハラスメントについての理解不足が大きくかかわってきています。
ですので、自分が行っている介護について会社できちんと理解してもらうことが重要となってきます。

介護休業などの制度については、社内の人事部などに申請することとなります。
しかし、人事部だけでなく、周囲の同僚や上司などにも前もって介護の状況を伝え、理解してもらうことで、制度を利用し始めても反発やケアハラスメントを受けずに済む可能性があります。

(2)介護保険サービスを利用する

自分の介護の負担を減らすために、介護保険サービスを利用するという方法もあります。

介護保険サービスとは、介護費用の自己負担を1~3割程度まで下げて介護サービスを利用できる制度です。
第一号被保険者または第二号被保険者であることなど、一定の条件を満たした方が利用できます。

自分の介護の負担が減れば、その分会社で働く余裕が出てきますので、周囲の負担が増えることによるケアハラスメントをある程度防げる可能性があります。

参考:介護保険制度の概要|厚生労働省

(3)家族や近所の人とコミュニケーションを取る

家族や近所の人と介護について話しておいて、いざという時などに協力してもらえるようにしておくという方法もあります。
家族や近所の人から介護への協力が得られれば、自分の介護の負担が減り、同僚などの負担が増えることによるケアハラスメントを抑止できる可能性があります。

実際にケアハラスメントを受けたときの対処法

実際にケアハラスメントを受けてしまった場合、ケアハラスメントについて相談することで対処できる可能性があります。
例えば、次のような相談窓口が挙げられます。

  • 社内の窓口
  • 公的機関など
  • 弁護士

(1)社内の窓口

育児・介護休業法は、介護休業などの制度を利用する労働者の就業環境が害されないようにするため、その労働者からの相談に応じるなどの義務を事業者に課しています(同法25条1項)。
この義務を果たすため、ケアハラスメントなどについて労働者が相談できる窓口を設けている会社もあります。
ですので、社内に相談窓口があるという場合、そこで相談してみるという方法があります。

(2)公的機関など

また、ケアハラスメントについては社外の窓口でも相談することができます。
例えば、次のような公的機関があります。

相談先概要
総合労働相談コーナー・ケアハラスメントを含む労働問題全般について、相談することができる。
・相談内容を解決するのに適した機関を、案内してもらえる。
各都道府県の労働委員会・ケアハラスメントなどの被害を受けた場合などについて、労働者と使用者の間の話し合いや和解を促すための「あっせん」の手続きがある。
※相手方(ケアハラスメントの場合、使用者)が「あっせん」に出席しないと、手続きは打ち切り。

労働問題について相談できる公的機関には、他にもさまざまあります。しかし、相談できる労働問題の範囲がそれぞれ違ってきますので、「どこに相談したらいいか分からない!」となった場合、まずは総合労働相談コーナーで案内してもらうというのも1つの方法です。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

(3)弁護士

ケアハラスメントについては、弁護士に相談することもできます。
弁護士はケアハラスメントについての証拠などを検討のうえ、次のような方法で加害者や使用者の責任を追及できないか法的観点から見立てることができます。

  • ケアハラスメントをした加害者本人に…
    • 人格的利益(人間らしく生きていくために不可欠なもの)などを侵害したこと理由に、損害賠償請求をする(民法709条)
  • ケアハラスメントを改善しなかった使用者に…
    • ケアハラスメントを行った加害者を使用していたことについての「使用者責任」を追及し、損害賠償請求をする(民法715条1項)
    • ケアハラスメントを予防・是正せず、働きやすい良好な職場環境を維持する義務を果たさなかったことについて、損害賠償請求をする(同法415条か709条)

また、弁護士に労働問題について相談すれば、抱えている労働問題を総合的に解決できる可能性もあります。

例えば、介護休業などを取得させてくれない職場を退職しようと思っていても、「この忙しい時期に退職なんて認められない」などと拒否されてしまった場合、代わりに退職についての手続きをする「退職代行サービス」を利用できるケースもあります。

退職代行は民間の業者でも行っていますが、弁護士の場合「代理権」がありますので、退職に際して会社から逆に損害賠償請求が来てしまったなどのトラブルについても任せておくことができます。
退職代行を弁護士に相談するメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

未払いになっている残業代があれば、残業代請求も合わせて依頼できる可能性があります。
残業代の金額などについての証拠が少ない場合なども、弁護士が粘り強く交渉を進めることで、残業代を回収できるケースもあります。
残業代請求について弁護士に依頼するメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

未払い残業代の請求を弁護士に依頼したい!費用の相場やメリット解説

【まとめ】ケアハラスメントとは、介護に伴う職場での嫌がらせや不利益な扱いのこと

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • ケアハラスメントとは、介護に伴う職場での嫌がらせや不利益な扱いのこと。
  • ケアハラスメントが起こるのは、介護やケアハラスメントについての問題意識を持っていない人が少なくないことなどが原因。
  • ケアハラスメントには、例えば次のようなものがある。
    • 介護の支援制度の申請への妨害
    • 職場での嫌がらせ
    • 解雇や不当な配置転換など
  • ケアハラスメントを未然に防ぐ方法として、例えば次のようなものが挙げられる。
    • 職場で介護の事情を理解してもらう
    • 介護保険サービスなどを利用する
    • 家族や近所の人とコミュニケーションを取っておく
  • ケアハラスメントが実際に起こった場合、例えば次の相談窓口がある。
    • 社内の窓口
    • 公的機関など
    • 弁護士

ケアハラスメントを受けないようにするには、職場で介護について話しておくなど事前に動いておくことがおすすめです。
また、実際にケアハラスメントが起きてしまったら、仕事と介護の板挟みになってますます疲れてしまうことと思います。一人で抱え込まず、公的機関や弁護士などに相談してみてください。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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