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【弁護士が解説】民事再生法とは?個人再生申立ての流れについて

作成日:更新日:
リーガライフラボ

民事再生法とは、民事再生手続について規定する法律です。

民事再生手続とは、借金などの負債を返済できない場合に、裁判所に負債の減額や返済条件などに関する再生計画を認めてもらった上で、減額された負債を返済しながら経済的な立ち直りを目指す手続です。

民事再生法は、もともと、会社の再建を目的として規定されていました。
ですが、個人の方にとっても、経済的な再建を目指す再生手続が有用なことに間違いありません。
そこで、民事再生法が改正され、2001年4月から、個人の方に向け手続を簡易化した個人再生がスタートしたのです。
民事再生法に基づく個人再生は、自己破産や任意整理と同じ「債務整理」の1つとされています。
ですが、自己破産のように借金の理由が問題視されたり、手続期間中の資格制限がありません。また、任意整理に比べると一般的に借金が大きく減額されます。
自己破産や任意整理によるデメリットが大きい人にとっては、個人再生は魅力的な手続なのです。

そこで、今回は次のことについて弁護士がご説明します。

  • 個人再生と自己破産の違い
  • 個人再生を検討すべきケース
  • 個人再生申立ての流れ      など

民事再生法に基づく会社の民事再生について、詳しくはこちらの記事をご確認ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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民事再生法に基づく個人民事再生(個人再生)とは?

個人の方を対象とした「個人再生」は、住宅などの財産を維持したまま、大幅に減額された負債を(減額の程度は、借金の額、保有している財産などによって異なります)、原則として3年間で分割して返済していくという手続です。

減額された借金を完済すれば、再生計画の対象となった負債については、原則として法律上返済する義務を免除されます。
個人再生は、自己破産のように負債の全額について返済義務がなくなるわけではありませんが、自己破産のように高価な財産(主に住宅)が処分されることもありません。

民事再生法1条をみてみましょう。

この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。

引用:民事再生法1条

民事再生法による個人再生も、破産法による自己破産も、いずれも裁判所を利用した手続で、「債務者の経済生活の再生を図ること」を目的としています。個人再生と自己破産の違いは、主に次のとおりです。

【個人再生と自己破産の違い】

個人再生自己破産
借金5分の1程度に減額免責が認められれば借金がなくなる
財産財産が処分されない高価な財産は処分される
資格制限資格制限がない手続中の資格制限がある
期間※手続は申立てから5~6ヶ月程度手続は申立てから3~6ヶ月程度
※期間は目安であり、事案により異なることがあります。

個人再生と自己破産にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
どちらが良いということではなく、ご自身にあった方法で経済的な立ち直りを目指します。

特に、住宅ローンの残っている住宅を残したい方や、自己破産をすると資格制限がある仕事についている方にとって、自己破産ではなく個人再生をするメリットは大きいです!

また、次の方のように多額の借金を抱えた理由がギャンブルのためなど、自己破産を申立てても免責が許可されない可能性が高い場合には、個人再生の申立てを検討することになるでしょう。

個人再生と自己破産の違いについて詳しくはこちらの記事をご確認ください。

個人再生ってめんどくさい?実現できるメリットを弁護士が解説

個人再生を検討するべきケース

民事再生法による個人再生を検討されている方は、まずは次の3点をご確認ください。

  • 住宅ローンを除く借金の総額が5000万円以下であること
  • 将来的に安定して収入を得られる見込みがあること
  • 支払不能のおそれがあること

この3点に当てはまる方は、個人再生を利用できる可能性があります(※なお、住宅ローンの存在は個人再生の条件ではありません。住宅ローンがなくても個人再生をする人はいます)。

個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。それぞれに必要な条件は、次のとおりです。

(1)小規模個人再生

小規模個人再生手続を利用するには、次の条件が必要です。

  • 借金などの総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
  • 将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること

小規模個人再生手続は、もともと個人商店や規模の小さめの事業を営んでいる方などを対象としています。

(2)給与所得者等再生

給与所得者等再生手続を利用するには、次の条件が必要です。

  • 借金などの総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
  • 将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること
  • 収入が給料などで、その金額が安定していること

給与所得者等再生手続は、主に会社員の方を対象としています。

ただし、このうち小規模個人再生のためには、再生計画案の決議段階で、債権者の数の2分の1以上の反対がなく、かつ反対した債権者の債権額の合計が全債権額の2分の1を超えていないことが必要です。

そのため、借金の経緯や債権者の顔ぶれから過半数の債権者が再生手続に異議を出すと強く予想される場合、小規模個人再生の手続は採れません。
もっとも、多くのケースでは、そもそも過半数債権者がいないか、あらかじめ再生手続に反対しないことが予測できるため、会社員の方などであっても、小規模個人再生で進めることができます。

給与所得者等再生よりも、小規模個人再生の方が良いんですか?

次にご説明しますが、一般的には小規模個人再生の方が減額できる借金の額が大きくなります。
ですから、まずは小規模個人再生ができないか検討し、それが無理なら給与所得者等再生を検討するという流れになります。

実際、2020年度の司法統計によると、同年に全国の裁判所が処理した小規模個人再生は1万1948件であるのに対し、給与所得者等再生は764件と、優に個人再生の94%が小規模個人再生でした。

参照:第109表 再生既済事件数―事件の種類及び終局区分別―全地方裁判所|裁判所 – Courts in Japan

個人再生では、どのくらい借金を減額できる?

小規模個人再生の場合には、次のどちらか多い方の金額を支払わなければいけません。

  1. 最低弁済額
  2. 保有している財産の合計金額(清算価値)

最低弁済額とは、法律で定められている最低限返済しなければならない金額のことです。
法律の定める最低弁済額は、次のとおりです。

借金総額最低弁済額
100万円未満借金総額
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1500万円以下借金総額の5分の1
1500万円超3000万円以下300万円
3000万円超5000万円未満借金総額の10分の1

保有財産には、現金、貯金、保険の解約返戻金、自動車、不動産、退職金(原則8分の1相当額)などが含まれます。
そこで、相続財産を得た人や勤続年数の長い人は保有財産の金額に注意が必要です。

特に、被相続人(亡くなった方)が不動産などの財産を所有していた場合には法定相続分に基づく持ち分、まもなく定年退職する場合には、退職金の4分の1が、それぞれ保有財産として扱われてしまいます。
そのようなケースでは、最低弁済額よりも保有財産の金額(清算価値)の方が高くなることも珍しくありません。

他方、給与所得者等再生の場合には、次の1~3のうちいずれか多いものの金額を最低限支払わなければいけません。

  1. 最低弁済額
  2. 保有財産の合計額
  3. 可処分所得の2年分

3の「可処分所得」とは、収入から所得税等を控除し、さらに政令で定められた生活費を差し引いた金額ですが、収入や生活状況などによっては、かなり高額になってしまうことがあります。

一般的には小規模個人再生よりも給与所得者等再生の方が返済額が高額になることが多いです。

そのため、再生計画案への多数の反対が予想される場合以外には、給与所得者等再生ではなく小規模個人再生を検討すべきことになるのです。

個人再生の「弁済額」の計算方法について詳しくはこちらの記事をご参照ください。

【弁護士が解説】個人再生の「弁済額」の計算方法

なお、小規模個人再生と給与所得者等再生のスケジュール的には大きな違いはありません。

個人再生のスケジュール感について詳しくはこちらの記事もご確認ください。

個人再生のスケジュールと手続終了までにかかる時間を解説

それでは、民事再生法に基づく個人再生の申立ての流れについてご説明します。

ステップ1|弁護士に個人再生を依頼する

民事再生法は手続が複雑で準備も大変ですので、個人再生を自分で申立てようとする方は少ないです。

裁判所も、個人再生の申立てを行う場合には、法律の専門家である弁護士に依頼することをお勧めしています。ですので、多くの方は、弁護士に依頼することになるでしょう。

ご自身が個人再生ができるかどうか分からないという方も、まずは弁護士にご相談ください。

弁護士に相談すると、弁護士が個人再生を含め最適な債務整理方法を検討します。

また、弁護士は、債務整理の相談を受けると、まずは借金の残高などを確認するため、貸金業者から開示された取引履歴をもとに、法定金利(15~20%)に基づく引き直し計算を行います。

この時、過払い金が発生していれば、必要に応じて過払い金請求も行います。

多額の借金があり、民事再生法による個人再生を検討している方であっても、次にご紹介する方のように実は過払い金が発生しており、過払い金を取り戻すことにより借金がなくなる方も少なくありません。

弁護士と相談をして、民事再生法に基づく個人再生を申立てるという方針に決まると、弁護士が申立書を作成します。

もっとも、個人再生の申立てに至った過程や手持ち財産を誰よりも把握しているのは債務者自身ですので、申立書の作成にあたって事情などを書面でまとめてもらったり、弁護士からの質問に回答してもらったりする必要があるケースもあります。

また、個人情報保護の観点などから弁護士では集められない資料があったり、集めるのに時間を要する資料があったりします。

そこで、申立書に添付する資料は原則として依頼者自身に収集・提出してもらうことになります。
たとえば、状況に応じて次の資料を収集・提出していただきます。

  • (住宅があれば)住宅ローンの契約書、不動産の査定書など
  • (保険に加入していれば)解約返戻金の計算書、保険証券など
  • (自動車があれば)車検証、自動車の査定書など

これらの資料は各機関から取り寄せることができますので、弁護士に依頼する時点で保管していなくても構いません。

申立書が完成したら、裁判所に提出し、手続費用を納めます。申立時に必要な手続費用としては、収入印紙1万円のほかに郵便切手、予納金(官報広告費)などです。金額は申立てをする裁判所によって異なります。

たとえば、東京地裁に個人再生を申立てる場合、収入印紙1万円分、官報広告費として予納金1万3744円、郵便切手として1.1620円(120円×2枚、84円×10枚、20円切手×20枚、10円切手×13枚、1円切手×10枚)2.84円切手×3枚(郵送で申立てる場合には×4枚)と、2.120円切手×再生債権者数×2枚分が必要です。

また、東京地裁では原則として個人再生委員が選任されますので、再生委員に支払う報酬である「分割予納金」が必要です。分割予納金は、弁護士に依頼している場合には、15万円以上、弁護士に依頼していない場合には25万円以上になります(※分割予納金は、申立て後に再生委員から指定された口座に振り込みます)。

個人再生委員は選任されない裁判所もあります。詳しくは、個人再生の申立てを検討している裁判所の運用に詳しい弁護士にご確認ください。

ステップ2|裁判所から「再生手続開始決定」を得る

裁判所に個人再生を申立てると、裁判所は手続を開始してよいかを判断します。

もしも条件を満たしていないと判断すると、個人再生の開始決定は下りずに、申立てが却下または棄却されることになります(これはあくまで法律上の建前であり、実際は申立ての取下げを促されるケースが多いです)。

個人再生の申立てが却下されるのは、次のようなケースです。

  • 申立人債務者が個人ではない場合
  • 再生計画の対象となる借金総額が5000万円を超えている場合  など

※住宅ローンがあっても住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用できる場合には、住宅ローンの残高は再生計画案の対象となる借金の総額に含まれません。

また、個人再生の申立てが棄却されるのは、次のようなケースです(民事再生法25条)。

  • 再生手続の費用の予納がない場合
  • 裁判所に破産手続または特別清算手続が係属しており、それらの手続によることが債権者の一般の利益に適合する場合
  • 再生計画案の作成・可決・認可の見込みがないことが明らかである場合
  • 申立てが不当な目的でされたときや誠実にされたものでないとき

(1)再生委員が選任されることもある?

事案によっては、再生委員と呼ばれる弁護士が裁判所の代わりに仕事をすることもあります。

東京地裁では、個人再生の申立て後は次のような流れになります。

個人再生の申立て

個人再生委員の選任

(※申立て後、1週間以内です)

再生委員、債務者、申立代理人(個人再生を依頼した弁護士)の三者で面談

(※面談では、債務者や申立代理人が再生委員から負債の内容や理由、今後の返済の見込みなどについての質問を受けます。今後の手続の進行に関して必要な資料があれば、追完を求められることもあります)

個人再生委員が裁判所に意見書を提出

個人再生手続開始決定

(※個人再生委員が個人再生手続を開始することが相当であるという意見書を出し、裁判所が審査をして問題なければ、申立てから約1ヶ月後に個人再生手続開始決定がされます)

各債権者による債権届出

(※債権者から、それぞれの債権額を裁判所に届け出てもらいます)

『再生計画案』の提出

(※債権者が届け出た債権額について特段間違いがない場合には、今後、どのように借金を返済していくのか、再建方法や弁済方法をまとめた「再生計画案」を裁判所に提出します)

(2)個人再生手続で実施される『履行テスト』に注意!

個人再生は、手続終了後、3~5年間にわたって支払いを続けていかなければいけません。

そこで、個人再生の手続後、きちんと支払いを続けていくことができるのかをみるために個人再生手続開始決定後、『履行テスト』が行われることがあります。

たとえば東京地裁では、申立日からおよそ6ヶ月間、再生委員に指定された口座に1ヶ月分の返済予定額を毎月振り込むことになります(分割予納金を兼ねており、手続が終了し残金があれば返金されます)。

これを「履行可能性テスト」または「トレーニング期間」などと呼びます。
申立後1週間以内に初回の振込日があるため、あらかじめ申立代理人と申立時期などを相談しておくのがいいでしょう。

履行テスト中に支払いを滞納してしまった場合には、最終的に個人再生が認められない可能性もありますので、くれぐれも注意してくださいね!

ステップ3|裁判所から「再生計画認可決定」を得る

再生計画案を提出した後は、裁判所が再生委員の意見書や履行テストの結果などをふまえて、再生計画の認可・不認可を決定します(また、既に述べたように小規模個人再生では過半数の債権者の同意を得なければなりません)。

再生計画案が不認可となる代表的なケースとしては、次のものがあります(民事再生法174条、231条など)。

  • 勤務先の倒産などにより履行テスト中に滞納してしまうなど、再生計画を遂行する返済能力がないと判断された
  • 再生手続及び再生計画に軽微でない法律違反が認められ、その不備の補正ができない場合
  • 開始決定時前日までの利息や遅延損害金を含めた場合で、既に手続内で評価された負債の総額が5000万円を超えていた(ただし、住宅ローン特則を利用した場合の住宅ローンの残額は除かれ、さらに担保権が設定されている場合には担保権が実行された場合に見込まれる負債額で計算する)
  • 債権者一覧表には住宅資金特別条項を利用するとの意向のある記載をしているのに、その旨を記載した計画案を提出しない

なお、小規模個人再生であれば認可の前提として再生計画案が書面決議で可決されることも必要です。

ステップ4|再生手続が終結する

個人再生手続は、裁判所の再生計画認可決定の確定をもって終結します(民事再生法233条)。

終結すると、再生計画に基づく実際の支払いがスタートします。
再生計画案で毎月返済するとした場合には、再生計画認可決定が確定した月の翌月から、再生計画で定めた返済計画に沿って、各債権者の指定する口座に毎月入金します。

【まとめ】民事再生法による個人再生を検討している方は、まずは弁護士に相談を

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 民事再生法とは、民事再生手続について規定した法律で、もともとは会社などの再建のためのものであったが、個人でも民事再生手続を利用できるようにするため、民事再生法が改正された。
  • 個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生がある。一般的には後者の方が返済しなければいけない金額が大きくなる。
  • 個人再生の手続は複雑で準備も大変なため、弁護士を依頼した方が良い。
  • 個人再生の申立て後の流れは、東京地裁の場合、一般的に次のとおり。
    裁判所への個人再生の申立て➡再生委委員との面接➡再生手続の開始決定➡債権者による債権届出➡再生計画案の提出➡再生計画認可決定

借金問題をどうにかしたいけれど、自己破産や任意整理は難しい…そんな方であっても、民事再生法による個人再生ができるケースもあります。
民事再生法による個人再生ができれば、次の方のように、借金を大幅に減額することが可能です。

アディーレ法律事務所では、万が一、再生不認可となってしまった場合、当該手続にあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております(2022年10月時点)。

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