「うちの会社、繁忙期に入ると一気に連勤が増えるんだよな……。これって、違法なんじゃないか?」
会社の繁忙期などに起こりがちな連勤ですが、連勤続きでは疲れも取れず、かえって仕事の効率が下がることもあるのではないでしょうか。
労働者の働きすぎを防ぐため、労働基準法では「1週間に1日以上(1週1休)」または「4週間に4日以上(4週4休)」の休日(法定休日)を付与しなければならないこととなっています。
ですので、連勤の上限日数は1週1休だと12日、4週4休だと48日ということになります。
また、連勤が頻発している会社の場合、残業も多い傾向にあります。時間外労働をした場合、普段の1時間あたりの賃金を割増した残業代が出るはずなので、残業をしたはずなのに残業代が出ていなそうだと感じた場合、会社に残業代を請求できる可能性があります。
この記事を読んでわかること
- 労働基準法上の、連勤の上限日数
- 働き過ぎを防ぐための法定労働時間
- 残業代の割増率
- 違法な連勤や残業代未払いへの対処法
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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勤務)は何日までOK?法的ルールとは
働きすぎで身体や精神上の健康を損なう人が増えないように、労働基準法では勤務の日数などについて上限を定めています。
労働基準法上、連勤が何日まで認められるかについて場合分けしてご説明します。
(1)1週間につき休日1日の場合:連勤は原則12日まで
会社などの「使用者」は、労働者に対して最低でも毎週1回の休日(法定休日)を付与することが原則です(労働基準法35条1項)。
このことを「1週1休」などと呼ぶのですが、1週1休の場合、連勤は原則として12日が上限です。
1週1休の場合、連勤が最長になるようにするには1週目の始めと2週目の終わりの日を休日として、それ以外を出勤日とすることになります。
ですので、上の図のように、労働基準法上の連勤の上限は原則12日までということになります。
1週間に最低でも1日の休日が確保されているかどうかをチェックするためには、1週間の起算日がどこなのかが欠かせません。
起算日については、就業規則などで決まっている場合はそれに従います(労働基準法施行規則12条の2第1項)。決まっていない場合は、日曜日が起算日となります(昭和63年1月1日基発第一号)。
(2)4週間につき休日4日以上の場合:連勤は原則48日まで
一方、4週間で4日以上の休日を付与している場合であれば、1週1休でなくても問題ありません(労働基準法35条2項)。
このことを、4週4休などと呼びます。
4週4休の場合、連勤の日数は原則として48日までとなります。
4週4休の場合の起算日についても、就業規則などで決まっている場合はそれに従います(労働基準法施行規則12条の2第2項)。決まっていない場合は日曜日です(昭和63年1月1日基発第一号)。
(3)労働基準法の日数をクリアしていても、長すぎる連勤は問題……
ただし、「1週1休なら12日まで」「4週4休なら48日まで」というのは、あくまでも労働基準法の問題です。
たとえ労働基準法の日数をクリアしていても、連勤が長引けばその分疲労がたまってしまい、思わぬ事故やケガにつながるおそれがあります。
また、連勤がたたって過労になってしまった方は、労災が認定されて給付金を受け取ることができる可能性もあります。
「連勤続きで疲れた……。働きすぎかも?」と思った方は、こちらの記事をご覧ください。
過労による労災申請の方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
労働時間の上限は、原則「1週40時間」「1日8時間」まで
また、働き過ぎを防ぐため、労働基準法では労働時間についても規制しています。
原則として、労働時間は次の2つを両方クリアしている必要があります(労働基準法32条1、2項)。
- 1週40時間まで
- 1日8時間まで
この基準を「法定労働時間」といいます。
先ほどご説明したように、例えば1週1休の会社の場合最低でも週に1日の法定休日が必要です。
その一方、40を8で割ると5となります。
ですので、法定休日とは別に、法定労働時間を守るための休日も1日必要となることが多いです。
1週1休や4週4休で確保されている休日を「法定休日」と呼ぶのに対して、法定労働時間を守るためなどの理由で追加されている休日を「法定外休日」と呼びます。
(1)臨時の場合や「36協定」がある場合、時間外労働や休日労働をさせても適法
使用者は、原則として法定労働時間を超える労働(時間外労働)や、法定休日の労働(休日労働)をさせることはできません。
ただし、次の2つのうち少なくとも1つに当てはまっている場合、会社は労働者に時間外労働や休日労働をさせることができます。
- 災害などの非常事態などが理由で、時間外労働や休日労働が臨時に必要となった場合(同法33条)
- 「36協定」がある場合(同法36条)
多くの会社で残業が発生するのは、36協定があるからです。
ただし、36協定さえあれば無制限に残業をさせてよいというわけではありません。
具体的には、時間外労働の上限が原則として「月45時間・年360時間」と決まっています(労働基準法36条4項)。
36協定について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)休日に研修があった場合、労働時間に含まれる?
労働基準法で規制されている労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことです。
そして、「使用者の指揮命令下」といえるかどうかは、労働契約や就業規則などの定めではなく、労働者の行為を客観的にみることで判断されます(三菱重工長崎造船所事件:最高裁判所第一小法廷判決平成12年3月9日・民集54巻3号801頁)。
参考:最高裁判所第一小法廷判決平成12年3月9日|裁判所 – Courts in Japan
会社からの指示で行ったことについては、基本的に労働時間という扱いになることが多いです。
ですので、例えば会社からの指示で法定休日に研修を受けなければならなかった場合、休日労働をしたという扱いになる可能性が高いです。
時間外労働や休日労働をした場合、割増賃金がもらえる
労働者に時間外労働や休日労働などをさせた場合、使用者は割増賃金を支払う必要があります(労働基準法37条)。
残業代の計算式は、次のようになります。
1時間あたりの賃金(※)×残業時間×割増率
※例えば月給制の場合、1ヶ月の基本給(給与から家族手当や通勤手当などを除いた金額)を1ヶ月の所定労働時間で割ることによって求めます。
基本給について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
割増率は、残業した日が法定休日だったかどうか、深夜帯だったかどうかなどで変わってきます。
それぞれ場合分けしてご説明します。
(1)時間外労働
法定労働時間を超えて労働した場合、「時間外労働」となります。
時間外労働の割増率は、25%以上です(労働基準法37条1項本文、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。
(1-1)時間外労働が1ヶ月60時間を超えると、割増率アップ
1ヶ月間の時間外労働が60時間を超えた場合、60時間を超えた部分の割増率は50%となります。
ただし、一定の条件に当てはまる中小企業は、2023年3月末までは、時間外労働の割増分は、その月の時間外労働の時間が60時間を超えても、25%以上のままとされます。
中小企業を含めた全ての企業につき、2023年4月1日以降は月60時間超の時間外労働について割増率が50%以上となります。
月60時間超の時間外労働の割増率について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(1-2)「法定内残業」の場合、割増は無し
労働契約で決まった労働時間(所定労働時間)が1日7時間の(仮名)Aさんは、ある日に8時間働きました。その週の残りの日の労働時間は、全て1日7時間でした。
この場合、所定労働時間はオーバーしていますが、法定労働時間はクリアしています。
このような残業のことを、法定内残業と呼びます。
法定内残業をした場合、残業代は出るのですが、割増はありません。
ですので、Aさんの1時間あたりの賃金が1000円の場合、法定内残業1時間分の残業代は1000円となります。
(2)休日労働
法定休日に働いた場合、休日労働となります。
休日労働の割増率は、35%以上です(労働基準法37条1項本文、労働基準法第三十七条
第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。
違法な連勤が頻発している場合、休日労働もその分多く発生している可能性があります。
法定外休日に働いた場合、休日労働の割増率は適用されません。
一方、法定外休日の労働時間が法定労働時間をオーバーした場合には時間外労働の割増率になりますし、深夜に及んだ場合には次にご説明する深夜残業の割増率になります。
(3)深夜残業
22時から翌日の5時(※)に働いた場合、深夜残業となります。
深夜残業の割増率は、25%以上です(労働基準法37条4項)。
※例外的に、23~6時までとなるケースもあります。
(4)「時間外労働かつ深夜労働」など、重複すると割増率アップ
例えば、時間外労働が22時以降も続き、翌日の2時に退勤したとします。
このような場合、「22~2時」の4時間は、時間外労働かつ深夜労働だったこととなります。
この4時間分の割増率は、時間外労働の割増率(25%以上)と深夜労働の割増率(25%以上)の合計である「50%以上」となります。
このように、複数の条件に当てはまっている時間帯の割増率は、それぞれの条件の割増率を足すことで求められます。
ここまでにご説明した割増賃金率をまとめると、次の表のとおりです。
違法な連勤や残業代の未払いへの対処法
うちの会社は確か1週1休だったけど、13日以上の連勤がしょっちゅうある!労働基準法違反なんじゃないか?
私の会社の連勤は、労働基準法は一応クリアしてそう。でも、休日出勤も残業も多いのに、その割に残業代が少ない気がする……。
違法に長い連勤が続けば心身ともに疲弊してしまいますし、せっかく残業したのに残業代をきちんと払ってもらえなければ仕事に対するやる気も削がれてしまうのではないでしょうか。
それでは、違法な連勤や残業代の未払いへの対処法についてご説明します。
(1)違法な連勤:労働基準監督署に通報
自身の会社で違法な連勤が起きているのではないかと感じた場合、労働基準監督署に通報や相談をすることができます。
労働基準監督署とは、事業所が労働基準法などの労働基準関係法令をきちんと守っているかを監督し、違反があった場合には指導などを通じて改善を図る機関です。
web打刻のスクリーンショットなど、違法な連勤が起きていることを示す証拠を事前に準備しておくと、相談や通報がスムーズに進む可能性があります。
労働基準監督署について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)残業代の未払い:弁護士に相談
残業代を全くもらえていないのではないか、一応いくらかは支払われているものの少ないのではないか、など残業代の未払いについて気になった方は、残業代請求を取り扱っている弁護士に相談することがおすすめです。
日々の仕事や生活の合間に、自力で残業代の細かな計算をしたり請求先の会社と交渉したりするのは、決して楽なことではありません。また、労働者本人が請求しても、会社側から誠実に対応してもらえないケースもあります。
一方、弁護士がいれば残業代の計算は任せておくことができますし、弁護士がついたというだけで会社が態度を変える場合もあります。
残業代請求について弁護士に相談・依頼するメリットについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
残業代の消滅時効に注意!
残業代請求をしたいと思った場合、消滅時効に注意する必要があります。
残業代の消滅時効期間は、次のとおりです。
- 2020年3月31日までに支払日が来た残業代:2年
- 2020年4月1日以降に支払日が来た残業代:3年(※)
※改正後労働基準法115条では「5年」と定められているのですが、当面の間は経過措置として「3年」となっています。最新の情報にご注意ください。
参考:改正労働基準法等に関するQ&A 5頁|厚生労働省労働基準局
例えば給料が月給制だった場合、未払い残業代を放置していると毎月毎月残業代が時効にかかってしまいます。
残業代は、残業をした方が受け取るべき正当な対価です。
時効にかかってしまう前に、なるべく早めに行動することをおすすめいたします。
【まとめ】連勤が13日以上の場合、労働基準法違反の可能性がある!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 労働基準法によると、連勤の上限は原則として次のようになる。
- 1週1休の会社:12日まで
- 4週4休の会社:48日まで
- 最低限付与すべき「法定休日」だけでなく、働きすぎ防止のために労働時間にも制限がかけられている(法定労働時間)。法定労働時間は基本的に「1週40時間」「1日8時間」。
- 36協定がある場合などは、時間外労働(法定労働時間を超える労働)や休日労働(法定休日の労働)をさせることができる。ただし、時間外労働や休日労働などの残業については、通常の1時間あたりの賃金を割り増しして支払う必要がある。
時間外労働 (法定労働時間を超える労働) | 原則:25%~ |
時間外労働が60時間を超過した場合: 超過した時間については50%~(※一定の中小企業の場合、2023年3月末までは「25%~」) | |
休日労働 (法定休日の労働) | 35%~ |
深夜労働 (原則、22~5時までの労働) | 25%~ |
- 違法な連勤が起きているのではないかと感じた場合には、労働基準監督署に相談することができる。また、残業代がきちんと支払われていないと感じた場合には、残業代請求を扱っている弁護士に相談することがおすすめ。
13日以上の連勤が起きている場合、会社が労働基準法に違反しているおそれがありますので、労働基準監督署に相談することをおすすめします。
また、たとえ労働基準法上は違法でない連勤であっても、連勤が続けば心身ともに疲弊してしまうおそれがあります。ご自身の健康やストレス状況などを、インターネット上の簡易な診断などでチェックし、働きすぎになっていないか確かめてみたりすることも有用です。
さらに、残業代をきちんと支払ってもらえていないと感じた場合には、残業代を取り戻すことができないか確認してみることがおすすめです。
残業代には消滅時効がありますので、気になった方はなるべく早く残業代請求を扱っている弁護士にご相談ください。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2023年4月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。