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契約社員が入るのは国民年金?厚生年金?加入ルールを解説

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kiriu_sakura

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「契約社員として働きたいけど、契約社員って厚生年金には入れないのかな?」
厚生年金に入りたいけれども契約社員は入れないのでは、と考えている方も多いでしょう。

しかし、契約社員だから厚生年金に入れない、ということはありません。
結論としては、契約社員も要件を満たせば厚生年金に加入できます。
厚生年金に加入すれば、国民年金より保障が手厚くなるなどのメリットがあります。

この記事を読んでわかること
  • 国民年金と厚生年金の違い
  • 契約社員も正社員も、厚生年金の加入ルールに違いはないこと
  • 会社が厚生年金に加入させてくれない場合の対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

国民年金と厚生年金の違いとは?

まず、国民年金と厚生年金の違いについて説明します。
簡単に言うと、厚生年金は、国民年金に上乗せされる年金です。

(1)国民年金とは

国民年金とは、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金です。

(2)厚生年金とは

厚生年金とは、会社などに勤務している人が加入する公的年金です。
厚生年金は、全国民が強制的に加入する国民年金に上乗せされています。

日本の公的年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金と、会社などに勤務している人が加入する厚生年金の2階建てになっています。
日本国内に居住する20歳以上60歳未満の人全員が国民年金(1階部分)に加入します。さらに、会社員や公務員など厚生年金の適用事業所で働いている方は厚生年金(2階部分)にも加入します。

厚生年金は、国民年金とは異なり、年齢によって加入期間が定められている訳ではありません。
会社などに雇われて勤務している人が加入するため、例えば、20歳になる前に勤務を開始すれば、その時から厚生年金に加入することになります。また、60歳以降も再雇用等で働き続けるのであれば、厚生年金の加入資格を失いません。原則として70歳になるまで厚生年金に加入することができるとされます。

(3)保険料

国民年金も、厚生年金も保険料を納めることが必要です。

国民年金加入者は、一律に定められた保険料を全額、自己負担で負担します。2023年度(令和5年度)の国民年金保険料は、月額1万6520円です。

参照:国民年金保険料|日本年金機構

厚生年金加入者は、収入(標準報酬月額)に厚生年金保険料率を乗じて算出される保険料を、会社と会社員とで折半(半分ずつ負担する)します。そのため、厚生年金保険料は、一律ではなく収入(標準報酬月額)によって異なります。
2017年度(平成29年度)以降、厚生年金保険料率は18.3%です。

参照:厚生年金保険料額表|日本年金機構

(4)保険料の納付方法

国民年金加入者は、保険料を自分で納付します。
納付方法は、口座振替、納付書での支払い、クレジットカードでの支払いなどがあります。

参照:国民年金保険料|日本年金機構

厚生年金加入者は、給与(月給・賞与等)から保険料が天引きされ、事業主は毎月の給料及び賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分の保険料と併せて、翌月の末日までに納めることになっています。

参照:厚生年金保険料等の納付|日本年金機構

(5)将来もらえる年金額

将来もらえる年金額についてご説明します。
なお、これからご説明する「もらえる年金」とは、一定以上の年齢になるともらい始めることのできる老齢年金のことです。
このほかにも、一定の障害を負ったときの障害年金など、他の種類のもらえる年金もあります。

(5-1)支給開始時期

国民年金も厚生年金も、基本的に被保険者が65歳になった時から老齢年金(所定の年齢に達することにより支給される年金)の支給が開始します(もらえる年齢を一定の範囲で繰り上げたり繰り下げたりすることはできます)。

(5-2)国民年金の受給額

国民年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格に必要な期間が10年以上ある場合に、原則65歳から受け取ることができます。
また、20歳~60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます。
保険料の未納期間は年金額の計算の対象期間にならず、未納期間がある場合、全額納付をした場合と比べてもらえる年金が低額になります(*追納がない場合)。なお、保険料を全額免除された期間の年金額は2分の1(2009年3月分までは3分の1)となります。

2023年度(令和以5年度)の満額の老齢基礎年金は、月額約6万6250円(*68歳以上の老齢基礎年金(満額)は月額6万6050円)です。

(5-3)厚生年金の受給額

厚生年金は、厚生年金の被保険者期間があって、老齢基礎年金(国民年金)を受けるのに必要な受給資格に必要な期間を満たした方が原則65歳になったときに、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受給できます。ただし、当分の間は、60歳以上で下記の条件により受給資格を満たしている方は、65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金を受給できます。

  • 老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たしていること
  • 厚生年金の被保険者期間が1年以上あること

厚生年金の加入者の受給額は、厚生年金加入者は、国民年金に厚生年金(加入時の収入と加入期間によって異なる金額)が上乗せされます。
なお、平均的な受給額(平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金の給付水準)は、2023年度(令和5年度)は、夫婦2人分(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金)で月額約22万4482円です。

参照:令和5年4月分からの年金額等について|日本年金機構

契約社員も、要件を満たせば厚生年金に強制加入となる

以上のとおり、厚生年金は、会社などに勤務している人が対象となります。
そして、社員が厚生年金に加入するかどうかは社員が任意で選択できるものではなく、加入要件を満たせば、会社は社員を加入させなければなりません。
では、契約社員は、どのような場合に厚生年金に強制加入となるのでしょうか。
ここからは、厚生年金加入のルールを説明します。

(1)契約社員も正社員も、厚生年金の加入ルールに違いはない

契約社員だから、厚生年金の加入ルールも正社員と違うルールが適用されるのではないですか?

いいえ、契約社員であっても、正社員と同じルールで厚生年金に加入します。

実は、「正社員」「契約社員」いう言葉は法律用語ではありません。正社員、契約社員に法律上の定義はありません。
一般的には、雇用契約で雇用期間の定めのない社員(無期雇用の社員)を「正社員」と呼ぶことが多く、雇用期間の定めのあるフルタイムで勤務する社員(有期雇用の社員)を「契約社員」と呼ぶことが多いようです。

この正社員と契約社員については、会社の就業規則、給与規定などで賞与や退職金等の待遇に差異を設けている場合が多いです。
しかしながら、労働基準法をはじめとした法律、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険などは、法律上の制度として、「正社員だから」「契約社員だから」といった違いはありません。

法律上の制度は、基本的には、契約社員であっても正社員であっても等しく適用されます!

(2)厚生年金の加入ルールとは?

先ほど説明したとおり、正社員だから、契約社員だから、ということで厚生年金の加入の可否が違うということはありません。
厚生年金の加入条件は事業所、労働者それぞれに加入条件が設定されており、条件を満たしている事業所、労働者は厚生年金への加入が義務付けられます。
では、どのような場合に、厚生年金の加入義務があるのでしょうか。

(2-1)事業所の加入条件

厚生年金保険への加入条件は会社単位ではなく、事業所単位(本社、支社、支店又は工場など)で適用されます(*厚生年金被保険者となるための手続きは事業主である会社が行います)。
そして、厚生年金保険の適用のある事業所を『適用事業所』といいます。

厚生年金に加入しなければいけない事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。

【強制適用事業所】

厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、

ア 農林水産業
イ 飲食業
ウ 旅館・その他の宿泊業
エ クリーニング・理美容・銭湯等のサービス業
オ 映画・娯楽業     など

の場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります(なお、「法律・会計にかかる業務を行う士業の事務所」は、法改正により2022年10月から、常時5人以上の従業員を雇用していれば強制適用事業所とされることになりました)。

これを強制適用事業所といいます。

【任意適用事業所】

強制適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。これを任意適用事業所と言います。

(2-2)会社員(被保険者)の加入条件

厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常時使用される70歳未満の社員は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、一律に厚生年金保険の被保険者となります。
正社員、契約社員といった社員区分は無関係です。
「常時使用される」とは、雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受けるという使用関係が常用的であることをいいます。試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められることとなります。

パートタイマー・アルバイトでも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上の社員も対象です。

また、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、被保険者数が101人以上の企業等(※)で働き、次の5要件を全て満たす方(いわゆる短時間労働者)は、被保険者になります(2023年8月時点)。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  3. 学生でないこと
  4. 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む)
  5. 雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれること
    ※5について、従前は雇用期間が1年以上見込まれることとされていましたが、法改正により2022年10月からは、雇用期間が2ヶ月超えて見込まれることとされ、厚生年金保険の適用対象が拡大されました。

※2024年10月以降は、被保険者数51人以上の企業等に拡大されます。

参照:適用事業所と被保険者|日本年金機構

会社が厚生年金に加入させてくれない!どうすれば良い?

会社が厚生年金に加入させてくれません。どうすればいいでしょうか?

会社に、あらためて厚生年金に加入させてくれるよう、申し入れてみましょう。それでも対応してくれない場合は、年金事務所に相談したり弁護士に依頼するという方法もあります。

そもそも、厚生年金をはじめとする社会保険への加入の手続きを行う義務は事業所、会社にあります。
適用事業所であるにもかかわらず、厚生年金に加入していない場合、会社や事業者は、厚生年金保険法によって、罰則を受けます。
厚生年金保険法102条には「事業主が正当な理由もなく厚生年金に加入しなかった場合、6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金刑」と定められています。

この厚生年金保険法上の罰則は会社や事業主が受けるもので、社員に罰則はありません。

会社が、あなたを厚生年金に加入させる義務があるのに、加入させない場合、まずは、会社に厚生年金に加入手続きを取るように申し入れてみましょう。
会社に申し入れをしても、会社が取り合ってくれない場合は、会社の所在地を管轄する年金事務所に相談・申告することがよいでしょう。

また、社会保険労務士や、労働問題に精通した弁護士に相談するのも解決の糸口となる場合もあります。
あなた一人で交渉したけれども、会社が応じなかったという場合であっても、社会保険労務士や弁護士に依頼するとスムーズに会社が応じてくれるケースもあります。

【まとめ】契約社員も、要件を満たせば厚生年金に加入できる

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入。厚生年金は会社などに勤務している人が加入
  • 契約社員も正社員も、厚生年金の加入ルールに違いはない
  • 会社が厚生年金に加入させてくれない場合は、会社の所在地を管轄する年金事務所に相談・申告したり、弁護士などに相談すると良い

会社が厚生年金に加入させてくれずお困りの方は、まずは会社や事業所を管轄する年金事務所などにご相談ください。

参考:全国の相談・手続き窓口│日本年金機構

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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