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運送業のみなし残業、未払い分の残業代は請求できる?

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長距離トラックの運転手など、運送業界で働いていて、長時間労働を強いられている方は少なくないのではないでしょうか。

仕事が深夜に及ぶことも多く、長時間労働にもなりやすいとなれば、残業時間に見合うだけの適切な残業代(割増賃金)が支払われてしかるべきでしょう。

しかし実際には、適切な残業代が支払われていないケースもみられます。

今回は

  • みなし残業代制度の基礎知識
  • 運送業における残業代未払い問題にみられる特徴
  • 未払い分の残業代を請求する方法

などについて解説していきます。

みなし残業代制とは?基礎知識について解説

まず、「そもそもみなし残業代制とは何か?」という点について、基礎知識を解説していきます。
みなし残業代制の制限や、違法となりうるみなし残業についても解説します。

(1)みなし残業代制の定義

「みなし残業代制」とは、実際に残業をした時間にかかわらず、あらかじめ一定時間の残業をするものと想定して一定の割増賃金を支給する制度のことをいいます。

みなし残業代は「固定残業代」ともいい、「想定される一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金」のことを指しています。
想定される残業代は、実際の労働時間にかかわらず固定給として支払われます。
みなし残業代が相当する残業時間より実際の残業時間が短かったとしても、固定残業代の中から短かった分の差額を会社側に返金したり、次の月の給与から差し引いたりすることは許されません。

みなし残業代制を導入するためには、通常賃金と残業代などの手当が明確に区別されている必要があります。
また、制度の導入に関して、あらかじめ労働者と会社の間で合意が成立していることも必要です。

(2)残業(時間外労働)時間には上限がある

2020年4月の労働基準法改正により、時間外労働の上限時間に関する定めが法律として規定されることになりました。

これにより、時間外労働の上限時間は、原則として月45時間、年360時間となっています(労働基準法第36条4項)。
特別条項付きの36協定(労働基準法36条に基づいて結ばれた労使間の協定)の締結により、それを超えて働かせることは可能となりますが、特別条項にも上限時間が設定されることになりました(労働基準法第36条5項、6項)。

労働基準法改正以前は、36協定の締結にあたって特別条項を入れておけば、厚生労働省の告示による時間外労働の上限を上回るものであっても、その告示に強行的な効力がないとされていました。
そのため、上限規制に違反しても行政指導がなされるに過ぎず、制限がないに等しい状態でした。

しかし、現在は、特別条項を締結した場合にも、労働基準法がその上限を設定し、これに違反したときには罰則の対象となるとされました。

みなし残業代制を導入している場合においても、固定残業代に相当する労働時間を超えて労働すれば、その超えた部分は新たな時間外労働と扱われます。そのため、その超えた部分にも上限規制のルールが適用されるとともに別途残業代(割増賃金)が発生することになります。

参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

36協定をわかりやすく解説!締結における時間外労働の上限は何時間?

(3)みなし残業代として認められないケース

会社がみなし残業代(固定残業代)を支払ったと主張しても、みなし残業代とは認められないケースもあります。

例えば、次のようなケースです。

  • 給与のうちみなし残業代がいくらなのかが明示されていなかった事例
  • みなし残業代が最低賃金を下回っている事例

みなし残業代の支払いとは認められない場合、次のとおり、労働者には多くの未払い残業代が発生しやすくなります。

残業代は、次の式で計算できます。

この基礎賃金は、定時の労働時間に対する給料から、通勤手当・賞与など、一定の要件を満たす金員を除いて算出されますが、みなし残業代も控除すべき金員にあたります。

そして、残業代のうち、未払いの残業代は、
未払い残業代=A ー すでに払われたみなし残業代 ー その他払われた残業代
で算出されます。

みなし残業代の支払いとして認められないとなると、基礎賃金からみなし残業代相当額を控除せずに済みます(みなし残業代を控除する場合よりも、基礎賃金が増えます)。
さらに、未払い残業代からみなし残業代相当額を控除せずに済むため、労働者には、多くの未払い残業代が発生しやすくなるのです。


詳しくはこちらの記事もご確認ください。

固定残業代とは?みなし残業の違法性や残業代の請求方法も解説!

(4)みなし残業代の相当する残業時間を超過した場合の定めが必要

「みなし残業代の相当する残業時間を超過した場合には、別途超過部分について残業代を支払う」旨の合意又は取り扱いが存在することも、みなし残業代制が有効となるための要件であると判示した判例もあります。

それによれば、「基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区別されて合意がされていること」「労働基準法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されていること」という2つの要件をみたす場合にのみ、当該みなし残業代制は有効となるとされています。

しかし、現在の最高裁判例は、別途超過部分について残業代を支払う旨の合意又は取り扱いが存在すること自体は有効性を認める際の要件とはしていないと考えられております。


何故なら、みなし残業代の相当する残業時間を超過して残業に従事したときに、別途超過部分の残業代を支給しなければならないことは(精算しなければならないことは)、労働基準法上当然のことであり、これを独立の有効要件とする必要がないからです。

もっとも、実際の運用として、みなし残業代の相当する残業時間を大幅に超える残業に従事している労働者が殆どであるにもかかわらず、別途超過部分の残業代の支給が全く行われていないということですと、適正な残業代の支払いを潜脱する手段として(※)、みなし残業代の制度を利用しているに過ぎず、無効と考える余地はあります。

※みなし残業代を支払っているのだから、別途残業代の支払いは一切必要ないなどと言って、適正な超過部分の支払いを免れるのは、労基法37条を潜脱するものといえます。

参考:最高裁第一小法廷判決昭和63年7月14日・労判523号6頁

運送業に残業問題が多くなる理由

トラックドライバーなどの運送業にたずさわる労働者には、残業代の問題が発生しやすいと言われています。

その理由について解説していきます。

(1)荷待ちや渋滞など、労働時間に含まれるか不明確な時間がある

労働時間に含まれるかどうかの判断は、判例により「労働者が使用者の指揮命令下にある状態に置かれた時間であるか否か」が基準とされています。

トラックドライバーに関していえば、荷待ちの時間は、国土交通省による労働時間のルール「改善基準告示」にて、拘束時間(労働時間)に含まれると明示されています。

また渋滞中の時間についても、使用者の指揮命令下で働いている時間に該当することから、労働時間に含まれるとされる可能性が高いでしょう。

しかし、実際には、これらの荷待ち時間や渋滞などの時間を労働時間に含めない運送会社も少なくありません。

そのため運送業界では、未払い残業代が発生しやすくなっています。

(2)歩合制が採用されている場合の勘違い

歩合制が採用されている会社の場合、残業代が歩合給に含まれていると勘違いされ、残業代が支払われないケースがあります。

雇用契約を結んでいる場合は、完全歩合制は違法とされており、会社側は労働者に対して一定額の固定給(少なくとも最低賃金)を支払う必要があります。

参考:トラック運送業の現状等について|国土交通省

トラックドライバーや運送業で働く人が残業代を請求する方法

みなし残業代が相当する時間より長く残業した場合や、みなし残業代と認められないケースでは、未払いの残業代を請求できることがあります。
ここでは、その方法について解説していきます。

(1)実際の残業時間に関する証拠を集める

実際の残業時間に関する証拠としては、タイムカード、タコグラフのデータ、運転日報、ドライブレコーダーの記録などが有効なものになります。

ほとんどの記録物は会社に提出してしまうため、提出前にコピーを取っておくなどの準備をしておいた方がよいでしょう。

また、自分で日記やメモなどに正確かつ詳細に記録しておくと、その日記やメモが証拠として認められる場合もあります。

(2)未払いの残業代を計算する

まず、雇用契約書や給与明細、就業規則などの証拠をもとに、1時間あたりの賃金を算出します。
ここでは、雇用契約書や就業規則と実際の労働時間とを照らし合わせて、残業代の未払いがあるかどうかを計算することになります。

歩合制の場合などは特に計算が複雑になるため、弁護士に相談することをおすすめします。

(3)残業代請求には時効がある

残業代請求権には時効があります。

民法改正の影響によって、残業代請求権の時効期間は、以下の2種類があると規定されています。

  1. 支払日が2020年3月31日までの残業代の時効は2年
  2. 支払日が2020年4月1日以降の残業代の時効は当面は3年

    これらの期間を過ぎてしまうと、原則として残業代をもらえなくなってしまいますので注意しましょう。

実際に未払い残業代が支払われた事例

具体例として、弁護士の介入で会社から未払い残業代を獲得した事例を2件紹介します。

(1)会社はみなし残業を主張したが、根拠もなく150万円を獲得

このケースでは、労働者は5年間にわたり勤務をしていながら、支払われていたのは基本給のみで、残業代が一切支払われていませんでした。

ここでは、1日の作業内容を記載した作業報告書が、残業をしていたことを証明する明確な証拠となりました。

会社側は、20時間分のみなし残業代が基本給に含まれていると主張しましたが、みなし残業代についての根拠となる資料等は存在しませんでした。

そうした状況であったため、弁護士による粘り強い交渉の末に、労働者側は有利な条件を引き出すことができ、当初に会社側が提示した額を大きく上回る150万円を会社が労働者に支払うことで和解が成立しました。

(2)運転日報をもとに未払い残業代を請求し、解決金160万円を獲得

この事例での労働者の方は、トラックドライバーとして運送会社に勤務していましたが、残業代が支払われたことがありませんでした。

それに加えて、本来は労働時間とすべき荷降ろしの時間について、日報には「休憩」と書くよう指示されており、このような職場環境に疑問を感じて退職を決意するに至ります。

そこでこの方は。退職するまでの間に運転日報をコピーして保管していました。

この運転日報という証拠に基づき、弁護士を通して会社へ未払い残業代を請求したところ、書類送付からわずか1週間で解決金160万円が支払われ、和解が成立しました。

【まとめ】運送業は未払い残業代が発生していることが多い

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 「みなし残業代制」とは、実際に残業をしたかどうかにかかわらず、一定時間の残業をした場合に相当する固定残業代があらかじめ支払われる制度をいう。みなし残業代に相当する労働時間を超えて労働すれば、時間外労働として別途残業代が支払われ、通常どおり時間外労働の上限規制の適用を受ける。
  • 運送業者のトラックドライバーなどは、荷待ちや渋滞を労働時間に含めるかどうかの取扱いや、歩合制との関係で、適正な残業代が支払われないケースが多い。
  • 残業代が未払いであるとして会社に請求を行う場合には、より周到な準備をしておくことが必要となる。

未払い残業代がありそうなときは、アディーレ法律事務所に相談されることをおすすめします。

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