お電話では土日祝日も休まず朝9時~夜10時まで(Webでは24時間対応)法律相談のご予約を受付けています。 万全な管理体制でプライバシーを厳守していますので、安心してお問い合わせください。

健康保険における被扶養者とは?認定の基準や虚偽申請による罰則について解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

「健康保険の被扶養者とは、何のことだろう」

健康保険に加入すると、「被扶養者を誰にするか」という問題に直面することがあります。
実は、誰を被扶養者にできるかについては、ルールがあります。

被保険者の収入によって生活している家族のうち、一定の条件を満たした者について、健康保険における被扶養者とすることができます。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 健康保険における被扶養者とは何か
  • 被扶養者として認定される基準
  • 虚偽の申請による罰則
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

健康保険における被扶養者とは

被保険者の収入によって生活している家族は、一定の条件を満たせば、申請することで被扶養者の認定を受けることができます。
被扶養者の認定を受けると、被扶養者がケガや病気、出産、死亡をした際に、自身で保険料を払うことなく被保険者と同様の給付を受けることが可能です。

なお、介護保険では、健康保険のような被扶養者の制度はなく、加入者は全員、被保険者となります。

また、健康保険における「被扶養者」は、所得税法上の「扶養親族」や、企業の扶養手当でいう「扶養家族」とは、一致しないことがありますので、注意が必要です。

被扶養者として認定される基準

被扶養者は、被保険者の家族であれば誰でも認定されるわけではなく、原則として、健康保険法3条7項などで定められた次の条件を満たす必要があります。

  • 被扶養者となろうとしている方が、日本国内に住所があること
  • 被扶養者となろうとしている方が、一定の条件を満たす親族の範囲であること
  • 被保険者にしようとしている方以外に優先扶養義務者がいないこと
  • 被扶養者となろうとしている方が一定の収入基準を満たすこと
  • 被保険者に継続的な扶養能力があること

これらの条件について、詳しく解説いたします。

(1)日本国内に住所があること

これまでは、海外在住者であっても被扶養者となることができましたが、健康保険法改正により、2020年4月1日からは、被扶養者が「国内に住民票を有している人」(日本国内に住所がある人)に限定されます。

参考:【事業主の皆様へ】被扶養者における国内居住要件の追加について|日本年金機構

(2)被扶養者となる親族の範囲にあること

被扶養者の範囲には、被保険者と同居していることが条件となる場合と、条件にならない場合の2通りがあります。

1.同居が必要ないパターン
次の方は、同居していなくとも、主に被保険者の収入で生活していれば被扶養者となります。

  • 配偶者(内縁も可)
  • 兄弟姉妹
  • 父母等の直系尊属(※)

※直系尊属とは、父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母など、自分の直接の祖先にあたる方のことを指します。

2.同居している必要があるパターン
次の方が被扶養者となるためには、被保険者と同一の世帯(※)で主として被保険者の収入により生活をしていることが必要です。
※同一世帯とは、被保険者と被扶養者が、住居も家計も一緒であることをいいます。

  • (1)以外の三親等内の親族
  • 内縁の配偶者の父母・連れ子
  • 内縁の配偶者死亡後のその父母・連れ子

参考:被扶養者とは?|全国健康保険協会

なお、75歳以上など、後期高齢者医療制度の対象となる方は、被扶養者にはなることはできません。

(3)被保険者になろうとしている方以外に優先扶養義務者がいないこと

一人の被扶養者に対し、複数の被保険者となることができる立場の親族がいる場合は、優先的に被保険者となるべき方(優先扶養義務者)が被保険者となるのが原則です。

例えば、既婚者であればその配偶者、子であれば親が優先扶養義務者になるのが通常です。

ただし、優先扶養義務者に扶養する能力がなく(収入がないなど)、被保険者となろうとする方が扶養せざるを得ない場合は、その方を被保険者とすることが可能です。

(4)被扶養者の収入が一定額を超えると被扶養者として認められない

被扶養者となるためには、原則として以下の1、2の収入基準をいずれも満たす必要があります(昭和52年4月6日付厚生省(現厚生労働省)保険局長の通達)。

1.収入限度額
被扶養者となろうとしている方の収入は、年間130万円(60歳以上または障害者の場合は180万円)未満であることが必要です。
この年間の収入限度額を月額に換算すると(年額÷12、小数点未満切り捨て)、次のようになります。
年130万円→月10万8333円未満
年180万円(60歳以上または障害者)→月15万円

2.生計維持関係
生計維持関係とは、被保険者が、被扶養者となろうとしている方の生計を維持している事実があることを指します。
被保険者と被扶養者となろうとする方が同一世帯であるかどうかによって、生計維持関係があると認められるための要件が異なります。

【同一世帯の場合】
被扶養者となろうとしている方の収入が、
・被保険者の年間収入の2分の1未満であること
あるいは、
・被扶養者になろうとしている方の収入が、被保険者の年間収入を上回らない場合は、被保険者がその世帯の生計を主に維持していると認められること

【同一世帯でない場合】
被扶養者の収入よりも、被保険者からの援助による収入の方が多いこと
ただし、上記の基準により被扶養者の認定を行うと、実態と著しくかけ離れたり、社会通念上妥当性を欠くことになる場合は、上記基準ではなく、個別事情に照らし、保険者が最も妥当と認められる方法で被扶養者の認定が行われます。

参考:収入がある者についての被扶養者の認定について|厚生労働省

【2023年10月より、「130万円の壁」が緩和される?】

上記とおり、保険料の負担を避けるために、パート労働者などが就業する時間をあえて減らし、収入を調整するといったことが行われていました。

そこで、人手不足への対応として、繁忙期に労働時間が増加し、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定を受けることが可能になりました。

ただし、一時的な収入変動に対応するものなので、無期限に緩和が認められるわけではありません。

参考:「年収の壁」への当面の対応策|厚生労働省

(5)被保険者に継続的な扶養能力があること

被保険者には、継続的に被扶養者を養う「継続的な扶養能力」が必要です。
「被保険者の生活費」と「人事院が統計を取っている標準生活費」を比較して扶養能力を判定します。

また、共働き家庭における子どもについては、原則的に前年度の年間収入の多い方の扶養とされます。
複数の子どもがいる場合、例えば兄は父、弟は母というように、分けて扶養することは認められていません。
そのため、収入の多いほうが、まとめて扶養する必要があります。

虚偽の申請による罰則

本当は扶養の実態がない家族を被扶養者として申請したら、何か罰則はあるのでしょうか?

虚偽の申請をすると、受け取った給付金をさかのぼって返さなければならないこともあります。
虚偽の申請はしないようにしましょう。

もし、扶養の実態がない家族を被扶養者として申請して、被扶養者の認定を受けたことが判明した場合には罰則規定があります(健康保険法58条)。
この場合、被扶養者の資格は遡って取り消され、当該期間にわたって支払われた給付金を過去に遡及して返還しなくてはならないことがあります。

次のような場合には、被扶養者の認定条件から外れて、被扶養者としての資格を失うことがあります。
次のような場合にあてはまるときは、すみやかに保険者(加入している健康保険組合)に連絡し、資格喪失の手続きをしましょう。

  • 被扶養者の収入が増えて、原則年収130万円(月額平均10万8334円)を超えると見込まれるようになった
  • 被扶養者(被保険者の子どもなど)が結婚した
  • 被扶養者が就職して就職先の健康保険に加入した
  • 被扶養者(親・配偶者など)が75歳になった
  • 被扶養者(配偶者)と離婚した
  • 被扶養者への仕送りをやめた・仕送り額が減った

被扶養者のままでいるつもりだったのに、うっかり年収130万円を超えてしまいました。
すぐに扶養認定を取り消されてしまうのですか?

すぐに扶養認定を取り消されるとは限りません。
扶養に関する最終的な判断は保険者(加入している健康保険組合)によりますが、一時的な増加であればその年の扶養認定は取り消されない可能性があります。

これは、厚生労働省が各保険者に対して、昇給・恒久的な勤務時間増加を伴わない一時的な事情により過去1年の収入が上昇して130万円以上となった場合に、原則として被扶養者認定を遡って取り消さないよう、通達を出していることによります。

これに対して、転職や昇給をしたり、所定労働時間が増えたことが原因で年収130万円を超えた場合には、被扶養者の認定が取り消される可能性があります。

参考:被扶養者の収入の確認における留意点について(令和2年4月10日)|厚生労働省

【まとめ】被扶養者とは被保険者の収入で生活している家族のうち一定の条件を満たした者

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 被保険者の収入によって生活している家族は、一定の条件を満たせば、被扶養者の認定を受けることができる。
  • 被扶養者として認定される基準には、被扶養者となろうとしている方が一定の収入基準を満たすことなどがある。
  • 扶養の実態がない家族を被扶養者として申請し、被扶養者の認定を受けた場合には、支払われた給付金を遡って返還しなければならないなどの罰則がある。

被扶養者となることのできる家族がいる場合には、被扶養者とすることで健康保険料を支払わなくても済ませることができるなどのメリットがあります。
健康保険料を支払わなくても給付を受けることができれば、得られるメリットは大きいですよね。

養っている家族がいる場合には、被扶養者にできるかどうか、確認してみましょう。

被扶養者など、健康保険についてお困りの方は、全国健康保険協会などの相談窓口に相談してみるようにしましょう。

参考:都道府県支部|全国健康保険協会

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

残業代請求・退職代行に関するご相談は何度でも無料

朝9時〜夜10時
土日祝OK
まずは電話で無料相談 0120-610-241
メールでお問い合わせ
ご来所不要

お電話やオンラインでの法律相談を実施しています