突然の解雇通告。
頭の中が真っ白になり、不安と焦りが押し寄せてくるかもしれません。
「すぐに転職できるだろうか」「未払い給料はどうなる」「生活をどうしよう」
しかし、どうか冷静になってください。
解雇にも法律で定められたルールがあり、まずその解雇が有効かどうか判断する必要があります。
解雇の理由に、客観的合理性・社会的相当性がない場合には、解雇権濫用として解雇は無効です。
この記事で解雇ルールの基本を解説しますので、その解雇が有効かどうか判断したうえで、次の一手を検討するようにしましょう。
この記事を読んでわかること
- 解雇とは何か
- 解雇の種類
- 解雇が有効となる条件
- 解雇が制限される場合
- 解雇予告と解雇予告手当
- 不当解雇への対処法
ここを押さえればOK!
解雇の種類には、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇があり、それぞれ解雇が有効となる条件は異なります。
普通解雇は、能力不足や勤務態度の問題などを理由とし、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
整理解雇は、経営上の理由による人員削減で、4つの要素(人員削減の必要性、解雇回避努力、被解雇者選定の合理性、手続きの相当性)を総合的に考慮して判断されます。
懲戒解雇は、規律違反等に対する罰としての解雇で、就業規則への明記や社会通念上の相当性が求められます。
また、労働基準法や育児・介護休業法などにより、特定の期間や状況下での解雇は制限されています。
解雇する際には、30日前の予告または解雇予告手当の支払いが必要です。
解雇されて不当解雇だと感じるときは、解雇理由証明書の請求、弁護士への相談、会社との交渉という3つのステップで対処することが推奨されます。不当解雇の場合、職場復帰や未払い給料の支払い、金銭解決などを求めて交渉することができますので、一度弁護士にご相談ください。
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中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
解雇の定義:退職勧奨との違いを理解する
解雇と、解雇と間違われやすい退職勧奨の違いについて説明します。
(1)解雇とは
解雇とは、使用者(会社)が一方的に従業員との雇用契約を終了させる行為です。
しかし、会社は自由に従業員を解雇できません。
解雇は、労働契約法第16条に基づき、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります。
(2)退職勧奨との違い
退職勧奨は労働者の同意を得て退職を促す行為であり、解雇とは法的性質が大きく異なります。
労働者が退職勧奨に応じる代わりに、割増退職金を支給したり、転職支援をしたりする会社もあります。
退職勧奨を受けても、退職したくなければ同意しないようにしましょう。
解雇の3つの種類:普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の特徴
解雇には、大きく普通解雇、整理解雇、懲戒解雇の3種類があり、解雇が有効になる条件もそれぞれ異なります。
解雇の種類別に、有効となる条件を説明します。
(1)普通解雇が有効になる条件
普通解雇は、労働者の能力不足や勤務態度の問題などを理由とする解雇です。
普通解雇が有効となる条件は以下の通りです。
- 客観的に合理的な理由が必要(労働契約法16条)
- 社会通念上相当と認められる必要がある
また、解雇するとしても、30日前の予告または30日分の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です(労働基準法20条)。
例えば、度重なる遅刻や無断欠勤、業務上の指示に従わない、能力不足で業務遂行が困難など能力を理由として解雇する場合には、普通解雇として有効かどうかが問題となります。
ただし、改善の機会を与えずに即座に解雇することは難しく、段階的な教育や指導が必要とされます。
能力不足を理由に解雇するためには、その能力不足の程度が、企業の経営・運営への支障や、重大な損害を発生させるなど、企業から排除すべき状態にまで達することが必要とした事例もあります(エース損害保険事件(東京地裁決定平成13年8月10日))。
(2)整理解雇が有効になる条件
整理解雇は、会社の経営上の理由による人員削減を目的とした解雇です。
整理解雇は、労働者側の事情ではない、という点に特徴があり、整理解雇は、普通解雇の中でも厳しく制限されています。
裁判例上、次の4つの要素を総合的に考慮して、整理解雇が無効となるか判断されます。
(2ー1)人員削減の必要性
経営不振など、企業が経営する上で人員削減の必要性が高いことが必要です。
(2ー2)解雇回避努力
配転、出向、希望退職の募集など、可能な限り解雇以外の手段を試み、解雇を回避するための努力をしていることが必要です。
例えば、希望退職を募集したもの、社長の報酬は高額のまま維持し、整理解雇された者には少額の退職金しか提供されなかった事案においては、解雇回避努力が足りないとして、整理解雇を無効とした裁判例があります(日本通信事件(東京地裁判決平成24年2月29日労判1048号45頁))。
(2ー3)被解雇者選定の合理性
整理解雇の対象者が、客観的で合理的な基準により、公正に選ばれていることが必要です。
例えば、「欠勤、遅刻などの勤務態度や、勤続年数など」を基準に整理解雇している場合、客観的で合理的な基準とされる可能性があるでしょう。
客観的で合理的な基準を設けていない整理解雇の場合、裁判例上、無効と判断される傾向にあります。
(2ー4)手続きの相当性
解雇の対象者や組合に、人選の基準や当否につき十分に説明し、協議していることが必要です。
(3)懲戒解雇が有効となる条件
「懲戒解雇」は、規律違反等に対する罰としての解雇です。
懲戒解雇となると、退職金の全部または一部が払われない場合もあり、普通解雇よりも、労働者に重大な不利益をもたらします。そのため、裁判例上、懲戒解雇には、普通解雇よりも厳しい制限があり、少なくとも次のいずれの条件も満たさないと、懲戒解雇が無効となる傾向にあります。
- 就業規則に懲戒解雇の事由・程度が明記されていること
- 問題となった労働者の行為が、就業規則上の懲戒解雇の事由に該当すること
- 懲戒解雇が社会通念上相当であること
社会通念上相当と言えるためには、通常、少なくとも次の事項を満たしている必要があります。
- 問題となった労働者の行為や勤務歴などに比べて、懲戒解雇という処分が重すぎないこと
- 同じ問題行為を取った過去の労働者に対する処分に比べて、公平性を害しないこと
- 就業規則などに定められた懲戒解雇の手続きをきちんと守っていること
- 懲戒解雇について、本人に弁明の機会を与えていること
労働基準法による解雇制限:法律で保護される労働者の権利
労働基準法は、特定の期間や状況下での解雇を禁止しています。
これは労働者の権利を保護し、不当な解雇から守るためです。
ここでは主な解雇制限について、説明します。
(1)業務上のケガや病気を理由とする解雇制限
「労働者が、業務上のケガや病気の療養のために休業する期間」+「その後の30日間」は、原則として、解雇することができません(労働基準法19条1項)。
また「休業」には、一週間に一日ほどの割合で欠勤しつつ就業するなどの一部休業も含むとした事案があります(大阪築港運輸事件(大阪地裁決定平成2年8月31日))。
このように原則として休業明けから30日経過するまでは解雇できません。
ただし、療養開始後3年を経過しても怪我が病気が治らず、打切補償を支払った場合などや、天災などで事業継続が困難になった場合には、休業中でも解雇が可能です。
(2)育児・介護休業法による解雇の制限
育児・介護休業法とは、育児や介護をおこなう労働者が、育児や介護のための休業を取りやすくすることなどを目的とした法律です。
この育児・介護休業法は、労働者が、次のことを申し出たり、利用したりすることを理由とする解雇を禁止しています。
- 育児・介護休業
- 子の看護休業
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 所定労働時間の短縮など
(3)パワハラ・セクハラの相談をしたことを理由とする解雇の禁止
労働施策総合推進法は、労働者がパワハラに関し、事業主に相談をしたことを理由とする解雇を禁止しています(労働施策総合推進法30条の2第2項)。
セクハラに関しても、事業主に相談したこと等を理由とする解雇は禁止されています(男女雇用機会均等法11条2項)。
(4)公益通報者保護法による解雇の禁止
公益通報者保護法は、公益通報者の保護などを図ることを目的とした法律です。
この公益通報者保護法は、労働者が一定の公益通報をしたことを理由とする解雇を禁止しています(公益通報者保護法3条)。
解雇予告と解雇予告手当

労働基準法は、使用者に対して解雇予告または解雇予告手当の支払いを義務付けています。これは労働者の生活の安定を図り、新たな職を探す時間的・経済的余裕を与えるためです。
(1)30日前の解雇予告義務
会社は、従業員を解雇する場合、少なくとも30日前に予告しなければなりません(労働基準法20条1項)。
主なポイント:
- 予告は口頭でも有効ですが、トラブル防止のため書面で行うことが望ましい
- 予告期間は暦日で計算し、初日は算入しない
- 予告期間中も通常通りの労働条件が適用される
例外:
- 天災その他やむを得ない事由で事業が継続できなかったとき
- 労働者の責に帰すべき事由により解雇するとき
(2)解雇予告手当
解雇予告手当は、30日分の平均賃金に相当する金額です。
予告期間を設けずに即時解雇する場合や、予告期間が30日に満たない場合に支払う必要があります。
ルール通り解雇予告を行い、解雇予告手当を支払っても、解雇自体が不当として無効となる可能性があります。
解雇された場合の対処法
解雇されたけれども、「解雇理由がよくわからない」「解雇は不当だと思う」など疑問に思う場合には、不当解雇として争えるかどうか確認しましょう。
ここでは、解雇された場合の対処法を3ステップで説明します。
(1)ステップ1|解雇理由証明書の請求
労働者が「解雇理由証明書」を請求すると、会社側は遅滞なく交付する義務があります(労働基準法第22条2項)。
この解雇理由証明書には、解雇理由について、就業規則のどの条項に該当したのか、該当するに至った事実関係など具体的に記載しなければなりません。
例)「度重なる遅刻と無断欠勤により、就業規則第○条に基づき解雇といたします。」
解雇理由が不当な場合は、不当解雇として争うことができますので、解雇理由証明書の交付を受けておきましょう。
(2)ステップ2|弁護士へ相談
解雇した会社と直接不当解雇について交渉するのは、ストレスや時間がかかりますし労力も必要です。
また、従来使用者・労働者という力関係にあったことから、自分の意見を伝えて毅然と対等の立場で交渉するのは、難しいこともあるでしょう。
そのため、不当解雇についての問題は、弁護士への相談をおすすめします。
その際には、解雇理由証明書や雇用契約書などの資料、事実関係を時系列でまとめたメモなどを準備しておくと、相談もスムーズに進むでしょう。
不当解雇として争えるかどうか、弁護士から法的見解を聞くことができます。
(3)ステップ3|会社との交渉
不当解雇として争えるのであれば、会社側と、職場への復帰や未払い給料の支払い、合意退職による金銭解決などを求めて交渉することになります。
弁護士に依頼すれば、具体的に次のような面でサポートを受けることができるでしょう。
- 法的アドバイス
- 解雇の有効性の判断
- 取るべき対応の提案
- 証拠収集のサポート
- 必要な書類や証拠の特定と収集方法の指導
- 会社との交渉
- 解雇撤回
- 解雇中の未払い給料の請求
- 合意退職による金銭解決の道を探る
- 各種手続きを行う
- 労働審判の申立て(労働者の地位確認、未払い給料請求)
- 訴訟の提起(訴状や書面を作成・提出)
- 裁判所でも代理人として活動
- 法廷での主張立証
- 和解交渉
会社側も、最終的に訴訟で争って解雇が無効とされれば、労働者が働いていなくてもその期間の未払い給料を支払わなければなりません。
問題の早期解決は、労働者側にも会社側にもメリットがあります。
【まとめ】解雇されてもあきらめないで|不当解雇なら職場復帰や未払い給料を求めることができます
解雇は自由に行えず、様々な法律上の制限があります。
解雇が不当だと感じたら、解雇理由証明書を請求したうえで弁護士に相談しましょう。
労働者としての地位が解雇として不当に奪われたら、その地位を守るために、ぜひ勇気をもって一歩踏み出してください。
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