離婚手続はどのように進めるとよい?種類ごとに解説

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    作成日

    2023/09/08

  • 更新日

    更新日

    2023/09/14

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目次

離婚手続はどのように進めるとよい?種類ごとに解説
日本では、夫婦が離婚に同意し、必要事項を記入した離婚届を役場に提出すれば離婚でき、離婚する夫婦の約9割の夫婦がこの方法で離婚しています。

法律上、裁判手続による離婚が必須であったり、事情によっては離婚前に一定の別居期間が必須であったりする国もあるため、それに比べると、日本は夫婦が同意すれば非常に簡単に離婚することができます。

しかしながら、離婚の話合いがうまくいかないと、離婚するために裁判上の手続を経る必要があります。
離婚の手続は、どのように離婚するか(話合いによるのか、裁判上の手続を利用するのか)によって異なります。

今回の記事では、離婚手続について、離婚の種類別に詳しく解説しますので、離婚を検討している方は参考にしてみてください。

離婚には大きく分けて4種類の方法がある

離婚の種類には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つがあります。
それぞれの特徴を解説していきます。

(1)協議離婚

協議離婚は、夫婦間で話合いをして合意することで離婚する方法です。離婚理由は問いません。
必要事項を記入した離婚届を市区町村役場に提出後、離婚が成立します。

(2)調停離婚

夫婦間で離婚の話合いをしたけれど、お互いの意見が異なり話合いがなかなか進まない場合や、話合い自体に応じてもらえない場合には、協議離婚は困難です。

そのような場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることで、調停の場で離婚や離婚条件について話し合うことができます。調停で離婚を成立させることを、「調停離婚」といいます。

調停委員2名と裁判官が夫婦から意見を聞き、離婚や夫婦関係修復の調整が可能か話し合っていきます。
話合いといっても、当事者が顔を合わせて直接話合うことはありません。
夫婦が待機する待合室も別々ですし、調停委員と話をするときも別々です。

これは、調停離婚を申し立てる夫婦にはさまざまな事情があるため、夫婦が緊張することなく、それぞれの事情を裁判所に話せるように配慮したものです。

調停離婚では、1ヵ月に1回ほど裁判所に出向きます。
結論が出るまで4ヵ月程度かかることが多いですが、事案によっては1年程度かかることもあります。

調停で離婚の合意ができると、調停は成立し、調停調書が作成されます。
調停の成立で離婚は成立しますが、役所に対して離婚が成立したことを報告しなければなりません。
通常は調停を申し立てた者が、調停成立から10日以内に、役所に調停調書(謄本)と離婚届を持参して、離婚を報告します。

(3)審判離婚

「審判離婚」とは、調停が成立しなかった場合に、家庭裁判所の判断で離婚を認容する審判を下すという方法です。

審判に納得できない場合、当事者が審判の告知を受けた日から2週間の間は、書面で異議を申し立てることができ、異議申立てがなされると審判離婚の効力はなくなります。
異議申立てがなされずに2週間経過すると、審判は確定します。

異議申立てが可能であることから、審判離婚はあまり利用されていません。
離婚自体には同意しているが離婚条件にわずかな意見の違いがあり、当事者が審判に委ねることに合意している場合や、離婚・離婚条件に争いがないが当事者の一方がどうしても出廷できない場合などに、限定的に利用されているようです。

(4)裁判離婚

調停離婚で離婚が成立しなかった場合、離婚訴訟を提起し、裁判にて離婚の判決を求めていくことになります。これを「裁判離婚」といいます。

夫婦仲が極めて悪く、調停で話合いが成立しないことが見込まれても、調停をすることなく訴訟を提起することはできません。これを、「調停前置主義」」といいます。

夫婦間の問題については、裁判所が公の場で強権的に関与する前に、まずは当事者同士の話合いで解決することが望ましいと考えられているためです。

裁判離婚では、民法第770条1項各号に定められた離婚原因(不貞行為など)が必要になるため、離婚を求める側は、離婚原因が存在することを主張し証拠をもって証明する必要があります。

裁判離婚のなかでも、離婚にはいくつか種類があります。

相手方(被告)が、期日において離婚の請求を認めたとき(認諾離婚)や、当事者双方が離婚するとの和解をしたとき(和解離婚)、離婚が成立します。

和解が成立しない場合、裁判所が離婚する旨の判決を下して確定すると、離婚が成立します(判決離婚)。
判決確定後10日以内に、離婚届・判決謄本・確定証明書を提出して、役所に対して離婚を報告しなければなりません。

なお、訴訟手続中に当事者同士で話し合って協議離婚が成立するケースもあります。その場合には、訴えを取り下げることになります。

裁判離婚が認められる法定離婚事由とは

裁判離婚が認められるために必要る法定離婚事由は、次の5つです。
  • 不貞行為(自由意思により配偶者以外と異性と性交渉をもつこと)
  • 悪意の遺棄(正当な理由なく夫婦の義務である同居、協力、扶助の義務をはたさないこと)
  • 3年以上の生死不明
  • 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由(DVやアルコール依存症、異常な性癖、宗教への傾倒、懲役刑となり刑務所に収監されるなど1~4にあてはまらない理由により夫婦関係が破綻すること)
詳しくは、離婚に必要な5つの理由でも解説していますので、参考にしてみてください。

「離婚したい」と思ってから実際に離婚するまでの順序や手続

離婚したいと思ってから実際に離婚するまでの順序や手続を、離婚の種類別に解説します。

(1)協議離婚の手続

協議離婚の場合、まずは次のような点に注意しながら準備をして、話合いをします。
  • 未成年の子どもがいる場合、親権者を定めなければ離婚できませんので、親権者をどちらにするか、子どもの利益を考慮して話し合います。
  • 財産分与、慰謝料、養育費、面会交流などの離婚条件について、自分の希望を伝えながら、相手の意見も聞いて話し合います。
離婚の話合いは難しいと感じるかもしれません。しかし、厚生労働省の統計によると、2021年の離婚総数は18万4,384件で、うち15万9,241件が協議離婚で離婚しています。つまり、約86%が協議離婚で離婚しているということです。
ほとんどの夫婦は、話合いで離婚が成立していますので、真摯に配偶者と話し合いましょう。
離婚や離婚条件の合意ができたら、離婚届に当事者双方が必要事項を記入し、成人の証人2人の署名(押印は任意)をもらい、本籍地または住所地の役所に提出します。

なお、離婚条件(財産分与、慰謝料、養育費など)についてきちんと公的な書面を残したい場合には、公証役場で合意内容についての公正証書を作成するとよいでしょう。

公正証書にすることで、取り決めた内容についての証明力が強まります。
また、相手が約束を守らず支払期限を過ぎた場合も、訴訟を提起することなく、速やかに強制執行を行うことができます。

公正証書を作らない場合、あとで「言った・言わない」のトラブルが発生するのを防ぐため、離婚協議書という書面を作成し、合意内容をきちんと残すようにしましょう。

(2)調停離婚の手続

離婚調停の申立てから終了までのおおまかな流れは、次のとおりです。
1. 配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書類一式を提出し、申立費用を納付します(持参または郵送)。
一般的に、申立時の手数料として収入印紙代1,200円(申立内容が増えれば、印紙代も増加)、戸籍謄本代や住民票代、切手代(家庭裁判所によって異なる)が必要となります。調停手続きを弁護士に依頼する場合には、弁護士費用も必要です。

2. 家庭裁判所は、申立書を受理したあと、事件番号を付与して、担当裁判官、担当調停委員を決定します。
離婚調停の場合、担当調停委員は男女1名ずつであることがほとんどです。

3. 家庭裁判所が、第1回調停期日を調整します。

4. 家庭裁判所から申立人・相手方に呼出状(通知書)が送付されます。
相手方は、通知書に同封されている答弁書等に記入して、期限までに家庭裁判所に送付します。

5. 第1回目の調停実施(申立後1~2ヵ月後)
申立人、相手方は、裁判所に指定された時間に遅れないように、待合室(申立人と相手方の待合室は別々に用意されている)で待機します。
調停委員が、申立人、相手方を順に部屋に案内し、申立ての理由や、夫婦の状況、離婚の希望、離婚条件などについて個別に話を聞きます(1人につき30分~1時間程度)。
話合いを継続する場合には、当事者双方の次回期日までの検討事項、事前に準備する資料、提出書面などを確認し、通常約1ヵ月後に第2回期日が指定されます。

6. 家庭裁判所調査官による調査
当事者間に親権や面会交流など子どもに関する件について対立がある場合には、専門家である家庭裁判所調査官が期日に立ち会い、調査を実施します。

7. 第2回目の調停以降
第1回期日と同じく、申立人・相手方がそれぞれ1、2回調停室に案内され、調停委員と話をします。
話合いが終わらず調停を続行する場合には、第1回期日と同じように次回期日までの検討事項などを確認し、次回期日を調整します(約1ヵ月後)。

8. 調停の終了
離婚調停が終了するケースは次の3通りです。
  • 調停成立
当事者が納得できる合意ができ、合意内容も相当であるときは、調停条項として調書に指定され、調停成立となります。

司法統計によれば、2022年に申し立てられた調停離婚約3万5,000件のうち、約1万5,600件(約44%)で調停離婚が成立して終了しています。
  • 調停不成立
相手方が期日に出席せずに話合い自体ができなかったり、出席はしたものの話し合っても合意できなかったりしたケースで、審判もなされない場合には、調停は不成立として、調停手続は終了します。
司法統計によれば、2022年に申し立てられた離婚調停のうち、約9,700件(約27%)が不成立で終了しています。
  • 調停取下げ
申立人はいつでも調停を取り下げることができるので、取下げによって調停手続が終了することもあります。
取下げの理由はさまざまです。たとえば、調停外で協議離婚が成立したり、夫婦関係が修復したりすると、調停が取り下げられます。
司法統計によれば、2022年に申し立てられた離婚調停のうち、約5,100件(約14%)が取下げで終了しています。
家庭裁判所へ調停の申立てを行ってから調停が終了するまで、一般的に、およそ3ヵ月から半年程度かかります。
ただし、離婚調停にかかる期間はさまざまです。
話合いでは強硬に離婚を拒否していても、調停を申し立てたあと相手方に心境の変化があり、1回目の調停期日でお互いが合意して離婚が成立する場合もあります。

一方で、相手方が離婚に応じない姿勢に変化がなければ、調停で1年以上話し合っても、調停不成立となり離婚できない場合もあります。
離婚調停は、長期戦となる場合があることを覚悟して臨んだほうがよいでしょう。

(3)審判離婚の手続

審判離婚は、調停が成立しなかった場合に、調停に代わる審判として、家庭裁判所の判断で離婚を認容する審判を下すという方法です。
そのため、当事者による手続は特に必要ありません。

(4)裁判離婚の手続

一般的な裁判離婚の手続は、次のように進んでいきます。
1. 訴状や証拠を準備して、管轄の家庭裁判所に訴訟を提起する
費用は、収入印紙代1万3,000円~(財産分与や慰謝料の請求など、離婚以外の請求をするとより高くなります)のほか、戸籍取得費用、切手代などの実費がかかります。
また、裁判の場合は専門的な法律知識を前提として手続が進みますので、弁護士でなければ対応は困難です。弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかります。

2. 約1~2ヵ月後に、第1回期日が指定される
4月は裁判官の人事異動の時期、8月は夏季休暇のため、第1回期日の指定は遅れる傾向があります。

3. 第1回期日で、被告が答弁書を提出する

4. 第2回期日以降、当事者が主張や立証を順番に行い、争点を整理する(期日は1ヵ月に1回程度指定される)

5. 親権者や面会交流など子どもに関する件で争いがある場合には、家庭裁判所調査官が、裁判官の命令により専門的知見に基づいて、夫婦どちらに親権を認めるのが子の福祉に資するか、子の様子の調査、子の意向確認など必要な調査を行う

6. 当事者尋問・証人尋問を行う

7. 裁判所が和解を提案する(裁判官は訴訟中どのタイミングでも和解の提案ができるが、尋問前後が多い)

8. 和解が成立しない場合は、裁判所が判決を下す

9. 判決に納得がいかない当事者は、判決書の通達を受けた日から2週間以内に控訴する

10. 控訴なく2週間が経過すれば判決は確定する

裁判にかかる期間は、ケースバイケースですが、和解が成立せずに最後まで争って判決を求めた場合には、1年以上かかるケースもあります。

離婚の手続に必要な書類とは

離婚の手続に必要な書類とは
離婚手続に必要な書類は、離婚の種類によって異なります。
離婚の種類別に必要な書類をみていきましょう。

(1)協議離婚の場合

基本的に必要な書類は離婚届のみです。

ただし、離婚届を本籍地ではなく住所地の役所に提出する場合には、戸籍謄本が必要になります。
また、提出時に本人確認資料として、運転免許証などの提示を求められます。

(2)調停離婚の場合

調停申立時に、家庭裁判所に対して次の書類を提出する必要があります。
  • 夫婦関係調整調停(離婚)の申立書
  • 夫婦の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
  • 進行に関する照会回答書
  • 事情説明書
  • 連絡先届出書
  • その他、必要な書類
年金分割割合についての申立てを行う場合には、「年金分割のための情報通知書」(発行から1年以内)の提出が必要です。
婚姻費用や養育費についての申立てを行う場合には、当事者の収入がわかる資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書、非課税証明書の各写しなど)を準備して、提出します。
そのほか、申立内容によって裁判所から提出を求められる書類がありますので、適宜準備して提出しましょう。

なお、調停が成立すると離婚も成立しますが、報告として成立日から10日以内に役所に離婚届を提出する必要があります。
調停調書謄本の提出も必要ですので、忘れずに持参しましょう。また、本籍地以外の役場に提出する場合には、戸籍謄本も必要です。

(3)裁判離婚の場合

訴訟提起時に、家庭裁判所に対して次の書類を提出する必要があります。
  • 離婚を求める訴状
  • 法定の離婚事由があることの証拠書類
  • 離婚調停不成立調書(調停が不成立で終了した場合)
  • 夫婦の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
  • その他、必要な書類
離婚のほかに、不貞行為による慰謝料や、財産分与、年金分割、親権者の指定などを求める場合には、以下の書類も必要です。
  • 不貞行為の存在を証明する証拠書類
  • 年金分割のための情報通知書
  • 財産の証拠となる書類(源泉徴収票や預金通帳など)
  • 親権者として相応しいことを示す事情書 など
判決が確定すると、離婚も成立しますが、報告として確定日から10日以内に役所に離婚届けを提出する必要があります。
判決書の謄本と確定証明書の提出も必要ですので、裁判所から取り寄せて忘れずに持参するようにしましょう。また、本籍地以外の役場に提出する場合には、戸籍謄本も必要です。

離婚前にやっておくべき準備

このように、離婚するためには、通常、まずは協議離婚を目指して話し合います。
そして、話合いをするためには、現状を把握してしっかりと前準備をしたうえで、相手から反論があることも踏まえて、離婚を希望していることや、希望する離婚条件について配偶者に対して冷静に、根拠をもって伝える必要があります。

配偶者と上手に離婚の話合いを進めるために、事前にやっておくべき準備について、説明します。

(1)子どもの親権や養育費について

離婚後は、父母どちらかが単独親権者となるため、どちらが親権者となるべきか事前に考えておく必要があります。
父母どちらが親権者となるべきかは、子どもの利益(福祉)の観点から考えます。

父母双方が親権を希望し、争いが予想される場合には、親権を獲得するにあたって、より親権者となるにふさわしい事情が必要です。
どちらがより親権者としてふさわしいかは、次のような事情を考慮して、総合的に判断するため、準備によって実績を作れるものは、事前に対応するようにしましょう。
1. 父母側の事情
  • 過去および現在の監護状況
過去実際に子どもをどの程度世話していたかが考慮されます。
過去および現在の監護状況が子の利益の観点から問題がないのであれば、監護状況を変更することは望ましくないと考えられているためです。
  • 離婚後の監護能力(年齢、健康状態など)・監護意欲
  • 子どもを養育する環境
資産、収入、職業、住居、生活スタイルなどが考慮されます。
ただし、資産や収入、職業は離婚の際の財産分与や養育費などで解決されるべきですので、そこまで重要視されるものではありません。
  • 教育環境
  • 子供に対する愛情
  • 親族の援助
具体的には、経済的支援の有無や自分が病気や仕事で子育てできないときに代わりに子育てを手伝えるかなどが考慮されます。
2. 子ども側の事情
  • 子どもの年齢や性別
子どもが幼い場合には、母性優勢の原則から母親に親権を認めるべきとする考え方もありますが、子どもが父親と母性的繋がりを有していることもあります。また、過去および現在の監護を主に父親が担っていることもあるでしょう。そのため、母親だから必ず親権が認められるかというと、決してそうではありません。
  • 兄弟姉妹の関係
兄弟姉妹はできるだけ分離しない方がよいと考えられています。
  • 従来の環境の適応状況
  • 環境の変化への適応性
従来の環境が子どもの利益の観点からして問題がなく、子どもが適応している場合には、一般的に、子どもの環境を変化させることは望ましくないと考えられています。
  • 子どもの意向
親権は子どもの利益のために行使されるべきですから、当然子どもの意向は考慮されます(家事手続法第65条、258条1項)。
言葉で表現される意向だけではなく、父母といるときの態度など、非言語的なコミュニケーションからも意向を読み取ります。
特に15歳を越えると、一般的に自分の意思で自分の意見を伝えられると思われ、子どもの意向が重視される傾向にあります。
また、離婚調停および人事訴訟事件の実務では、子どもが15歳未満であっても、10歳前後であれば自分の意思を表明できるとして、子どもの意向を確認することが多いようです。
養育費についても、将来子どもを育てて一人前にするために、どの程度の金額が必要となるのかをシミュレーションして、父母間でその費用をどのように負担するのかを話し合いましょう。
しかしながら、親権者側はより多くの養育費がほしいと思い、養育費を支払う側はあまり支払いたくないと思うのが実情です。
話しいがうまくいかない場合には、裁判所が通常認められるべき養育費を計算できる算定表を公表していますので、参考にしてみるとよいでしょう。

(2)財産分与について

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産(共有財産)を、離婚に伴って分与する制度のことをいいます(民法第768条1項)。
離婚する前に、夫婦の共有財産としてどのようなものがあるかについて、しっかりと確認して把握するようにします。

焦って配偶者に離婚の意思を伝えてしまうと、配偶者が財産隠しをするおそれもありますので、別居や離婚の意思を伝える前に、夫婦の財産の調査をしたほうがよいでしょう。
夫婦共有財産としては、次のようなものがあります。
1. 現金・預貯金・車両・有価証券など
配偶者名義や夫婦で管理している口座の通帳の表紙と最新残高がわかるページをコピーしておきます。また、車検証や有価証券の保有状況がわかる書類もコピーしておきましょう。
源泉徴収票や給与明細書も、役立ちます。

2. 退職金
配偶者に退職金が支給された、または支給されることがわかる資料があればコピーしておきます。

3. 生命保険や学資保険など
返戻金相当額が分与の対象となりますので、証書や返戻金がわかる資料をコピーしておきます。

4. 不動産
不動産売買契約書、ローン契約書などをコピーしておきます。固定資産税評価証明書や、査定をとっておくと、不動産の現在価値も把握することができます。

5. そのほか高価で価値があるもの
家電や芸術品など高価で価値があるものは、領収書のコピーを保管し、写真で現状を把握しかつ相場を調査しておくようにします。査定があれば現在の価値も把握することができます。

(3)慰謝料について

配偶者による不貞行為により夫婦関係が破綻し離婚せざるを得なくなったなど、離婚の責任が配偶者にある場合には、離婚に伴う慰謝料を請求できます。
ただし、配偶者が素直に慰謝料の支払いに応じるとは限らないため、離婚に伴う慰謝料の話合いをする前に、不貞行為の証拠を確保する必要があります。
先に離婚を伝えてしまうと、証拠を確保しづらくなったり、すでにある証拠を隠滅されてしまったりするおそれがありますので、事前に証拠を確保するようにしましょう。

離婚後は、親権者となれば養育費を受け取ることができますが、基本的に別居し、経済的に自立して生活する必要があります。
したがって、離婚前に、事前に離婚後の生活をシミュレーションし、家賃、引っ越し費用、家具購入費用、月々の生活費や収入を計算して、生活していけるよう準備する必要があります。
無職で収入がなかったり、現在の収入では足りないのであれば、就職活動をして仕事を見つけたり、仕事を増やしたりする必要があります。
また、実家に戻れるようであれば実家の両親に協力を依頼したり、児童扶養手当などの公的扶助が受けられるのかについて要件や手続を役所で確認したりしておくようにしましょう。
離婚前にやっておくべき準備については、離婚を考えたら準備する5つのことでも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

離婚手続をスムーズに進めるためのポイント

離婚は、夫婦の話合いにより成立する協議離婚を目指すのがベストです。
調停や裁判と異なり、スムーズに話し合えれば早期の離婚成立が可能ですし、費用も抑えることができます。
スムーズな話合いを進めるためには、自分の一方的な要求・考えを押し付けずに、相手の意見も聞いて、譲り合って妥協点を見つける必要があります。

仮に、配偶者に不貞行為などの離婚原因がある場合でも、「不動産は全部ほしい」など、相場とかけ離れた要求をすると、配偶者の姿勢が硬化し、話合いがこじれる可能性が高いです。
自分のなかで、譲歩できる点と譲歩できない点をはっきりさせて、メリハリをつけて交渉するとよいでしょう。

どうしても当事者同士での話合いが難しい場合には、弁護士に依頼し、弁護士を通じて話合うこともできます。
弁護士は感情を介さず、冷静に法的観点から交渉しますので、当事者同士ではなかなか進まなかった話合いが進む場合もあります。

離婚後に行う手続についても知っておこう

離婚成立後は、離婚に伴う各種手続きが必要になります。

(1)公的な届出

離婚に伴い引っ越して住所が変わる場合には、役場に対して、転入届、転出届、転居届などを提出する必要があります。

住所や姓が変わった場合には、運転免許証、パスポートなどの名義変更や住所変更の手続が必要です。

また、妻が夫を世帯主とする国民医療保険に加入していた場合や、夫が健康保険に加入していて妻が被扶養者の場合は、妻は、離婚して別世帯になり、被扶養者の資格も喪失するので、新たな医療保険に加入する必要があります。
仕事をしている場合には雇用先の健康保険に加入できるか検討し、国民医療保険に加入する場合には離婚後に役所で手続をしましょう。

さらに、専業主婦(夫)で第三号被保険者であった場合、離婚後は自分で国民年金を収める必要がありますので、国民年金の加入手続も行います。
児童扶養手当など公的な扶助が受けられる場合には、申請手続を行います。

(2)氏(姓)をどうするか

婚姻時に相手方の氏(姓)に変えた方(多くの場合女性ですので、ここでは女性を前提とします)は、原則として離婚に伴って婚姻前の氏に戻りますが、婚姻時の氏を継続して使用することもできます。

婚姻時の氏を継続して使用したい場合には、離婚の日から3ヵ月以内に、役所に婚氏続称の届出を提出する必要があります(離婚届と同時に提出することもできます)。

なお、婚姻前の氏に戻る場合であっても、子どもの氏は変わりません。
未成年の子どもの氏を変更して母の氏と同じにし、同じ戸籍に入れるためには、別途、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対して、子の氏の変更の許可を求める必要があります。家庭裁判所には書式が準備されていますので、問い合わせてみましょう。
家庭裁判所から氏変更の許可が得られたら、役所に対して「子の母の氏を称し母の戸籍に入籍する」旨の入籍届を提出します。これによって、子と母は同じ氏で同一戸籍となることができます(戸籍法第18条2項)。

離婚後に自分や子の氏が変わった場合には、それぞれについて、預金口座、保険などについて名義変更が必要です。
離婚後の手続について、詳しくは【離婚前後のやることリスト】準備から離婚後の手続まで時期別に解説!も参考にしてみてください。

【まとめ】離婚手続は弁護士に相談することでスムーズに!

離婚する前には、親権、養育費、財産分与、離婚後の経済的自立、離婚後の住まいの確保など、事前に準備しなければならないことが数多くあります。

離婚準備が整っても、配偶者が離婚に同意しない場合や、離婚条件の話合いがうまくいかない場合には、協議離婚は困難です。
話合いがうまくいかない場合には、弁護士へ相談し、離婚手続きを依頼するのもよいかもしれません。弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
  1. 慰謝料請求や財産分与、養育費などの離婚条件について、依頼者の有利になるように知識やノウハウを活かした交渉をしてくれる。
  2. 当事者同士だと感情的になりがちな問題に冷静に対応してくれるためスムーズに話合いを進められる。
  3. 離婚時に決めるべき内容や行うべき手続をもれなく助言、対応してくれる。
  4. 裁判まで進む可能性がある場合でも、安心して手続を進められる。
当事者の話合いで協議離婚することができれば、それに越したことはありませんが、離婚でお困りの方は、一人で悩まずに離婚問題を取り扱うアディーレ法律事務所に相談してみるのもよいかもしれません。

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この記事の監修弁護士

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

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