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固定残業代とは?みなし残業の違法性や残業代の請求方法も解説!

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固定残業代とは、あらかじめ一定の残業代を給料に含んでおくものです。この固定残業代に含まれている残業時間を超えて残業した場合には、企業は、超過分について残業代の支払い義務があります。
また、固定残業代には、労働基準法上の割増賃金(残業代)がいくら含まれているのか明確でなければなりません。
ところが、この固定残業代について誤った運用をしている企業が多く、「固定残業代=未払い残業代あり」と判断される裁判例が次々と出ています。
今回はこの固定残業代について解説いたします。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

固定残業代とは?

固定残業代とは、残業の有無にかかわらず、一定時間の残業をしたとみなして、あらかじめ固定の残業代を給料に組み込んでおく手当のことをいいます(みなし残業代制)。
企業にとっては、細かい残業代の計算を省略することができるというメリットがあります。

(1)みなし労働時間と実際の労働時間が一致しない場合

固定残業代において想定されていた残業時間を超えて残業をした場合には、企業は超えた分の残業時間に対し、別途残業代の支払いが必要です。

ここで、1口に残業代といっても、次の2種類があります。

1.労働基準法上の割増賃金

  • 時間外労働(原則1日8時間以上、週40時間以上の労働)
  • 深夜労働(22時~5時の労働)
  • 休日労働(原則週1回の法定休日の労働)

をした場合の割増賃金のことをいいます。

2.法内残業に対する賃金

定時は超えているものの、労働基準法上、割増賃金の支払い義務の対象とはならない労働に対する賃金のことをいいます。
(原則1日8時間未満、週40時間未満の労働、法定休日・深夜労働以外の労働の場合)
※2の場合に、就業規則等で会社所定の割増率が定められている場合はその率に従います。割増率が定められていない場合は、定時と同じ賃金を基にして計算します。

会社は、固定残業代だけでは、1+2の残業代を賄いきれない場合は、不足する1+2の残業代を支払わなければならないのです。

例えば、みなし残業が40時間で、実際の残業時間が40時間を上回っていれば、企業は、追加で上回った分の残業代を支払う必要があります。

他方で、みなし残業が40時間で、実際の残業時間が40時間を下回っていたとしても、企業は固定残業代を全額支払わなければなりません。

(2)みなし残業代制とみなし労働時間制との違い

「みなし残業代制」と「みなし労働時間制」とは異なる制度ですので注意が必要です。
みなし労働時間制は、事業場外での労働(営業の外周り、テレワーク等の一部)や裁量労働など、何時間働いたか企業が正確に把握することが困難・不適切な場合などに、一定時間働いたとみなす制度です。

みなし労働時間制では、「一定時間働いたとみなされる労働時間」が、法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超える場合には、割増賃金の支払いが必要となります。
また、深夜労働・休日労働に対しても割増賃金の支払いが必要です。

そのため、必ずしも「みなし労働時間制=残業代が月給に組み込まれている」というわけではない点で、みなし残業代制とは異なります。

参考:「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために|東京労働局
参考:裁量労働制の概要|厚生労働省

実は固定残業代の支払いとは認められない場合が多くある

会社が固定残業代を支払ったと主張していても、実は裁判例上、固定残業代の支払いとは認められないケースが多くあります。
固定残業代の支払いとは認められない場合、次のとおり、労働者には多くの未払い残業代が発生しやすくなります。

残業代は、次の式で計算できます。

この基礎賃金は、定時の労働時間に対する給料から、通勤手当・賞与など、一定の要件を満たす金員を除いて算出されますが、固定残業代も控除すべき金員にあたります。

そして、残業代のうち、未払いの残業代は、
未払い残業代=A ー すでに払われた固定残業代 ー その他払われた残業代
で算出されます。

固定残業代の支払いとして認められないとなると、基礎賃金から固定残業代相当額を控除せずに済みます(固定残業代を控除する場合よりも、基礎賃金が増えます)。
さらに、未払い残業代から固定残業代相当額を控除せずに済むため、労働者には、多くの未払い残業代が発生しやすくなるのです。

では、固定残業代として認められるのか否か見極めるポイントについて解説いたします。

固定残業代として認められるのか見極めるポイント4つ

(1-1) 固定残業代の性格を持つことが明示されているか

会社は固定残業代であると主張していても、労働者からみると、「え?これ本当に固定残業代?」と疑問に感じざるを得ないものは多くあります。
例えば、「店長手当」「業務手当」などです。
これらは名目のみでは、固定残業代であるとは、わかりません。
また、基本給の中に固定残業代が含まれているタイプも、基本給という名目のみでは固定残業代が含まれているか分かりません。

何が固定残業代であるのかが明示されていないと、労働者は、労働基準法上の割増賃金を追加でもらう権利があるのかどうか判断することができません。

このため、裁判例上は、労働協約や就業規則、雇用契約書、採用条件確認証、賃金規程などを考慮して、「固定残業代が時間外労働(残業)に対する割増賃金として支払われていること」が、明示されていなければ、固定残業代とは認めない傾向にあります。

参考:日本ケミカル事件 最高裁第一小法廷判決平成30年7月19日|裁判所 – Courts in Japan

(1-2)固定残業代はいくらか、はっきり分かるか

例えば営業手当が、「固定残業代」と、「営業成績に対するインセンティブ」の双方の性格を持つことがあります。
また、基本給や歩合給の中に固定残業代が含まれている場合、通常の労働に対する賃金と、労働基準法上の割増賃金とが混在していることになります。

この場合、営業手当や基本給・歩合給の内いくらが、労働基準法上の割増賃金にあたるのか明確に分からなないと、労働者としては、労働基準法上の割増賃金を追加でもらう権利があるのかどうか判断することができません。

このため裁判例上、会社が固定残業代と主張する賃金の内、

  • いくらが労働基準法上の割増賃金に該当するか明示されているか、
  • または容易に判別可能でないと、

固定残業代とは認められない傾向にあります。

参考:国際自動車事件 最高裁第三小法廷判決平成29年2月28日|裁判所 – Courts in Japan
参考:医療法人康心会事件 最高裁第二小法廷判決平成29年7月7日|裁判所 – Courts in Japan

(1-3)固定残業代が複数の種類の残業に対する対価である場合、内訳の明示はあるか

労働基準法上、残業の種類によって割増率は次のように異なります。

残業の種類割増賃金が発生する条件(※1)最低限度の割増率
時間外労働1日8時間・週40時間のいずれかを超えて労働。
(法定休日の労働時間は含まず。)(※2)
時間外労働が月60時間までの部分1.25倍
時間外労働が月60時間を超えた部分1.5倍
(※3)
深夜労働22時~5時の間の労働1.25倍
休日労働22時~5時の間の労働1.25倍
深夜労働法定休日の労働1.35倍
重複する部分時間外労働が0時間を超えて月60時間までの部分と、深夜労働が重複する部分1.5倍
時間外労働が月60時間を超えた部分と、深夜労働が重複する部分1.75倍
(※4)
法定休日に深夜労働した部分1.6倍

※1 残業時間として認められるためには、「会社の指示によって労働させられた」ことが必要です。
また、残業代を計算する上で、休憩や有給休暇は労働時間からのぞきます
※2 時間外労働の例外
常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作は除く)、保険衛生業、接客業については、週44時間を超えた労働
※3 次に該当する企業(中小企業、以下同じ)は、2023年3月末までは、最低の割増率は1.25倍となります。
・小売業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が50人以下
・サービス業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が100人以下
・卸売業:資本金1億円以下または常時使用する労働者が100人以下
・その他:資本金3億円以下または常時使用する労働者が300人以下
※4 中小企業では2023年3月末までは、最低の割増率は1.5倍となります。

このように割増率が異なる複数の割増賃金を、固定残業代で支払っている場合、固定残業代の内いくらがどの割増賃金に対する支払いなのか明示されないと、労働者は、追加でいくらの割増賃金が支払われる権利を有しているのか判断することができません。

例えば、
「基本給には、固定割増賃金として、40時間分の法定時間外労働・休日労働・深夜労働分の対価を含む。」
との賃金規程の場合、割増率の異なる割増賃金に対し、固定残業代が支払われるとの規程に当たります。
しかし、固定残業代の内、いくらが時間外手当で、いくらが深夜手当、休日手当に当たるのか判別することができません。
このような場合、内訳が不明として、固定残業代としては認められない可能性があります。

参考:ファニメディック事件 東京地裁判決平成25年7月23日

(1-4)固定残業代が最低賃金を下回っていないか

1時間あたりの固定残業代が最低賃金を下回るような金額になっている場合があります。
この場合、固定残業代は原則無効です。
例えば、東京で勤務、基本給が月12万円、精勤手当が月5万円、所定労働時間月170時間の場合で考えてみましょう。
この場合、精勤手当を固定残業代として有効と考えると、1時間当たりの基礎時給は、12万÷170時間=706円(1円未満切り上げ)です。
この場合、東京の最低賃金(2019年年10月1日時点:1013円)を下回ってしまうので、精勤手当は固定残業代としては無効となります。
なお、最低賃金がいくらかについては、厚生労働省「必ずチェック最低賃金 使用者も、労働者も|最低賃金制度」をご覧ください。

参考:津地方裁判所四日市支部判決平成25年4月17日

支払われていない残業代は請求できるのか?

固定残業代とは別に、超過分の残業代をもらうことができますが、企業によっては、超過分の支払いを拒んでいるケースがあります。
また、そもそも固定残業代の支払いとしては無効となる場合は、残業した分について未払いの残業代が発生している可能性があります。
このように、適切な残業代が支払われていない場合は未払いの残業代を請求できます。

(1)時効に要注意

ただし、残業代は、請求しないまま一定期間が経過すると、会社側が時効を主張することで、残業代を請求する権利を失ってしまいます。
民法改正の影響で、残業代の時効には、次の2種類があります(2021年1月5日時点)。

  • 2020年3月31日までに支払日が到来する残業代→時効は2年
  • 2020年4月1日以降に支払日が到来する残業代→時効は3年

時効の起算日は、本来、各残業代が支払われるべきであった日の翌日です。
例えば2020年2月20日に支払日が到来する残業代については、その支払日の翌日から2年経過すると、会社側が時効を主張することで、これを請求する権利が消滅することになります。

このように残業代には時効がありますので、勤務期間が2年以上で、月給制の場合は、古い残業代から順番に、毎月、時効が成立している可能性があります。そのため、残業代を請求したいと思ったら、早めに請求することが大切です。

(2)残業代の請求のために必要な証拠

未払いの残業代を請求するには一般的には、次のような証拠が必要となります。

  • 雇用されたときの書類(雇用契約書など)
  • 就業規則、賃金規程のコピー
  • 給与明細
  • 労働時間が分かる資料(出勤簿、タイムカード、WEB打刻のスクリーンショット、業務用メールアカウントや会社のFAXの送受信記録履歴、帰宅時のタクシーの領収書など)
  • 残業時間中の労働内容を立証する資料(業務日報など)

労働基準法第109条により、使用者は、雇入れ、賃金などに関する重要な書類を5年間保存しなければなりません。
そのため、必要な証拠を自分で用意できない場合は、企業が保存している証拠の開示を請求したり、弁護士が裁判外や裁判上で請求したりすることになります。

(3)残業代を請求する方法

残業代を請求するためには、まずは会社に対して内容証明郵便を送ります。
これは時効が一時的に(6ヶ月間)完成しないようにするために行います(民法150条)。

その後、交渉や裁判所の手続き(労働審判、訴訟)などで未払いの残業代を請求することになります。
労働基準監督署に、未払い残業代があることを報告することも可能です。

【まとめ】残業代の未払いに関するご相談はアディーレ法律事務所へ

固定残業代とは、残業の有無にかかわらず、一定の残業をしたとみなして、あらかじめ固定の残業代を給料に組み込んでおく手当のことをいいます。

固定残業代に含まれている残業時間を超過して働いた場合は、企業は超過分の残業代が支払わなければなりませんが、企業者側が、固定残業代の意味を取り違えていて支払われないケースもあります。

さらに、固定残業代に関する規定の仕方が違法であるため、固定残業代の支払いとは認められず、結果、多額の未払い残業代が発生しているケースがよくあります。
残業代の未払いでお困りの方は、アディーレ法律相談所へご相談ください。

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