B型肝炎は自然治癒する?無症候性キャリアとの違いと給付金について

B型肝炎は自然治癒する?無症候性キャリアとの違いと給付金について
「血液検査をしたら、B型肝炎ウイルス陽性の結果が出たけど、B型肝炎って自然治癒するものなの?特に症状はないんだけれど……」
B型肝炎ウイルスの感染様式は、一過性感染と持続感染の2つに大別されます。
一過性感染の場合、免疫機能によって、短期間のうちに、B型肝炎ウイルスが体内から排除されます。
これに対して、持続感染の場合は、長期間にわたってB型肝炎ウイルスに感染し続けることになります。
本記事では、B型肝炎の自然治癒、自然治癒した場合と無症候性キャリアとの違い、無症候性キャリアの給付金等について解説します。

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B型肝炎はどんな病気?

まずは、B型肝炎の概要、発症原因、症状等について解説します。

(1)B型肝炎とは?

B型肝炎とは、ウイルス性肝炎の一種であり、B型肝炎ウイルスに感染することで発症する肝臓の炎症のことをいいます。
B型肝炎ウイルスへの感染は、短期間の感染でおわる一過性感染と、長期間にわたり感染したままになってしまう持続感染に分かれます。
B型肝炎ウイルスの感染経路については、母子感染、父子感染等の家庭内感染、注射器の使いまわしによる感染、B型肝炎ウイルス感染者との性交による感染等があります。

(2)B型肝炎ウイルスに感染するとどうなる?

B型肝炎ウイルス感染は、一過性感染と持続感染に分けられます。
B型肝炎ウイルスに感染した場合のほとんどは一過性感染となりますが、免疫機能が未発達な出産時ないし乳幼児期に感染すると持続感染することがあります。

一過性感染は、感染が短期間にとどまる場合をいいます。何らの自覚症状がなくそのまま治癒する場合(不顕性感染)もあれば、全身倦怠感や黄疸がみられる急性肝炎となる場合もあります。急性肝炎の発症者のうち1~2%の方は、死亡率の高い劇症肝炎となる場合があります。

持続感染は、長期間にわたって感染状態を維持する場合をいいます。持続感染者の多くは、慢性肝障害を発症することなく生涯を過ごしますが、持続感染者のうち10%の方については慢性肝炎を発症し、そこから肝硬変や肝がんとなる可能性があります。

B型肝炎の自然治癒と無症候性キャリア

B型肝炎ウイルスに一度感染した場合、自然治癒するのでしょうか。また、自然治癒するとして、自然治癒した場合とB型肝炎ウイルスの無症候性キャリアとの違いはどこにあるのでしょうか。
ここでは、B型肝炎の自然治癒や、自然治癒と無症候性キャリアとの違い等について解説します。

(1)B型肝炎ウイルス感染の自然治癒

B型肝炎ウイルス感染にも「治癒」とされる状態はあります。
HBs抗原・抗体についてセロコンバージョンという現象(抗原が陰性になり、かつ、抗体が陽性になること)を起こして、既往感染と呼ばれる状態になると、一般にB型肝炎ウイルス感染が「治癒」したと表現されます。既往感染は、過去に感染したことがあるものの、現在は感染状態にないということ意味し、この状態になると、B型肝炎ウイルスに感染したことがない状態とほぼ同じ状態になります。

もっとも、現代医療では、B型肝炎ウイルスが体内から完全に排除されることはないと言われています。既往感染に至った後も、肝臓内にはB型肝炎ウイルスの遺伝子が残ってしまうからです。この遺伝子は、B型肝炎ウイルスの増殖を担当する遺伝子であり、既往感染に至った後は、体内の免疫力によって、その増殖能力が抑えられているのですが、免疫抑制・化学療法などによって、その増殖能力に対する抑えが効かなくなることがあります。

そして、増殖能力に対する抑えが効かなくなると、B型肝炎ウイルスの増殖が再開して、感染状態に戻ってしまうことになります。この現象を既往感染者からの再活性化といいます。既往感染者からの再活性化を起こすと、しばしば肝炎を併発し、致死率が極めて高い劇症肝炎に進展することもあります。なお、既往感染者からの再活性化に伴う肝炎を「de novoB型肝炎」といいます。

このように、B型肝炎ウイルス感染が自然治癒することはあるものの、それは、いわば一応治ったといえる状態にすぎず、B型肝炎ウイルスに感染したことがない状態と全く同様の状態に戻るわけではないということになります。

(2)B型肝炎の無症候性キャリアと治癒の違い

無症候性キャリアとは、B型肝炎ウイルスへの持続感染者のうち、慢性肝障害等の疾病を伴っていない感染者をいいます。

無症候性キャリアと既往感染はいずれも症状がないという点では共通しますが、無症候性キャリアは、ウイルスが増殖能を保持しているのに対し、既往感染はウイルスの増殖能が抑制されているという点で大きく異なります。無症候性キャリアは、現在は慢性肝炎障害を伴っていないというだけで、ウイルスの増殖能は保持されているため、今後いつ慢性肝障害を発症してもおかしくはない状態ということになります。

一方で、既往感染の場合は、ウイルスの増殖能が抑制されているので、既往感染の状態を維持する限り、慢性肝炎等の病態を発症することはありません。

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B型肝炎給付金は無症候性キャリアや既往感染者でも給付される?

無症候性キャリアは、B型肝炎ウイルスに感染しているものの、慢性肝障害等の疾病を伴っていない感染者のことをいいます。既往感染は、現在は感染状態にありません。このような特に症状が出ていない状態や既に治ったとされる状態であっても、B型肝炎給付金を受給することはできるのでしょうか。

(1)B型肝炎給付金とは?

B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった方等が、国に対してその賠償を求める訴訟をいいます。

幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった被害者5名が、1989年、国に対してその賠償を求める訴訟を提起し、2006年の最高裁判決により、国の責任が裁判所により認められることとなりました。

その後、2011年6月に国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で救済の要件や金額等について定めた「基本合意書」が締結され、2012年1月13日に、国との間で裁判上の和解が成立すれば、被害者等に対して給付金等を支給することを内容とした「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(以下、「特措法」といいます。)が施行されるに至りました。

B型肝炎給付金を受給するには、国を相手として国家賠償請求訴訟を提起し、その中で国との和解を成立させ、社会保険診療報酬支払基金に対して給付金を請求する必要があります。
以下が、B型肝炎給付金を受給するまでの大まかな流れとなります。
B型肝炎給付金を受給するまでの流れ

(2)B型肝炎給付金は無症候性キャリアや既往感染者も対象

無症候性キャリアの方や既往感染者の方も、以下の要件を満たせば、B型肝炎給付金の支給を受けることは可能です。

【一次感染者】

B型肝炎ウイルスに持続感染したこと ※1

満7歳の誕生日の前日までに集団予防接種等 ※2 を受けていること

集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと

母子感染でないこと

その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと

  • 1持続感染は現在持続感染している場合だけでなく、過去に持続感染したことがある場合を含みます。そのため、既往感染者の方も、B型肝炎ウイルスに持続感染したことの要件を満たすことがあります。
  • 2 「集団予防接種等」とは、集団接種の方法で実施された予防接種およびツベルクリン反応検査を指します

【二次感染者(一次感染者から母子感染又は父子感染をした感染者)】

〈母子感染の場合〉

・母親が一次感染者の要件をすべて満たしていること

・B型肝炎ウイルスに持続感染したこと

下記アイウのいずれかから、二次感染者の感染原因が母子感染であるといえること

 ア:母子のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同定されていること

 イ:出生直後の時点でB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを明らかにできること

 ウ:父子感染等の母子感染以外の感染原因がないこと

〈父子感染の場合〉

・父親が一次感染者の要件をすべて満たしていること

・B型肝炎ウイルスに持続感染したこと

・二次感染者の感染原因が父子感染であるといえること

無症候性キャリアの場合、給付金額は以下のようになります。

20年の除斥期間等を経過していない場合 600万円
20年の除斥期間等を経過している場合 50万円+定期検査費の支給等の政策対応
なお、現在は無症候性キャリアであるものの、過去に慢性肝炎等の病態を発症していたという方については、慢性肝炎等の病態を発症したこと及びその病態の原因がB型肝炎ウイルス持続感染であることを証明することにより、慢性肝炎等の病態発症者としての給付金を受給することができます。

(3)無症候性キャリアで給付金を受給するメリット

無症候性キャリアの方は、B型肝炎給付金を受け取れるだけでなく、和解後の定期検査費用の一部を国が負担してくれるようになります。また、和解後に病態が進行して慢性肝炎等を発症した場合には、B型肝炎訴訟手続よりも簡易な手続きで、追加の給付金を受給することができます。

(3-1)無症候性キャリアは病態が進行する可能性がある

B型肝炎ウイルスのキャリアの90%は慢性肝障害を発症しませんが、10%は、慢性肝炎、肝硬変、肝がんを発症する可能性があります。
B型肝炎ウイルスは感染してもすぐには発症しないケースが多く、知らないうちに病態が進行し、重篤な状態になっていることにある日突然気が付くということも少なくありません。

そのため、定期的に検査を受ける必要があります。
無症候性キャリアの場合、和解しておけば、給付金とは別に定期検査費等の費用も支給されるので、ご自身の健康管理という点からも、無症候性キャリアとして和解しておくメリットは高いといえます。

(3-2)給付金対象者は追加給付金を請求することができる

和解後に病態が進行した場合、追加の給付金を請求することができます(特措法8~10条)。そのため、無症候性キャリアとして給付金を受給した方が、和解後に慢性肝炎等の病態を発症してしまった場合には、追加の給付金を請求できることになります。
B型肝炎給付金を受給するためには、国を相手に裁判を起こして、その裁判手続きの中で、幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに持続感染したことを証明する資料を提出した上で、国との間で和解を締結する必要があり、この手続きには1年以上の長い時間がかかってしまいます。

これに対して、無症候性キャリアとして国との間で既に和解を締結している場合には、再度裁判を起こす必要はなく、提出する資料も病態が進展したことを明らかにするための資料だけですので、簡易かつ短期間の手続きで追加の給付金を受給することができます。この点で、無症候性キャリアとして給付金を受給することは、病態が進行した場合の一種の「保険」として、かなりのメリットがあるといえるでしょう。
追加給付金の額は、以下のようになります。

進行後の症状
死亡 肝がん 肝硬変(重度) 肝硬変(軽度) 慢性肝炎
和解した病態 除斥期間等を経過していない無症候性キャリア 3000万円 3000万円 3000万円 1900万円 650万円
除斥期間等を経過した無症候性キャリア 3600万円 3600万円 3600万円 2500万円 1250万円

B型肝炎給付金の申請は弁護士に相談

B型肝炎給付金を受給するためには、様々な資料を収集することが必要になります。
この資料を自分自身で収集することも不可能ではありませんが、血液検査については検査項目や場合によっては検査方法に指定がありますし、役所や医療機関等の様々な場所に問い合わせをする必要があります。
また、提出するべき資料としてカルテ等の医療記録が求められていることとの関係上、医療記録の中身をチェックし、他の医療機関への通院歴が見つかった場合には、その医療機関から医療記録を開示してもらった上で、再度医療記録の中身をチェックするという作業も行わなければなりません。
さらに、他原因による感染を疑わせるような記載がないか等を医療記録からチェックする必要もあり、この作業には医学的な専門知識も必要となってきます。医療記録の量が相当な量に及ぶ場合もあり、その場合には医療記録のチェックに膨大な時間を費やす必要がでてくることも稀ではありません。
このような事情から、B型肝炎給付金を受給しようとお考えの方は、個人でB型肝炎訴訟の手続きを進めるよりも、弁護士に相談する方がよいでしょう。

【まとめ】B型肝炎が自然治癒する場合もあるが無症候性キャリアとは別物

本記事をまとめる以下のようになります。
  • B型肝炎とは、ウイルス性肝炎の一種であり、B型肝炎ウイルスに感染することで発症する肝臓の炎症
  • B型肝炎ウイルスの感染には、短期間の感染でおわる一過性感染と長期間にわたって感染し続ける持続感染とがある
  • B型肝炎ウイルスに感染しても、自然治癒することはあるが、感染する前と全く同様の状態に戻るわけではない。
  • 持続感染の場合であっても、肝機能障害等の症状が特にでない無症候性キャリアという感染様式もあり、無症候性キャリアの場合でも要件を満たせばB型肝炎給付金を受給することが可能
  • B型肝炎給付金を受給するには、国を被告とする国家賠償請求訴訟を提起した上で、要件を満たしていることを証明するための証拠を訴訟上提出する必要があり、訴状等の専門文書の作成や証拠となる資料収集については、弁護士に手続きの代理を依頼した方がスムーズに進みおすすめ
B型肝炎給付金を受給するためには、裁判に提出するための多くの資料を集める必要がある上、訴状等の専門文書の作成も必要となります。
また、期日には出廷の必要もあります。給付金の受給まで、多大な時間と労力、そして専門知識が必要となります。
アディーレ法律事務所では、訴訟のために必要となる戸籍や医療記録(カルテなど)をご依頼者の代わりに収集し、給付金の受給を全力でサポートいたします。
また、訴状等の専門文書の作成や、期日の出廷の代理についても、もちろん承っております。
アディーレ法律事務所では、B型肝炎に悩まれている方を一人でも多く救いたいという思いから、B型肝炎給付金の受給をお考えの方のご相談を心からお待ちしております。
B型肝炎給付金の受給をお考えの方は、アディーレ法律事務所に是非ともご相談ください。

B型肝炎の給付金請求に関するご相談は何度でも無料!

この記事の監修弁護士

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。東京弁護士会所属。

大西 亜希子の顔写真
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