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役職手当をもらっても残業代請求は可能?管理監督者の条件も解説

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会社に長く勤めていると、何らかの役職や肩書きがつくことがあります。
それに伴って、基本給が上がることもあれば、役職手当がつくようになることもあるでしょう。
そうした役職手当がついた場合には、もはや管理職であることを理由に残業代を請求することはできないのでしょうか。

今回は、「役職」や「管理職」と残業代の関係について、解説していきます。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

役職手当の概要

役職手当(英語では「executive allowance」)とは、一般社員にない管理職などの特別な地位や役割、責任、権限を与えられた労働者に対して、その内容に応じて支給される手当の総称のことをいいます。
会社によっては「職務手当」とするところもあります。

法律で定められた用語ではないため、役職手当の対象者や支給要件などは各企業が任意で決めることができます。

一般的には、以下のような役職の労働者に役職手当が支給されています。

  • 部長
  • 課長
  • 支店長
  • 店長
  • 工場長
  • 課長
  • 係長
  • 班長
  • マネージャー
  • リーダー
  • チーフ

役職手当をもらっていても残業代は請求できる?

先述のとおり、役職手当は法律的な概念ではありません。

したがって、労働基準法で定められた残業代の支払いの要否は、役職手当の有無によって決まるものではありません。

そこで、役職手当をもらっている労働者が未払い残業代について考える場合は、「自分は残業代を請求できる労働者に該当するのか?」という根本的な部分について確認していく必要があります。

管理監督者でなければ残業代請求可能!判断基準をご紹介

役職手当をもらっている管理職の残業代が支払われていない場合に、必ず確認して欲しいのが「自分は管理監督者ではないのか?」ということです。

「管理監督者」とは、労働基準法41条2号で定められた「監督若しくは管理の地位にある者」のことをいいます。

この章、第6章(年少者)及び第6殊の2(妊産婦)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1号 (略)
2号 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3号 (略)

引用:労働基準法41条

「管理監督者」と、「役職手当をもらっている管理職」は、全く異なる概念です。
後者にあてはまるからといって前者に該当するとは限りませんし、逆の場合でも同じです。

では、労働時間・休憩・休日に関する規制の適用がない「管理監督者」すなわち「監督若しくは管理の地位にある者」とは、具体的にどのような人のことをいうのでしょうか。

この点について裁判例は、管理監督者とは「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」をいい、管理監督者に該当するかどうかは、名称や肩書き、就業規則の定めのいかんにとらわれず、実態に即して客観的に判断されるべきであるとしています。

具体的な判断要素としては、1.経営者と一体性を持つような職務権限を有しているか、2.厳密な時間管理を受けず、自己の勤務時間に対する自由裁量を有しているか、3.その地位にふさわしい待遇を受けているか、といった点を挙げています。

この3つの判断基準について、少し詳しくみてみましょう。

(1)経営者と一体的な立場で仕事をしている

管理監督者は、経営者と一体的立場であることから、一般的に、以下のような重要な権限や責任を与えられています。

  • 経営方針の決定に関与している
  • 経営会議で発言する
  • 労働者の採用や配転、解雇などの決定権限がある
  • 予算管理の決定権限がある など

こうした権限を持たず、単に現場を率いる管理職などの場合は、条件をみたさないため、管理監督者ではないとして残業代を支払ってもらえる可能性が高いでしょう。

(2)労働時間や業務量に広い裁量が認められている

経営者と一体的な立場で働く管理監督者は、与えられた経営的なミッションなどを成し遂げるために、法定労働時間を超えて仕事をせざるを得ないことがあります。

そのため、管理監督者は、所定始業時刻(会社がこの時間から業務を開始するように決めた時刻)や所定終業時間(会社がこの時間には業務を終えるものと決めた時刻)に縛られることなく、労働時間について一定の裁量を付与され、仕事を行うものとされます。
したがって、現場で働く一般労働者と同じ時間帯で働いていたり、自分もシフトに入っていたりするような場合は、この条件をみたさないことから、管理監督者ではなく、残業代の請求が可能であると考えられます。

(3)地位にふさわしい待遇が与えられている

管理監督者には、会社の経営に関わる大きな責任や権限があります。

これは、現場という小さな範囲でリーダーシップやマネジメントをするにすぎない管理職とは大きく異なるものです。
そのため、管理監督者の地位に相応しい待遇は、基本給に数万円の上乗せをするような役職手当とは大きく異なるものと考えた方がいいでしょう。

したがって、例えば、自分の部下である一般従業員と比べて、「役職手当分の3万円しか給料の差がない」等の場合は、管理監督者ではない可能性が高いと考えられます。

以上のような3つの条件をみたさず、管理監督者に該当しないということであれば、仮に役職手当をもらっていたとしても、残業代の請求が可能な管理職(「名ばかり管理職」などと言われることもあります)あるいは一般労働者であると考えられます。

役職手当に残業代を含めている場合は要注意

役職手当と残業代の関係には、もう一つ注意すべきことがあります。
それは、企業が労働者に支払うべき時間外労働や休日労働、深夜労働などの割増賃金を「固定残業代」にしており、役職手当を固定残業代として支給しているケースです。
そしてなかには、残業代の支給をしない言い訳として「あなたには役職手当を支払っているから」というものや「役職手当のなかに残業代も含まれているから」といった説明がされることもあります。

企業が固定残業代制を導入する場合は、労働者に以下のことを伝える必要があります。

  • 固定残業代を除いた基本給の額
  • 固定残業時間として算定する労働時間数と固定残業代の金額等の計算方法

したがって、会社側が「役職手当に残業代を含めている」と主張した場合は、「そこに何時間分の残業代が含まれているのか」を労働者に伝える必要があります。
この内容を明示していない場合、割増賃金の適正な支払いを潜脱することを目的として、役職手当を支給しているとも考えられます。

また、役職手当の中に含まれた固定残業代が適正な金額であっても、繁忙期などでその金額に対応する想定時間数を超える残業をした場合、当該割増賃金を追加で支払う必要があります。

役職手当をもらう管理職の残業代請求には「証拠」が必要

これまで説明してきたような点をチェックした結果、で自分が「管理監督者ではなさそうだ」とわかった場合には、労働者側がその根拠となる証拠を集めて、残業代の請求をする必要があります。

しかし、会社側からすれば、請求された長期間の未払い残業代をすべて支払った場合、これまで少なく済ませられていた人件費が一気に増大する可能性も出てきます。
そう考えると、多くの会社はなるべく未払い残業代の請求に応じたくないと考えるのが一般的でしょう。

したがって、支払いに応じてもらうためにも、以下のように残業の事実を裏付ける証拠をしっかり揃える必要があります。

(1)労働契約や昇進の証拠

まず、会社との間でどのような契約になっているかを確認するために、労働契約書や雇用通知書、辞令を用意します。

例えば、辞令があれば、「ここには課長と書かれていますが、これは会社側に残業代を支払う義務がない管理監督者ではないですよね?」といった確認もしやすくなります。

辞令がない場合には、現在の役職や手当に言及するメールなどでも証拠とすることが可能です。

(2)残業の事実を証明する証拠

具体的な残業代を請求するには、以下の証拠を使って「会社に残っていた時間」や「何時間ぐらいの残業をしていたか」を明らかにする必要があります。

  • メール:オフィス勤務の場合、メールの送信時間でその時間帯に仕事をしていた証明になります。
  • タイムカードの記録:具体的な退勤時間がわかる証明資料になります。
  • PCのログイン履歴:社内PCの場合、ログアウトの記録を確認することで、その時間まで会社で作業していたことの証明になります。
  • タクシーの領収書:終電すぎまで残業をしていてタクシーで帰った場合、その領収書も残業時間の証明に使えます。
  • 家族へのLINE:「急なトラブルで残業することになりました」といったものや「残業が終わったのでこれから会社を出ます」などのメッセージも証拠として認められます。

(3)残業内容の証拠

残業代の請求では、上司の指示などによる業務で残業をしていたことの証明も必要です。

上司からの残業指示や、作業締め切りの書かれたメールや書類、メモなどは、残業内容を立証するにあたって非常に価値の高い証拠となります。

また、上司からの直接的な指示がなくても、急なトラブル対応で残業をしていて、「無事に復旧しました」などのお客様へのメールがあれば、それも残業内容の証明になる可能性が高いでしょう。

(4)支給額の証拠

給与明細や源泉徴収票、就業規則のコピーなども、実際の支給額(適正な残業代が支払われていないこと)を証明する大事な証拠となります。

ただし、労働者側が証拠をそろえて残業代の支払いを請求する際に、使用者側が「(役職手当として)すでに支払い済みだ」などと反論するという場合、使用者の側で適正な残業代を支払ったことを立証しなければなりません。

したがって、労働者側が請求の際に給与明細などの資料を準備する責任はありません。
あくまで、使用者側が「すでに支払った」と反論してきた場合に備えて、再反論のための証拠として準備しておけばよいのです。

【まとめ】役職手当をもらっていても残業代請求が可能な場合がある

会社のなかには、昇進した労働者に役職手当を与えることで、残業代の支払いをやめるところがあります。

しかし、管理監督者に該当しない管理職や一般労働者の場合は、基本的に残業代請求ができる可能性が高いと捉えていいでしょう。

残業代請求について疑問や悩みがあるときには、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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