労働トラブルで悩んではいませんか? 賃金の未払いや不当解雇など、労働者が直面する問題は多岐にわたります。
そんな時に頼りになるのが「労働審判」です。 しかし、労働審判とは具体的にどのような手続で、どのように進めればいいのでしょうか?
この記事では、労働審判の基本から、手続の流れ、有利に進めるためのポイントまで詳しく解説します。
この記事が、労働審判を活用してあなたの権利を守り、迅速に問題を解決するための役に立てば幸いです。
この記事を読んでわかること
- 労働審判とは
- 労働問題のメリット・デメリット
- 労働審判を有利に進めるためのポイント
ここを押さえればOK!
期日が原則3回までに制限されており、迅速な解決が期待されますが、複雑な問題には不向きです。
労働審判が利用されやすいケースとして、賃金未払い、不当解雇、労働条件の一方的な変更が挙げられます。
労働審判と裁判との違いは、主に手続の迅速さと費用にあります。労働審判は平均3ヵ月で解決し、費用も比較的低く抑えられます。
一方、裁判は数年かかることがあり、費用も高額になりがちです。
労働審判のメリットは迅速かつ事案の実情に応じた柔軟な解決、比較的低い費用、非公開である点です。デメリットとしては、複雑なケースには不向き、当事者が出席が求められる、結果に不服がある場合は裁判に移行する必要があることが挙げられます。
労働審判を有利に進めるためには、証拠の準備、具体的な主張の整理、弁護士のサポート、冷静な態度を保つことなどが重要です。
労働審判の結果に不服がある場合、労働者や使用者は異議を申し立てることができ、裁判(訴訟手続)に移行します。
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中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
労働審判とは?
労働審判とは、労働者と使用者(雇用者)との間で発生する労働関係の紛争を迅速かつ適正に解決するための制度です。
労働審判は、裁判官たる審判官と、労働問題について知識や経験のある非常勤の裁判所職員たる労働審判員で構成される労働審判委員会が審理を行います。
労働審判は、期日が原則3回までに制限されているため、裁判と比べてより迅速な解決につながるとされています。
一方、複雑な労働問題の解決方法としては基本的に不向きなようです。
労働審判の対象となるケース
ここでは、労働審判が利用されやすい具体的な3つのケースについて解説します。
(1)賃金未払い
労働者が働いたにもかかわらず、使用者がその分の賃金を支払わない場合です。これには、基本給、残業代、ボーナスなど、さまざまな賃金の未払いが含まれます。
特に、長期間にわたって賃金が支払われない場合は、早急な対応が必要です。
(2)不当解雇
使用者が労働者を不当に解雇した場合です。
たとえば、正当な理由なく解雇された場合や、解雇手続が適切に行われなかった場合などが該当します。
(3)労働条件の一方的な変更
使用者が一方的に労働条件を変更した場合、労働審判を申し立てることで、元の労働条件への復帰や適正な労働条件の設定を求めることがあります。
労働審判と裁判の違い
労働審判と裁判は、いずれも労働者と使用者の間で発生する紛争を解決するための手段ですが、その手続や特徴には大きな違いがあります。
ここでは、労働審判と裁判の基本的な違いと、労働審判のメリットとデメリットについて解説します。
(1)労働審判と裁判の違い
労働審判と裁判の違いは、主に手続の迅速さ、費用にあります。
- 手続の迅速さ:
- 労働審判:労働審判は、迅速かつ事案の実情に応じた柔軟な解決を目的としており、期日が原則3回までとされます。 平均的な審理期間は約3ヵ月です。
- 裁判:裁判は、解決までに数年かかることもあります。 証拠の提出や証人の尋問など、手続が複雑で時間がかかることが多いです。
- 費用:
- 労働審判:労働審判の費用は比較的低く抑えられています。申立手数料や弁護士費用などがかかりますが、裁判に比べて経済的な負担は軽いといえます。
- 裁判:裁判は、手続が長期化することが多く、その分費用も高額になりがちです。弁護士費用や裁判所の手数料など、労働審判に比べて経済的な負担が大きくなる傾向があります。
(2)労働審判のメリットとデメリット
労働審判には、迅速な解決が期待できる一方で、デメリットも存在します。
ここでは、労働審判のメリットとデメリットを紹介します。
(2-1)メリット
- 迅速かる柔軟な解決が期待できる: 労働審判は、通常の裁判手続に比べて迅速に進行し、申し立てから数ヵ月以内に解決することが期待されます。また、話し合いによる解決(調停成立)を試みるため、事案の実情に応じた柔軟な解決も期待されます。
- 比較的費用が安い: 労働審判の費用は比較的低く抑えられており、労働者にとって経済的な負担が軽減されます。申立手数料や(弁護士に依頼すれば)弁護士費用などがかかりますが、裁判に比べて費用が少なく済む点が大きなメリットです。
- 非公開である: 労働審判は非公開で行われるため、プライバシーが保護されます。これにより、労働者は職場でのトラブルを公にすることなく解決を図ることができます。
(2-2)デメリット
- 複雑なケースには不向き: 労働審判は迅速な解決を目的としているため、複雑な事案や証拠が多い場合には解決方法として適さないことがあります。その場合、裁判が適切な解決方法であることがあります。
- 当事者の出席が求められる: 労働審判では、労働者と使用者の双方が出席することが求められる場合が多いです。これにより、相手方と直接対面することになり、精神的な負担が増す可能性があります。
- 結局は裁判が必要になる可能性がある: 労働審判の結果に不服があるとして異議が出されると、裁判に移行することになります。 そうすると二度手間となり、結果として最初から裁判を提起した場合よりも多くの時間や費用がかかってしまいます。
労働審判の手続の流れ
労働審判の手続きは、迅速かつ適正に労働紛争を解決するために設計されています。
労働審判の基本的な手続の流れは以下のとおりです。
- 申立て: 労働審判の手続は、労働者または使用者が裁判所に申し立てることから始まります。申立書には、必要な証拠も添付します。
- 審判期日の指定: 申立てが受理されると、裁判所は審判期日を指定します。通常、申立てから40日以内に第1回目の期日が設定されます。
- 審判期日:まず当事者同士の話合いである調停が行われます。裁判所は、労働者と使用者の双方の意見を聞き、合意に向けた調整を試みます。調停が成立すれば、合意内容が調停調書に記載され、手続は終了します。
- 審判: 調停が成立しない場合、裁判所は、提出された証拠などをもとに判断(審判)を下します。
労働審判を有利に進めるためのポイント
労働審判を有利に進めるためには、事前の準備や戦略が重要です。以下に、労働審判を成功させるための具体的なポイントを紹介します。
(1)証拠を準備する
労働審判では、証拠が非常に重要です。
賃金未払いや不当解雇などの問題を証明するために、以下のような証拠を準備しましょう。
- 給与明細や賃金台帳:賃金未払いを証明するための基本的な証拠です。
- 雇用契約書:労働条件や契約内容を確認するために必要です。
- メールやメモ:上司や同僚とのやり取りを記録したものは、ハラスメントや不当な指示を証明するために有効です。
- タイムカードや出勤簿:労働時間を証明するために役立ちます。
(2)具体的な主張を整理する
労働審判では、主張を明確かつ具体的に整理することが重要です。 以下の点を意識して自分の主張を整理しておきましょう。
- 問題の発生時期と経緯:いつ、どのような問題が発生したのかを具体的に説明します。
- 求める解決方法:賃金の支払い、解雇の無効など、具体的な要求を明示します。
- 法的根拠:自分の主張がどの法律や規則に基づいているのかを明確にします。
(3)弁護士のサポートを受ける
労働審判は専門的な手続であり、弁護士のサポートを受けることで有利に進めることが期待できます。
弁護士に依頼することで得られるメリットは、以下のとおりです。
- 法的アドバイス:法律の専門家である弁護士から適切なアドバイスを受けることができます。
- 書類作成のサポート:申立書や証拠書類の作成をサポートしてもらえます。
- 交渉力の強化:弁護士が代理人として交渉に参加することで、交渉力が強化されます。
(4)冷静な態度を保つ
労働審判では、冷静な態度を保つことが重要です。
基本的に当事者が出席するため、直接相手方と対面することになりますが、感情的にならず、事実に基づく主張を行いましょう。
礼儀正しい態度を保つことも重要です。
労働審判の結果に不服がある場合の対処法
労働審判の結果に不服がある場合、労働者や使用者は異議を申し立てることができます。
労働者または使用者は、審判の口頭告知を受けた日又は審判書の送達を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができます。
異議申立てを行うことで、労働審判の効力は失われ、通常の裁判に移行します。
なお、審判は、通常、期日において出席した労働者と使用者に口頭告知されます。後日、審判書が労働者と使用者のそれぞれのもとに送達されますが、既に審判の口頭告知を受けておりますので、異議申立は審判の口頭告知を受けた日から2週間以内にする必要があります。
これに対し、労働者あるいは使用者が期日に欠席したものの、その期日に審判が下された場合、欠席した労働者あるいは使用者は、審判書の送達を受けなければ、審判の内容を知ることができません。そのため、その審判に不服があるとして異議申立てするのであれば、審判書の送達を受けた日から2週間以内にする必要があります。
裁判では、労働審判で提出された証拠や主張が引き継がれますが、新たな証拠や主張を追加することも可能です。
異議申立てを行い、裁判に移行する場合、弁護士のサポートを受けることが特に重要になります。
労働問題に精通した弁護士に依頼することで、より有利に手続を進めることが期待できるでしょう。
【まとめ】労働審判は、労使間における迅速な紛争解決を目指す制度
今労働審判は、労働者と使用者の間で発生する労働関係の紛争を迅速かつ適正に解決するための制度です。賃金未払いや不当解雇など、さまざまな労働問題の解決のために利用できます。
労働審判は、通常の裁判に比べて迅速に進行し、費用も比較的低く抑えられることが一般的です。また、非公開で行われるため、プライバシーが保護される点も大きなメリットです。
一方で、労働審判は複雑なケースには不向きであり、基本的に当事者の出席が必要なため精神的な負担が増すことがあります。
また、労働審判の結果に不服がある場合は、異議申し立てを行い、通常の裁判に移行することも可能です。この場合、再度時間と費用がかかることになります。
ご自身の労働問題を解決するために最適な方法は、労働審判ではないかもしれません。
まずは、 自分にとって最適な解決方法を知るためにも、労働問題を扱っている弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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