労働基準法における夜勤の考え方!休日や割増賃金、労働制限も解説

  • 作成日

    作成日

    2023/11/24

  • 更新日

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    2023/11/24

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目次

労働基準法における夜勤の考え方!休日や割増賃金、労働制限も解説
夜勤と日勤とでは、労働基準法のルールが異なる部分があります。
たとえば次のような疑問はありませんか?

Q.夜勤をした場合、夜勤明けの1分後から休日にしていいの?
Q.それとも夜勤明けの次の日からでないと休日にしてはいけないの?
Q.夜勤をした場合の割増賃金はどうやって計算するの?
Q.夜勤が労働基準法上、禁止となる場合はあるの?

この記事では、これらの夜勤の疑問について、弁護士が解説します。

夜勤という労働形態について

夜勤とは、一般的に夜間に勤務することをいいます。
24時間稼働する工場や看護、介護、コンビニエンスストアなどに多い働き方です。

しかし夜勤は、法律用語ではありません。
そのため、夜勤の具体的な勤務時間は、以下のような二交代制や三交代制などのシフト形態や、職場環境によって変わってきます。

また、看護の現場などでは、深夜になってから勤務し始めるシフトを夜勤、夕方から夜までのシフトを準夜勤と呼ぶこともあります。

夜勤と暦日、労働基準法の考え方

夜勤の方の適切な賃金計算などをするうえで、暦日や労働基準法における夜勤の考え方を整理しておくことは非常に大切です。

(1)夜勤と暦日

まず、夜勤をする労働者や人事担当者に生じやすい疑問は、残業代などの割増賃金計算や休憩時間の調整をするときに、「働く時間が深夜0時をまたいだ場合、2日間の勤務になってしまうのか?」ということです。

一般的な暦(こよみ)、いわゆる暦日では、0~24時までの24時間を「1日」と考えます。
したがって、たとえば20~8時までの勤務の場合、暦日では「20~24時」と「0~8時」の2日に分けて考えます。

(2)夜勤と労働基準法

しかし、暦日の考え方には、大きな問題があります。
それは、夜勤労働者の働く日が2日に分かれることで、日中に勤務する人と比べて休憩時間や残業代の支払いなどの面で不利になる可能性があることです。

こうした労働者の負担や不平等さを解消するために、通達により二暦日に渡って継続した勤務が行われる場合、始業時刻の属する日の労働として「一勤務」と取り扱うように定めています(昭和63年1月1日基発1号)。
たとえば1月3日の20時~翌4日の8時まで働く場合、始業時刻のある「1月3日の労働」として賃金計算などが行なわれ、勤務日数は1日の扱いとなります。

労働基準法における夜勤と休憩・休日の考え方

次は、労働基準法における夜勤中の休憩と、休日の考え方についてご説明します。

(1)夜勤時の休憩時間

労働基準法第34条1項で定める休憩時間は、日勤も夜勤も同じです。
会社がこの休憩時間のルールに違反すると、6ヵ月以下の懲役または30万以下の罰金刑に処されます(労働基準法第119条1号)。

(2)夜勤時の休日と次の出勤

夜勤をするときの休日の扱いは、夜勤をする本人やシフト調整をする人事担当者に生じやすい疑問です。
たとえば、「夜勤明けの日を法定休日に設定していいか?」ということです。

法定休日とは週に1回原則として設けなければいけない休日のことをいいます。

原則として「0~24時(暦日)」という、0時スタートの継続した24時間を法定休日にする必要があります。
もっとも例外も設けられています。
勤務体系や業種ごとに、法定休日の与え方を見ていきましょう。

(2-1)一昼夜交替勤務の場合

一昼夜交替勤務とは、労働(例:8~翌朝8時まで)と、その後に続く非番を繰り返す勤務体系のことです。

先ほどご説明したとおり、法定休日は原則として0時からの継続した24時間を法定休日とする必要があります。
そのため、一昼夜交替勤務の場合は、法定休日は夜勤明けの日とは別に設けなければなりません(昭和23年11月9日基収2968号)。

すなわち、3月4日の8時~翌5日の8時までの勤務の場合、3月5日を法定休日とすることはできず、3月6日以降の0時からの継続した24時間の法定休日を設定する必要があります。
法定休日
ただし、8時間ずつ3人で交替勤務するといったようなシフト編成(番方編成)の場合は、次の要件をいずれも満たせば、0時からの休日である必要はありません。何時からのスタートでもいいので、休日が24時間継続していればよいということになります(昭和63年3月14日基発150号)。
  1. シフトによる交替制によることが就業規則等により定められて、制度化されていること
  2. シフトによる交替が規則的に定められていて、シフト表等によりその都度設定されるものではないこと

(2-2)トラック・バス・タクシーの運転者(ドライバー)の場合

トラック・バス・タクシーの運転者の場合、「<休息時間+24時間>の連続した時間」が法定休日にあたります。
ただし、「<休息期間+24時間>の連続した時間」が30時間を下回ってはいけません。
また、休息期間は原則8時間以上とる必要があります(平成元年2月9日労告7号)。
※隔日勤務であれば休息期間は20時間以上が必要です。
法定休日
これは、これらのドライバーは長時間労働となりやすいため、休日を長くあたえることにより、交通事故を防止することを目的としています。

なお、2日連続して法定休日を与える場合は、2日目の法定休日は連続した24時間以上であれば足ります。

(2-3)旅館業の場合

旅館業のうち、一定の労働者については、次の要件を含む諸要件をいずれも満たせば、法定休日は0時から始まる必要はなく、暦日で2日にまたがる休日も法定休日として認められます(昭和57年6月30日基発446号)。

1. 正午~翌日正午までを含む継続30時間(当分の間は27時間)の休息時間が確保されること
2. あらかじめ労働者に以下のことが明示されていること
  • 休日が歴日で2日にまたがることがあること
  • その時間帯が労働者に明示されていること
3. 1年間の法定休日数の内、半数以上は暦日(0時スタートの法定休日)で与えること

労働基準法における夜勤と割増賃金の考え方

次に、夜勤をした場合の割増賃金や残業代についてご説明します。
なお、管理監督者など一部の方に対しては、会社は労働基準法律上、割増賃金や残業代の支払義務を負っていません(深夜労働の割増部分を除く)。

(1)割増賃金と残業の基本的な考え方

夜勤の残業代や割増賃金について考える場合、まず労働基準法で定められた一般的な時間外労働などの仕組みを確認しておく必要があります。

労働基準法で定める法定労働時間は、「原則として1日8時間、1週間40時間まで」です。
法定労働時間を超えて労働させた場合は、「時間外労働」となります。

また、法定労働時間を超えないものの、会社が就業規則などで定めた所定労働時間を超えると「法内残業」となります。
さらに、法定休日に労働した場合には、「休日労働」となります。
22~5時の労働は「深夜労働」となります。
労働基準法において、夜勤に近い位置づけとなるのは深夜労働です。

労働基準法が定める、各残業の種類ごとの基本的な割増率は次のとおりです。
1日の労働時間 休憩時間
6時間以下 0分以上
6時間超え8時間以下 45分以上
8時間超え 1時間以上
※1 残業時間として認められるためには、「会社の指示によって労働させられた」ことが必要です。
※2 時間外労働の例外
常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作は除く)、保険衛生業、接客業については、週44時間を超えた労働
※3 次に該当する企業(中小企業、以下同じ)は2023年4月以降の時間外労働にのみ適用。
  • 小売業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が50人以下
  • サービス業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • その他:資本金3億円以下または常時使用する労働者が300人以下
※4 中小企業では、2023年4月以降の時間外労働にのみ適用。

法定時間内残業の場合は、割増率は労働基準法において定められていません。
そのため、法定時間内残業の残業代を以下のどちらの方法で支払うのかは企業の自由となっています。
  • 所定労働時間の賃金の単価よりも割増しした単価で支払う
  • 所定労働時間の賃金と同様の単価で支払う
なお、残業代は、「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間」で計算します。

(2)複雑になりやすい夜勤労働者の割増率

夜勤労働者の割増賃金や残業代の計算は、日勤だけの人と比べて複雑になりやすいといえます。
これは、割増率が追加される時間帯に労働(深夜労働)することが多いためです。

たとえば、8~17時(休憩1時間)まで働く日勤の人の場合、法定労働時間と所定労働時間の範囲内であれば、割増賃金は発生しません。

一方で、たとえば21~6時まで働く夜勤労働者の給与計算をする場合、日勤労働者と比べて単純に「勤務時間が違うだけ」ということにはなりません。
このケースの割増率は、基本的には以下のようになり、複雑な計算になります。

21~22時:割増なし
22~2時:1.25の割増率 ※深夜労働
2~3時:休憩
3~5時:1.25の割増率 ※深夜労働
5~6時:割増なし

ここに法定労働時間を超える時間外労働があり、これと深夜労働が重複していると、その時間帯の割増率が1.5以上になることもあります。

夜勤(深夜労働)ができない労働者もいる

労働基準法では、年少者と妊産婦の夜勤(深夜労働)について特別な制限を定めています。
満18歳に満たない年少者は、交替制によって使用する満16歳以上の男性を除いて、原則として、深夜労働が禁止されています(労働基準法第61条1項)。

※ただし、病院・保健衛生業など一部の業種においては深夜労働が認められているなど、深夜労働の禁止が適用されない場合があります(労働基準法第61条4項)。

妊産婦については、本人から請求がある場合に深夜労働をさせてはいけません(労働基準法第66条3項)。

【まとめ】労働基準法における夜勤の問題については弁護士や労働基準監督署などにご相談ください

労働基準法では、夜勤労働者の休憩時間や休日などで不利益とならないように、二暦日に渡る一勤務について、始業時刻の属する日の労働として取り扱うことを定めています。

労働基準法で夜勤に近い位置づけとなるのは、「22~5時」に働く深夜労働であり、深夜労働の場合、使用者は、原則として「1時間当たりの基礎賃金×1.25倍×深夜労働した時間」で計算される割増賃金を支払う義務があります。

夜勤労働者の休日などに悩みがある場合は、早めに労働基準監督署などへ相談をしてみるとよいでしょう。
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この記事の監修弁護士

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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時間外労働が月60時間までの部分 1.25倍以上
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休日労働 法定休日の労働 1.35倍以上
重複する部分 時間外労働が0時間を超えて月60時間までの部分と、深夜労働が重複する部分 1.5倍以上
時間外労働が月60時間を超えた部分と、深夜労働が重複する部分 1.75倍以上
(※4)
法定休日に深夜労働した部分 1.6倍以上