「会社を退職したけど、やめた会社に対して残業代請求はできるのかな?」
結論としては退職後でも残業代請求は可能です。
ただし、消滅時効期間を過ぎてしまうと、残業代が発生していても支払ってもらえなくなる可能性があるので、注意が必要です。
退職後すぐに弁護士に相談することで、消滅時効の完成を阻止できることもあります。
この記事を読んでわかること
- 退職後でも残業代の請求は可能
- 残業代請求の消滅時効
- 残業代請求の手順
- 退職後の残業代請求を弁護士に依頼するメリット
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
残業代請求は退職後でも可能?
退職してしまうともう残業代を請求できないのでしょうか?
退職後でも残業代請求は可能です!もっとも、「消滅時効」に注意しましょう。
残業代は時間外労働に対する賃金であり、必ず支払われるべきものです。
残業代は、在職中だけでなく、退職後であっても請求できます。
ただし、特に退職後に請求するケースでは、「消滅時効」に注意が必要です(消滅時効については、後で詳しくご説明します)。
在職中に残業代請求をすると、会社から不当な扱いを受ける可能性も全くないとは言い切れません。
しかし、退職後は会社の人と関わりがないため、会社での立場を気にせず残業代を請求できるというメリットがあります。
退職後に残業代を請求する手順
それでは、退職後に残業代を請求する場合、どのような手順をふめばよいのでしょうか。
退職後に残業代を請求する方法について、順を追って解説します。
(1)消滅時効を過ぎていないか確認
残業代の請求を退職後にする場合、残業代の請求権の「消滅時効」が完成していないことが前提になります。
「消滅時効」とは、何もしないままその期間が経過すると、未払いの残業代があっても「時効だから支払わない」と言われて、もはや残業代を請求できなくなるという制度です。
時効期間が経過していても請求自体はできますが、残業代を請求しても、会社から「消滅時効が完成しているから支払わない」という主張がされることが通常です。
残業代を請求する権利の消滅時効期間は、原則3年です(2023年9月現在)。
残業代の消滅時効は、(月給制の場合)各月の賃金支払日から起算して、1月ごとにそれぞれ計算します。
そのため、退職後に残業代請求する場合は、できる限り早めに行動を起こすことが重要です。
(2)残業代請求に必要な証拠を準備
次に、残業代の請求に必要な証拠を準備します。
残業代を請求するには、請求する側で、実際に残業した証拠を集めて、残業時間や請求できる残業代の額を立証する必要があります。
- 残業代を立証できる証拠とは、次のような証拠です。
–勤怠を記録したデータ(タイムカード、Web打刻、出勤簿など)
–給与明細書
–就業規則の写し
–雇用契約書
–労働条件通知書 など
これらの証拠は、退職後に集めることは難しいものもあるため、できる限り在職中に証拠を集めておくことをおすすめします。
証拠がない場合はどうする?
それでは、上記のような証拠を集めていない場合はどうなるのでしょうか。
在職中に十分な証拠を集められなかった場合には、会社に証拠の開示を請求する方法があります。
会社は労働者の名簿やタイムカードや勤怠ソフトのデータ、賃金台帳などの重要書類を3年間保管する義務があります(※法律上の保存期間は、2020年4月1日以降5年となりましたが、経過措置として当面は3年とされています。)。
会社に対して、退職した方が自らタイムカードなどの資料の開示請求をしても会社が応じてくれない場合には、弁護士に相談・依頼して、弁護士を通じて会社に証拠の開示請求をするという方法があります。
弁護士を通じて請求すれば、会社が任意での証拠開示に応じてくれる可能性が高まります。
(2-1-1)内容証明郵便を送付
証拠がそろったら、残業代の計算を行います。
そして、計算した残業代を請求する書面を、会社に対して、内容証明郵便で郵送します。
内容証明郵便を会社が受け取ると、内容証明郵便での請求は「催告」(民法150条)にあたります。
この内容証明郵便を会社が受け取った日から6ヶ月を経過するまでの間は、時効は、賃金支払日から3年を経過したとしても完成しません。
もっとも、会社が請求に応じない場合には、この6ヶ月以内に訴訟を提起したり労働審判を申し立てるなど、一定の手続きを取る必要があります。
「催告」となる残業代の請求は、労働審判や訴訟になった際に証拠として残すことが必要になるため、通常は内容証明郵便で行います。
そして、残業代の請求書を送付後、退職した会社と交渉を行います。
交渉において、それまでに開示されていない証拠を求めることも可能です。
(2-1-2)労働審判・訴訟
内容証明を送り、会社との交渉を行っても交渉がまとまらない場合には、労働審判で残業代を請求することもできます。
労働審判を申し立てると、労働審判委員会(裁判官1名と労働審判委員2名で構成される委員会)が、請求者の主張と会社の反論を整理、調整し、話し合いでの解決(調停)を探ります。
労働審判では調停で解決できない場合、労働審判委員会が、審判によって残業代の支払い義務の有無と金額を決定し、判断を示すことがあります。
労働審判委員会の審判に納得できずに当事者である請求者または会社から異議が出た場合、訴訟手続きに移行します。
そして、訴訟になった場合には、双方の主張、立証を行い、残業代が認められれば判決で相手方に対して残業代の支払いが命じられることになります。
訴訟になった場合でも、訴訟の途中で、和解(請求者と会社の合意)により、会社から残業代に関する問題を解決をすることもあります。
退職後の残業代請求を弁護士に依頼するメリット
退職後の残業代請求を自分でやるのはなんだか難しそうですが、ほかに方法はないでしょうか?
退職後の残業代請求は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここからは、退職後の残業代請求を弁護士に依頼するメリットを解説します。
(1)メリット1|正確な知識に基づいて残業代を算出してくれる
弁護士に依頼すると、弁護士が正しい残業代を算出してくれます。
残業代の計算は、基礎賃金を算出した上で一定の割増率を乗じて計算するなど、正しい残業代をご自身で計算するのはなかなか難しいです。
弁護士に依頼すると、正確な知識に基づいて残業代を算出することができます。
また、証拠が不足する場合は、弁護士が、依頼者の方の勤務状況をもとに、推定計算できるケースもあります。
(2)メリット2|すみやかに残業代を請求できる
前述しましたように、残業代の請求権は消滅時効があります。
しかし、証拠集めや残業代の計算などを、自分でやるとなると時間がかかります。
弁護士に依頼すると証拠集めのアドバイスや、残業代の計算を代行してくれるため、請求手続きがスムーズになります。
これにより、消滅時効が迫っている場合でも、時効の完成によって残業代が消えてしまうより前に請求できる可能性が高まります。
(3)メリット3|労働審判、訴訟のサポートをしてくれる
労働審判などの裁判手続きは、弁護士に依頼せずに自分で対応することも可能ですが、専門的な手続きになるため弁護士のサポートを受けるとより有利に進められる可能性が高まります。
また、仮に審判に不服で異議申立てをする場合や、会社から異議申立てがされた場合には、通常訴訟に移行しますが、この場合、契約内容によっては訴訟手続きを引き続き、同じ弁護士(または事情をよく分かっている弁護士)に依頼することができます。
同じ弁護士などが対応してくれる場合、一貫したスムーズな対応が可能になると考えられます。
【まとめ】在職中の未払い残業代は退職後でも請求できる!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 退職後でも残業代の請求は可能
- ただし、残業代は、消滅時効が完成すると支払ってもらえなくなるので注意が必要
- 退職後に残業代を請求する場合、特に、消滅時効が完成する前に請求するよう確認すべき
- 残業代請求の手順は以下の通り
– 消滅時効について確認し、残業代請求に必要な証拠を準備
– 内容証明郵便を送付することにより、消滅時効が6ヶ月間完成しなくなる効果がある
– 会社との交渉がまとまらない場合は労働審判や訴訟によりで残業代請求する - 退職後に残業代請求する場合は、証拠が集めにくいこともあり、正しい残業代を自分で計算したり、すみやかに請求するのは難しいため、弁護士に相談することがおすすめ
退職後の残業代請求は、ご自身で行うこともできますが、弁護士に相談・依頼して行う方がよりスムーズに成功させられる可能性が高まります。
未払い残業代請求を検討している方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
アディーレ法律事務所では、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からのお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2023年9月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。