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退職後でも過去の残業代を請求できる?気を付けておくべき消滅時効とは

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kiriu_sakura

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「退職した会社に、今までの残業代を請求できるのかな?」

未払いになっている残業代については、たとえ退職後であっても請求することができます。
むしろ、在職中に請求すると会社にいづらくなってしまうおそれなどもありますので、退職後に請求される方が少なくありません。

ただし、退職後に過去の残業代を請求する場合、なるべく早めに行動することが欠かせません。
なぜなら、残業代を請求する権利には消滅時効があるからです。
例えば毎月の給料が「月末締め、翌月25日払い」という会社で2019年4月分の残業代が未払いになっていた場合、この残業代は2021年5月25日に消滅時効期間が完成してしまっています。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 退職後でも、残業代を請求できること
  • 残業代の消滅時効
  • 退職後に過去の残業代を請求する方法
  • 残業代請求を弁護士に依頼するメリット
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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残業代の請求は退職後でもできる?

退職後であっても、残業代を請求することができます。
それでは、退職前に請求する場合のデメリットや退職後に請求するメリットをご説明します。

(1)退職前に残業代を請求する場合の、思わぬデメリットとは?

退職前に残業代を請求する場合、どれくらい残業したかなどの証拠集めが容易な反面、職場にいづらくなってしまうおそれがあります。
例えば、次のようなデメリットにつながる可能性も否定できません。

  • パワハラや嫌がらせを受ける
  • 不当な配置返還を受ける
  • 今までの仕事上のミスなどを口実に、会社から損害賠償請求を受ける

残業代請求は、残業をした労働者の正当な権利です。対価を支払わない会社の方に、非があるといえます。
しかし、退職前だと、どうしてもこのような不当な報復のおそれから残業代請求をためらわれる方も少なくありません。

残業代を請求した際の報復への対処法について、詳しくはこちらをご覧ください。

残業代を請求すると会社に報復される?報復行為の対処法を紹介

(2)退職後に残業代を請求するメリットとは?

一方、退職するまでは残業代請求の意向を隠しておいて退職後に請求する場合、在職中にパワハラなどの報復を受けることは基本的に避けることができます。

また、退職後に残業代を請求した方が、退職前に請求するよりも回収額が高くなる可能性もあります。
残業代請求の際は、実際に未払いになっている残業代だけでなく、支払いが遅れている日数分の「遅延損害金」も上乗せして請求することができます。
この遅延損害金の利率が、退職前よりも退職後の方が高いのです。

遅延損害金の利率は次の表のとおりです。

<遅延損害金の利率>

2020年3月31日までに支払日が来た残業代
2020年4月1日以降に支払日が来た残業代
退職する前
年6%
(使用者が会社や商人以外の場合には、年5%)
2023年3月31日まで(※)は、年3%
退職した後
年14.6%
(天変地異などやむを得ない事由によって支払えなかった場合、その事由があった期間は適用されません)

※民法改正によって、法定利率は3年ごとに経済の状況などを基に見直すこととされています。最新の情報にご注意ください。

例えば、毎月の給料が「月末締め、翌月25日支払い」という会社で2022年4月分の残業代が未払いだったケースを考えてみます。
2022年4月分の残業代は2022年5月25日に支払日が来るので、遅延損害金の利率は退職前なら年3%、退職後なら年14.6%ということになります。

残業代に上乗せして請求することができる遅延損害金について、詳しくはこちらをご覧ください。

未払い残業代には遅延損害金がつく?付加金との違いと請求方法

残業代はなるべく早く請求した方がいい?残業代の消滅時効とは

しかし、残業代を請求したいと思った場合には、なるべく早めに行動する必要があります。
なぜなら、残業代を放置しておくと、時効にかかって消滅してしまうおそれがあるからです。

労働基準法の改正に伴い、残業代がいつ発生したかによって消滅時効の完成期間が異なります。

  • 2020年3月31日までに支払日が来た残業代:2年
  • 2020年4月1日以降に支払日が来た残業代:3年(※)

※改正後労働基準法115条では「5年」と書かれているのですが、当面の間は経過措置として「3年」という扱いになっています。最新の情報にご注意ください。

参考:改正労働基準法等に関するQ&A 5頁|厚生労働省労働基準局

例えば、次のようなケースを考えてみます。

(仮名)Aさんは、(仮名)X社に2020年4月1日に入社しました。
X社では定時に打刻させてその後も残業を強いるサービス残業が横行しており、Aさんは入社以降毎月、打刻後も残業をし続けていました。
X社の毎月の給料は「月末締め・翌月25日支払い」なのですが、定時に打刻していることを理由に、残業代は1円も支払われていません。
Aさんは残業で疲弊し、2023年3月30日にX社を退職しました。
退職から3ヶ月ほどした2023年6月10日に、Aさんは「転職先の仕事にもそれなりに慣れてきて余裕が出てきたし、今までの残業代をX社から取り戻したい」と考え、残業代請求を扱っている法律事務所へ相談に行きました。

このAさんの残業代と消滅時効は、次のようになります。

残業代の消滅時効は、月ごとにカウントします。
Aさんが法律事務所に相談に来た2023年6月10日の時点で、2020年4月分の残業代は消滅時効の時効期間を経過しており,時効が完成してしまっているのです。
また、Aさんが相談に来るのがあと十数日も遅れていれば、2020年5月の残業代も消滅時効にかかってしまったかもしれません。

Aさんの場合、消滅時効期間が3年なのでまだ1ヶ月分で済んでいますが、2020年3月31日以前の残業代となると消滅時効期間は2年です。そのため、入社時期が2020年4月1日以前の場合Aさんより多くの残業代が時効により消滅してしまっている可能性があります。

「退職してからまだ数ヶ月も経っていないし、まだ時効は大丈夫だろう」と思い込まずに、なるべく早めに行動することをおすすめします。

退職後に残業代を請求する方法

それでは、残業代を請求する方法をご説明します。

(1)在職中にしておきたい準備

まだ今の会社を退職していない方であれば、在職中に残業代請求のための証拠を集めておくことをおすすめします。
退職後でも証拠を集められないわけではないのですが、在職中の方が集めやすい証拠もあります。

例えば、打刻後のサービス残業の場合、在職中に実際の残業時間についてのメモを逐一作成しておいた方が後から思い出すより正確に残業代を計算できる可能性があります。
また、先ほどの消滅時効との戦いもあるので、なるべく早めに証拠を確保して請求に移るのが望ましいです。

集めておきたい証拠には、例えば次のものがあります。

  • 雇用契約書
  • 就業規則や賃金規程のコピー
  • 給与明細
  • 出勤簿やタイムカードなど、労働時間が分かる資料 など…

残業代請求のために集めておきたい証拠について、詳しくはこちらをご覧ください。

未払い残業代の請求には証拠が必要!証拠がない場合の対処方法を紹介

(2)退職後に残業代を請求する流れ

退職後に残業代を請求する流れは、基本的に次のようになります。

未払い残業代の計算

会社への請求・交渉

【交渉がまとまらない場合】
労働審判や訴訟など

それぞれのステップについてご説明します。

(2-1)未払いになっている残業代の計算

まずは、残業代がいくら未払いになっているかを計算します。
計算方法は、原則として「残業時間×1時間あたりの基礎賃金×一定の割増率」となります。
1時間あたりの基礎賃金は、1ヶ月の基礎賃金を平均所定労働時間で割ることで求めます。

そして、割増率は次の表のとおりです。

種類
支払う条件
割増率
時間外
(時間外手当・残業手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき
25%以上
時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間等)を超えたとき
25%以上(※1)
時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき(※2)
50%以上(※2)
休日
(休日手当)
法定休日(週1日)に勤務させたとき
35%以上
深夜
(深夜手当)
22~5時までの間に勤務させたとき
25%以上

(※1)25%を超える率とするよう努めることが必要です。
(※2)中小企業については、2023年4月1日から適用となります。

残業代の計算方法について、詳しくはこちらをご覧ください。

残業代の計算方法とは?残業代の基礎知識について弁護士が解説

(2-2)会社に残業代を請求し、交渉

次に、残業代を請求する書面を内容証明郵便で会社に送ります。

内容証明郵便で残業代を請求すると、消滅時効の完成を6ヶ月間阻止することができます(「時効の完成猶予」といいます)。
その6ヶ月の間に裁判などを提起して、「未払い残業代を払いなさい」という判決などが確定すれば、消滅時効のカウントはリセットされ、また1からカウントすることとなります(「時効の更新」といいます)。

先ほどのAさんの事例を見てみます。

Aさんは、X社に2020年4月1日に入社しました。
X社では定時に打刻させてその後も残業を強いるサービス残業が横行しており、Aさんは入社以降毎月、打刻後も残業をし続けていました。
X社の毎月の給料は「月末締め・翌月25日支払い」なのですが、定時に打刻していることを理由に、残業代は1円も支払われていません。
Aさんは残業で疲弊し、2023年3月30日にX社を退職しました。
退職から3ヶ月ほどした2023年6月10日に、Aさんは「転職先の仕事にもそれなりに慣れてきて余裕が出てきたし、今までの残業代をX社から取り戻したい」と考え、残業代請求を扱っている法律事務所へ相談に行きました。

2020年5月分の残業代の消滅時効期間の完成が2023年6月25日に迫ってきているわけですが、2023年6月25日までに内容証明郵便で催告をすれば、時効の完成が6ヶ月後の「2023年12月25日」に延びます。
その間に訴訟などを提起すれば、2020年5月分の残業代が時効にかかるのを防げる可能性があるのです。

催告で時効の完成を阻止できるのは、初回の催告のみであることにはご注意ください。

内容証明郵便で残業代を請求するメリットや方法について、詳しくはこちらをご覧ください。

そして、会社と残業代の支払いについて交渉します。

(2-3)【交渉がまとまらない場合】労働審判や訴訟など

会社が残業代の支払いに応じてくれなかったり、「未払いの残業代もあるが、一部は支払い済みだ」などと言って全額の支払いに応じない場合などには、労働審判や訴訟などといった裁判所での手続きを利用することができます。

労働審判とは、通常の訴訟よりも迅速に終わる可能性のある手続きです。

労働審判と訴訟の違いについて、詳しくはこちらをご覧ください。

労働審判とは?訴訟(裁判)との違いや手続きの流れをわかりやすく解説

残業代請求を弁護士に依頼するメリットとは

残業代請求はご自身で行うことももちろん可能ですが、弁護士に依頼することもできます。
それでは、弁護士に依頼するメリットについてご説明します。

(1)消滅時効をしっかり管理してもらえる

弁護士に依頼するメリットの1つめが、消滅時効をしっかり管理してもらえることです。
繰り返しになりますが、残業代は1ヶ月ごとに消滅時効にかかってしまうおそれがあります。
残業代請求を扱っている弁護士であれば、消滅時効をしっかり把握して、いたずらに残業代が消滅時効にかかることを阻止できる可能性があります。

(2)証拠集めについてサポートを受けられる

証拠集めについても、サポートを受けることができます。
例えば退職前に残業代について弁護士に相談しておけば、「こういった証拠を確保しておくと、残業代を請求するときに心強い」というものをケースに応じてアドバイスしてもらえます。

また、証拠が不十分な場合でも、弁護士が依頼者の代理人として、会社に対して必要な証拠の開示を求めてくれます。
ご自身でかつての勤務先である会社に証拠を請求するのは、必ずしも楽ではないケースもありますので、弁護士がついていると心強いといえます。

さらに、残業時間の証拠が不足している場合でも、残業代請求を扱っている弁護士であれば過去の経験をもとに、一部の証拠をもとに残業の平均時間を求めるなどの方法で残業代請求を成功させられる可能性もあります。

(3)依頼後は、会社と直接交渉しなくて済む

ご自身で残業代を請求する場合、退職した会社と直接交渉する必要があります。
しかし、退職した会社と連絡を取ることは、それ自体ストレスとなりかねません。また、個人からの請求だと会社がまともに取り合わない可能性もあります。

一方、弁護士に残業代請求を依頼して以降は、ご自身が会社と直接交渉する必要はありません。また、弁護士が就くだけでも会社が真摯に交渉に応じるケースもあります。

(4)早期解決につながる可能性がある

また、弁護士に依頼することで、早期解決につながる可能性もあります。
残業代請求を扱っている弁護士がいれば、スムーズに証拠集めや残業代の正確な計算、労働審判や訴訟などの書類準備を進められる可能性があるからです。

このように、残業代請求を弁護士に依頼することには一定のメリットを期待できます。
弁護士に依頼するメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

退職後も残業代は請求できる?弁護士に依頼する3つのメリット

【まとめ】退職後でも残業代を請求できる!消滅時効には要注意

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 残業代請求は、退職後でもできる。退職前に請求すると会社で嫌がらせを受けるおそれもあるが、退職後ならこうした心配は基本的にない。
  • ただし、残業代には消滅時効があるので、なるべく早めに残業代請求をする必要がある。
    • 2020年3月31日までに支払日が来た残業代:2年
    • 2020年4月1日以降に支払日が来た残業代:当面の間は3年
  • 退職後に残業代請求をする場合の流れは、基本的に次のようになる。
    (退職前)証拠を集めておく→(退職後)未払いになっている残業代の計算→会社への請求・交渉→(交渉がまとまらない場合)労働審判や訴訟など
  • 残業代請求を弁護士に依頼するメリットは、主に次の4つ。
    • 消滅時効をしっかり管理してもらえる
    • 証拠集めについてサポートを受けられる
    • 依頼後は、会社と直接交渉しなくて済む
    • 早期解決につながる可能性がある

残業代請求は、残業をした人の正当な権利行使です。
ですが、退職の手続きや転職先での仕事に慣れることなどで忙しくしていると、いつの間にか残業代が消滅時効にかかってしまうおそれがあります。

弁護士にご依頼いただいたとしても、消滅時効期間が完成してしまった分の残業代を取り戻すことはほぼ不可能です。
少しでも多くの残業代を取り戻すために、早めに相談だけでもしてみませんか?

アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。

また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。

※以上につき、2022年8月時点

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