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放っておくと権利が消滅?残業代の時効と更新(中断)について解説

作成日:
kiriu_sakura

「未払い残業代の請求はいつまでにしなければならないのかな?」

実は、 未払い残業代を請求する権利は、一定の期間が経過すると、「消滅時効」によって消滅することがあります。
もっとも、 消滅時効を止める方法もあります。

このことを知っていれば、未払い残業代を請求する権利を消滅時効によって失ってしまうことを防ぐことができます。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 未払い残業代請求の「消滅時効」とは何か
  • 残業代請求権の消滅時効を止めるための方法
  • 未払い残業代請求の方法
  • 未払い残業代請求を弁護士に相談・依頼するメリット
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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未払い残業代請求の「消滅時効」とは?

未払い残業代請求には「消滅時効」があります。
これにより、一度残業代を請求する権利を得たとしても、その権利を失ってしまうことがあります。

そこで、次のことについてご説明します。

  • 「消滅時効」で権利が消滅してしまうこと
  • 残業代請求の消滅時効期間

(1)未払い残業代の請求権は「消滅時効」により消滅することがある

未払い残業代の請求権は、「消滅時効」により消滅してしまい、請求できなくなってしまうことがあります。

未払い残業代請求の「消滅時効」(民法166条)とは、残業代請求をする権利を持っていたとしてもその権利を行使しないまま一定の期間が経ってしまったら、残業代請求をする権利が消滅してしまい、もはや請求できなくなるという制度のことです。

消滅時効という制度がなぜ認められているのか、疑問に思われるかもしれません。
権利を持っている以上は、いつ行使するかは自由だというようにも思えます。

しかし、権利者が権利を持っていてもいつまで経っても権利を行使しない状態が続いていたら、権利に対して義務を負う者は「もう権利を行使されることはないだろう」と期待することが考えられます。

また、義務を負う者にとってはいつ請求されるのか分からない状態がずっと続いたままとなってしまいます。
このようなことから、法律上、消滅時効によって権利が消滅することがあるという制度が取り入れられています。

(2)消滅時効による権利消滅を主張するには時効の「援用」が必要

消滅時効によって権利が消滅したことを主張するためには、時効の効果を主張する人(残業代請求の場合は会社)が消滅時効を「援用」しなければなりません。

「援用」とは、消滅時効による利益を受けることを外部に明らかにすることです。
たとえ消滅時効が完成したとしても、援用をしなければ、消滅時効により権利が消滅したことを主張できません。

これは、消滅時効が完成しても、権利の消滅を主張しないで義務を果たそうとする人もいることから、義務者が義務を果たそうというのであればそれを尊重しようということから設けられている制度です。

このことから、たとえ消滅時効が完成した後に残業代請求をしたとしても会社が時効の援用をしないで任意に支払う場合には、残業代を支払ってもらえることがあり得ます。

(3)未払い残業代請求の消滅時効期間は「2年」または「3年」

未払い残業代請求の消滅時効が完成するにはどれだけの期間が経たなければならないのか、具体的に見てみましょう。

残業代は、「賃金」の一種です。
そして、法律上、賃金の請求権の消滅時効期間は原則として5年とされています(労働基準法115条)。
もっとも、この5年間という期間は、労働基準法が改正されたことにより元々の期間が延長されたものです。
このため、制度変更の経過措置としてしばらくの間は消滅時効期間が3年とされています。
さらに、法律改正の日である2020年4月1日より前に支払日が到来している残業代請求権については、時効期間は2年です。

この消滅時効期間は、残業代の場合、各残業代が支払われるべき日(賃金支払日)から数え始めます。
残業代についての賃金支払日から2年や3年が経過すると、消滅時効が成立するのです。

(4)具体例

具体例を見てみましょう。

たとえば、賃金の支払が次のような条件だったとします。

  • 月末締め
  • 翌月25日払い

この会社での残業代の消滅時効については、次のとおりとなります。

まず、2021年11月中に発生した残業代は2021年12月25日が支払われるべき日です。
そうすると、2021年12月25日から3年後の2024年12月25日が過ぎることで、2021年11月分の残業代について消滅時効が完成します(時効期間を数える場合には、初日は算入しません)。
これにより、2024年12月25日の経過をもって2021年11月分の残業代は原則として請求できないということになるのです。

このように、 たとえ残業代が発生していたとしても、2年や3年などの消滅時効期間が経過するごとに毎月次々に残業代請求権が時効で消滅していってしまいます。
せっかく頑張って残業をしてきたのに、長い間残業代を請求しなかったばかりにもう請求できないということになるのは、とてももったいないことですよね。
残業代請求をするのであれば、 少しでも早く残業代請求を行い、時効で消滅するよりも前に残業代を支払ってもらうようにすると良いでしょう。

残業代請求権の消滅時効を止めるための方法

残業代請求権は、ここまでにご説明したとおり、2年や3年が経過することで消滅時効が完成します。
しかし、消滅時効の完成前であれば、残業代請求権の時効を止めるための方法があります。

残業代請求権の時効を止めるための方法は、次の2つです。

  • 消滅時効の「更新(中断)」の手続きをとる
  • 消滅時効の「完成猶予(停止)」の手続きをとる

これらについてご説明します。

(1)消滅時効の「更新(中断)」の手続きをとる

消滅時効の「更新(中断)」とは、時効が進むのを止めることです。
消滅時効の更新(中断)があると、その時点で時効の進行はリセットされます。
更新(中断)により時効の進行がリセットされると、その時から新たに消滅時効が進み始めます。
このため、更新(中断)があった時からあらためて消滅時効期間が経過しない限りは、消滅時効が完成しないということになります。

なお、2020年4月の民法改正により消滅時効の「中断」という用語が「更新」という用語に置き換えられることとなりましたが、ここでは基本的には同じような意味だと考えてかまいません。

消滅時効の更新(中断)の手続きには、次の3つがあります。

  • 承認
  • 裁判上の請求
  • 強制執行等の終了

これらについてご説明します。

(1-1)承認

未払い残業代請求における「承認」(民法152条1項)とは、義務を負う者(残業代請求では、会社)が、「労働者には残業代を請求する権利がある」ということを認めることです。

会社が、労働者の残業代請求権があることを承認した場合には、承認をした時点で消滅時効が更新(中断)し、その時点ですでに進んでいた消滅時効期間がリセットされます。

承認は、書面や口頭ですることができます。
もっとも、承認をしたということが証拠として残らなければ、後で争いになった時に承認があったことを証明することができません。
ですから、会社が残業代の支払義務について承認するのであれば、そのことを書面の形に残してもらうようにしましょう。

また、会社の代表者等が口頭で承認をした場合には、そのことを録音しておくことでも証拠とすることが可能な場合があります。

(1-2)裁判上の請求

未払い残業代請求における「裁判上の請求」(民法147条1項)とは、会社に対して裁判を起こしたり労働審判を申立てたりするなど裁判所を通して残業代を請求することです。
裁判所を通さないで自ら残業代を請求しても、消滅時効の更新(中断)は認められません。

裁判を起こすなどすると、裁判の途中で元の消滅時効期間が経過することとなってしまっても、裁判の最中は消滅時効が完成しません。

裁判の結果として判決などにより残業代請求権があることが確定したときには、その時点で消滅時効が更新(中断)されます。

(1-3)強制執行等の終了

未払い残業代請求における「強制執行等の終了」(民法148条1項)とは、「強制執行」などが行われ、それが終わることです。
「強制執行」とは、権利に基づいて強制的に義務を負う者からお金などを取り立てる裁判所を通した手続きのことです。

強制執行等の終了があったときには、消滅時効は更新(中断)します。

(2)消滅時効の「完成猶予(停止)」の手続きをとる

消滅時効の「完成猶予(停止)」とは、時効が進むのを一時的に止めることです。
消滅時効の完成猶予(停止)があった場合には、更新(中断)とは異なり、消滅時効期間はリセットされません。
しかし、一定の期間、消滅時効の完成を防ぎ、消滅時効期間を延ばすことができます。

なお、2020年4月の民法改正により消滅時効の「停止」という用語が「完成猶予」という用語に置き換えられることとなりましたが、ここでは基本的には同じような意味だと考えてかまいません。

消滅時効の完成猶予(停止)の手続きには、主に次の2つがあります。

  • 催告
  • 協議を行う旨の合意

これらについてご説明します。

(2-1)催告

未払い残業代請求における「催告」(民法150条1項)とは、内容証明郵便によって残業代請求をするなど、裁判所を通さない形などで会社に対して残業代を請求することです(なお、訴訟提起したものの、その訴えを取り下げたときは、裁判所を通した催告として扱われます)。

会社に対して催告をすると、催告をした時から6ヶ月が過ぎるまでの間は、時効が完成しません。

実務上は、取り急ぎ会社に対して内容証明郵便を送ることなどによってまず「催告」をして時効の完成を猶予(停止)させます。
そして、催告の時から6ヶ月以内に残業代請求の証拠資料収集や未払い残業代の額の計算などを行い、会社と交渉を行います。
会社との交渉で納得のいく額の残業代が支払われなければ、この6ヶ月以内に労働審判を申立てるなどして「裁判上の請求」をします。

催告で時効の完成が猶予(停止)されるならば、何度も催告を繰り返せばずっと時効をとめられそうですね。

いいえ、そうではありません。
催告によって時効の完成が猶予されている間に再び催告をしても、2回目以降の催告には時効の完成猶予(停止)の効果が生じません(民法150条2項)。
ですから、最初の催告の間に、場合によっては裁判を起こせるというだけの準備をする必要があります。
このため、最初の催告をいつするのかというのが重要なポイントになってくるのです。

(2-2)協議を行う旨の合意

未払い残業代請求において「協議を行う旨の合意」(民法151条1項)とは、残業代を請求する権利についての協議(話し合い)を行う旨の合意を書面によってすることです。

協議を行う旨の合意が書面でなされたときには、次のいずれか早い時までの間は、時効の完成が猶予(停止)されます。

  • 合意があった時から1年を過ぎた時
  • 合意において協議を行う期間(1年未満のものに限られます)を定めた場合には、その期間が過ぎた時
  • 会社または労働者の一方から相手方に対して協議を続けることを拒絶する旨の通知が書面でなされた場合には、その通知の時から6ヶ月が過ぎた時

なお、協議を行う旨の合意により時効の完成が猶予(停止)されている間に、再度協議を行う旨を合意したときは、さらに時効の完成が猶予(停止)されます。
もっとも、この方法により時効の完成を猶予(停止)させるのは、通算5年を超えることはできません(民法151条2項)。
また、既に上記の「催告」をしていると、協議を行うことの合意により時効の完成を猶予することはできません(民法151条3項)。

準備ができたら会社に未払い残業代を請求しよう

消滅時効の更新(中断)や完成猶予(停止)によって、消滅時効が完成しないようにしている間に、会社に対して未払い残業代請求をする準備を行います。
そして、準備ができたら、会社に対して未払い残業代請求をしましょう。

未払い残業代請求の方法には、次のものがあります。

  • 会社に直接申し入れて交渉する
  • 労働審判を申立てたり裁判を起こしたりする

通常は、いきなり裁判を起こしたりするのではありません。
まず、会社に対して未払い残業代を支払うように申し入れて交渉をします。

そのうえで、会社が納得できる額の残業代を支払ってくれない場合に、初めて労働審判を申立てるなど裁判手続きをとります。
この場合、時効によって毎月の残業代が消滅しそうになっていることも多いことから、催告の効果が切れないうちに(時効の完成が猶予されているうちに)交渉を切り上げて裁判上の請求に移ることとなります。

(1)未払い残業代請求は弁護士に相談・依頼するという選択肢もある

ご自身で会社と交渉をして残業代を支払ってもらえれば、それが一番ですよね。
ですが、残念ながら、ご自身での交渉には会社が真剣に応じてくれないということも少なくありません。
そして、交渉が難航する内に、時効になってしまう可能性もあります。
早めに弁護士に相談・依頼すれば、弁護士が時間をかけて交渉に臨むことができます。
そのため、早めに弁護士への相談・依頼するとよいでしょう。

(2)未払い残業代請求を弁護士に相談・依頼するメリット

未払い残業代請求を弁護士に相談・依頼するメリットには、次のようなものがあります。

  • 弁護士があなたの代わりに会社との交渉を行ってくれるので、会社と交渉するストレスが軽減される。
  • 弁護士が時効の更新・完成猶予のための手続きを行うことで、手続きの不備なく確実に時効をとめることができる。
  • 弁護士があなたの代わりに会社と交渉を行うことで、会社がより真剣に対応してくれる可能性が高まる。
  • どのような資料を証拠として集めれば良いのかアドバイスしてくれたり、複雑な残業代計算を代わりに行ってくれる。
  • 仮に労働審判を起こすことになったとしても、弁護士が一緒に出頭してサポートしてくれる。
    また、訴訟の場合には、一部の手続きを除いて弁護士が代わりに出頭するなど手続きを進めてくれる。

【まとめ】放っておくと時効消滅の危険があるので早めの対処を

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 未払い残業代請求には「消滅時効」がある。
    消滅時効が完成すると、残業代請求権を失ってしまうことがある。
  • 未払い残業代請求の消滅時効期間は、2020年4月より前に支払日が到来するものは「2年」、または2020年4月以降に支払日が到来するものは「3年」。
  • 残業代請求権の時効を止める方法としては、消滅時効をリセットする「更新(中断)」の手続きをとる方法や、消滅時効を一時的にとめる「完成猶予(停止)」の手続きをとる方法がある。
  • 消滅時効の更新(中断)の手続きには次の3つがある。
    1. 承認
    2. 裁判上の請求
    3. 強制執行等の終了
  • 消滅時効の完成猶予(停止)の手続きには主に次の2つがある。
    1. 催告
    2. 協議を行う旨の合意
  • 消滅時効の更新(中断)や完成猶予(停止)によって、消滅時効が完成しないようにしている間に、会社に対して未払い残業代請求をする準備を行い、準備ができたら未払い残業代請求をする。
  • 未払い残業代の請求は、弁護士に相談・依頼するという選択肢もある。
    弁護士に相談・依頼するメリットとしては、弁護士があなたの代わりに会社との交渉を行ってくれるので、会社と交渉するストレスが軽減されることや、弁護士が代わりに交渉を行ってくれることで会社がより真剣に対応してくれる可能性が高まることなどがある。

せっかく頑張って残業を続けてきたのに、本来もらえたはずの残業代が時効で消滅してしまってもらえなくなってしまったら、それはとても残念なことですよね。
もらえるはずの残業代は全部もらいたいものです。
そのためにも、残業代請求権が時効で消滅してしまわないように、しっかりと対応することが大切です。

時効の更新(中断)や完成猶予(停止)のための手続きは、不備なく確実に行うことが大切です。
もしも手続きをとったつもりが適切にできていなかった場合には、更新(中断)や完成猶予(停止)の効果が生じずに残業代が時効で消滅してしまうということにもなりかねません。
このため、これらの手続きは、法律の知識や経験が十分にある弁護士に依頼すると安心です。

アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した残業代からのお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。

また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年8月時点

残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。

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