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年俸制だと残業代がもらえない?計算例と請求方法について解説

作成日:更新日:
kiriu_sakura

「自分は年俸制だから、残業代は出ないよなあ……。」
いいえ、そんなことはありません。

年俸制の場合でも残業代は発生します。
賃金の支給方法が違うだけで、労働時間や割増賃金に関する規定の適用は、月給制などの場合と同様だからです。

年俸制と残業代の関係について理解を深めておけば、年俸制を理由にもらえるべきものをもらいそこねて損をするような事態を防ぐことができます。

そこで、今回の記事では

  • 年俸制とは?
  • 年俸制でも残業代が出るのが原則であること
  • 年俸制で残業代が出ない例外的なケース
  • 残業代の計算方法
  • 年俸制と残業代に関する判例

といった点について、解説いたします。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

年俸制とは?

年俸制とは、賃金の全部または相当部分が年単位で決められる賃金制度のことをいいます。

近年は、一般の会社員に対しても年俸制を採用する企業が増えています。
年功序列の賃金制度が見直され、成果が報酬に反映される制度によって従業員のモチベーションアップが期待されるほか、求人の際に年俸表示の方が賃金が高く見えることで応募が集まりやすい、などという事情も増加の背景にあるとされています。

年俸制でも残業代は出る

年俸制が導入されている場合、賃金は年間を通して一律であって、「残業代が出ない」という誤解がされていることが多いようです。

しかし、年俸制が採用されている場合であっても、使用者と雇用契約を結んでいる被雇用者が、労働基準法上の「労働者」であることには変わりがありません。

したがって、労働基準法が労働者を保護する規定は、年俸制の労働者にも適用され、法定労働時間や割増賃金に関する規定についても、月給制の場合と同様に考えられることになります。

法定労働時間とは、労働基準法32条で規定されている労働時間の上限の定めのことをいい、原則として「1日8時間・1週40時間」とされています。
この法定労働時間を超える労働のことを「時間外労働」といい、時間外労働が行われた場合には割増賃金が支払われることになります。

1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法32条

年俸制を採用している場合、日々タイムカードを押さないなど、出退勤の時間を記録しないことがありますが、割増賃金を労働時間の把握のためにも、自分で出退勤の記録を付けておいた方が良いでしょう。

年俸制で残業代が出ないケース

年俸制においても、残業代が支払われないケースがあります。
ここでは、そのようなケースについて解説いたします。

(1)固定残業代制度を利用し年俸に残業代が含まれるケース

「みなし残業代制」ともいわれる固定残業代制度を採用している場合、年俸額に残業代が含まれている可能性があります。
例えば、雇用契約の中に、「年俸には1ヶ月あたり○時間、○万円分の残業代が含まれる」などという約定がある場合、固定残業代制度を採用しており、すでに支払い済みであるとの理由から、残業代が支払われないことがあります。

しかし、このような場合でも、雇用契約で定められた、固定残業代に相当する残業時間を実際の労働時間が超える場合には、超えた部分に対して、別途割増賃金が支払われる必要があります。

また、固定残業代制度を採用するには、あらかじめ被雇用者との間で固定残業代制度を採用することについての合意が必要です。
さらにこれに加え、基本給等の通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分とが判別できることが必要とされます(例えば、基本給に固定残業代を含めて支給するのであれば、基本給のうちいくらが固定残業代なのかが明確にされている必要があります。これを一般に明確区分性といいます)。

(2)管理監督者である場合

労働基準法41条2号の規定によって、管理監督者(「監督若しくは管理の地位にある者」)に対しては、労働基準法が定める労働時間・休憩・休日に関する規制の適用が除外されます。
そのため、使用者は時間外労働や休日労働に対して割増賃金の支払いをする義務がありません(深夜労働に対しては割増賃金を支払う義務があります)。

「管理監督者」とは、行政解釈によれば、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」のことをいうとされています。またそれは、名称や肩書き、就業規則の定めのいかんにとらわれず、実態に即して客観的に判断されるべきであるとされます。

つまり、課長や部長等の肩書きが与えられていても、職務内容や勤務上の裁量等の点からみて管理監督者に相当する実態がない場合には、管理監督者に該当しません(いわゆる「名ばかり管理職」)。

具体的には、裁判例などでは、次のことを考慮して、管理監督者該当性が判断されます。

  • 経営者と一体性を持つような職務権限を有しているか(職務権限)、
  • 厳密な時間管理を受けず、自己の勤務時間に対する自由裁量を有しているか(勤務態様)、
  • その地位にふさわしい待遇を受けているか(待遇)

これらの実態がないとして管理監督者にあたらないと判断されれば、労働時間・休憩・休日に関する規制が、通常の労働者と同様に適用されることになり、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の支払いも必要となります。

参考:東京地裁判決平成20年1月28日労判953号10頁(日本マクドナルド事件)|裁判所- Courts in Japan

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

管理職に残業代は出ないもの?名ばかり管理職の残業についても解説

(3)個人事業主である場合

会社との間で、雇用契約ではなく業務委託契約を結んでいる場合、「個人事業主」(受託者)となり、「労働者」ではありません。
そのため、年単位で会社から支払われる金額が決められていたとしても、労働基準法が適用されず、残業代は支払われません。

雇用契約なのか業務委託契約なのかについては、契約の名称ではなく、指揮命令関係の有無によって実質的に決まることになります。業務遂行上、会社の決めた具体的なルールに従う必要がある場合や、会社の命令により業務に従事している場合は、指揮命令下に置かれている(=雇用契約である)ことが認められやすいとされています。

年俸制の残業代計算方法

それでは、年俸制における残業代の計算方法について解説していきましょう。
基本的な計算式は以下のとおりとなっています。

残業代=基礎時給×残業時間×割増率

(1)手順1|基礎時給を算出する

基礎時給とは、1時間あたりの賃金のことをいい、以下の計算式で算出することができます。

基礎時給=年俸額÷年間所定労働時間

計算例
年俸額600万円÷年間所定労働時間2040時間=基礎時給 約2900円

(2)手順2|残業時間を割り出す

次に、実際に法定労働時間を超えて働いた分の残業時間を割り出します。
タイムカードや出勤簿から計算するのが一般的ですが、そうした資料がない場合は、業務メールの送受信履歴や、日記等のメモ、Suicaなどの交通系ICカードの利用履歴なども活用しながら、残業時間を割り出すと良いでしょう。

(3)手順3|割増率をかける

割増賃金の割増率は、労働条件により異なります。
一般的な「時間外労働」では1.25倍、休日労働(法定休日に行われる労働)では1.35倍、深夜労働(22~5時までに行われる労働)では1.25倍、などとなっています。

引用:しっかりマスター労働基準法 割増賃金編|厚生労働省 東京労働局

年俸制の残業代に関する判例

最後に、年俸制における残業代について最高裁まで争われた近時の判例(最高裁判決平成29年7月7日)をご紹介いたします。
本事案においては、固定残業代のところでご説明した「明確区分性の適用の有無」が問題とされました。

40代外科医の原告は、年俸1700万円の条件で医療法人と雇用契約を結んでいました。
この雇用契約においては、時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意(以下「本件合意」)がされていました。

すなわち、年俸の中に組み入れられる形で固定残業代が定められていたことになります。
もっとも、具体的な金額やどの部分が残業代にあたるかなどは明記されていませんでした。

当該医師が勤務していた病院を解雇されることになり、解雇の有効性を争うとともに、時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金(並びにこれに係る付加金)の支払い等を医療法人に対して請求したのがこの事案です。

第2審の東京高裁は、

本件合意は、上告人の医師としての業務の特質に照らして合理性があり、上告人が労務の提供について自らの裁量で律することができたことや上告人の給与額が相当高額であったこと等からも、労働者としての保護に欠けるおそれはなく、上告人の月額給与のうち割増賃金に当たる部分を判別することができないからといって不都合はない。

として、割増賃金は年俸の中に含めて支払われたものといえると判断し、原告の請求を棄却しました。

しかし、最高裁ではこの判断がくつがえります。
割増賃金を基本給等に含めて支払う方法は認められるとしながら、

割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては、…労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要」「被上告人の上告人に対する年俸の支払により、上告人の時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない。

として、控訴審判決を破棄しました。

高裁では給与の高さも考慮されて、割増賃金の部分が判別できない形での年俸への組み入れが容認されましたが、最高裁では、給与の高低について考慮することなく、年俸のうち割増賃金にあたる部分が判別できなければ、割増賃金が支払われたとはいえないと判断されたのです。

参考:最高裁判決平成29年7月7日・集民256号31頁|裁判所 – Courts in Japan

【まとめ】年俸制でも残業代は支払われる

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 年俸制とは、賃金の全部または相当部分を年単位で決定する賃金制度である。
  • 年俸制であっても、残業代をもらえるケースがある。
  • 年俸制においても、残業代は「基礎時給×残業時間×割増率」で求められる。
  • 年俸制の雇用契約の内容があいまいで残業代の支払いをめぐって争いになることがある。

判例では、割増賃金(残業代)を年俸に組み入れて支払う制度を採る場合には割増賃金に当たる部分を明確にする必要があることが確認されている。

年俸制を採用していても、未払いの割り増し賃金(残業代)が発生しているケースがあります。
年俸制に関する残業代の未払いでお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

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