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交通事故に妊婦が巻き込まれた場合の示談交渉や損害賠償請求について

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Mさんは、夫の運転する車で病院の妊婦健診に向かう途中、後方から来た車に追突されケガを負ってしまいました。幸い、Mさんのケガは大事には至らなかったものの、追突の瞬間、腹部をシートベルトで強く締め付けられたため、おなかの中の赤ちゃんに影響がないかとても心配です。
この記事では、妊婦の方が交通事故に巻き込まれてしまった場合、

  • 事故後になすべきこと
  • 事故の相手方と示談交渉をする際のポイント
  • 事故の相手方に請求できる慰謝料

について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後,岡﨑支店長,家事部門の統括者を経て,2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

妊婦が追突事故に巻き込まれた際の対応

以下ではまず、妊娠中に追突事故に巻き込まれてしまった際の対応について解説します。

(1)事故の相手方・警察に妊娠中であることを伝える

事故直後は、可能であれば車を安全な場所に移動しましょう。
ケガ人がいる場合は119番通報をして救急車を呼びます。
また、交通事故が起きた際は警察に連絡することが道路交通法で義務付けられています(道路交通法72条1項)。110番通報も必ず行いましょう。
110番通報すると、後に警察官が現場に到着します。その際、たとえ軽傷であっても人身事故として届け出るようにしましょう。物損事故として届け出てしまうと、後に事故の相手方に対して慰謝料などを請求できなくなることがあります。
事故の相手方や警察には妊娠中であることを伝えておきましょう。相手方にも伝えておくことにより、産婦人科などでの妊婦特有の治療費を請求する際、相手側が「そんなことは聞いていない」とトラブルになるのを防止することができます。
また、ご自身が加入している自動車保険会社にも連絡し、後で述べる弁護士費用特約が付いているかなどを確認するとよいでしょう。

(2)症状がなくてもすぐに医師の診察を受ける

事故により痛みなどの症状が生じた場合は、現場で救急車を呼びましょう。
すぐに痛みがなくても、時間が経ってから症状が現れるケースがあります。また、おなかの中の胎児にダメージが生じている可能性もあります。
可能な限り事故当日、遅くとも翌日には受診することをおすすめします。
なお、ケガの部位に関連する診療科とともに、産婦人科も受診しておくべきです。後日、治療費についてはいずれも事故の相手方に請求できます。
麻酔や投薬などは、種類によって妊娠中は避けるべきものもあります。医師の診察の際には、妊娠していることを必ず伝えましょう。

妊娠中に負った交通事故のケガの検査と治療について

では次に、妊娠中に交通事故で負ったケガの検査と治療について、その内容と留意点を解説します。

(1)妊娠中の検査について

レントゲン撮影やCT検査などの放射線の照射を伴う検査については、おなかの子どもへの影響が気になるところですが、一般にこれらの検査はおなかの子どもに重大な危険を及ぼすものではないとされています。

とはいえ、胎児は放射線をできるだけ浴びない方がベターですから、母体の腰部・腹部のXP(レントゲン)やCTは、母体や胎児への必要性がない限りは避けるのが通常です。
もっとも、母体の腹部を遮蔽した頭頚部(=頭や首の部分)のXPは撮影されることが多いですし、激しい事故で母体が頭部を強打していた場合には、頭部CTは撮影せざるを得ないと思われます。

造影剤を使用しない単純MRIは、胎児に影響がなかったという海外の報告もありますが、現状、胎児への安全性が確保(確認)されていないとして、妊娠中の方には原則としてMRI検査は実施されません。なお、造影剤は悪影響があることが報告されており、禁忌(=避ける)となっています。

参考:妊娠と医療での放射線について|公益社団法人 日本放射線技術学会

検査や治療に不安がある場合は遠慮なく医師に相談しましょう。

(2)妊娠中の治療について

上で説明した通り、妊娠中の方は、検査にも治療にも制限があります。痛み止めは神経に作用する薬ですし、消炎剤やシップ薬にも血管を収縮させる作用があるものがありますので、胎盤を通って胎児に作用するものは禁忌となります。一般的に、妊娠中の被害者には、かなり弱い薬しか処方されません。

安定期であれば、整形外科での理学療法や接骨院での施術に対する制限は少ないと思われますが、定期的に通われる妊娠中の方は少数です。そもそも病院は、病気やケガの人が行くところですので、感染症を避けるため、妊娠中の女性は産婦人科以外の通院を避けることが多いということもあります。

交通事故にあわれた妊娠中の方は、整形外科にも接骨院にも通常の被害者のように通院できず、消炎鎮痛剤で痛みを抑えることもできず、非常に辛い思いをされることとなります。

(3)妊娠中の不安について

妊娠中の方が追突事故にあうと、妊娠初期の場合には衝撃で流産されてしまうこともあり得ますし、安定期以降でも、不正出血や切迫流産でしばらく産婦人科に入院されたりすることはよくあります。激しい事故で、破水して早産となることもあります。
ですので、妊娠中に交通事故にあわれるのはもちろん非常に危険なことと言えます。

しかし、事故後、それらのはっきりした受傷が無い限りは、胎児の健康にはそれほど心配される必要はないと考えます。胎児は羊水に浮かんでおり、母体によって外部の衝撃から保護されています。動物の母親は妊娠中にも走り回りますし、多少の衝撃で胎児に悪影響がでることはないと言っていいでしょう。

むしろ、母親が気に病み、ストレスを抱えることの方が、胎児の健康に悪影響となる恐れがあります。事故にあってしまったご自分を責めずに、楽天的にされるのが、母体にも胎児にも一番だと思います。

早い段階で弁護士に相談されることも、不安やストレスを減らす一つの方法です。

妊婦が追突事故の示談交渉をする際のポイント

次に、妊婦の方が事故の相手方(加害者)と示談交渉を進める際に押さえるべきポイントを解説します。

(1)示談交渉は出産後に行なう

妊娠中に交通事故にあった場合、示談交渉は「出産後」に進めるようにしましょう。
なぜなら、たとえ病院の検査でおなかの中の子どもに異常がないと診断されたとしても、実際に出産が済むまではその影響の有無は分からないからです。
そのため、出産が終わってから示談交渉を行なうべきです。
事故の相手方(通常は、相手方が加入する保険会社が交渉相手となります)へは、出産が済むまで示談はしない旨を伝えておきましょう。相手方は、急いで出産前に示談交渉を求めてくることもありますが、その場合は「いまは妊娠中で話し合いができないため、出産後に話し合いをします」と断ってかまいません。

(2)弁護士費用特約が利用できるかを確認する

被害者ご自身もしくは一定のご親族等が自動車(任意)保険に加入している場合は、その保険会社に連絡し、被害者ご自身に「弁護士費用特約」が利用できるかを確認しておきましょう。

弁護士費用特約とは、弁護士への相談・依頼の費用を一定限度額まで保険会社が補償する仕組みです。この弁護士費用特約を利用すると、実質的に無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。

ここで注意が必要なのは、「弁護士費用特約」は自身が任意保険に加入している場合だけ利用できるのではない、という点です。

すなわち、

  1. 配偶者
  2. 同居の親族
  3. ご自身が未婚の場合、別居の両親
  4. 被害事故に遭った車両の所有者

のいずれかが任意保険に弁護士費用特約をつけていれば、被害者ご自身も弁護士費用特約の利用が可能であることが通常です。

妊娠中の心身にかかる負担を少しでも軽減するため、相手方との示談交渉などは弁護士費用特約を活用し弁護士に依頼することをおすすめします。

損害賠償請求の時効は5年

交通事故でケガなどの被害を受けた場合、生じた損害について、事故の相手方に対し次のような損害賠償を請求することができます。
もっとも、時効により請求できなくなることがあるので注意が必要です。

(1)相手方に請求できる損害賠償の種類

  • 治療費
  • 通院した際の交通費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益
  • 死亡慰謝料

など

これらについて、以下簡単に説明します。
通院した際の交通費については、電車やバスなど公共交通機関を利用した場合はもちろん、必要性が認められればタクシー代も請求できる場合があります。タクシー代を請求する際は必ず領収書を残しておきましょう。
休業損害(=ケガで仕事を休んだことによって減った収入)については、事故前3ヶ月の収入をもとに金額が計算されます。専業主婦であっても請求することができ、自賠責基準では日額6100円(2020年4月1日以降に起きた事故の場合)、賃金センサス(=賃金の標準値)をもとに算出する場合は日額1万630円となります(2019年における金額)。
入通院慰謝料は、事故により入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する賠償です(傷害慰謝料とも呼ばれます)。
逸失利益とは、事故により死亡または後遺障害が残った場合に、それにより得られなくなった将来の収入です。
後遺障害慰謝料・死亡慰謝料は、後遺障害を負ったことや死亡したことについての精神的苦痛に対する賠償です。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

交通事故における慰謝料の相場や計算方法、請求手順について詳しく解説

(2)むち打ち症の慰謝料について

妊娠中の被害者は、整形外科に定期的に通院することが難しいため、産婦人科の通院日数を加えても、合計の実通院日数が少なくなります。

自賠責保険や、加害者側の保険会社は、機械的に実通院日数から慰謝料を算定することがありますので、その場合には、慰謝料がかなり低く算定されてしまいます。

(3)むち打ち症の後遺障害等級認定について

妊娠中の被害者は、CTやMRI撮影に制限がありますし、整形外科に定期的に通院することが難しいため、産婦人科の通院日数を加えても、合計の実通院日数が少なくなります。

自賠責保険は、追突事故によるむち打ち症の後遺障害の等級認定の際に、12級13号についてMRI画像と腱反射の異常、14級9号についてMRI画像、実通院日数、処方された薬の状況などを主な材料にします。

妊娠中の被害者は、どれほど痛みやしびれがあっても、MRI画像を撮影できず、通院も少なく、薬も弱いものになりますので、自賠責保険からみたときに、後遺障害等級認定の材料が乏しくなってしまい、等級認定されにくい傾向があります。

(4)損害賠償請求の時効

これらの損害賠償請求は、事故後いつまでもできるというわけではありません。民法上、時効(=一定の期間の経過により、権利が消滅すること)という制度があるためです。
人身事故の場合の損害賠償請求の時効期間は「損害および加害者を知った時から5年」とされています(民法724条1号・724条の2)。
通常は事故日から5年、後遺障害慰謝料・死亡慰謝料については症状固定日・死亡日からそれぞれ5年となります。(※)

(※)2020年4月1日以降に起きた事故の場合です。それより前に起きた事故の場合は、上記の「5年」はいずれも「3年」となります。

早産した場合などの損害賠償請求

交通事故が原因で早産となったり、生まれた子どもに何らかの後遺症が残ってしまった場合、事故の相手方に対して次のような損賠賠償も請求することができます。

(1)早産した場合

交通事故が原因で早産となった場合、早産のためにかかった入院費や治療費を請求できます。

また、交通事故がなければきちんとおなかで胎児を育てて満期産できたのに、早産させられることは不本意ですし、胎児の健康にも望ましいことではありませんので、早産で必要となった治療期間に対応する入通院慰謝料を請求できます。

満期産で想定される入通院との差分を想定するかは、事案によると思われます。

(2)子どもに後遺症が残った場合

事故の衝撃や、事故原因での早産のために、生まれた子どもに後遺症(=何らかの症状が固定してしまうこと)が生じた場合、所定の機関(損害保険料率算出機構など)により後遺障害が認定され、かつ障害と交通事故との間の因果関係が認められれば、事故の相手方に対して後遺障害慰謝料や逸失利益なども請求できるようになります。

胎児期の交通事故原因の後遺症としては、事故時の胎児脳内出血、早産時の低酸素脳症、未熟児網膜症などが考えられますが、非常に稀です。

なお、胎児はおなかの中にいる時点では損害賠償を請求することはできませんが、生まれた後はこれを請求する権利が生じます。事故にあったのが出産前であっても、事故により何らかの障害などが生じてしまった場合は、生まれた後に加害者に対して後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求できるのです(民法721条。なお、通常は親が代理して請求することになります)。

(3)因果関係の証明は難しいことも

もっとも、交通事故と早産・後遺症との因果関係については、交通事故以外の理由による可能性も考えられ、証明するのが難しくなります。

事故の衝撃で破水した場合には早産との因果関係は明らかですが、事故直後は切迫流産・不正出血で、1ヶ月の入院治療後に早産となったような場合には医師の判断に依存します。

事故直後の胎児脳内出血についても、正常な新生児にも小さな脳内出血が見られることはありほとんどは自然治癒しますので、脳内出血が事故原因かどうか、成長に悪影響があるのかどうかは難しい議論となります。
また、早産時の難産や新生児集中治療室(NICU)で起きる後遺症は、交通事故と医療過誤との共同不法行為かどうかの検討が必要となります。

この因果関係を証明するためには、法律的な知識と医学的な知識の両面と、多くの労力を要します。妊娠中・出産後の負担を減らすためにも、特に後遺障害慰謝料や逸失利益の請求については弁護士に依頼することをおすすめします。

中絶・流産した場合の慰謝料請求

交通事故が原因で中絶・流産してしまった場合、胎児が賠償を受けることはできません。もっとも、母親や父親が、子どもを失ったことについての慰謝料を請求することができます。

交通事故により中絶・流産をした母親の慰謝料金額は、精神的苦痛の大きさを考慮し、通常の場合の慰謝料より高額となる傾向にあります。
慰謝料の金額は、次のような場合に高くなる傾向があります。

  • 妊娠後期で出産が間近だった場合
  • 初産の場合
  • 他に子どもがいない場合
  • 中絶や流産により、将来妊娠が困難になった場合

母体の将来の妊娠が不可能になったり、困難になった場合には、自賠責保険の後遺障害等級が認定される可能性があります(妊娠不可能:第7級13号、妊娠困難:第9級17号)。

なお、父親については中絶・流産した本人ではないため慰謝料が認められにくい傾向にあります。ただし、被った精神的苦痛の度合いによっては慰謝料が認められる場合もあります。

胎児が生まれる前に死亡した場合、民法上の評価としては「胎児が殺された」のではなく、あくまでも「母親が重いケガをした」という範囲の評価となります(民法3条1項)。
これは、ご両親には非常に冷たい扱いに感じられるかもしれませんが、戦前からの確定した法律の運用ですので、ほぼ変更されることはないと思われます。

【まとめ】妊娠中の追突事故による慰謝料請求でお悩みの方は弁護士にご相談ください

妊娠中に追突事故にあった場合は、症状の有無にかかわらずすぐに医療機関を受診しましょう。早期に適切な治療を受け、母子の健康を守ることが何より大切です。
事故の相手方・警察・医師などには妊娠中であることを必ず伝えておきましょう。
事故の相手方との示談交渉は、出産後に進めるようにしましょう。
妊娠中の事故の場合、入通院慰謝料の算定や、後遺障害の等級認定で不利になることがあります。
相手方との示談交渉や慰謝料請求などは長期にわたる可能性もあり、妊娠中や出産後の心身に大きな負担となります。
妊娠中の追突事故による示談交渉・慰謝料請求などについては、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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