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【弁護士監修】時短勤務者に残業させてもいいの?残業代は請求できる?

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kiriu_sakura

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「時短勤務なのに残業を命じられている。残業しないといけないなら、何のための時短勤務なの?」

育児や介護のために時短勤務をしているのに、残業を命じられてしまうと、困ってしまいますよね。

実は、育児・介護休業法という法律により、一定の要件を満たす場合には残業を命じることができなくなります。

育児・介護休業法のルールに従って労働者が残業の制限を請求しているのに、残業を命じることは、育児・介護休業法に違反することとなります。

この記事を読んでわかること
  • 「時短勤務(短時間勤務制度)」とは何か
  • 時短勤務者に残業させるのは法律違反になるか
  • 時短勤務者が残業した場合の残業代
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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「時短勤務(短時間勤務制度)」とは?

育児・介護休業法(※)は、一定の条件を満たした労働者が労働時間を短縮して勤務できる制度(いわゆる短時間勤務制度。時短勤務とも言います)について定めています。
※正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。

現在、会社の規模に関わらず、全ての会社は次の短時間勤務制度を設けることが義務付けられています(ただし、一定の範囲の労働者については労使協定によって対象外とすることができます)。

• 3歳未満の子どもを育児するための短時間勤務制度
• 介護のための短時間勤務制度

3歳未満の子どもを育児するための短時間勤務制度では、1日の所定労働時間を原則として6時間としなければなりません。

介護のための短時間勤務制度では、所定労働時間を短縮する措置やフレックスタイム制などの一定の措置のいずれかを、利用開始から3年で2回以上利用可能としなければなりません。

また、3歳以上小学校就学前の子どもを育児する労働者に対しても、短時間勤務制度などの必要な措置を講じることが努力義務として会社に求められています。

育児・介護休業法について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

育児介護休業法について解説!育児や介護を目的とした休業とは?

時短勤務者に残業させるのは法律違反?

育児・介護休業法では、短時間勤務制度を利用している者(時短勤務者)の残業を一律に禁止する旨の定めは規定されていません。

そのため、 短時間勤務制度を利用している時短勤務者に対して残業を命じたとしても、そのことがただちに法律違反になるわけではありません

もっとも、仕事と家庭の両立を目指す法律の趣旨からすれば、頻繁な残業命令が望ましくないことは言うまでもないでしょう。

また、 一定の条件を満たす場合には、労働者本人が請求した場合には残業を命じることが制限されます

所定外労働・時間外労働・深夜労働の制限

育児・介護休業法に基づき、一定の条件を満たす労働者が請求した場合には残業などを命じることができなくなります。
このことについてご説明します。

(1)所定外労働の制限

「所定外労働」とは、就業規則などの会社内のルールで定められた労働時間を超えた労働のことを言います。
いわゆる残業のことです。

たとえば、所定労働時間が6時間である場合には、6時間を超えた労働は所定外労働ということになります。

通常の労働者に対しては、労働基準法のルールの範囲内であれば所定外労働(すなわち残業)を命じることができます。

しかし、 次の労働者から請求があった場合には、原則として所定外労働をさせることができません(*日々、雇用される労働者の場合は請求できません。)。

• 3歳未満の子どもを育児する労働者
• 要介護状態にある家族を介護する労働者

ただし、労使協定によって一定の労働者についてはこの制限の対象外とできます
労使協定によって対象外とできる労働者の範囲は次のとおりです。

• 勤続1年未満の労働者
• 週の所定労働時間が2日以下の労働者

請求のルールは次のとおりです。

• 所定外労働の制限開始日の1ヶ月前までに請求すること
• 1回の請求につき1ヶ月以上1年以内の期間で請求すること
• 請求回数についての上限はなし

育児する子どもが3歳以上になった場合など、制度の対象外となった場合には、所定外労働の制限は終了します。

(2)時間外労働の制限

「時間外労働」とは、法定労働時間を超えた労働のことを言います。
法定労働時間とは、原則1日8時間・週40時間以内の労働時間のことを言います。

労働基準法上、会社は、原則として、労働者に対して法定労働時間を超えた労働を命じることができません。

もっとも、36協定という所定の労使協定を締結・届出等すれば、労働基準法のルールの範囲内で時間外労働をさせることができます。

この時間外労働の上限は、労働基準法により、原則月45時間・年360時間とされています。
しかし、育児・介護休業法により、対象となる労働者からの請求があった場合には、会社は原則として「月24時間・年150時間」を超えて時間外労働をさせることができなくなります

対象となる労働者は、次の労働者です。

• 小学校就学の始期に達するまで(※)の子どもを育児する労働者
• 要介護状態にある家族を介護する労働者

(※)「小学校就学の始期に達するまで」とは、具体的には小学校入学前の3月31日までをいいます。

ただし、 次の労働者は制度の対象外となります

• 日々雇用される労働者
• 勤続1年未満の労働者
• 週の所定労働時間が2日以下の労働者

請求のルールは次のとおりです。

• 所定外労働の制限開始日の1ヶ月前までに請求すること
• 1回の請求につき1ヶ月以上1年以内の期間で請求すること
• 請求回数についての上限はなし

育児する子どもが就学したなど、制度の対象外となった場合には、所定外労働の制限は終了します。

(3)深夜労働の制限

会社は、 制度の対象となる労働者から請求があった場合には、原則として深夜労働(原則22~5時の労働)をさせることができません

対象となる労働者は、次の労働者です。

• 小学校就学の始期に達するまで(※)の子どもを育児する労働者
• 要介護状態にある家族を介護する労働者

(※)「小学校就学の始期に達するまで」とは、具体的には小学校入学前の3月31日までをいいます。

ただし、 次の労働者は対象外です

• 日々雇用される労働者
• 勤続1年未満の労働者
• 深夜において、常態として保育または介護ができる同居の家族がいる労働者
• 週の所定労働日数が2日以下の労働者
• 所定労働時間の全部が深夜にある労働者

請求のルールは次のとおりです。

• 所定外労働の制限開始日の1ヶ月前までに請求すること
• 1回の請求につき1ヶ月以上6ヶ月以内の期間で請求すること
• 請求回数についての上限はなし

育児する子どもが就学したなど、制度の対象外となった場合には、所定外労働の制限は終了します。

時短勤務者が残業した場合、残業代はどうなる?

時短勤務者であっても、残業をした場合には当然残業代が発生します。
残業代がもらえることや残業代の計算方法は、通常のフルタイム勤務の労働者と同じです。

(1)所定外労働

所定外労働(法定労働時間内の残業)については、残業代は次の式で計算します。

残業代の額=基礎時給×残業をした労働時間数

所定外労働については、時間外労働(法定労働時間を超えた残業)とは異なり、割増賃金はつきません(*会社が割増賃金を支払うと定めている場合を除く)。

(2)時間外労働・休日労働・深夜労働

時間外労働・休日労働・深夜労働をした場合に割増賃金がもらえることについても、通常のフルタイム勤務の労働者と同じです。

労働者が、時間外労働・休日労働・深夜労働をした場合には、会社は労働者に対して、所定の割増率によって加算された割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条)。

時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金は、次の式によって計算します。

支払われる割増賃金の額=基礎時給×対象となる労働時間数(時間外労働等の時間数)×割増率

時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金を支払う条件や割増率は、次のとおりです。

種類 割増賃金を支払う条件 割増率
時間外
(時間外手当・残業手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき 25%以上
時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間等)を超えたとき 25%以上(※1)
時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき(※2) 50%以上(※2)
休日
(休日手当)
法定休日(週1日)に勤務させたとき 35%以上
深夜
(深夜手当)
22~5時までの間に勤務させたとき 25%以上

(※1)25%を超える率とするよう努めることが必要です。
(※2)中小企業については、2023年4月1日から適用となります。

参照:しっかりマスター労働基準法 割増賃金編|厚生労働省 東京労働局

残業代の計算方法について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

残業代の計算方法とは?残業代の基礎知識について弁護士が解説

【まとめ】時短勤務者の残業を禁止する定めはないが、条件を満たした請求により、残業をさせられなくなるのが原則

今回の記事のまとめは次のとおりです。

• 育児・介護休業法は、一定の条件を満たした労働者が労働時間を短縮して勤務できる制度(いわゆる短時間勤務制度。時短勤務とも言う)について定めている。
• 3歳未満の子どもを育児するための短時間勤務制度では、1日の所定労働時間を原則として6時間としなければならない。
介護のための短時間勤務制度では、所定労働時間を短縮する措置やフレックスタイム制などの一定の措置のいずれかを、利用開始から3年で2回以上利用可能としなければならない。
• 育児・介護休業法では、短時間勤務制度を利用している者(時短勤務者)について残業を禁止する旨の定めは規定されていない。
しかし、一定の条件を満たす場合には、労働者本人が請求した場合には残業を命じることが制限される。
• 3歳未満の子どもを育児する労働者などから、一定のルールを満たした請求があった場合には、会社はその労働者に対して原則として所定外労働・時間外労働・深夜労働をさせることなどができなくなる。
• 時短勤務者であっても、残業をした場合には、当然残業代が発生する。
残業代がもらえることや残業代の計算方法は、時短勤務者であっても、通常のフルタイム勤務の労働者と同じ。

育児などの事情があって時短勤務制度を利用しているのに頻繁に残業を命じられてしまっては、困ってしまいますよね。

育児・介護休業法では、残業の制限などの制度が用意されています。
この制度をうまく使って、私生活と仕事との調和をうまく実現するようにしましょう。

また、時短勤務であっても残業代が発生することは通常の労働者と変わりありません。
時短勤務を利用していることを引け目に感じてしまい、つい残業代請求をためらってしまうかもしれません。

しかし、時短勤務制度を利用することは労働者の権利です。
そのことで残業代請求をためらう必要はありません。
しっかりと残業代を請求しましょう。

残業代を請求する場合には、弁護士に依頼するのも一つの方法です。

アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。

※以上につき、2023年6月時点

弁護士費用について詳しくはこちらをご覧ください。

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