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コロナ禍で家賃支払いが厳しい!家賃補助制度と家賃減額について解説

作成日:更新日:
LA_Ishii

「コロナ禍で給料が減って、家賃の支払いが苦しい…。何か家賃補助のような制度はないかな?」

コロナ禍により、給料が減少したという方は少なくありません。それまでは問題なく支払えていた家賃の支払いが困難になり、かと言ってまとまった引越費用も準備できない…。

そんな方は、まずは「家賃補助制度」を利用できないか、検討してみてください。さらに、家賃補助を受けられないとしても、貸主と家賃減額の交渉ができないかご確認ください。

家賃が支払えなくなると、いずれ貸主から裁判を起こされるなどして、強制的に立ち退きを迫られるリスクがあります。

今回の記事では、次のことについて、弁護士がご説明します。

  • 家賃補助の制度である住宅確保給付金
  • 家賃の減額交渉ができるケース
  • 家賃の減額交渉の方法
  • 家賃の減額交渉ができない場合の対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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家賃補助が受けられる?「住宅確保給付金」について

コロナ禍により失業したり、給料が激減して家賃の支払いが厳しいという方は、まずは家賃補助の制度である「住宅確保給付金」を受けられないかご検討ください。

「住宅確保給付金」とは、休業などに伴う収入の減少により、家賃を支払えなくなっている方について、原則3か月(延長により最大9か月間の可能性あり)、市区町村ごとに定める額を上限に、実際の家賃相当額を自治体から貸主に支給するという制度です。

「住宅確保給付金による家賃補助」を受けるための要件は次のとおりです(2022年9月時点)。

【対象要件】

(1)主たる生計維持者が、次の①②のいずれかに該当すること① 離職・廃業後2年以内であること
② 個人の責任・都合によらず、給与等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少していること
(2)直近の月の世帯収入合計額が、「基準額」(市区町村民税の均等割が非課税となる額の1/12)と家賃(*上限あり)の合計額を超えていないこと
(3)現在の世帯の預貯金合計額が、各市区町村で定める額(基準額の6か月分)、又は100万円を超えていないこと
(4)次の求職活動要件を満たすこと(1)-①の場合…ハローワークへ求職の申込みをして、誠実かつ熱心に求職活動を行うこと
(1)-②の場合…誠実かつ熱心に求職活動を行うこと

*(1)~(4)の条件を全て満たす必要があります。

(1)-②の「給与等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少」したとはどういう場合ですか?
飲食店でパート勤務していましたが、コロナ禍により営業時間が短縮し、シフトが入れられず給料が激減しましたが、該当しますか?

「給与等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少」するとは、コロナの影響などで勤務先が一部休業し、それまで勤務していた日数に比べて勤務日が減ってしまった方や、イベントなどが自粛により中止になって仕事がなくなってしまった方などを想定しています。
ご質問のケースでは、(1)の要件を満たす可能性が高いです。

(2)の「基準額」は、各市区町村によって金額が異なります。
例えば、東京都豊島区の場合、「基準額」及び家賃の上限は次のとおりです。

世帯人数基準額家賃の上限
1人8万4000円5万3700円
2人13万円6万4000円
3人17万2000円6万9800円
*4人世帯以上は要問合せ

さらに、(3)の「預貯金合計額」について、豊島区の場合は次のとおりです。

世帯人数預貯金の合計(*)
1人50万4000円以下
2人78万円以下
3人100万円以下
*4人世帯以上は要問合せ

(*)申請者及び申請者と生計を一とする同居の親族の預貯金の合計です。

参照:住居確保給付金の支給(生活困窮者自立支援制度)|豊島区公式ホームページ

例えば、東京都豊島区に単身でお住まいの方であれば、直近の月の収入が13万7700円で、預貯金が50万4000円以下であれば、基本的には、「住宅確保給付金」の家賃補助を申請することができます。
(*各市区町村によって、その他の条件があります。住宅補助をご検討中の方は、必ずお住まいの市区町村の相談窓口にお問い合わせください。)

住宅確保給付金は、実際にはいくらくらい家賃補助があるの?

住宅確保給付金による家賃補助を受けられるとして、実際いくら支給されるのか気になりますよね。
この点についてはまず、支給の上限額は、各市区町村によって異なります

例えば東京都23区の場合は、次のとおりです。

世帯人数支給上限額(月額)
1人5万3700円
2人6万4000円
3~5人6万9800円


次に、住宅確保給付金が実際にいくら支給されるかも、各市区町村や世帯の人数によって異なりますので一概には言えません。
ただ、次にご紹介する、実際の支給額に関する厚生労働省のイメージからすると、実際に住宅確保給付金を申請できたとしても、家賃補助の金額はそれほど多くないケースも多いでしょう。

【厚生労働省の支給イメージ】

(1) 世帯収入額が基準額以下の場合
 ➡家賃額を支給(ただし、住宅扶助額が上限)

(2) 世帯収入額が基準額を超える場合

 ➡基準額+家賃額-世帯収入額を支給(ただし、住宅扶助額が上限)

参照:住居確保給付金:制度概要|厚生労働省

(1)の「世帯収入額が基準額以下」というのは、例えば、先ほどご紹介した東京都豊島区のケースでは、単身でお住まいの方の直近の月の収入が8万4000円以下という場合です。
この場合には、厚生労働省のイメージでは、家賃の満額(ただし、家賃が5万3700円を超える場合には5万3700円)が支給されます。

それでは(2)のケース、つまりそこまで収入が減っておらず、8万4000円を超える場合はどうなるのでしょうか。
例えば、次のような方が「住宅確保給付金」による家賃補助を受けたいと思ったとき、家賃補助はいくらになるかご説明します。

(*居住地の自治体では、基準額は8万4000円、単身の方の家賃額上限は5万3700円、預貯金の合計は50万4000円以下と仮定します。)

このケースでは、直近の月の世帯収入合計額(13万円)が、基準額+家賃の上限の合計額(13万7700円)を超えていませんので、住宅確保給付金の申請ができます。
ただし、直近の世帯収入額(13万円)が基準額(8万4000円)を超えていますので、実際の支給額の計算上は、先ほどご紹介した厚生労働省のイメージの(2)に当たります。

厚生労働省のイメージでは、(2)の場合は『基準額+家賃額-世帯収入額』で計算しますので、実際の支給額は、次のとおりです。

【実際の支給額】 8万4000円+6万円-13万円=1万4000円

(*各市区町村によって支給額は異なります。)

ですから、このケースで、仮に家賃が月額5万円であれば、家賃補助は4000円(月額)にすぎません。そのため、直近の月の世帯収入合計額が基準額を大きく超える場合には、実際の家賃補助のメリットはそこまで大きくないケースも少なくないでしょう。

他方、コロナ禍により失業したり、収入が激減して基準額を下回り、かろうじて家賃分+アルファくらいは稼げるという場合には住宅確保給付金制度による家賃補助を受けるメリットは大きいです。

例えば、先ほどの例で、直近の収入が8万円しかなかったという場合には、実際の支給額は『8万4000円+6万円-8万円=6万4000円』、居住している市区町村の支給上限額が5万3700円だとすると、5万3700円分の家賃補助を受けることができます。

そうすると、自分で負担すべき家賃額は6300円で済みますので、かなり助かります!

住宅確保給付金による家賃補助を受ける場合には、まずは、生活困窮者自立相談支援機関に相談をする必要があります。
コロナ禍により収入が減少して家賃が支払えないという方は、まずはお住まいの市区町村に設置された相談支援機関にご相談ください。

参照:住居確保給付金:申請・相談窓口|厚生労働省

住宅確保給付金による家賃補助を受けられない場合はどうする?

これまでご説明した住宅確保給付金による家賃補助を受けられない場合は、例えば、税金や国民年金保険料の支払猶予などを利用できないかなどをご検討ください。

国民年金の免除や支払猶予について詳しくはこちらの記事をご参照ください。

国民年金の納付が免除になる年収ってどのくらい?免除や猶予制度の方法について

さらに、貸主に家賃を減額してもらえないか交渉するのもひとつの手です。

貸主に対して家賃の減額交渉を試みる

そもそも、家賃額は賃貸借契約を結ぶときに、貸主と借主との合意によって決まります。
ですから、基本的に、契約途中に貸主又は借主の一方的な請求により、家賃を増額したり減額したりはできません。

貸主が家賃を増額したい、あるいは借主が家賃を減額したいと思えば、相手方の合意が必要です。賃貸物件は、基本的には築年数が経過すれば、それに伴い賃料は下落することが多いです。

長年、同じマンションやアパートに住んでいる場合、同じ物件内の別の部屋の新規募集賃料をみて驚くことも少なくありません(*階数や間取り、日当たり等によっても異なります)。

長年同じ物件に住んでいて、新規募集の賃料よりも大分高い家賃で借りている、という場合には、まずは貸主に対して賃料を減額してもらえないか交渉してみましょう。

特に、近いうちに更新を控えているという場合には、貸主によっては、更新せずに退去されるよりは良いと思って減額交渉に応じてくれる可能性もありますよ。
実際に、コロナ禍により『賃料減額請求が増加した』、『賃料減額を受け入れた』と感じる賃貸住宅管理会社も一定数いるようです。

参照:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会- (jpm.jp)

家賃の減額に応じてもらえないときは、調停を申し立てることもできる

さらに、借地借家法は、建物の家賃の減額請求について、次のように規定しています。

借地借家法

32条1項本文(借賃増減請求権)

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。

参照:借地借家法 | e-Gov法令検索

つまり、次のようなケースでは、貸主に対して借主の権利として家賃の減額を請求できるのです。

  • 土地や建物に対する税金などが増減した
  • 土地や建物の価格の上昇又は低下した
  • その他の経済事情が変動した
  • 近隣の類似物件の家賃と比較したときに家賃額が不相当となった

貸主に対して家賃の減額を請求する場合、応じてもらえなければ、まずは調停を申し立てなければいけず、いきなり裁判をすることはできません(調停前置主義)。
調停の申立ては、原則として、物件の所在地を管轄する簡易裁判所です。調停は裁判所を利用した手続ですが、基本的には当事者同士の合意が必要です。調停を申し立てても貸主が賃料減額に応じなければ、調停は不調となって終了します。

それでも家賃を減額してもらいたければ、貸主を訴えて裁判をした上で、裁判官に適正な家賃はいくらなのか判断してもらうことになります。

ただし、家賃の減額について裁判となった場合には、通常、家賃がいくらが相当かという点について、裁判所が選任した鑑定人により鑑定が実施されます。

鑑定費用は、基本的には減額を求めて裁判を求めた側が負担することになりますので、賃貸住宅の家賃の減額を求める場合には裁判までする経済的なメリットがないことが多いです。

調停は自分でもできますか?できるなら、いくらくらいかかるのでしょうか。

調停はご自身ですることも可能ですし、弁護士に依頼することもできます。
弁護士に依頼せずにご自身で調停を申し立てる場合には、必要な費用は、収入印紙代と郵便切手代くらいですので、それほど大した金額にはなりません。
各裁判所によって異なりますが、毎月1万円程度の家賃の減額を求める場合には、せいぜい数千円で調停を申し立てることが可能です。

もしも、家賃の減額を求めて調停を申し立てたいという場合には、まずは、貸主に対して、いつから、いくらに家賃を減額するように求めるのか明らかにした内容証明郵便を送ります。

内容証明郵便を送れば、翌月から減額請求をした金額を支払えば良いですか?

それはダメです。
あくまでも、家賃の減額を正当と認める裁判が確定するまでは、それまでに決まっている家賃を支払わなくてはいけません(借地借家法32条3項)。
勝手に減額して家賃を振り込むと、家賃の滞納を理由として賃貸借契約を解除される可能性がありますので、注意してくださいね。

参照:簡易裁判所に「賃料等調停の申立て」をしたい方のために|裁判所

家賃を滞納したらどうなる?

コロナ禍などにより減収すると、まずは食費などを優先して家賃はつい後回しにしてしまうという方も多いです。
ですが、家賃を滞納すると、貸主から賃貸借契約を解除され、いずれ強制的に立ち退かなければいけない事態になりかねません。

家賃は支払いが1日でも遅れると追い出されますか?

賃貸借契約は貸主と借主の信頼関係にも基づいて成立する契約ですので、貸主と借主の信頼関係が破壊されない特段の事情があれば契約の解除は認められないという「信頼関係破壊の法理」というものがあります。
事実上、家賃の支払いが数日遅れる程度であれば、信頼関係は破壊されないと判断されることがほとんどです。

実際の裁判では、家賃の滞納を理由とする賃貸借契約の解除は、概ね3か月分の家賃の滞納で認められる事例が多いです。

ただし、3か月までは滞納できるとは思わないでくださいね。
1日でも支払いが遅れるとそれは契約違反であることは間違いありませんし、その他の事情によっては、3か月以内でも賃貸借契約を解除されることもあります!

賃貸借契約を解除される場合、通常は、貸主から次のようなことが書いてある書面が届きます。

  • 一定期間(1週間程度)内に滞納している家賃を支払うこと
  • その期間内に滞納家賃を支払わなければ賃貸借契約を解除すること

その期間内に滞納家賃を支払えば、賃貸借契約は解除されません。
他方、期間内に滞納家賃を支払わなければ、賃貸借契約は解除されます。

契約を解除されても退去しない場合、貸主次第ですが、「建物の明渡し」を求める裁判を起こされる可能性があります。
そして、裁判で、借主に建物の明渡しを命じる判決が出て確定すると(判決に「仮執行宣言」がつくと確定前であっても)建物の明渡しを求める強制執行を申し立てられる可能性があります。

「明渡しの断行」では、強制的に室内の荷物などを搬出されて、文字どおり、借りている物件から強制的に退去させられてしまいますから、その前に新たな部屋を借りるなどして、ご自身で退去するようにしてくださいね!

建物明渡しの強制執行について詳しくはこちらの記事をご参照ください。

家賃滞納で裁判を起こされた!和解で気を付けたい3つのポイントを解説

どうしても家賃が支払えないときは、債務整理の検討を!

もしも、借金などがあり、その返済もあって家賃の支払いが苦しいという方は、「債務整理」を検討しましょう。
借金を減額したり、支払いに猶予を持たせたりすることにより、借金の負担を軽くするための手続を『債務整理』と言います。『債務整理』には、主に『任意整理』『民事再生』『自己破産』があります。

これまでご説明したとおり、家賃を滞納した場合には、裁判を起こされて、最終的には強制的に部屋から退去させられてしまうおそれがあります。
部屋から退去させられると、新たな部屋を探したりする手間もかかりますし、引越しの費用もかかります。

家賃以外の借金について、良い『債務整理』の途がないか、まずは弁護士などに相談してみてください。

いろんなところから借金をしていて、一見、もうどうにもならないと思われる状態であったとしても、中には、『利息を払いすぎている場合(いわゆる過払い金)』があって、計算し直すと借金が大幅に減る方がいらっしゃいます。その結果、計算し直した後の借金を「任意整理」などで返済していくことが可能となるケースがあります。

滞納賃料が膨れ上がってもうどうにもできないという場合には、『自己破産』を検討されるのもひとつの手です。
自己破産で免責が認められれば、滞納賃料についても支払義務はなくなります。
もちろん、3か月以上家賃を滞納している場合には、賃貸借契約を解除されて同じ部屋に住むことはできなくなるでしょうが、現在の収入と家賃額のバランスが取れないのであれば、いっそのこと、滞納賃料についても自己破産を検討された上で、引越しをされることも前向きな選択肢かと思います。

【まとめ】 コロナにより収入が減った場合「住宅確保給付金」による家賃補助を受けられることがある

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • コロナにより収入が減ってしまった場合、住宅確保給付金による家賃補助を受けられることがある。
  • 住宅確保給付金を申請する場合、各市区町村ごとに基準額があるため、まずは各市区町村の担当窓口に相談をしなければいけない。
  • 住宅確保給付金による家賃補助を受けられない場合には、貸主に対して家賃の減額を交渉してみるべき。
  • 貸主が家賃の減額に応じない場合、家賃の減額を求めて調停を申し立てることもできる。
  • 一般的に3か月以上家賃を滞納すると、借主から賃貸借契約を解除され、場合によっては裁判を起こされた上で、強制的に退去させられる可能性がある。
  • 借金の返済により、家賃尾支払いが厳しいという場合には、債務整理を検討することもひとつの手。

コロナによる減収は、ご本人の責任ではありません。
ですが、コロナによる減収だとしても、貸主には家賃を減額しなければいけない義務はありません。
家賃滞納が続けば、強制的に立ち退かされることにもなりかねませんので、「住宅確保給付金による家賃補助」を受けられるのであれば、ぜひ受けるべきです。
また、家賃の支払いが厳しい理由が他の借金という場合には、ぜひ、借金の問題を解決して家賃を支払うことをお勧めします。

アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続につき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続に関してお支払いいただいた弁護士費用を全額ご返金しております。
また、完済した業者への過払い金返還請求の手続の場合は、原則として過払い金を回収できた場合のみ、成果に応じた弁護士費用をいただいておりますので、費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。(2022年9月時点)

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