「夫の不倫が原因で離婚……。早く離婚したかったので、さっさと離婚届を提出したのはいいけれど、落ち着いて考えると慰謝料を請求すべきだった!離婚後でも、慰謝料は請求できるの?」
離婚後であっても、基本的には元配偶者に対して不倫の慰謝料を請求することができます。
慰謝料請求権は、夫に不倫された当時、妻であったあなたに認められる権利ですので、離婚したからといって消滅するものではないからです。
ただし、離婚の際に「書面で合意した事柄の他には請求しない(清算条項)」と定めた離婚協議書を作成した場合や、離婚後3年が経過したような場合には、慰謝料請求が難しくなってしまいます。
この記事を読んでわかること
- 離婚時に書面を作成していない場合
- 離婚後に慰謝料請求する際の注意点
- 離婚後の養育費請求
法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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離婚時に何も取り決めなかった方へ
離婚に際して何も取り決めておかなかったと、後悔してはいませんか?
しかし、内容によっては、何も取り決めなくてよかったかもしれません。離婚の際に作成される離婚協議書(書面の名前を「合意書」などとする場合もあります)には、「清算条項」が明記されることが多いからです。
清算条項とは、お互いに対する請求権を放棄する約束のことです。
【清算条項の例】
甲と乙は、本書に定める以外に何らの債権債務のないことを相互に確認する。
離婚協議書を作成する場合、基本的に、争いが蒸し返されないように清算条項についても合意し記載します。上の例のような清算条項が記載されている場合には、「書面に記載された約束ごと以外は、お互いに何も請求をしない」という約束をしたことになります。つまり、書面の中で慰謝料について記載していないと、原則として慰謝料を請求できなくなるのです。
清算条項を記載した書面を作成した場合は、脅迫されて仕方なく作成させられた、などの特段の事情がないかぎり、書面に記載されていない慰謝料などを請求することはできなくなります。
では、何も取り決めないまま、離婚届を提出しただけなら、慰謝料を請求できなくなることはないのですね?かえって離婚協議書を作成しなくてよかった!
ただし、慰謝料を請求できるためには、他にも条件があります。
(1)不倫が始まった時点で、婚姻関係がすでに破綻していなかったか
もしも、元配偶者の不倫が始まった時点で、婚姻関係が破綻(夫婦に結婚生活を継続させる意思がなく、今後も共同生活をしていける見込みがない状態のこと)していたのであれば、慰謝料は請求できません。
ちょうど元夫の不倫が始まったころ、夫の態度に我慢ができずよく言い争いをしてしまっていたような気がしますが、婚姻関係は破綻していたことになってしまうのでしょうか。
夫婦間の言い争いは、むしろない方が不自然です。同居して夫婦として生活していたのであれば、裁判になった場合でも、簡単に婚姻関係が破綻していたと評価されることはありません。
しかし、元配偶者の不倫が始まった時点で、すでに離婚に向けた話し合いを開始していたという事情があれば、夫婦関係は破綻していたとして慰謝料の請求が難しくなる傾向があります。
ただし、確かに離婚の話し合いをしていた時期もあったけれど、夫婦関係修復に向けての話し合いもしていたというようなケースでは、夫婦関係が破綻していたとは認められないこともあります。この判断は難しいこともあるので、具体的ケースについては弁護士に相談することをお勧めします。
婚姻関係の破綻について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)離婚の原因が、元配偶者の不倫であったのか
そもそも、離婚の原因が不倫とは関係なく、別の原因である場合には、不倫を原因とする慰謝料請求は認められません。また、不倫も離婚の原因のひとつであったとしても、ほかの原因の方が大きい場合には、慰謝料の金額は低額になる可能性があります。
夫の不倫が発覚し、それが原因で夫婦仲が悪化して離婚したんです。離婚の原因は夫の不倫で間違いありません!
あなたは離婚前から不倫の事実を知っていたのですね。それなら、次は消滅時効について検討してみましょう。
(3)消滅時効に注意
消滅時効とは、請求しないまま一定の期間が経過すれば、もはや請求することができなくなる、という制度のことですが、慰謝料の種類によって、時効がカウントされ始める時点が異なるのです。
不倫を原因とする慰謝料には、『不倫(不貞)慰謝料』と、『離婚慰謝料』の2つがあります。
不倫が原因で離婚した場合には、(元)配偶者に対しては、通常「離婚慰謝料」を請求することになります。
ただし、不倫相手に慰謝料を請求する場合、原則として「離婚慰謝料」は認められませんので、「不倫慰謝料」を請求することになります
「不倫慰謝料」は、請求する人が不倫の事実および請求すべき人を知った日から3年、「離婚慰謝料」は、離婚が成立した日から3年経過すれば、原則として、時効が成立してしまうことになります。
不倫(不貞)慰謝料 | 離婚慰謝料 |
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なお、不倫相手を特定できない場合等であっても、不貞行為の時から20年が経過すると、慰謝料を請求する権利は時効により消滅します(*2020年3月31日までに20年が経過している場合は,改正前の民法が適用され,除斥期間の経過により慰謝料は請求できません。)。
離婚慰謝料と不倫慰謝料について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ただし、時効が成立した後であっても、まったく慰謝料を請求できなくなるわけではありません。
なぜなら、時効は請求される側の利益となる規定なので、請求される側が「時効が成立したから、支払わなくてもいいはずだ」と主張(時効の援用)しない限り、権利が時効によって消滅することはないからです。
そのため、時効が成立した後も請求するのは自由です。相手次第では慰謝料を支払ってもらえる可能性があります。
しかし、請求される側が、時効の援用をした場合、慰謝料の支払いを強制することはできません。つまり、裁判や調停をしても、請求されている側が時効の援用をしたのであれば、請求が認められることはありません。
子どもを育てている方は、養育費の請求も忘れずに
子どもを育てている方であれば、養育費についても検討しておきましょう。
離婚後であっても、養育費は請求できます。しかし、養育費の取り決めをしていない場合、過去にさかのぼっての養育費請求は基本的に認められません。
したがって、養育費はできるだけ早く請求し、元配偶者が養育費の支払いについての話し合いに応じない場合には、すぐに、家庭裁判所に養育費を求める調停を申立てましょう。
離婚を急ぐあまり、離婚時に何も取り決めることができなかった方は少なくありません。
慰謝料や養育費のほかにも、重要なことを検討し忘れているかもしれません。離婚時に何も取り決めなかった方、あるいは、まず先に離婚届を提出してしまおうとお考えの方は、離婚問題に詳しい弁護士に一度相談してみることをお勧めします。
【まとめ】不倫の慰謝料は、離婚後であっても請求できる場合がある!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 離婚時に何も取り決めなくても、慰謝料請求は可能。
- 離婚時に「清算条項」を記載した書面を作成していれば、原則として書面に記載した以外の請求はできなくなる。
- 不倫を原因とする慰謝料には、不倫(不貞)慰謝料と、離婚慰謝料の2つがある。
不倫(不貞)慰謝料 | 離婚慰謝料 |
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- 離婚後であっても養育費は請求できる。しかし、過去にさかのぼって離婚時からの分を請求することは基本的に認められないため、早めに請求しておくべき。
配偶者の不倫を知った方の中には、配偶者への嫌悪感などからとにかく離婚を急いだという方は少なくありません。
ですが、離婚後、少し気持ちが落ち着いた頃には、ぜひ慰謝料や養育費などお金の取り決めをすべきです。
慰謝料はあなたが受けた精神的苦痛を慰謝するための正当なお金ですし、養育費も子どもの成長のための大切なお金です。
離婚後であっても、不倫の慰謝料は請求できます。今からでも遅くはありませんので、元配偶者の不倫が原因で離婚された方は、慰謝料の請求をご検討ください。
アディーレ法律事務所では、不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
(以上につき、2023年6月時点)
不倫の慰謝料請求でお悩みの方は、不倫の慰謝料請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。