「交通事故でケガをしたけど、医者から治療してもこれ以上良くならないと言われた」
治療を継続しても、このように医者から指摘されて、残念ながら完治せずに後遺症が残ってしまうことがあります。
この後遺症については、「後遺障害」として認定されると、後遺障害に関する賠償金を請求することができます。逆に、「後遺障害」として認定されなければ、基本的に後遺症に関する賠償金を請求することは難しくなります。
したがって、後遺症に関する賠償金を受け取るためには、「後遺障害等級」の認定を受けるかどうかがとても大切なのです。
この記事では、
- 後遺障害等級とは?
- 後遺障害等級認定は誰がする?
- 後遺障害等級の申請はいつする?
- 後遺障害等級申請の方法&認定までの流れ
- 後遺障害等級認定までの期間
- 後遺障害等級認定に必須の後遺障害診断書作成方法と注意点
- 後遺障害等級認定に対する結果を争う方法(等級の変更が認められた事例あり)
- 後遺障害等級認定の申請を弁護士に依頼するメリット
について弁護士が詳しく解説します。
愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後、岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。
後遺障害等級とは?
後遺障害等級とは、後遺障害の慰謝料や賠償金の算定の目安となるものです。
後遺障害の内容に応じて、重いものから順に1~14級が認定されます。
後遺症について慰謝料や賠償金を受け取るためには、後遺症について後遺障害等級認定を受けることが必要となります。
交通事故の後遺障害等級認定は誰がする?
後遺障害等級の認定の判断は、損害保険料率算出機構(加害者側の保険会社が加盟している場合)や自賠責保険・共済保険紛争処理機構が行います。
損害保険料率算出機構や自賠責保険・共済紛争処理機構の判断は、原則、後遺障害診断書などの書面によって審査されます。そのため、診断書の記載が曖昧であったり、必要な検査結果がなかったりという場合には、実際の症状がどうであれ、適切な認定がされないということも少なくありません。
後遺障害等級認定の申請はいつする?
「後遺症」とは、治療による回復が見込めなくなった状態(「症状固定」といいます。)で残ってしまった症状のことをいいます。
そのため、症状固定となった後に、残った症状について後遺障害の等級認定を申請することになります。
後遺障害等級申請の方法&認定までの流れ
後遺障害の等級認定の申請手続は、損害保険料率算出機構に対して行うのが一般的です。申請手続の方法としては、加害者側の保険会社を通じて行う「事前認定」という方法と、被害者自身(被害者が依頼した弁護士を含む)が行う「被害者請求」という方法があります。
流れとしては次のようになります。
事前認定

被害者請求

(1)事前認定
「事前認定」は、加害者の保険会社を通じて行いますので、被害者自身には手間がかからないというメリットがあります。
しかし、申請の際に必要となる資料を提出するのは加害者側の保険会社になりますので、提出する資料を被害者の方や弁護士がチェックすることはできません。
加害者側の保険会社にとっては、後遺障害等級が上がればその分だけ支払う賠償金が増えてしまいますので、より高い等級の認定を受けることに、必ずしも協力的ではありません。場合によっては、認定されない、もしくは、不当に低い認定になってしまうおそれも十分に考えられます。
(2)被害者請求
「被害者請求」は、被害者の方が自ら申請に必要な資料を収集し、提出するといった負担がありますが、提出する資料を被害者自身や被害者から依頼を受けた弁護士がチェックできるといったメリットがあります。
等級認定に有利となる資料をさらに提出したり、不利となりそうな資料については補う資料を提出したりすることができます。
「事前認定」と「被害者請求」についてまとめると次のようになります。
事前認定 | 被害者請求 | |
手続きを行う人 | 加害者側の保険会社 | 被害者本人(もしくは弁護士) |
治療に関する資料の準備 | 加害者側の保険会社 | 被害者本人(もしくは弁護士) |
メリット | ・被害者本人に手間がかからない | ・提出資料を被害者がチェックできる ・認定に有利な資料を提出することができる |
デメリット | ・提出資料のチェックができない ・認定に有利な資料を提出できない | ・被害者(もしくは弁護士)に手間がかかる |
後遺障害等級認定の申請手続について弁護士に依頼した場合には、交通事故に精通した弁護士がこれまでの経験を踏まえて、後遺障害の認定が適切になされる資料や書類を揃えて、申請を行います。弁護士が医師と相談の上、診断書の記載内容を検討することもあります。
そのため、被害者請求であっても、被害者本人の負担は少ないといえます。
被害者請求に必要書類また申請方法について詳しくはこちらをご覧ください。
後遺障害等級認定までの期間
申請の手続きの後、結果がわかるまでの期間は、後遺障害の内容やどちらの方法で申請したかによって異なりますが、通常は1ヶ月~半年程度かかります。
もっとも、被害者請求においては、仮渡金制度というのがあり、完治もしくは症状固定の前に、加害者側の自賠責保険から仮渡金を受け取れますので、後遺障害認定を待たずに賠償金の一部を受け取ることができます。
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後遺障害認定に必須!後遺障害診断書の作成方法と注意点

後遺障害等級の認定には、後遺障害診断書の提出が必須です。
後遺障害等級認定の申請には、後遺障害診断書の記載内容が重要であるにもかかわらず、記載内容も確認せずに後遺障害等級の認定手続きをしてしまう方もいるようです。
ここでは、後遺障害診断書の作成方法や注意点について説明します。
(1)後遺障害認定の最重要書類
「後遺障害診断書」とは、正式名称を「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」といい、交通事故でケガをした被害者が、医師に依頼して作成してもらうものです。
後遺障害等級の認定の申請には、必ず「後遺障害診断書」を提出する必要があり、等級認定されるかどうか、等級認定されたとして何級に認定されるかどうかを、医師が作成した「後遺障害診断書」の記載内容を考慮して、判断することになります。
「後遺障害診断書」の記載内容しだいで、後遺障害認定がされるか否か、どの等級が認定されるのかが決まることも少なくなく、「後遺障害診断書」は後遺障害認定の最重要書類といえます。
(2)後遺障害診断書を作成方法
「後遺障害診断書」には、決まった書式があります。
書式は、保険会社から受け取ることもできますし、インターネットからダウンロードすることもできます。
「後遺障害診断書」は、医師が症状固定と診断した後に、残った後遺症について後遺障害等級認定を受けるために作成されるものですので、症状固定と診断された後に作成される必要があります。
「後遺障害診断書」は医師が作成しますが、医師であるからといって、等級認定される基準を踏まえて適切な内容の「後遺障害診断書」を作成できるとは限りませんので、注意が必要です。
自分の身体に残っている症状については、医師に可能な限り正確に伝えて、作成された「後遺障害診断書」に、間違いや記入漏れがないかを確認するようにします。
後遺障害の部位や程度によって異なりますが、「後遺障害診断書」の記載内容について、主にチェックすべき項目は次の3つです。
- 自覚症状
- 各部位の後遺障害の内容|精神・神経の障害、他覚症状及び検査結果
- 障害内容の増悪・緩解の見通し
順番に説明します。
(2-1)自覚症状
「自覚症状」とは、交通事故の被害者自身が自覚している症状です。
被害者は、自覚している症状について、具体的かつ正確に、医師に伝えたうえで、医師に後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。
この自覚症状は、受傷後から一貫して継続して存在していることが重要です(途中からあらわれた症状は、交通事故が原因となっているものか疑問視されることがあります。)
最初に言えばわかるだろう、毎回も言わなくてもいいだろう、勘違いかもしれない、などと思わずに、具体的な症状について診察のたびに伝えるようにしましょう。
(2-2)各部位の後遺障害の内容|精神・神経の障害、他覚症状及び検査結果
各部位の後遺障害の内容は、各部位に残存する後遺障害について記載する欄です。
したがって、残存しない部位(受傷していない部位)については記載がなされずに空欄となります。
さまざまな自覚症状別に、その原因を特定するための検査方法があります。CT、MRI、レントゲンなど画像により身体的異常を検査する方法が代表的です。
このような検査の結果、自覚症状の原因が明らかとなった場合には、その検査結果についてきちんとこの欄に記載してもらうようにしましょう。
(2-3)障害内容の増悪・緩解の見通し
後遺障害の認定を受けるためには、その後遺症が、交通事故との間に因果関係があり、回復困難と見込まれる精神的または身体的な障害で、その存在が医学的に認められ労働能力の喪失を伴うもの、である必要があります。
しがって、後遺症について、症状が一定であること(交通事故から一貫していること)、緩解(回復)の可能性がない(低い)、増悪する可能性がある、ことについて後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。
(3)後遺障害診断書の作成の注意点
複数の後遺症が残る場合もあります。症状によっては、専門家が異なることもありますので、症状にあった専門医に別々に受診し、治療を受けるようにしましょう。
例えば、交通事故によって頭部を受傷し、顔面に傷あとが残り、歯にも障害が残った場合には、頭部のケガについては脳外科、顔面の傷あとは形成外科、歯は歯科医に受診し、それぞれ後遺障害診断書の記載を依頼します。
後遺障害診断書は、後遺障害認定の審査のために提出したあとに修正することはできません。しかし、提出前であれば、書いてもらった後遺障害診断書を書き直してもらうこともできます。
そこで、提出前に、自分の症状について詳しく記載されているか、検査結果について正確に記載されているかなど、記載内容をしっかりと確認するようにしましょう。
後遺障害等級認定の申請について弁護士に依頼した場合には、弁護士が被害者本人に代わって、後遺障害認定を目指して必要な書類を入手し、書類の内容についても後遺障害等級認定にあたって必要な記載があるかどうかをチェックすることができます。
後遺障害等級の認定結果を争う方法
後遺障害等級の認定をすでに受けたが、結果に納得がいかないということも少なくありません。
そういう場合には、後遺障害等級の認定結果に対して、異議を申立てることができます。
ここでは、後遺障害等級の異議申立てについて詳しく説明します。
(1)後遺障害等級の認定結果を争うべきケース
後遺障害等級認定を覆すことはなかなか難しいといえます。
後遺障害等級の認定結果を争うべきケースは次のとおりです。
- 初回の事前認定で提出書類に不足があるとき
- 後遺障害診断書に抜け落ちがあるとき
- 新たな検査結果が判明したとき
このような場合には、後遺障害等級認定が覆る可能性がありますので、認定結果を争うことを検討しましょう。
(2)後遺障害等級の認定結果を争う方法
後遺障害等級の認定結果を争う方法としては、次の3つの方法があります。
- 異議申立書を提出
- 紛争処理制度の利用
- 民事裁判での訴訟提起
まずは、この中でもっとも一般的である異議申立てから見ていきましょう。
(2-1)異議申立書を提出
異議申立ては、後遺障害等級認定を争う手続きのなかで最も一般的な方法です。 これは、等級認定の手続きの方法により、次のように請求先が異なります。
- 加害者側の保険会社が等級認定手続きを代行する「事前認定」の場合
⇒加害者側の保険会社 - 被害者自身(もしくは被害者から依頼を受けた弁護士)が手続きを行う「被害者請求」の場合
⇒加害者が加入している自賠責保険会社
異議申立書を提出すると、外部の専門家が参加して等級に関する審査が改めておこなわれることになります。
異議申立てには費用はかからず、賠償金や慰謝料請求の時効とならない限り、何度でも行うことができます。
ただし、認定が覆りそうな新たな医学的資料を提出しないと、異議申立てをしても、認定が覆る可能性は低いといえます。
※慰謝料や賠償金の請求の時効(2020年4月1日民法改正に対応)
- ケガをした場合……事故日(または症状固定日)の翌日から5年
- 後遺障害が残った場合……症状固定日の翌日から5年
- 死亡した場合……死亡日の翌日から5年
- 加害者または損害が不明な場合……事故日の翌日から20年(民法724条2号)
(ただし、その後加害者かつ損害が判明すると、「事故日の翌日から20年」か「加害者及び損害の判明時の翌日から5年」のいずれかの早い方になります。)
なお、2020年4月1日より前に発生した慰謝料や賠償金の時効については、基本的に、被害者が、交通事故の「加害者及び損害の判明時の翌日から3年」となります。
もっとも、これとは別に、自賠法(自動車損害賠償保障法)や保険法には、上記の日から3年という時効期間があるため、異議申立ては原則としてその期間内に行う必要があります。
(2-2)紛争処理制度の利用
次に、紛争処理制度の利用です。これは、被害者と保険会社との間で、保険金の支払に関する紛争が発生した場合に、自賠責保険・共済紛争処理機構(第三者)にあらためて書面審査を申立てることができる制度です。
これについても費用はかかりませんが、書面審査のみですので、認定が覆りそうな新たな医学的資料を提出しないと、認定が覆る可能性は低いといえるでしょう。
参考:紛争処理制度の概要|一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
(2-3)民事裁判での訴訟提起
民事裁判での訴訟提起をする方法によっても、後遺障害等級認定を争う方法があります。
損害保険料率算出機構が行った等級認定に対して異議申立てを行うことができるのですが、自賠責保険・共済紛争処理機構に対しては、等級認定の再申請や異議申立てを行うことはできませんので、認定結果に納得がいかない場合には、裁判によって争うことになります。
裁判所は、これまでの後遺障害等級認定の結果に左右されず、裁判所独自の視点で等級を判断してもらえるというメリットがありますが、これまで説明した2つの方法に比べて、費用や手間、時間がかかってしまいます。
(3)弁護士に依頼するメリット|後遺障害等級の認定結果を争うのは簡単ではない
後遺障害等級の認定結果がすでに出てしまっている以上、それを覆すことは難しいといえます。実際、後遺障害等級の認定結果に対して異議申立てをして、等級変更が認められる可能性はおよそ15%です。
2019年度の審査結果(単位:件)審査結果 | 審査件数 | |||
等級変更あり | 等級変更なし | 再調査 | その他 | |
1747 | 9410 | 313 | 115 | 1万1585 |
※「その他」は、時効などが問題となった件数です。
出典:自動車保険の概況(2020年度)(2021年4月発行)31頁 「図9 後遺障害(高次機能障害・非器質性障害を除く)」の専門部会(2019年度)」│損害保険料率算出機構
後遺障害等級の認定結果を争うには、後遺症を裏付ける新たな証拠を提出すること、さらに、相手を説得させる資料を提出することが重要です。
さらに、後遺障害等級認定のコツやポイントを知っていることも重要です。これには、各症状や各等級にポイントやコツがあるのですが、何度も交通事故に遭う人は少ないため、被害者本人がこのコツやポイントを抑えることは難しいといえるでしょう。
ここに、過去に後遺障害等級認定の申請の経験のある弁護士に依頼するメリットがあるのです。交通事故問題に精通した弁護士は、これまで何度も後遺障害等級認定の申請を行った経験があるため、このコツやポイントをおさえた申請を行うことができます。
時には、これまでの経験を踏まえて、主治医と後遺障害診断書の記載内容について相談したり、新たな検査を検討したりすることもあります。
後遺障害等級の認定結果を覆す可能性を高めるためには、弁護士に依頼または相談することが重要です。
(4)後遺障害等級の変更が認められた事例
後遺障害等級の異議申立てを弁護士に依頼したことで、後遺障害等級が新たに認められた事例、等級アップした事例をいくつか紹介します。
(4-1)異議申立てによって後遺障害14級9号を獲得。示談金も約3.5倍に増額!
Sさん(男性・58歳・会社員)
傷病名:右膝および右足首関節の打撲と捻挫・右膝擦過傷(1週間後に頸椎捻挫、3週間後に左上肢末梢神経障害が診断される)
後遺障害等級:14級9号
Sさんは、青信号の交差点の横断歩道を自転車で渡る途中、後方から交差点を左折してきた加害者の車両に衝突されました。Sさんは、この事故の結果、頸椎捻挫(むち打ち)、左手の痺れ(左上肢末梢神経障害)の診断を受けました。
事故後、約1年の通院治療を続けましたが、左手の痺れが後遺症として残ってしまい、加害者側の保険会社を通じて後遺障害申請(いわゆる「事前認定」)をしましたが、後遺障害等級は認められませんでした。
Sさんは後遺障害等級が非該当になった結果に納得がいかず、弁護士に依頼をしました。依頼を受けた弁護士は、Sさんから提供を受けた後遺障害診断書、画像その他の診療録と後遺障害等級認定票を比較検討したところ、非該当の理由は事実に反していました。そこで、弁護士は自賠責保険に対して、「画像に明らかな異常所見がある」、「事故後一貫して左上肢に神経症状の所見がある」旨の異議を申立てました。
約2ヶ月後、「左上肢の神経症状が一貫している」との主張が認められて、14級9号の後遺障害等級認定がなされました。
当初、加害者側の保険会社からSさんに提示されていた金額は、128万47円で、後遺障害等級の認定がされた後提示された後遺症に関する慰謝料・賠償金も88万8062円とあまりに低いものでした(後遺障害等級認定後の総額も216万8109円)。
弁護士は、任意保険の基準ではなく弁護士の基準を用いて計算するように粘り強く交渉しました。その結果、当初の提示額の約3.5倍である429万2707円で示談を成立させることができました。
(4-2)異議申立により後遺障害12級13号の認定に成功!示談金も1.7倍に
Tさん(女性・30歳・パート主婦)
傷病名:仙骨骨折・腰部打撲・頭部打撲・頸椎捻挫(むち打ち)
後遺障害等級:12級13号
自転車で横断歩道を横断中だったTさんは、後方から右折しようとした乗用車に巻き込まれ、仙骨骨折・頸椎捻挫(むち打ち)、頭部打撲、腰部打撲のケガをしました。
Tさんはこの事故のせいで約2ヶ月間入院し、その後約5ヶ月間の通院を余儀なくされました。また、仙骨下半分に痛みが残るといった後遺症が残りました。
Tさんはすでに別の弁護士に依頼し、後遺障害につき14級9号の等級が認定されていました。しかし、Tさんは弁護士の対応が遅く不満があったため、弁護士を解任し、新たな弁護士に依頼・相談することにしました。
新たに依頼を受けた弁護士は、後遺障害診断書の内容やレントゲン画像を精査したところ、事故により仙骨に変形癒合が生じて痛みが残った可能性が高いと判断しました。
そこで、さらに、弁護士のアドバイスのもと、仙骨の変形癒合であることが明らかとなる検査の実施を行い、すでに行われた後遺障害等認定に対して異議申立てを行いました。
異議申立ての結果、後遺障害12級13号の等級を獲得することができました。
加害者にはすでに弁護士がついており、交渉が難航することが予想されましたが、粘り強い交渉の結果、後遺症慰謝料については、弁護士の基準の満額である290万円で示談することができ、最終的には、保険会社から当初提示された示談金額よりも540万円増額することができました(賠償金総額は1300万円以上)。
(4-3)非該当から一転、異議申立により後遺障害併合14級を獲得!
Oさん(男性・31歳・会社員)
傷病名:胸椎捻挫・腰椎捻挫・頸椎捻挫(むち打ち)
後遺障害等級:併合14級(局部に神経症状を残すもの)
※弁護士費用特約を使用
Oさんは、自家用車を運転中、渋滞のため交差点の手前で停車していたところ、後方から来た自動車に衝突され、頸椎捻挫(むち打ち)、腰椎捻挫、胸椎捻挫のケガを負ってしまい、通院加療を余儀なくされてしまいました。
治療を続けて約7ヶ月が経過したところ、医師からようやく症状固定との判断を受けましたが、残念ながら首や腰に痛みが残ってしまいました。そこで、Oさんは、加害者側の保険会社の指示に従って後遺障害診断書を作成してもらい、その保険会社の担当者を通じて後遺障害等級認定の申請をしましたが(いわゆる「事前認定」)、その結果は「非該当」、後遺障害等級は認定されませんでした。
この結果を受けて、加害者側の保険会社からは、後遺症について全く考慮されていない示談金額が提示されました。しかし、Oさんの首の後ろの部分の痛みや肩の張り、腰痛はいまだひどく、後遺障害の等級が認定されないことにどうしても納得がいかず、弁護士に依頼することに決めました。
依頼を受けた弁護士は、さっそくOさんの主治医に連絡をし、以前の後遺障害等級の申請の際には提出しなかった検査結果を取り寄せ、それらをもとに、Oさんの後遺症には後遺障害等級が認められてしかるべきであると詳細に論じた異議申立てを行いました。
その結果、首と腰の2か所の痛みについて、それぞれ後遺障害等級14級9号が認定され、最終的に併合14級の認定を受けることができました。
その後も弁護士が、加害者側の保険会社に対し、新たに認定された後遺障害等級14級9号を提示し、粘り強く交渉をしたところ、当初の示談額提示額188万803円から223万3672円増額した411万4475円を受け取ることができました。
後遺障害等級認定の申請を弁護士に依頼するメリット
後遺障害等級認定の申請には、加害者側の保険会社に任せる方法(「事前認定」)と被害者本人が行う方法(「被害者請求」)があります。
もっとも、加害者側の保険会社があなたに有利な資料を積極的に収集するということは考えにくく、後遺障害等級認定が行われる可能性を高めるためには、「被害者請求」によるべきでしょう。
しかし、後遺障害等級の認定の申請を「被害者請求」で行うのには、たくさんの資料の提出が必要となります。
さらに、どのような資料を提出するかによって、不当に低い後遺障害等級が認定される可能性も否定できず、支払われる慰謝料や賠償金が大きく変わってしまうこともあるのです。
そのため、後遺障害等級の認定の申請や異議申立ては、交通事故を取り扱う弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、後遺障害等級が認定され、後遺症に関する賠償金を受け取ることができる可能性を高めるとともに、被害者やご家族にかかる負担も減らすことができます。
【まとめ】後遺障害等級認定とは、後遺症についての慰謝料や賠償金請求をするに必要な手続きの一つ
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 後遺障害等級とは、後遺症についての慰謝料や賠償金の目安となるもので、後遺症についての慰謝料や賠償金を受け取るためには、等級認定を受けることが必要。
- 後遺障害等級認定は、損害保険料率算出機構(加害者側の保険会社が加盟している場合)や自賠責保険・共済保険紛争処理機構が行う。
- 後遺障害等級の認定の期間としては、申請から結果の通知がくるまでは約1ヶ月~半年程度
- 後遺障害等級の認定申請の方法のまとめ
事前認定 | 被害者請求 | |
手続きを行う人 | 加害者側の保険会社 | 被害者本人(もしくは弁護士) |
治療に関する資料の準備 | 加害者側の保険会社 | 被害者本人(もしくは弁護士) |
メリット | ・被害者本人に手間がかからない | ・提出資料を被害者がチェックできる ・認定に有利な資料を提出することができる |
デメリット | ・提出資料のチェックができない ・認定に有利な資料を提出できない | ・被害者(もしくは弁護士)に手間がかかる |
- 後遺障害診断書の作成方法と注意点
後遺障害診断書でチェックすべきポイント
- 自覚症状
- 各部位の後遺障害の内容|精神・神経の障害、他覚症状及び検査結果
- 障害内容の増悪・緩解の見通し
後遺障害診断書については、それぞれの後遺症に応じてきちんと専門医に作成してもらうようにしましょう。
- 後遺障害等級の認定結果を争う方法
- 異議申立書を提出
- 紛争処理制度の利用
- 民事裁判での訴訟提起
後遺障害等級が認定されるか、また、どの後遺障害等級が認定されるか、は、慰謝料や賠償金の金額を大きく左右する要素になります。
もっとも、基本的に書面による審査によって判断されるため、どのような書類を提出するかによって、後遺障害等級の認定結果は大きく変わってしまいます。
ここで、後遺障害等級の認定の申請や異議申立ては、交通事故を取り扱う弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、後遺障害等級が認定され、後遺症に関する賠償金を受け取ることができる可能性を高めるとともに、被害者やご家族にかかる負担も減らすことができるのです。
もっとも、弁護士に依頼するとなると、弁護士費用もかかってしまいますが、あなたやあなたの家族が加入する自動車保険や火災保険に弁護士特約が付いていれば、弁護士費用は保険会社が負担することとなりますので、あなたには経済的負担がかかる心配はありません。
この特約を利用しても、保険の等級が下がったり、保険料が値上がったりするなどのデメリットはまったくありません。ご自身やご家族の自動車保険や火災保険に弁護士特約が付いているかどうかを必ずご確認ください。
ご加入中の自動車保険や損害保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、原則的に弁護士費用は保険会社が負担することになります(一定の限度額、利用条件あり)。
また、弁護士費用特約を利用できない場合でも、アディーレ法律事務所では、原則として、交通事故被害の賠償請求につき、相談料、着手金はいただかず、成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
また、原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配もありません。
※以上につき、2021年6月時点
後遺障害等級の申請や認定結果を争いたい方はアディーレ法律事務所にご相談ください。