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事故の加害者が未成年!親の責任を問える3つのケース

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kiriu_sakura

「交通事故の加害者が未成年者で、賠償金が払えないと言っている……。親の責任は問えるのだろうか?」

未成年者の運転する自動車や自転車にぶつかってけがをしたという場合、加害者が車両保険や自転車保険に加入していれば、通常は保険会社から賠償を受けられることが多いです。
他方、加害者が保険に加入していなければ、加害者本人から損害の賠償を受けなければいけません。

加害者が未成年者で資力がないという場合には、親から賠償を求めたいところですが、加害者が未成年だからと言って、必ずしも親の責任を問えるわけではありません。
未成年者が加害者の事故の場合、親の責任を問える可能性があるのは、次の3つです。

  1. 未成年者の子供に責任能力がない場合
  2. 親自身の不法行為責任を問える場合
  3. 親名義の自動車・バイクを運転して事故を起こした場合

今回の記事では、次のことについて弁護士がご説明します。

  • 交通事故と未成年者の責任
  • 未成年者に責任能力がない場合の親の責任
  • 未成年者に責任能力がある場合の親の責任
この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後,岡﨑支店長,家事部門の統括者を経て,2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

交通事故の加害者の責任とは?

交通事故の被害にあってけがをした場合、被害者は加害者に対して、民法709条により生じた損害の賠償を請求することができます。
民法709条は、次のように規定しています。

民法

第709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法709条

参考:民法 | e-Gov法令検索

加害者に対して民法709条の責任を追及するためには、次の要件を満たす必要があります。

  1. 加害者に責任能力があること
  2. 加害者に故意・過失があること
  3. 加害行為に違法性があること
  4. 被害者に損害が発生すること
  5. 加害行為に損害発生との間に因果関係があること

民法709条の要件などについて詳しくはこちらの記事もご参照ください。

民法709条とは?具体的な事例で損害賠償請求についてくわしく解説

加害者の責任を追及するには、次にご説明するとおり、加害者に『責任能力』が認められる必要があります。

加害者の『責任能力』とは?

民法では、『責任能力』については次のように規定しています。

民法

第712条(責任能力)

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった時は、その行為について賠償の責任を負わない。

引用:民法712条

参考:民法 | e-Gov法令検索

つまり、未成年者に「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」(これを「責任能力」と言います)がない場合には、未成年者が交通事故を起こしたとしても、未成年者本人は責任を負わないのです。

「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とは、具体的にはどういうことですか?

自分の行為によって、どんな法律上の責任が発生するのか判断できる能力のことです。
例えば、人を殴れば相手がけがをして、その結果、治療費などを支払わなくてはいけなくなる、という判断ができることです。

このような責任能力は、それまでの生活環境や教育の程度、個々の未成年者の知的能力などによって異なりますので、何歳になったら備わるのかと言うはっきりとした基準はありません。

これまでの判例や裁判例を見る限り、大体12歳程度で責任能力があると判断されていることが多いです。
ですので、中学生以上の未成年者による交通事故の場合には、未成年者本人の責任を追及できる場合が多いでしょう(※ただし、個別のケースによって判断は異なる可能性があります)。

加害者に責任能力がない場合はどうなるの?

他方、加害者が幼く、責任能力がないと判断される場合は、未成年者に代わって親が責任を負わなければいけません(民法714条1項本文)。
ただし、次のケースでは親も責任を負わないことになります。

  • 監督義務を怠らなかった場合
  • 監督義務を怠らなくても損害が生じたと言える場合

ただし、親としての監督義務は、子供の日常生活における行動すべてが対象となりますので、よほど不可抗力によって交通事故が起こったようなケースでなければ責任を免れるのは難しいでしょう。

実際の事例をご紹介しましょう。

神戸地方裁判所判決平成25年7月4日

小学5年生(11歳)の子が足踏み自転車を運転中、歩行者にぶつかってけがをさせた事例。
責任を追及された親は、次のような事情を挙げて、監督責任を果たしたと主張しました。
  • 子供の体にあった自転車を使用させていたこと
  • 日常的に自転車の走行方法について指導していたこと
  • (スピードを出さない、ハンドルをしっかり持って前を向いて注意して運転する、事故を起こさないように歩行者や車両に注意する、夕方以降はライトをつける、危険な運転をしないよう、周りをよく見るなどの注意を促し言い聞かせていた)
  • 事故を起こした道路の通行についても、予め子供と道路状況を確認していたこと
  • これまでに事故歴もなく、走行に問題がなかったこと など
しかし、裁判所は、事故の状況や、事故当時子供がヘルメットの着用を忘れていたことなどから、結局自転車の運転に関する十分な指導や注意をしていなかったとして、親の監督義務違反を認めました。

監督義務違反が認められると、子供の事故について、親が賠償責任を負います。

この事例のように、自転車の運転など、もともと事故を起こす危険を内在する行為から生じた損害については、親が賠償責任を免れるケースは少ないでしょう。
他方、次にご紹介するように、本来は危険を有する行為でないのに、たまたま損害が発生したようなケースでは、親が責任を免れるケースもあります。

最高裁判所判決平成27年4月9日

11歳の子が、校庭でゴールに向けてサッカーボールを蹴ったところ、ボールがゴール後方の門扉を超えて道路上に転がってしまい、これを避けようとした被害者(バイク運転中)が転倒したという事例。
このケースでは、裁判所は、通常は人に危険が及ぶものでない行為によって、偶然人に損害を与えた場合は、その行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではないと判断し、親の責任を否定しました。

以上のとおり、交通事故の加害者が未成年で、かつ責任能力がない年齢(大体11~12歳未満となることが多いでしょう)の場合には、基本的には、未成年の子供に代わって親が賠償責任を負うことになります。

子供に責任能力がある場合、親の責任は問えない?

他方、未成年の子供に責任能力がある場合、子供自身が民法709条により賠償責任を負います。
とはいえ、未成年の子供は資力がなく十分な賠償を受けられないことも多いでしょう。
特に中高生による自転車事故は後を絶たず、高額賠償が命じられる裁判も少なくありません。
近年、自転車保険の加入を義務付けている自治体も増えていますが、自転車保険が十分に普及しているとは言えません。

参照:自転車事故の損害賠償に係る現状について|国土交通省

自転車による交通事故について詳しくはこちらの記事もご参照ください。

自転車事故の損害賠償最高額はどれくらい?自転車事故に関する注意点

本人に責任能力のある未成年者の交通事故について、親に責任を問える可能性があるのは、次の2つです。

  1. 親自身の不法行為責任を問える場合
  2. 親名義の自動車・バイクを運転して事故を起こした場合

それぞれご説明します。

(1)親自身の不法行為責任を問える場合

ここでいう親の責任とは、先ほどご説明した民法714条(子供の代わりに責任を負う場合)の話ではなく、親自身に民法709条の責任を問えるケースです。

ただし、責任能力のある未成年の子の起こした事故について、親自身が709条の責任を負うケースは、次のとおり、かなり限定的です。

  • 親による監督が現実に可能だった場合

親が子の運転する自動車に同乗しており、事故を起こすような危険な運転をしていたのにこれを止めなかったような場合などです。

  • 運転を止めるべき状況があったのに、止めなかった場合

運転前に、子が飲酒・過労・睡眠不足などで運転すべきでない状況であったのを認識していながら運転を止めなかった場合などです。
また、それまでに事故歴やスピード違反・飲酒運転などのいずれ事故を起こす可能性の前科・前歴があるにも関わらず、子の運転を止めさせなかったような場合も含みます。

親自身の709条の責任が問われた実際の裁判例を3つご紹介します。

岐阜地方裁判所判決平成25年7月19日

親と別居している18歳の大学生が、無免許で自動車を運転して交通事故を起こした事例。
裁判所は、次のような点から、親の責任は認めませんでした。
  • 親と同居していなかったこと
  • 子にこれまで非行歴はなく、親は子が無免許運転をしていたことを知らなかったこと
  • 事故当時、親は子が外出していたことを知らなかったこと
  • 事故当時、子は足にギプスをはめており、無免許運転及び事故を起こすことを予見することは困難であったこと など

横浜地方裁判所小田原支部判決平成1年9月21日

親と別居して働いている18歳の子が、自動車を運転して(仮免許中に有資格者を同乗させていなかった)交通事故を起こした事例。
裁判所は、次のような点から、親の責任は認めませんでした。
  • 事故当時、子は勤務先の寮に入ってから事故までほとんど実家に帰っていなかったこと
  • 親の知る限り、子が法令で定めた要件を満たさずに仮免許中に自動車を運転したことがなかったこと
  • 原付の運転免許を有し、社会人として独立し平穏に生活している子が親に無断で自動車を買い受け、有資格者を同乗させずに自動車を運転するとは全く予測していなかったこと
  • など

高松高等裁判所判決平成18年7月11日

親と別居(親の自宅と近い祖母方で生活)している17歳の子がオートバイを運転して交通事故を起こした事例。
裁判所は、次のような事情から、親の責任を認めました。
  • 子が経済的、社会的に親から独立した生活を送っていたとは言えず、親の監督から離脱した状態で生活していたとは認められないこと
  • 親は日常的に子に接触し、その世話をする立場にあったこと
  • 親は、事故前に地域の交通安全協会の役員から子の暴走行為を注意するよう促されていたこと
  • 親は、子のオートバイの運転が事故につながりうる危険な行為であることを予見し、日常的に子の運転状況を把握し、交通違反をしないよう子に自覚させるべき指導すべき注意義務を負っていたこと など

上でご紹介した3つの事例のうち、親の責任が認められたのは3つ目の事例だけですが、これは、未成年者が経済的に自立しておらず、自ら責任を果たす能力が欠けていたことなどを考慮したものとされています。

このように、交通事故を起こした未成年者に責任能力が認められるとしても、一定のケースでは親の責任が認められますので、事故の加害者が未成年であったという場合、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。

(2)親名義の自動車・バイクを運転して事故を起こした場合

さらに、未成年者が運転していた自動車やオートバイが親の名義であった場合、親は、自賠責法上の「運行供用者」として責任を負う可能性があります。

運行供用者とは、次の2点を満たす場合に認められます。

  • 運行を支配している(コントロールできる)こと
  • 運行の利益を受けていること

ですから、形式的には親名義の自動車・バイクであっても、例えば子が親から自動車・バイクを譲り受けた後、子が親と別居して完全に独立して生活しており、自動車・バイクの運転について親が一切関与していなかった(単に名義変更の手続きをしていなかった)というようなケースなどでは、親は「運行供用者」としての責任を負わない可能性があります。

名義人が未成年の子供本人の場合、親が運行供用者としての責任を負うことはないですか?

名義人が未成年の子供であっても、実態として親子で車両を利用し、購入費用や保険料やガソリンなどの維持費についても親が負担していたような場合には、親が運行供用者としての責任を負う可能性があります。

ですから、責任能力のある未成年者が、親の自動車・オートバイを運転して交通事故を起こしたようなケースでは、親自身も自賠責法上の責任が認められますから、親も子供と一緒に損害賠償責任を負わなくてはいけません。

【まとめ】交通事故の加害者が未成年の場合、一定のケースではその親に賠償責任が認められる

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 交通事故の加害者が未成年の場合、必ずしも親の責任を問えるわけではない。
  • 未成年者が加害者の事故の場合、親の責任を問える可能性があるのは、次の3つ。
    1. 未成年者の子供に責任能力がない場合
    2. 親自身の不法行為責任を問える場合
    3. 親名義の自動車・バイクを運転して事故を起こした場合
  • また、名義は未成年者であっても、購入費用や保険料など親が支払い、親も車両を利用しているようなケースでは、親も自賠責法上の運行供用者としての責任を負う。

未成年者が加害者となる交通事故にあい、保険から十分な補償を受けられない場合には、交通事故を取り扱う弁護士にご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後,岡﨑支店長,家事部門の統括者を経て,2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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