退職手続きの流れと退職後に必要となる手続きについて解説

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    作成日

    2024/01/18

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    2024/01/18

目次

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「退職しようと思っているけど、初めてなので、退職手続きがよく分からず不安」

初めてなら、不安も当然です。
退職前後の流れをきちんと知っておかないと、後で、思わぬ目にあって右往左往することになりかねません。
今回は、退職手続きの流れと、退職後に必要となる手続きについて、弁護士が分かりやすく解説します。

退職の申し出前の準備

退職の申し出をする前にきちんと準備をしておくべきことがあります。

準備1.就業規則を読んで、退職に必要な社内の手続きを確認
準備2.人事課に有給休暇の残り日数を確認
準備3.退職後の生活を計画
  1. 退職日の決定
  2. 転職活動
  3. 退職金の確認
  4. 失業保険の確認
  5. 年金の確認
  6. 住民税の支払額に注意
  7. 引っ越し先の準備

(1)就業規則を読んで、社内の退職手続きを確認

就業規則には、
  • 退職届けの出し方
  • 退職日はいつになるのか
  • 現勤務先と競合する企業への転職禁止
など、退職手続きに関して社内のルールが書かれていることがありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

なお、議論のあるところではありますが、就業規則の定めにかかわらず、法律の規定では、正社員(期間の定めがない場合)は原則として2週間に退職申し出をすれば、退職できます。

ただ、社内ルールを守っておいた方が円満退職はしやすくなりますので、就業規則でどのような退職手続きが定められているのか把握しておきましょう。

(2)人事課に有給休暇の残り日数を確認

次に、人事課に有給休暇は後何日残っていて、次に有給休暇が付与されるのはいつか確認しておきましょう。
というのも、有給休暇を消化してから退職したいと考えている人の場合、退職日が有給休暇消化後にくるように、退職希望日を申し出る必要があるからです。

(3)退職後の生活を計画

退職手続きで重要なのが退職後の生活を計画しておくことです。
退職後の生活をあらかじめ計画しておきましょう。

(3-1)退職日の決定

退職日を決めておかないと、新しい生活の準備がままなりません。
有給消化をしてから退職したい場合には、退職日が有給消化後になるように設定しておく必要があります。

(3-2)転職活動

退職前に、転職活動をしておくと、退職後のお金に余裕がもてます。
転職する方の場合は、退職翌日に、新しい勤務先に入社できるようにしておくと、面倒な健康保険や年金、税金の切り替え等を自分でやらずに済み、転職先で手続きしてもらえます。

転職先への入社日は、退職後になるようにしておいた方がトラブルになりにくいです。
なお、会社の就業規則等で、「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」として、競合する企業への就職が一定期間、制限されていることがあります。
退職金規程に、この制限に反すると退職金を減額すると記載されていることもありますので、転職先を決める際には注意しましょう(損害賠償請求されたり、競合他社への就職を差し止められたりするケースもあります)。

なお、5年も10年も競業する会社への転職を禁止するような就業規則の場合は、不合理であるとして、競業避止義務について定めた部分が、すべて無効とされる場合もあります。
無効となるかどうかはケースバイケースですので、迷ったら弁護士に相談しましょう。

(4)退職金の確認

退職金がどのくらいもらえるのか、会社の退職金規定などをチェックしておくと、退職後の生活が安心です。
自己都合退職の場合、定年退職等に比べ、退職金が低くなっていたり、勤務年数短い場合には退職金がもらえななっていたりすることが多いので、注意しましょう。
また、退職金は所得税等や住民税が天引き(特別徴収)されます。

(5)失業保険の確認

すぐに転職しない場合には、失業保険の給付額がいつから、いくらもらえるのかハローワークで確認しておきましょう。

(6)年金の確認

退職後、年金を受給する方は、年金が、いつから、いくらもらえるか確認しておきましょう。
なお、日本年金機構によれば、平均的な収入(賞与を含む平均標準報酬月43万9000円)で40年間就業した場合に受け取りはじめる厚生年金(老齢厚生年金+夫婦2人分の老齢基礎年金(満額))は、2020年度時点で月22万724円です。

(7)住民税の支払額に注意

住民税は、「前年度の収入」に応じて課税されます。
退職後、収入が減る場合には特に要注意です。

(8)引っ越し先の準備

会社の寮に住んでいる場合には、原則として退職後会社の寮を出ていかなければなりません。
退職申し出後にバタバタしないで済むよう、引っ越し先も探し始めておきましょう。

退職申し出後の退職手続きの流れ

次に退職申し出後の退職手続きの流れを解説します。
1.退職申し出
  • 退職届
  • 退職理由
  • 退職の強引な引き留めに遭ってしまった場合
2.有給休暇の申請
3.退職の引継ぎ
4.税金関係の処理
  • 「退職所得の受給に関する申告書」の提出
  • 住民税
5.徐々に私物の引き上げ
6.貸与品や健康保険証等の返却
7.退職後の手続きに必要な書類の受け取り
8.最終出勤日のあいさつ&お菓子
9.社宅の退去

(1)退職申し出

まずは、会社に退職の申し出をしましょう。

(1-1)退職届

法律上、退職届を出す必要はありません。
口頭でもメールでも「退職したいこと+退職したい日」が会社に伝わればよいです。
ただし、自己都合退職の場合で、就業規則に退職届を出すように記載してあれば、これに従った方が円満退職しやすいでしょう。

(1-2)退職理由

法律上、退職理由を述べる必要はなく、「一身上の都合」とだけ伝えれば大丈夫です。
ただし、退職理由を伝えた方が自己に有利になりそうな場合は、退職理由を伝えておきましょう。
例えば、期間の定めのある労働者が期間の途中で退職する場合、原則としてやむを得ない事由がないと退職できません。
この場合、退職に「やむを得ない事由」があるかどうかを会社が判断しなければなりませんので、会社が判断するに足るだけの退職理由を述べた方がよいでしょう。

(1-3)退職の強引な引き留めに遭ってしまった場合

残念ながら、近年、退職手続きをしようとすると、強引な引き留めに遭う事が増えています。
労働者が法律に則って退職手続きを進めている以上は、会社が退職を妨げることは違法です。
退職手続きをしたいのに退職できない場合には、専門家に相談しましょう。

(2)有給休暇の申請

有給消化をしてから退職したい人の場合は、有給化の申請を早めにしましょう。
なお、会社が有給休暇の消化を拒否してくることがあります。
しかし、退職に伴う有給消化の場合は、会社は有給消化を拒否できません。
また、会社は、労働者の意思に反して、有給休暇の買取りをすることもできません。
有給消化をめぐって会社とトラブルになったら、専門家に相談しましょう。

(3)退職の引継ぎ

パスワードなど、自分しか知らない業務上の情報等は、メモにするなどして、上司や後任に引き継ぐようにしましょう。
なお、後任がいなくとも、退職はできます。
「引き継ぎが完了していないから、退職できない」という会社の主張は違法です。

(4)税金関係の処理

退職手続きでは税金関係の処理も重要です。

(4-1)「退職所得の受給に関する申告書」の提出

「退職所得の受給に関する申告書」提出しないと、退職金から引かれる税金が増えてしまうことがあります(所得税法第3条、所得税法施行規則第77条)。
退職金を受け取るまでに、会社に提出しておくようにしましょう。
なお、退職所得の受給に関する申告書を提出しなかった場合は、確定申告をすることにより払いすぎた税金を還付してもらえる場合があります。

(4-2)住民税

住民税は5月~翌6月が1年度なのですが、退職すると年度内の残りの住民税を、
  • 特別徴収で一括払いするのか
  • 普通徴収で年4回の分割払いをするのか(希望すれば一括払いも可)
という問題が発生します。
特別徴収は、給与や退職金から天引きされるものです
普通徴収は、納税通知書に従って、自分で支払いの手続きをするというものです(銀行振り込み等)。

この特別徴収か普通徴収のどちらになるのかは、法律で決まっています。
退職時期 徴収方法 備考
1~5月 特別徴収 離職をした月を含めた5月までの残りの税額一括払い
例)1月退職⇒5ヶ月分の一括払い
  5月退職⇒1ヶ月分の支払い
6月 普通徴収 翌月以降、普通徴収として分割払い(希望すれば、普通徴収
として一括払いも可能)

なお、本人が希望すれば、特別徴収として、退職月の給与や
退職金等から一括払いも可能。
退職から1ヶ月以内に転職先に就職する場合には、これまで通り、住民税を特別徴収(分割払い)で支払うことができることもあります。
6~12月に退職する方の場合は、年度内の残りの住民税につき、特別徴収か普通徴収のどちらを希望するのか、現在の勤務先に伝えておきましょう。
不明点は、人事課や専門家に相談しましょう。

(5)徐々に私物の引き上げ

私物を会社から引き上げる必要があります。
徐々に引き上げをしておくと、最終出勤日が楽になるでしょう。

(6)貸与品や健康保険証等の返却

会社の貸与品や、健康保険証は、会社に返却する必要があります。
健康保険証は、退職日までに使うこともあるので、退職日ぎりぎりまで持っておくとよいでしょう。
退職日の翌日から、健康保険証は効力がなくなります。

(7)退職後の手続きに必要な書類の受け取り

次の物は会社から受け取っておきましょう。
受け取るべき書類 用途
離職票1、2 ハローワークで失業保険の受給手続きをする場合などに使用
雇用保険被保険者証
※会社が預かっている場合
再就職先などで使用
年金手帳
※会社が預かっている場合
国民年金の切り替え手続きなどに使用
(例)第2号被保険者(例:サラリーマン)から第1号(例:無職)、第3号被保険者(例:配偶者の扶養)に変更
(必要あれば)社会保険資格喪失等確認通知書 国民健康保険・国民年金の加入手続きで使用
源泉徴収票 確定申告や、再就職先での年末調整などで使用

(8)最終出勤日のあいさつ&お菓子

義務でありませんが、最終出勤日に上司や同僚に退職のあいさつをしておくと、気持ちよく退社できるでしょう。
その際、お菓子を渡すかどうかは、どちらでも構いません。
これまでの社内の慣例に従っておくと無難でしょう。

(9)社宅の退去

社宅に住んでいる場合には、退職日までに退去できるように準備を進めておきましょう。

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退職後に手続きが必要なものはある?

退職後にも次のような社会保険や税金の手続きが必要です。
  • 失業保険
  • 健康保険
  • 年金
  • 確定申告

(1)失業保険

雇用保険に加入している方が失業した場合は、一定の場合に失業保険(基本手当)の受給ができます。
基本手当を受給したい場合は、できるだけ早く、自身の住所を管轄するハローワークで基本手当の受給手続きをしましょう。
原則として、離職の翌日から1年を経過すると、所定給付日数が残っていても基本手当を受けられなくなりますので注意しましょう。

(2)健康保険

退職して翌日から新たな会社に勤務するような場合は、転職先が健康保険の適用事務所であれば、本人の意思に関係なく健康保険に加入することになります。
しかし、すぐに再就職しない場合は、保険の切り替え手続きを自分で行う必要があります。
というのも在職中に加入していた健康保険は、退職の翌日から効力を失いますので、ほっておくと治療費が全額負担になる事態も起こり得るからです。

健康保険や国民健康保険の保険料はお住まいの地域や所属する健康組合によって異なります(保険の内容は、大きく変わらないことが多いです)。

(2-1)これまでの健康保険を任意継続する場合

継続して2ヶ月以上被保険者期間があるときは、これまでの健康保険を引き続き2年間、任意継続することができます。
保険料は、事業主負担がなくなりますので全額自己負担となります。
退職日の翌日から20日以内に、住居を管轄する全国健康保険協会(または健康保険組合)にて、自分で手続きをする必要があります。

(2-2)配偶者が健康保険に入っていて、配偶者の被扶養者となる場合

収入要件などの一定の要件を満たせば、健康保険の被扶養配偶者になることができます。
健康保険の被扶養者になると、健康保険料を負担しなくて済みます。
扶養者になっても、配偶者の健康保険料が増えるわけでもありません。
退職後5日以内に、配偶者の事業主を経由して、「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。

被 扶 養 者 ( 異 動 ) 届 第3号被保険者関係届

(2-3)配偶者の被扶養者とならない、任意継続被保険者にならない場合

配偶者の被扶養者とならない、任意継続被保険者にならない場合は、基本的には国民健康保険に切り替えることになります。

退職の翌日から14日以内に、各市区町村役場にて、自分で国民健康保険に加入する手続きをする必要があります。

なお、特定の職業団体に加入している場合には、「国民健康保険組合」というものに加入できることもあります(国民健康組合か、国民健康保険かのいずれかを選択することになります)。

(3)年金

60歳未満の方ですぐに再就職しない場合は、会社を退職すると、ご自身の状況に応じて、各種の年金に切り替える必要があります。

(3-1)(配偶者がサラリーマンや公務員(第2号被保険者)で、配偶者に扶養される場合

配偶者が厚生年金保険や共済組合等に加入しているサラリーマンや公務員(第2号被保険者)の場合、年収が130万円未満(※)など、一定の要件を満たせば国民年金の「第3号被保険者」に切り替えることになります。
ただし、失業保険受給中は、収入要件を満たすことができずに、第3号被保険者になる事ができないことがあります。

第3号被保険者になると、年金保険料を支払う必要がなくなりますし、配偶者の年金保険料がこれによって上がることもありません。
ただし、厚生年金や共済組合等には加入していないことになるので、その分、第2号被保険者である場合よりは受け取れる年金総額は少なくなります。

退職の翌日から14日以内に、配偶者の事業主に「被扶養者(異動)届」を提出して、配偶者の事業主を通じて、切り替えの手続きする必要があります。

※厚労省の支援施策により、繁忙期などで収入が一時的に上がった(年収が130万円以上になった)としても、事業主がその旨を証明すれば、引き続き「第3号被保険者」でいられることになりました(2023年10月から)。

ただし、一時的な収入の増加を前提とした施策であることにご注意ください。

(3-2)その他の場合

第3号被保険者や第2被保険者に該当しない場合(本人無職、配偶者は自営業の場合など)には、第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。

この場合、退職の翌日から14日以内に、住居地を管轄する市区町村役場にて、ご自身で手続きをする必要があります。

(4)確定申告

年の途中で退職し年末までに再就職しなかった場合は、退職した会社で得たその年の給与が年末調整されないままになっていて、税金が払いすぎたままになっていたり、不足したりしている可能性があります。
このように前職での年末調整がされていない場合、ご自身で、確定申告をする必要があります。
確定申告をすると、払いすぎた税金が戻ってくることがあります。
なお、失業保険(基本手当)は非課税のため、確定申告をする必要はありません。

確定申告をする場合は、1~12月までに得た収入につき、提出期間中 (翌年2月16日頃~3月15日頃)に、確定申告書を提出しましょう。

【まとめ】退職手続きは計画的に

退職手続きには、
  • 退職申し出前
  • 退職申し出から退職まで
  • 退職後と段階
に応じて、行わなければならないことがあります。

特に、退職後の社会保険や税金関係の手続きは、期限が決まっていますので早めに手続きを取るようにしましょう。

会社とのトラブルを抱えている、退社について言い出しにくいという方は早期の円満退社を目指せる退社代行を利用するのもおすすめです。
退職代行については、アディーレ法律事務所へご相談ください。
この記事の監修弁護士

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

髙野 文幸の顔写真
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