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養育費を支払ってもらう方法は?給料差押えの条件などを解説

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リーガライフラボ

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「離婚の際の約束通りに養育費が支払われなくなった!元夫の給料を差し押さえることはできないの?」

両親が離婚した後、子どもを育てるための費用として支払われるべき養育費。
しかし、養育費の支払状況はあまりよくありません。
2016年に行われた厚生労働省の調査結果によると、養育費を受け取ったことのないひとり親が過半数(母子世帯で約56.5%、父子世帯で約86.3%)を占めることがわかりました。両親と暮らせない子どもたちが、経済的に苦しい状況に置かれていることになります。

もし、あなたが離婚時に元配偶者と養育費の支払について約束をしたのであれば、場合によっては相手の給料を差し押さえられるかもしれません。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 養育費を支払ってもらう方法
  • 給料を差し押さえる場合の条件

参照:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果 17 養育費の状況|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

離婚しても養育費を支払わなければならない

養育費とは「子どもの監護や教育のために必要となる費用」です。
一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる費用を意味し、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などが挙げられます。

離婚する際、両親のどちらかを親権者と決めなければならず(民法819条1項)、通常親権者が子どもを引き取って育てます。
子どもと離れて暮らす親は、離婚した後も親であることには変わりませんので、離婚後も当然子どもを養う法的義務(生活保持義務)があります。

養育費の金額は、一般的に両親の話し合いによって決められます。
その際、参考となるのが東京と大阪の家庭裁判所の裁判官の研究報告である「算定表」です。
子どもの数や年齢、両親の収入状況に応じて目安となる養育費の金額があります。

いくつか例を挙げてみると、次の表のとおりになります。

子どもの数・年齢義務者の年収権利者の年収養育費の目安(月)
1人(0~14歳)600万円(給与)200万円(給与)4~6万
1人(0~14歳)600万円(自営)200万円(給与)6~8万
1人(15歳以上)600万円(給与)200万円(給与)6~8万
2人(15歳以上)600万円(給与)200万円(給与)8~10万

年収が、「給与」なのか「自営」なのかによって養育費の目安となる金額が異なるため、ご注意ください。

参照:養育費|法務省
参照:平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所 – Courts in Japan

養育費を支払わない理由

養育費を支払わない人が主張することが多い代表的な理由は、次のようなものです。

  1. 会社の業績不振など養育費に充てるお金がない
  2. 養育費という名目であっても別れた配偶者に対してお金を支払いたくない
  3. 親権者が別の人と再婚したので自分が養育費を支払う必要はない

(1)会社の業績不振など養育費に充てるお金がない

養育費を支払う義務は、「自分の生活を保持するのと同程度の生活を、子にも保持させる義務」(生活保持義務)であるといわれています。

この生活保持義務は、一般的には、おにぎりが一つあれば、それも分けるというレベルの義務と考えられています。

そのため、離婚時に予想できない事態が生じて大きく減収したような場合は別として、単に借金があるとか、生活が苦しいという理由だけで養育費を支払わないと選択することは許されません。自己破産をしても支払義務を免除されないのが養育費です。

(2)養育費という名目であっても別れた配偶者に対してお金を支払いたくない

養育費は子どものために支払われるものであり、別れた配偶者のために支払われるお金ではありません。

また、養育費を支払うのは親の義務です。そのため、単に「支払いたくない」との理由で養育費を支払わないことは許されません。

(3)親権者が別の人と再婚したので自分が養育費を支払う必要はない

親権者が再婚したとしても、養育費を支払う義務はなくなりません。ただし、再婚したにとどまらず、再婚相手が子どもと養子縁組をした場合には、再婚相手が子どもを養う一次的な義務を負うので、元配偶者は再婚相手が子どもを養っている限り、養育費を支払わなくても構わないと判断される場合があります。

親権者が別の人と再婚した場合の養育費について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

再婚したら養育費を減額できる?弁護士がケース別に解説

養育費を強制的に支払ってもらう方法

養育費を強制的に支払ってもらう方法として、元配偶者の財産を差し押さえる方法があります。差押えの代表的な対象を3つお伝えします。

(1)給料を差し押さえる

一般的に、働いている限り、継続して支払われるのが給料です。給料を従業員として働く人(元配偶者)ではなく、養育費を受け取る権利のある人(親権者)に直接支払ってもらうことができるので、安定してお金を受け取れるようになります。

もっとも、給料の差押えといっても、給料全額を差し押さえられるわけではありません。
給料全額を差し押さえられると、元配偶者が生活できなくなってしまうからです。
養育費の場合であれば、法律上原則として元配偶者の給料の手取り(税金や社会保険料等を差し引いた額)の2分の1まで差し押さえることができます。

(2)預貯金口座を差し押さえる

普通預金だけでなく、定期預金や当座預金も差押えの対象です。
銀行預金を差し押さえると、銀行は預金者にお金を払い戻すことができなくなります。
つまり、預金を預けた人(元配偶者)ではなく養育費を受け取る権利のある人(親権者)に払い戻してほしいと銀行に請求することができるのです。

もっとも、配偶者がどの銀行のどの支店に口座を持っているのか把握していないと差し押さえはできません。

また、元配偶者が、預金を差し押さえられそうなことを察知した場合、差し押さえの前に預金を引き出されてしまう可能性があります。

(3)不動産を差し押さえる

土地や建物など不動産は財産的な価値も高く、差押えの対象となります。もっとも、土地や建物に抵当権が設定されている場合には、抵当権者が優先的に弁済を受けるので、土地や建物の価値によってはお金の回収を図れない可能性があります。
複数人で土地や建物を共有している場合には、共有部分しか差し押さえられません。

養育費回収を目的として給料を差し押さえる場合の条件とは?

次に、給料を差し押さえる場合の条件をご説明します。
差押えは強制的に財産を取り上げる手段ですから、きちんと手続きを踏む必要があります。

(1)給料を差し押さえるための債務名義を取得していること

簡単に言うと、債務名義とは、強制執行できる範囲を明確に示した公的な文書のことです。

実務においてよく用いられる債務名義は次の4つです。

  • 確定判決…確定した裁判所の判断
  • 仮執行宣言付判決…直ちに執行できることを許した裁判所の判断(未確定でもOK)
  • 和解調書…裁判所が和解の内容をまとめた書面
  • 執行証書…一定の条件を満たす公正証書

(2)養育費の支払いが遅れていること

きちんと養育費を支払っている相手から強制的に財産を取り上げることはできません。
確定判決や和解調書、公正証書等によって取り決められた養育費の支払期限を過ぎていることが必要です。

(3)給料債権を有している勤務先を特定できること

給料の差押えは、相手方が給料債権を有する勤務先に対して行うものです。そのため、差押命令を送る勤務先が特定できなければ、給料を差し押さえることはできません。もし元配偶者が転職したなどの理由で勤務先がわからなければ、後ほど述べる「第三者からの情報取得手続」などを利用しましょう。

民事執行法の改正は養育費を回収するための給料等の差し押さえにどう影響する?

2020年4月の民事執行法の改正によって、養育費を支払ってもらえる可能性が高まったといわれています。どのようなことが期待できるのでしょうか。

(1)民事執行法改正前の状況

従来、「養育費を支払え」との判決を得ても、元配偶者の財産の内容や勤務先を知らなければ、強制的に養育費を支払ってもらう手段はなく、判決は絵に描いた餅でした。たとえば、預金口座を差し押さえて預金を引き出そうにも、親権者の側で金融機関名と支店名を特定しなければならなかったのです。また、給料を差し押さえる場合も、同様に、元配偶者の勤務先を調査しなければならず、元配偶者が転職してしまうと、手詰まりの状態になっていました。

(2)民事執行法の改正で財産情報を取得しやすくなった

2020年4月の民事執行法改正により、債務者の情報が取得しやすくなりました。

「第三者からの情報取得手続」という制度が新設され、調査しても債務者の財産を特定できない場合には、勤務先や銀行口座などの情報を取得できるようになったのです。

具体的には、次のような情報を取得できるようになりました。

  • 債務者名義の預貯金口座の有無と口座残高を銀行等の金融機関から取得
  • 勤務先を含む給与の有無とその額を市町村や日本年金機構等から取得
  • 債務者名義の土地や建物の有無を法務局から取得

また、債務者が裁判所からの呼び出しに応じなかったり虚偽の回答をしたりした場合には、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることになりました(改正前は、30万円以下の過料が定められていたのみ)。
したがって、債務者に対する心理的なプレッシャーは相当程度高まったといえるため、養育費の不払いが減少することが期待されています。

養育費回収のための給料の差し押さえの流れ

給料を差し押さえてお金の回収をする基本的な流れは、次のとおりです。

1.債務者の住所地を管轄とする地方裁判所に申立てる
あわせて、第三債務者(債務者の勤務先)に対する陳述催告を申立てる

2.裁判所から債権差押命令が発令される

3.裁判所から第三債務者に債権差押命令が送達される

4.裁判所から債務者に債権差押命令が送達される

5.第三債務者から裁判所に陳述書が返送される

6.第三債務者からお金を回収する

差押えにはいくつもの段階を踏む必要があり、必要な書類もたくさんありますので、法律の知識がなければ難しい場合が多いでしょう。

そのため、手続きは弁護士に任せることをおすすめします。

養育費の不払いにお悩みの方はこちらの記事もご覧ください。

【まとめ】養育費のために給料を差し押さえたいなら弁護士にご相談を!

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 離婚しても親であることには変わりないため、親権者にならなくても養育費を支払う義務がある
養育費を強制的に支払ってもらう方法
  1. 給料を差し押さえる
    養育費の場合、手取りの2分の1まで差し押さえることが可能
  2. 預貯金口座を差し押さえる
  3. 不動産を差し押さえる
養育費回収を目的として給料を差し押さえる場合の条件
  1. 債務名義を取得している
    債務名義の代表例
    • 確定判決
    • 仮執行宣言付判決
    • 和解調書
    • 執行証書
  2. すでに支払いが遅れている
    約束通りに支払われているなら、給料の差押えはできない
  3. 勤務先が特定できている
  • 民事執行法の改正により、債務者の勤務先や銀行口座などの情報が取得しやすくなった

養育費の不払いは、社会的に重大な問題となっています。
子どもたちが経済的に過酷な生活に追いやられてしまわないように、養育費を支払ってくれない元配偶者に対して給料の差押えを検討したほうが良いケースも多いでしょう。
養育費を回収するために元配偶者の給料を差し押さえることを検討されている方は、弁護士にご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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