あなたの法律のお悩み一発解決サイト
リーガライフラボ

手渡しの給料も差し押さえの対象?借金・税金の滞納における注意点

作成日:
リーガライフラボ

借金を返さなかったり、税金を滞納すると、給料が差し押さえられる、という話を聞いたことがある方もいるかと思います。

ところで、給料が手渡しで支払われている場合も、差し押さえられてしまうのでしょうか。

結論から言えば、手渡しの給料であっても差し押さえはされてしまいます。
今回は、借金をした場合や税金を滞納した場合の、手渡しの給料と差押えについて解説します。

給料が手渡しの仕事って、どんな業種?

正社員やアルバイトなどの雇用形態を問わず、銀行振込みで給料が支払われているという方が多い現代でも、日雇いの派遣や短期のアルバイト、個人事業主などの小規模な店舗では、給料を手渡しするケースがあります。

特に、日雇いで働く場合、最短で1日の業務が終了すれば契約関係が終了する場合もあるため、仕事終わりにその場で現金で支払われることも多いでしょう。
また、従業員が比較的少ない個人事業主の場合、毎月の給料は銀行振込みでも、ボーナスは現金手渡しということもあるようです。

「給料 現金手渡し」で求人を検索すれば、それなりの求人数がヒットします。
銀行振込みの場合、雇用主は振込みの手間や振込手数料などがかかりますので、手渡しにするメリットもあるようです。

借金や税金を払わなかったら手渡しでも給料が差し押さえられるの?

結論から言えば、給料は、勤務先に対して、勤務先が従業員に支払う前に差し押さえてしまうものなので、支払方法は問いません。

手渡しの給料であっても、差押えは可能です。
手渡しの給料が差し押さえられた場合、差押え分を引いた給料しか受け取れなくなります。

(1)そもそも、「差押え」ってなに?

差押えとは、金銭債権を強制執行できるようにするため、債務者が財産譲渡などの事実上または法律上の処分をすることを禁じる目的で行われる手続です。

例えば、ある物を持っている場合、本来であれば、その物を人に売ろうが、贈与しようが、質に入れようが所有者の自由なはずですが、差押えがされた場合そのような処分ができなくなります。

すなわち、借金や税金を支払わない場合、給料が差し押さえられることがあり、そうすると差し押さえられた分は債権者が持っていき、債権の回収(借金や税金などを支払ってもらうということです)に充てられてしまいます。

では、差押えのためにはどのような手続きが必要なのか、これからご説明しましょう。

(2)借金を返さない場合、まずは『債務名義』が必要!

借りたお金を返さない、クレジットでショッピングをした支払いをしていない……
このような場合、貸した側を「債権者」、借りた側を「債務者」と言います。

そして、このケースでは、ある日、突然、債務者の財産が差し押さえられてしまうことはありません。

差押えは、個人の権利を奪ってしまう強力な手段ですから、いつでも誰でも自由にできるわけではありません。差押えをするためには、『債務名義』というものが必要です。

『債務名義』にどのようなものがあるのか、ということは民事執行法という法律に規定されていますが、実務上、よく用いられるのは

  1. 確定判決……確定した裁判所の判断
  2. 仮執行宣言付判決……直ちに執行できることを許した裁判所の判断(未確定でもOK)
  3. 和解調書……裁判所が和解の内容をまとめた書面
  4. 仮執行宣言付支払督促……直ちに執行できることを許した支払督促
  5. 執行証書……一定の条件を満たす公正証書

です。

このような『債務名義』を取得して初めて、債権者は債務者の財産を差し押さえることができるようになります。

それぞれどんなものか、簡単にご説明します。
まず、1.確定判決、2.仮執行宣言付判決、3.和解調書は、債権者が、基本的に裁判所に訴えを起こして勝訴するか、裁判の中で、債権者と債務者のお互いが譲歩した一定の条件で合意をしないと取得できません。

ですから、1.確定判決、2.仮執行宣言付判決、3.和解調書による差押えの前提として、債務者は債権者から「貸したお金を返せ」という裁判を起こされているか、既に自ら裁判上の和解をしているはずということになります。

(2-1)『確定判決』とは

債権者が債務者を訴えて裁判になった後、訴えられた債務者が裁判所に来ず、答弁書(訴状に対する反論などを記載した書面です)も提出しなかった場合、裁判所は債権者の訴えを認める判決を出します。

そして、その判決が確定(債務者が上訴期間内に上訴をせず、内容が変更できなくなったこと)すると『確定判決』になり、債権者はそれを使って債務者の財産を差し押さえることができます。

(2-2)『仮執行宣言付判決』とは

本来、債権者が債務者の財産を差し押さえるためには、判決が確定することが必要です。

ですが、裁判所が「仮執行宣言」というものを付けると、判決が確定する前であっても、差押えをすることができるようになります。

判決に仮執行宣言を付けるかどうかは裁判官の自由です。

例えば、差押えをするまで判決確定(通常、債権者と債務者が判決を受け取ってから2週間かかります)まで待たなければいけないのは債権者が気の毒だと思えば付けますし、債務者にも時間的な余裕を上げようと思えば、付けていないようです。

このような、裁判所が「仮執行宣言」を付けた判決のことを『仮執行宣言付判決』といいます。

この「仮執行宣言付判決」に基づいて、債権者は債務者の財産を差し押さえることができます。

(2-3)『和解調書』とは

裁判になった後、裁判中に債権者と債務者が話し合って、支払金額や支払方法などについて合意がまとまることがあります。

例えば、債権者が、訴状では借金の全額を一括で支払うように求めているけれど、債務者が分割で支払うという希望を出した時に、債権者もそれを受け入れて、それでは、今後、債務者が債権者に何回かに分けて支払ってもらうという約束をできることがあります。

そのような債権者と債務者との間の合意を「和解」と言います。
そして、裁判所が債権者と債務者の「和解」を相当と認めると、『和解調書』が作成されます。

また、裁判を起こす前であっても、あらかじめ債権者と債務者が支払金額や支払方法について「和解」ができると、その内容を裁判所に認めてもらうために、簡易裁判所に「訴え提起前和解」(民事訴訟法275条)を申立てることができます。
(裁判になってから話し合うのか、裁判前に話し合うのか、の違いですね。)

この場合にも、債権者と債務者の約束の内容について『和解調書』が作成されます。

『和解調書』は、例えば、毎月特定の日に特定の金額を支払う、という内容になりますが、その約束を守っている限り、債務者が差押えを受けることはありません。

ですが、債務者が途中で約束を破ってしまった時は、債権者は『和解調書』を使って、債務者の財産を差し押さえることができるようになります。
これは、『和解調書』が上記の確定判決と同一の効力を有するものとされているためです。

どのような時に、債権者が債務者の財産を差し押さえられるようになるのか、『和解調書』に記載があります。

例えば、「2回連続で支払を怠った時」なのか、連続でなく「合計で2回以上支払いを怠った時」なのか、「支払いを怠った金額が●円に達した時」なのか、個別の事案によって異なりますので、債権者と裁判所で和解をした、という方は今一度しっかり内容を確認をしておきましょう。

(2-4)『仮執行宣言付支払督促』とは

まず、『支払督促』について簡単にご説明しますが、これは、裁判ではありません。

債権者の申立てによって、裁判所の書記官が債務者に支払を促す手続です。
裁判所から送られた督促を債務者が無視し続けた場合には、支払督促に基づいて強制執行を出来るようになるという、費用も手間もかからない簡単な手続ではあるのですが、債務者が支払督促に同封された督促異議申立書を裁判所に返送するだけで通常の裁判手続に移行してしまいます。

支払督促は、裁判所から『支払督促』と『仮執行宣言付支払督促』の合計2回、債務者の住所に送られます。

債務者が2回とも異議を出さずいると、債権者が『仮執行宣言付支払督促』を取得して、債務者の財産を差し押さえることができるようになります。

(2-5)『執行証書』とは

『執行証書』とは、約束した内容を守らなかった時には、強制執行をされてもかまいませんという取り決め(これを執行認諾文言などと呼びます)が書いてある『公正証書』です。

『公正証書』とは、公証人が法律に従って作成する公文書のことです。
執行証書で取り決めた約束を破った時は、債権者は、債務者に約束を守るよう求める訴えを裁判所に提起することなく、この執行証書を使って債務者の財産を差し押さえることができるようになります。
詳しくお知りになりたい方は、こちらをご参照ください。

公正証書とは?作成するメリットや種類・作成の手順を詳しく紹介

このように、債権者が債務者の財産を差し押さえるためには、その前提として、債権者に裁判で訴えられる、裁判所から支払督促が送られてくる、債権者と公正証書を作っている、などの上で、債権者が『債務名義』を取得しなければなりません。

ですから、債権者から何のアクションもないところで、突然、給料を差し押さえられることはありません。

(3)税金を滞納していたらどうなるの?

税金にはいろいろな種類がありますが、通常、滞納してしまう税金と言えば、国税である「所得税」と地方税である「住民税」でしょう。

(3-1)国税を滞納したらどうなるの?

所得税などの国税は、納付期限は1日でも過ぎてしまうと、滞納となってしまいます。

国税を滞納した場合、50日以内に「督促状」が送付され、法律上、督促状の送付から10日で差押えがされることになっています。

ただし、実務上は、自発的に納付してもらうため、いきなり差押えがされるわけではなく、その前に「催告書」や「差押予告書」などが送付されるようです。

(3-2)地方税を滞納したらどうなるの?

地方税も国税と同じく、1日でも過ぎてしまうと滞納になってしまい、地方税の場合には、滞納から基本的に20日以内に「督促状」が送付され、督促状の送付から10日以内で差押えがされることになっています(地方税法)。

ただし、地方税についても、まずは催告などによって、自主的な納付を求められているようです。

このように、国税も地方税も、いずれも法律上は「督促」をすれば差押えが可能となり、民間の借金などとは違い『債務名義』は不要です。

ですから、まだ差押えをされないだろうと高をくくっていたら、督促後、突然給料を差し押さえられることもありますから、税務署や役所の連絡は無視をしてはいけません。

(4)給料は手渡しでも差し押さえられるの?

これまでご説明した差押えは、給料に対しても行われます。
給料の差押えは、勤務先に対して行われますので、その支払方法が銀行振込みであっても、手渡しであっても関係ありません。

給料を手渡しで受け取っていても、債権者が差押えのできる状態であれば、差押えられるでしょう。
なお、給料が差し押さえられる流れは、以下のとおりです。

  1. 債権者が裁判所に「債権差押命令の申立て」をする。
  2. 申立てに理由があれば、裁判所が「差押命令」を出す。
  3. 裁判所が「差押命令正本」を勤務先に送る。
  4. 勤務先に届いた後、裁判所が債務者にも「差押命令正本」を送る。
  5. その後、裁判所が債権者にも「差押命令正本」を送る。
  6. 債務者が「差押命令正本」を受け取った日の翌日から4週間が経過すると、債権者が勤務先に差し押さえた分の給料を取立(直接支払を求めること)することができるようになる

    給料が差し押さえられると、勤務先は、差し押さえられた分を除いた残りの給料を債務者に渡すことになります。

(4-1)『債務名義』に基づいて押さえられる給料はいくら?

『債務名義』に基づいて給料の差押えがされた場合には、以下を除いた金額だけが債務者に支払われることになります。

  • 給料の手取り金額の4分の1

又は

  • 手取り給料が44万円を超える時は、手取り額から33万円を差し引いた金額
    (日雇いのように1日ごとに給料が支払われている時は、1日の手取り給料が1万4666円を超える場合は、手取り額から1万1000円を差し引いた金額になります。)


ただし、差押えの債権が「養育費」の場合には、次のものについて差押えがされますので、注意が必要です。

  • 給料の手取り金額の2分の1

又は

  • 手取り給料が66万円を超える時は、手取り額から33万円を差し引いた金額
    (1日ごとに給料が支払われている時は、1日の手取り給料が2万2000円を超える場合は、手取り額から1万1000円を差し引いた金額になります。)

給料が差し押さえられると、手取り給料から、差押え分を差し引いた金額しか支給されません。

1回の給料の差押えによって債権者が債権を全額回収できることはほぼありませんが、差押えは、基本的に債権者に支払わなければならない金額を全額回収できるまで続きます。
(例えば、債務名義で認められている債権額が100万円、債務者の手取り給料が毎月32万円という場合、12ヶ月間は8万円が差し押さえられ、13ヶ月目は4万円が差し押さえられます。)

(4-2)税金滞納によって差し押さえられる給料はいくら?

税金の滞納による差押えを受けた場合、今ご説明した4分の1というルールにはなりません。

税金の滞納に基づく差押えは、少しややこしいですが「給料の総支給額」(1000円未満は切捨て)から、の次のもの全てを差し引いた残額について差押えが可能です(1~3、6は1000円未満は切上げ)。

  1. 所得税
  2. 住民税
  3. 社会保険料
  4. 滞納者1人につき月額10万円
  5. 扶養家族1人につき4万5000円
  6. 総支給額から1~5を差し引いた金額の20%


ですから、給料の総支給額が低かったり(例えば、手取りが10万円を切る場合など)、扶養家族が多かったりする場合は、そもそも差押え可能金額がマイナスになりますので、差押えはされません。

なお、給料が手渡しで、その日その日の1日限りで雇われる場合には、差押えが可能な給料はわずか1日分ですので、よほど高額である場合などを除いて、給料を差し押さえようという債権者は多くないと思われます。

給料手渡しの場合は、税金の滞納に注意しよう!

サラリーマンなど、会社に勤めて給料をもらっている方であれば、会社が所得税分を予め差し引いて源泉徴収税として納めていますし、住民税も特別徴収で給料から天引きされていますので、税金の滞納ということはあまり考えられません。

ですが、短期のアルバイトなどの場合、給料の金額によっては源泉徴収がされていない場合や、住民税が普通徴収となっており、自分で確定申告をして各税金を支払う必要がある場合があります。

自分が所得税や住民税を支払っているのか分からない、という方は、一度、給与明細や源泉徴収票で必ず確認しておいてください。

税金を滞納した場合、先ほどご説明したとおり、まずは支払いを求める書面が届きますので、届いた場合には、速やかに対応しましょう。
一括で支払うことが困難な時も、連絡を無視せず、必ず税務署などに相談してください。

場合によっては、支払時期を猶予してくれたり、分割払いにしてもらえる可能性があります。

また、税金以外の借金でお困りの方は、これを機に弁護士に相談して『債務整理』を検討することをお勧めします。

『債務整理』には、次の3種類があり、借金の額を減らしたり、なくしたりできることがあります(債務整理の種類や個別の事情によって借金の減免の可否は異なります)。

  1. 任意整理
    「任意整理」とは、債権者と話し合って、将来分の利息をカットしてもらうなどした上で、借金を3年ほどで分割して支払っていくことを目指す方法です(個別の事案により和解の可否・和解の内容は異なります)。

    民事再生や自己破産とは異なり、基本的にはどの負債を任意整理の対象にするのか選ぶことができます。任意整理の対象とした負債に担保が付されていたり、差押えをされるといった例外的なケースでない限り、任意整理をしたからといって財産は処分されません。

    また、職場からの借金を任意整理の対象としたり、差押えなどがされたりしない限り職場にばれるリスクは低いです。
  1. 民事再生
    「民事再生」とは、裁判所の認可決定を得たうえで負債の額を5分の1程度(負債や保有資産等の金額によって減額の程度は違います)まで減額してもらい、減額された負債を原則として3年ほどかけて返済していくという手続です(税金など一部の負債は認可決定を得ても減額されません)。

    自己破産とは異なり、民事再生では原則として財産は処分されません(担保がついている場合などは除きます。なお住宅ローンが残っている住宅の場合は、一定要件を満たせば住宅を維持したまま民事再生をできる場合もあります)。民事再生も裁判所を通して行う手続であり、官報(誰でも閲覧可能な国の情報紙)に民事再生手続をしたことが記載されます。

    しかし、職務上、官報を都度チェックしているような例外的な職場でもなければ基本的に職場にばれません(ただし、職場から借金をしていると民事再生手続の過程で、差押えなどをされると差押え通知等により、ばれてしまいます)。
  1. 自己破産
    「自己破産」とは、借金返済の見込みがない場合に、債務者の一定の財産をお金に換えて債権者に公平に分配する手続です。

    これに併せて、裁判所から免責許可決定を得れば、原則として負債を支払わなくても良くなります(ただし税金など一部の負債は、免責許可決定を得ても支払い義務は免除されません)。また他の手続とは異なり、警備員など破産手続中就くことができない職業があります。

    こちらも裁判所を通す手続であり、官報に自己破産したことが載りますが、やはり官報を都度チェックしているような職場でない限り基本的には職場にばれません(職場から借金をしていたり差押えなどをされるとばれてしまうことは、民事再生手続と同じです)。

債務整理のまとめについて詳しくお知りになりたい方は、以下のサイトもご覧ください。

債務整理とは?利用したほうがよい状況や種類を解説

【まとめ】手渡しの給料も差し押さえされる

今回の記事のまとめは、次の通りです。

  • 給料を手渡しすることが多いのは、日雇いや短期のアルバイト、建設業や解体業など。
  • 差押えのためには、債権者が『債務名義』を取得する必要があるので、借金を返さないだけでいきなり給料が差し押さえられることはない。
  • 税金を滞納している場合、差押え前には「督促」がある
  • 給料の差押えは、手取り給料額の4分の1(手取り給料額が44万円を超える時は、33万円を超える金額)を差し押さえられるが、養育費の場合はそれよりも広いので注意が必要。
  • 税金を滞納した場合には税務者や役所の連絡は無視せず、必ず話し合うべき。場合によっては、支払時期を延ばしてもらえたり、分割で支払うことを認めてもらえることもある。
  • 給料を手渡しでもらっている場合、所得税や住民税を自分で申告しなければならないこともあるので、うっかり税金を滞納していないか今一度確認してみる。
  • 借金や税金を滞納して、これ以上支払いが難しいという場合は早めに弁護士に相談して債務整理を検討するべき。

借金などでお困りの方、債務整理をご検討される方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。