あなたの法律のお悩み一発解決サイト
リーガライフラボ

職業を詐称して借金していたら、自己破産はできない?

作成日:
リーガライフラボ

今回採り上げる法律相談はこちら―――。

半年ほど前にお金を借り入れた際、すでに籍がなくなった会社を勤務先として伝えてしまいました。今勤めている会社は、その会社の関連会社なのですが、あまり日本では知名度が高くないので、審査に通りやすくなるようにと思い、事実と異なる情報を伝えたのです。
勤務先以外の情報は正確に伝えましたし、その当時はきちんと完済するつもりでした。
私のように職業を詐称してしまった場合、自己破産はできないのでしょうか。

嘘をついてお金を借り入れれば、場合によっては詐欺罪が成立しかねませんし、借りたお金の返済に窮して自己破産の申立てをしても、免責が認められない可能性や、免責が認められてもその借入れには免責の効果が及ばない可能性があります。

そのため、嘘をついてお金を借り入れることは絶対にやめてください。

それを前提に、今回は弁護士が「職業を詐称した場合に自己破産できるか」について解説します。

職業を詐称して借金をすることが免責不許可事由に該当する可能性がある

冒頭の事例の「自己破産ができるのか」という質問は、「自己破産によって借金などを返さなくてよくなるのか」という意味でしょう。
自己破産を申立てて借金などの返済義務が免除されることを「免責」といいます。

職業を詐称して借入れをすると、「免責不許可事由」に該当し、その免責が認められない可能性がありますので、くわしくみていきましょう。

(1)免責不許可事由とは?

債権者(例:お金を貸した人)からみると「自己破産によって貸したお金が返ってこない」ことは重大な不利益です。自己破産に至った事情が一切問われず、どのような事情があっても自己破産できるとすれば納得できない場合もあるはずです。

そこで、借金の返済義務などを帳消しにする(免責を認める)と、債権者にあまりに酷だと考えられるような事情や、債務者に免責に値しない落ち度がある場合、裁判所が免責を認めないことがあります。
免責を認めない事情として法律上明記されているのが「免責(めんせき)不許可事由」です。

つまり、「基本的に自己破産を申立てれば借金の返済義務は免除されるけれども、債権者に酷な行為をしたケースなど例外的に借金が免除されない場合があります」ということです。

(2)法律で定められている11の免責不許可事由

破産法252条1項では、以下の11個の免責不許可事由が定められています。

  1. 詐害目的での財産の不利益処分
  2. 不当な債務負担行為
  3. 不当な偏頗行為
  4. 浪費または賭博その他の射幸行為
  5. 詐術による信用取引
  6. 業務帳簿隠滅等の行為
  7. 虚偽の債権者名簿提出行為
  8. 調査協力義務違反行為
  9. 管財業務妨害行為
  10. 7年以内の免責取得など
  11. 破産法上の義務違反行為

職業詐称は「詐術による信用取引」にあたる?

職業詐称は、「詐術による信用取引」(破産法252条1項5号)にあたり、免責が認められないリスクがあります。

破産法252条1項5号では、次のように規定されています。

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

引用:破産法252条1項5号

自己破産による免責は、債務者(例:お金を借りた人)の経済的再生を図るための制度ですが、債権者の利益を著しく害する行為をした人、嘘をつくなど不誠実な行為をした人、破産手続の適正な遂行を妨害する行為をした人などについては免責を認めるか慎重に判断する必要があります。

「詐術による信用取引」として、免責不許可に該当しうるのは次の3つの条件を満たす場合です。

  1. 詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと
  2. その詐術が破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間にあったこと
  3. 詐術をした時点で支払不能状態にあり、かつ、その事実を知っていたこと

「詐術」とは、相手方に支払不能ではないと信じさせるために嘘をつくことです。詐称する対象は、職業に限られず、氏名、年収、他からの借入金の有無、保証人の有無なども含まれます。

たとえば、次のような行為が詐術による信用取引にあたる可能性があります。

  • 無職なのに勤務していると告げる
  • 実際の年収よりも高い年収を申告する
  • 信用情報の照会を妨げるため、実際の年齢よりも若い年齢を申告する・他人の身分証を示して他人の名前を名乗る

冒頭の事例でみてみると、相談者は確かに職業(勤務先)を偽っています。その理由をみても、「審査に通りやすくなるように」と自身の信用を高めるためであったことがわかります。

もっとも、勤務先以外の情報については嘘をついていないということです。仮に相談者が勤務先を偽って借入れをした際、支払不能であり、その認識があったのだとしても、年収や他の借入れの状況などを正確に申告していたのだとすれば、勤務先だけを偽ることによって支払不能ではないと信じさせるというのは考えにくく、詐術による信用取引を行ったとは評価されない可能性は十分にあります。

また、仮に免責不許可事由に該当するとしても、後で述べるように、きちんと反省しているなど自己破産手続きに誠実に対応すれば裁量免責が認められる可能性もあります。

(3)職業詐称による借入れは、「非免責債権」に該当するリスクもある

支払能力や支払意思がないにもかかわらず、それらがあるかのように装い、お金を借り入れることは、刑事事件では詐欺(さぎ)罪(刑法246条)が成立する可能性があり、民事事件では不法行為(民法709条)に該当する可能性があります。

たとえば、次の事例を考えてみましょう。

1年前に退職してから定職に就くことなく過ごしているAさん。たまたま飲食店で目にしたテレビで個人事業主に国から30万円の給付金が支払われることを知ったAさんは、あたかも1年前から個人事業主であったかのように書類を整え、申請手続きを済ませ、その2週間後30万円を受け取りました。

この事例では、個人事業主でなければお金を受け取れないにもかかわらず個人事業主ではないAさんが、個人事業主だと嘘をついて受け取っているので、Aさんに詐欺罪が成立すると考えられます(Aさんが責任無能力であった場合などを除きます)。

破産法253条1項2号では、次のように規定されています。

免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

引用:破産法253条1項2号

「破産債権について、その責任を免れる」というのが、既に述べた「免責」の意味です。「破産手続による配当を除き」というのは、破産手続は、破産者が所有する一定の基準を超える財産をお金に換えて債権者に配当する手続きであるため、その配当が、免責による影響を受けないといういわば当然のことが注意的に規定されたものです。

一方、破産法には、様々な理由から、免責の効果が及ばない債権が規定されており、それらの債権を非免責債権といいます。その1つが「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」であり、免責の効果が及ばない理由は、加害者に対するペナルティや被害者の救済の趣旨とされています。

上記の事例では、被害者である国は、Aさんが行った詐欺行為によって生じた損害について、Aさんに対して損害賠償を請求することができます。そして、その請求権には、たとえAさんが破産手続で免責の許可を得てもその効果が及びません。

つまり、Aさんの側から見ると、自己破産を申立てて免責を得たとしても、支払の義務を免れることはできないということです。

免責不許可事由に該当する場合も、「裁量免責」を受けられる可能性がある

免責不許可事由に該当しても、裁判所の判断で免責が許可される「裁量免責」という制度があります(破産法252条2項)。

そして、免責不許可事由があっても、実際は裁量免責によって免責許可が下りるケースが多いといえます。

明らかに免責不許可事由がある場合であっても、裁量免責が認められる可能性が高いため自己破産の申立てを行った方が良いのか、民事再生など他の手続きを行なった方が良いのかは、専門知識・経験の豊富な弁護士に相談しましょう。

裁量免責も受けられず「免責不許可」が決定されてしまったときの対処法

免責不許可になってしまった場合には、次の対処法を採ります。
いずれの方法を採るにしても専門家である弁護士に相談するのが良いでしょう。

  1. 即時抗告をおこなう
    免責不許可になった場合、その決定に対して即時抗告を行います(破産法252条5項)。
    即時抗告は、免責不許可決定が送達された日から1週間以内に行わなければなりません。
    ただし、一般的には、即時抗告しても決定が覆らない場合が多いといえます。
  1. 民事再生(個人再生)の手続きをする
    免責が許可されなかった場合には、免責不許可事由の規定のない個人再生を検討します。
    個人再生とは、住宅等の財産を維持したまま、大幅に減額された借金を(減額の程度は、借金の額、保有している財産などによって異なります)、原則として3年間で分割して返済していくという手続です。減額後の借金を完済すれば、再生計画の対象となった借金については、原則として法律上返済する義務が免除されます。
    ただし、個人再生は減額された借金を3~5年で返済していく手続きなので、安定した収入がなければ個人再生をすることはできません。

個人再生のほかに任意整理や特定調停といった手段もあるものの、個人再生での支払もできない状況であれば、現実的ではないと考えられます。

最悪の場合、債務整理のためにとり得る手続きがなくなる可能性があることを考えれば、やはり、お金を借りるときには嘘をつかず、正直に真実を伝えた方がよいでしょう。

【まとめ】自己破産の手続きでお悩みの方はアディーレ法律事務所にご相談ください

自己破産を申立てて借金の返済義務を帳消しにできるかどうかは、「免責許可決定」を受けられるかどうかにかかっています。
自己破産の申立てから直近1年以内の詐術による借入れは「免責不許可事由」に該当し、免責が認められない可能性があります。

職業などを詐称した過去があり、債務整理をする必要がある場合には、詐術をした経緯などを弁護士に正直に伝え、弁護士によるアドバイスの下、適切に手続きを進める必要があります。

借金問題でお悩みの方は債務整理の解決実績が豊富なアディーレ法律事務所にご相談ください。