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自己破産しても事業を継続したい個人事業主なら知っておくべきポイント

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kiriu_sakura

「事業のために受けた融資の支払も厳しくなってきた…でも自己破産となったら事業は維持できないだろうな」

支払いきれないほどの負債を抱えていても、「事業を継続できないのでは」と自己破産をためらう個人事業主の方は少なくありません。

確かに、自己破産となれば事業の継続は困難です。自己破産の手続では原則として一定の財産などが処分される他、取引先との関係も悪化するおそれもあるためです。

しかし、事業を立て直す見込みがあり、事業に用いている道具などを維持する手立てを講じられれば、自己破産の手続後でも事業を継続できる可能性はあります。

この記事では、

  • 自己破産の手続後に事業を継続することはできるのか
  • 個人事業主の自己破産手続は、どのように進められるのか
  • 事業に必要な物を手元に残すには、どうすればよいか

について弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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自己破産後の事業継続は基本的に難しい

個人事業主の方が自己破産の手続を行う場合、事業を継続することは困難と言わざるを得ません。
事業継続が難しいのは、主に次のような理由によります。

自己破産後の事業の継続が難しい主な理由

・事業のための在庫や道具が処分される可能性がある
・原則として、事業のために必要な契約が解除される
・一定期間は、融資を受けることが困難になる
・取引先との関係が悪化するおそれがある

それぞれの理由について説明します。

(1)事業のための在庫や道具が処分される可能性がある

個人事業主の自己破産の場合、裁判所での手続は原則として「管財事件」という方法で進められます(管財事件については後述します)。

管財事件では、裁判所から選任された「破産管財人」という弁護士が、一定の財産(破産財団といいます)を債権者への配当などのため処分します。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

破産財団とは?実際に該当するものを具体例に紹介

たとえ事業のために必要な道具や機械であっても、「破産財団」であれば、処分される可能性があります。
そのため、事業継続が困難となってしまうのです。

(2)原則として、事業のために必要な契約が解除される

破産管財人は、自己破産の手続を進めている債務者の契約関係を清算します(破産法53条、民法631条など)。

そのため、事業を継続するために必要な契約も解除されてしまう可能性があります。
解除の対象となる可能性がある契約には、例えば次のようなものがあります。

解除対象となる可能性のある契約は…

・従業員との雇用契約
・事業を行っている事務所の賃貸借契約
・事業に必要な機械のリース契約 など

事業のために必要な契約が解除されることで、事業の継続が困難になってしまうのです。

(3)一定期間は、融資を受けることが困難になる

「自己破産をするとブラックリスト入り」と聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。

「ブラックリスト」という名称のリストを金融機関が持っているわけではありません。
個人のクレジットカードやローンの申込み、契約や支払状況などの情報(信用情報といいます)を管理している「信用情報機関」という組織があります。
信用情報のなかでも、自己破産など当初の契約どおりの支払ができていないという情報を特に「事故情報」と呼ぶことがあります。

信用情報機関に事故情報が登録されている間は、新しく融資を受けるなどが困難です。
金融機関は審査の際に信用情報を確認するため、事故情報があると審査を通らなくなってしまうのです。
信用情報機関に事故情報が登録されていることを、俗に「ブラックリスト入り」と呼ぶのです。

自己破産の場合、事故情報は5~10年程度登録されます。
その間は、金融機関から融資を受けることが困難になります。

自己破産の場合の事故情報の扱いについて詳しくはこちらをご覧ください。

自己破産者リストは存在する?官報やブラックリストに載る情報とは

(4)取引先との関係が悪化するおそれがある

自己破産の手続が終わった後、事業を再開すること自体は何ら法律上規制されるものではありません。
しかし、今までの取引先との関係に、事実上の支障が出る可能性は否定できません。

自己破産の手続では、原則として全ての負債が手続の対象となります。
自己破産の手続を始めることとなると、まだ支払えていなかった代金(買掛金)についても、「負債」という扱いになり、支払をストップすることとなります。そのため、支払を受けられなくなってしまった取引先が、「もうこの人とは取引をしないでおこう」と考える可能性があるのです。

また、まだもらっていなかった代金(売掛金)の回収を管財人が行うこともあるため、取引先や元請の信用がなくなるおそれもあります。
仕事途中の契約が解除された場合には、多大な迷惑をかけることになります。
このような状況になると、今後の取引の継続が困難になることが考えられます。

事業を継続すべきなのか?考えるべきポイントは

「たとえ自己破産となっても、何とか事業は維持したい」
このように思っている方は少なくありません。
しかし、そもそも事業を維持すべきなのかどうかは、慎重に検討する必要があります。

事業がもとで返しきれないほどの負債を抱えるに至った場合、自己破産の手続でいったんは支払義務がなくなったとしても、また同じ経営不振が原因で負債を抱えることになりかねません。
そして、2度目以降の自己破産手続は困難で、支払の免除を認めてもらえない(免責不許可)可能性があります。
同じ理由での自己破産となれば、なおさらです。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

免責不許可事由とは?該当すると自己破産できないって本当?

自己破産の手続後にも、事業を続けたいという方は、

自己破産の手続で支払義務から解放されれば、
事業を立て直せる見込みが本当にあるのか

を慎重に検討してください。

個人事業主の自己破産は、破産管財人が就く「管財事件」となるのが基本

個人事業主の方が自己破産の手続を進める場合、「管財事件」として扱われることが多いです。
それでは、自己破産の手続の進め方と、個人事業主の場合に管財事件となることが多い理由を説明します。

(1)「管財事件」と「同時廃止」自己破産の手続の進め方とは

自己破産の手続の進め方は、「管財事件」と「同時廃止」の2つに分かれます。
制度上の原則は、管財事件です。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

管財事件とは?手続きの流れや注意点についても解説
破産手続廃止とは?同時廃止までの手続きの流れや費用を解説

管財事件では、裁判所から選任された破産管財人が、次のような業務を行います。

破産管財人の主な業務

・債務者の財産の調査
・債権者への配当など、財産の処分
・負債を抱えるに至った経緯など、
免責不許可事由に関する調査

ただし、高額な財産がないと明白で、深刻な免責不許可事由もないなどの場合には、裁判所が「破産管財人を選任しなくてよい」と判断し、「同時廃止」となる場合もあります。
同時廃止の場合、債権者への配当が行われないなど、手続が比較的簡易です。

(2)個人事業主の場合に「管財事件」となることが多い理由

個人事業主の方の場合、事業のための高価な機械があったり、債権者が多く権利関係が複雑だったりと、個人事業主でない人よりも念入りな調査が必要なことが多いです。
そのため、管財事件となることが多いです。

事業に必要な財産を手元に残すためには

事業を立て直せる見込みがある場合には、自己破産の手続後の事業継続を探っていくこととなります。

自己破産の手続における、事業継続を困難にする事情の一つに、「事業のための道具が処分される可能性がある」というものがありました。
それでは、事業に必要な道具を維持するための対処法を説明します。

(1)事業継続に必要な財産を「自由財産」であると認めてもらう

一定の財産は「破産財団」として原則処分されると述べましたが、それ以外の財産は「自由財産」として手元に残すことができます。

それでは、事業の継続に必要な財産を「自由財産」として手放さずに済むかについて説明します。

自己破産でも手元に残せる「自由財産」とは?

自由財産は、主に次のように分類することができます。

事業のために必要なものは、通常、破産手続開始決定よりも前から使っているものです。
そのため、まずは「差押禁止財産」であると言えないか確認することとなります。

差押禁止財産とは、債務者の生活や福祉などの観点から、差し押さえることが禁止されているものです。
差押禁止財産は、原則として自由財産です(破産法34条3項2号)。

例えば次のものが、差押禁止財産とされています。

技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)

引用:民事執行法131条6号

このように、仕事のために必要な一定の道具であれば、自由財産として手元に残せる可能性があるのです。
差押禁止財産について詳しくはこちらをご覧ください。

差押禁止財産とは?差し押さえられない物をわかりやすく解説!

(2)事業に必要な財産について「自由財産の拡張」を求める

自由財産に含まれていない財産についても、手元に残す可能性が全くないわけではありません。
自由財産の範囲を広げる「自由財産の拡張」(破産法34条4項)を裁判所が認めたものについては、手放さずに済みます。
自由財産の拡張を認めるかどうかは、主に次のような事情から判断されます。

  • 債務者の経済的な立て直しのために必要なものか
  • 自由財産の拡張を認めてよい範囲の価格かどうか

事業のために残しておきたいものについて自由財産の拡張が認められる見込みがあるかは、弁護士に確認することをおすすめします。

自由財産や、自由財産の拡張について詳しくはこちらをご覧ください。

自由財産とは?自己破産をした後でも残せる財産について解説

(3)(1)や(2)が厳しい場合でも、手元に残せる可能性はある

(1)や(2)の方法が困難な物は、基本的に破産財団として処分対象となります。
しかし、例えば次のような方法によって、利用を継続できる可能性があります。

事業に必要な物の利用継続の可能性は…

・破産管財人が当該財産を債務者の親族に時価相当額で売却し、債務者は親族から当該財産を借りる
・債務者が自由財産の中から当該財産の代金相当額を破産財団に組み入れ、その代わりに当該財産を破産財団から放棄してもらう(破産財団から放棄されたものは、自由財産になる)

一つ目の方法は、財産の処分先を親族とすることで、以後も利用できるよう図るものです。
二つ目の方法は、代金に相当する額を代わりに破産財団に入れることで、当該財産を破産財団から放棄してもらい、手元に残せる自由財産とするものです。

事業のために残しておきたい財産を手元に残せるかどうかの見込みについても、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

(4)任意整理や個人再生を検討する

(1)~(3)までは、自己破産の手続において財産を残す方法を説明してきました。
しかし、これらの方法でも事業に必要な物を残すことが困難な場合には、自己破産以外の方法を検討する必要があります。

自己破産以外の、支払負担の軽減を目指すことができる方法には、主に次の2つがあります。

  • 任意整理
  • 個人再生

どちらの手続も、基本的には財産を処分することが前提とされていません(ただし個人再生の場合、高額な財産があると総支払額をあまり減らせない可能性があります。また、担保権がついている財産は基本的に債権者によって処分されてしまいます)。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

個人再生で支払う「弁済額」が決まる3つの基準
別除権(べつじょけん)とは?意味や効果について具体例を用いながら解説

しかし、どちらの手続であっても、数年間は支払を続ける必要があります。
そのため、事業を立て直し、支払っていけるかどうかについて、慎重な検討が必要となります。

【まとめ】個人事業主は自己破産を利用すると事業の継続が困難となるが、立て直しの見込みがあり、事業に用いる道具などを維持できれば、事業を継続できる可能性はある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 自己破産の手続を行うと、主に次のような理由から、事業を継続することが困難となる。
    ●事業のための道具が処分される可能性があること
    ●原則として、事業のために必要な契約が解除されること
    ●一定期間は、融資を受けることが困難になること
    ●取引先との関係が悪化するおそれがあること
  • 再び支払いきれない負債を抱えることを防ぐためには、「無事に自己破産の手続が終わったとして、事業を立て直せる見込みはあるのか」を慎重に検討する必要がある。
  • 個人事業主の自己破産の場合、破産管財人が財産の調査や処分、負債が膨らんだ経緯の調査などを行う「管財事件」となることが多い。
  • 自己破産の手続でも、「自由財産」であると判断されたり、「自由財産の拡張」が認められるなどすれば、事業に必要な財産を手元に残すことができる。

アディーレ法律事務所では、万が一免責不許可となってしまった場合、当該手続にあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております(2021年7月時点)。

自己破産についてお悩みの方はアディーレ法律事務所にご相談ください。

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