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交通事故の示談交渉代行が「非弁行為」にあたるケースとは

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

交通事故の示談交渉代行が「非弁行為」にあたる可能性があるということを聞いたことがあるかもしれません。

「非弁行為」とは、簡単に言うと、弁護士資格を持たない人が、弁護士しかできないとされている法的サービスを提供する行為をいいます。

保険会社が示談交渉を代行することも「非弁行為」に当たるようにも思えますが、現在では、保険会社が示談交渉を代行することは「非弁行為」にはあたらないと考えられています。

ただ、保険会社の示談交渉代行サービスはいつでも利用できるわけではありません。交通事故の被害者であっても利用できないケースもあります。
保険会社の示談交渉代行サービスを利用される前に、保険会社の示談交渉が非弁行為に当たってしまうケースと当たらないケースを知っておきましょう。

また、保険会社以外のケースについても解説していますので、気づいたら違法な「非弁行為」だったということを防ぐようにしましょう。

この記事では、次のことについて、弁護士がくわしく解説します。

  • 非弁行為とは何か
  • 保険会社による示談交渉の代行は非弁行為にあたらない理由
  • 非弁行為に当たるケースと当たらないケース
  • 保険会社の示談交渉代行ができない場合の対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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非弁行為とは何か

弁護士には、弁護士だけが行える職務があります。弁護士資格をもたない者が弁護士だけが行える職務を行った場合には、「非弁行為」として弁護士法に違反することになります。

なぜかというと、弁護士が行う法律事務は、法律の知識と専門性を要する職務であるにもかかわらず、弁護士資格を持たない者がこれらの職務を行うことでかえってトラブルになってしまうのを防ぐ必要があるからです。

例えば、弁護士資格を持たない人が裁判の代理人を務めた場合、法律の知識がない主張を繰り返すなどし、裁判がかえって混乱してしまうおそれがあります。

弁護士資格をもたない者による法律事務の取扱い禁止については弁護士法72条で定められています。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

引用:弁護士法第72条

この弁護士法72条を前提とすると、非弁行為に当たる要件は次のとおりになります。

【非弁行為にあたる要件】

  1. 「弁護士・弁護士法人でない者が」:弁護士の資格をもたない者のことを指します。

  2. 「法定の除外事由もないのに」:「弁護士法やその他の法律に別段の定めがないこと」を指します。例えば、司法書士については簡易裁判所の管轄に属する民事紛争については代理権があるとされており、この範囲内で司法書士が代理行為を行っても非弁行為にはあたりません(司法書士法3条)。

  3. 「業として」:行為が反復継続的に遂行されていて、かつ不特定多数の者に対して行うなど、社会通念上「事業の遂行」とみることができる程度のものであることを指します。

  4. 「報酬を得る目的で」:報酬が発生することを指します。例えば、大学生の法律相談サークルが無償で法律相談を行うことは、非弁行為にはあたりません。

  5. 「一般の法律事件に関する法律事務の取り扱いまたは一般の法律事務の取り扱いの周旋(=当事者の間に立って取り持つこと)をする行為」:例えば、法律相談や本人に代わって示談交渉を代理する行為のことをいいます。

弁護士法72条を前提とすると、弁護士ではない者が、報酬を目的に、不特定多数に対し、法律相談や本人に代わって示談交渉を代理した場合には、「非弁行為」である可能性が高いといえます。

保険会社による示談交渉の代行は非弁行為にあたる?

自動車運転中などに交通事故にあったとき、自身の加入している保険会社が被害者に代わって事故の相手との示談交渉を代行(代理)してくれることがあります。

ただ、保険会社は弁護士ではありません。
そして、被害者に代わって示談交渉を代行(代理)する行為は、本来弁護士しかできない行為にあたりますので、保険会社が示談交渉を代行(代理)する行為は「非弁行為」に当たるようにも思えます。

ここでは、なぜ保険会社が示談交渉を代行できるのかについて説明します。

(1)かつて保険会社による示談交渉の代行は認められていなかった

かつては、交通事故の示談交渉の代行(代理)は弁護士にしかできない仕事でした。

しかし、1970年前後、保険会社各社は、「保険会社が示談交渉を代行できるほうが被害者にとっても便利だ」と主張し、保険会社による示談交渉代行を認めるよう、弁護士会に対して求めました。

さらに保険会社各社は、それまで特殊な状況下でしか許可していなかった、被害者から保険会社に対する賠償金の直接請求を認めることで、次のような理屈で、保険会社が示談交渉代行をすることは「非弁行為」に当たらないと主張しました。

【保険会社の示談交渉代行は非弁行為に当たらないとするワケ】

  • 保険会社は保険の加入者に代わって事故の相手に支払う賠償金(保険金)を支払う
  • 保険会社が相手に賠償金(保険金)を支払うということは、保険会社も事故の「当事者」の一人である
  • 保険会社が行う示談交渉は保険の加入者に代理しているというより、保険会社が当事者の一人として行っているものである

⇒簡単に言うと、保険会社による示談交渉は本人(保険の加入者)に代わって代理しているものではないから「非弁行為」にはあたらないとの理屈を主張しているのです。

この結果、弁護士会と一般社団法人日本損害保険協会との間で覚書が交わされ、弁護士資格を有しない保険会社による示談交渉代行は認められることになりました。

(2)保険会社は示談交渉の代行を行えるようになった

保険会社にも示談交渉代行が認められた結果、保険会社も示談交渉代行サービスを提供するようになりました。

そして、ご自身が加入中の自動車保険の「対人賠償責任保険」や「対物賠償責任保険」に示談交渉代行サービスが付いている場合には、弁護士法に抵触することなく保険会社に交渉の代行を依頼することができます。

ただ、保険会社も常に示談交渉の代行が行えるわけではありません。次のような場合には「非弁行為」にあたるおそれがあり、示談交渉の代行を行うことができません。

(3)被害者側に過失がない場合には、被害者側の保険会社は示談交渉を代行できない

被害者側に過失(=不注意やミス)がない場合、つまり事故について被害者の責任が一切なく、相手方のほうが100%悪く、責任を負うべきケースの場合は、被害者側の保険会社が示談交渉を代行することができません。

そもそも示談交渉代行サービスが付いている「対人賠償責任保険」や「対物賠償責任保険」は、保険の加入者が事故の相手に賠償金を払わなければならない場合に、保険会社が保険の加入者に代わって事故の相手に賠償金(保険金)を支払うものです。

そのため、保険の加入者に過失(=不注意やミス)がない場合、つまり、被害者側が加害者に対して賠償金を支払う必要がない場合には、「対人賠償責任保険」や「対物賠償責任保険」を使うことはありませんから、示談交渉代行サービスも使うことはできません。

また、保険会社による示談交渉代行サービスは、「自社の保険の加入者に代わって保険会社が賠償金を支払う」ということを前提に、保険会社も事故の「当事者」の一人であるとして示談交渉を行うことが認められています(示談交渉を代理しているわけではない)。

一方で、自社の保険の加入者が事故の相手に対して賠償金の支払いが発生しない場合には、保険会社も事故の相手に賠償金(保険金)を支払うことはありませんから、保険会社は事故の「当事者」の一人ではなくなってしまいます。

その結果、この場合に保険会社が示談交渉の代行をしてしまうと、当事者ではない保険会社が示談交渉を代行していることになってしまうので、「非弁行為」となってしまいます。

<コラム> 被害者側に過失がある場合はどうなるの?

交通事故では、一方に100%の責任があることはあまりなく、被害者側にも過失(=不注意やミス)があるケースがほとんどです。

例えば、被疑者側が「横断歩道から30m離れた場所」を歩いて横切っていて、車にひかれてしまった場合、被害者側にも「横断歩道を渡らなかった」という過失があるとして、被害者にも30%の過失があるとされることがあります(過失割合は被害者:加害者=30:70となります)。

そして、この場合、例えば、被害者に100万円の損害があるとしても、加害者が被害者に対し支払うのは、70万円ということになります(被害者の過失30%分(30万円)が差し引かれることになります)。

一方、この場合、加害者にも50万円の損害がある場合には、加害者も被害者に対して15万円(被害者の過失である30%分)を請求できることになります。

したがって、被害者側に過失がある場合には、被害者側も加害者に対して賠償金を支払わなければならないことになるため、保険会社が示談交渉を代行しても「非弁行為」にはあたりません。

「非弁行為」に関してよく聞かれる質問(Q&A)

ここで、「非弁行為」に関してよくある質問についてまとめました。どういった行為が「非弁行為」に当たるのかを知っておきましょう。

(1)保険代理店が示談交渉を行うことは「非弁行為」にあたる?

保険代理店が示談交渉を行っています。保険代理店が示談交渉を行うことは「非弁行為」にあたらないのでしょうか。

保険代理店が示談交渉などの事故対応を代行するのは「非弁行為」にあたります。

そもそも、弁護士会と一般社団法人日本損害保険協会とが交わした覚書には、「(示談交渉は)必ず、会社の常勤の職員に担当させるものとし、代理店その他部外者に委嘱しない」と書かれています。
つまり、保険会社による示談交渉サービスはあくまでも保険会社の常勤職員によって担当させるものであって、保険代理店による示談交渉は認められていませんので、「非弁行為」にあたります。

(2)行政書士や司法書士の先生に示談交渉を依頼したいけど、問題ない?

知り合いの行政書士や司法書士の先生に交通事故の示談交渉を依頼したいのですが、行政書士や司法書士も法律の専門家ですので、問題ありませんよね?

行政書士の先生が示談交渉を行うことは「非弁行為」に当たる可能性があります。一方、司法書士の先生であれば、場合によっては「非弁行為」にならない可能性もありますが、注意が必要なケースがあります。

そもそも、行政書士の先生の仕事は、行政機関への提出文書や権利義務・事実証明に関する文書の作成です。示談交渉という法律事務の代行はできません。

一方、司法書士に関しては、特別な研修を受けて法務大臣から認定された「認定司法書士」に限り簡易裁判所の管轄に属する民事紛争の代理権があります(認定司法書士でない司法書士にはそもそも代理権はありません)。

ただ、認定司法書士であっても、賠償額が140万円以下の事件についてしか扱えず、それを超える額の損害賠償請求をするケースは扱えないという限界があります。

そのため、当初は賠償額が140万円を超えないだろうと司法書士の先生に示談交渉を依頼したケースでも、ケガの治療費が高額になった場合や車の修理費用が高額になったなど、後から賠償金額が高額になった場合には、そのまま司法書士の先生に示談交渉を依頼し続けることができないことがあります。

司法書士に示談交渉の代行を依頼したら、実は受任できないケースだったということがないよう、最初から弁護士に依頼するのが得策といえます。

(3)無償で示談交渉を行ってくれる人であれば、問題ない?

慈善事業で示談交渉を行ってくれるという人がいます。無償であれば「非弁行為」にあたりませんよね?

弁護士資格がないのに、交通事故の当事者に代わって示談交渉を行い、その対価として報酬を受け取る商売や、その商売を営む行為は「非弁行為」にあたります。そして、そういった者を「示談屋」もしくは「事件屋」といいます。

事故現場や病院などで「慈善行為でやっている」「報酬はいらない」などと言い、近づいてくるケースがありますが、最終的に法外な報酬を請求したり、相手に不当な要求をすることもあります。

事故現場や病院で「無報酬や慈善行為で示談交渉をやっている」と近づいてきた人には、疑ってかかるのがよいでしょう。

なお、示談屋のほかに、紹介屋(違法に弁護士をあっせんして収益を得る悪質業者)にも注意が必要です。
示談交渉の代行(代理)を弁護士に依頼する場合は、ご自身で直接法律事務所に相談するようにしましょう。

(4)被害者の家族や友人・知人が示談交渉を行うことは問題ない?

被害者の娘である私が、高齢な被害者に代わり加害者との示談交渉を行うことは「非弁行為」にあたるのでしょうか。

被害者の家族や友人・知人が事故後の対応のアドバイスをしたり、示談交渉を代わりに行うことは「非弁行為」にはあたりません。

なぜなら、非弁行為が成立する要件の一つに、当該行為が「報酬を得る目的でなされていること」があり、被害者の家族や友人・知人が無償で事故後の対応をアドバイスしたり、示談交渉を代わりに行っても「非弁行為」にはあたらないとされているからです。

保険会社が示談交渉を代行できない場合には弁護士に相談がおすすめ!

保険代理店が示談交渉を代行できない場合には、弁護士への相談がおすすめです。

相手方側の保険会社は、いくつもの示談交渉を重ねてきた交渉のプロです。示談金の金額などに不満があっても、被害者本人だけで保険会社を相手に交渉して納得のいく結果にするのは容易ではありません。

例えば、保険会社は治療中に突然、治療費の支払の打ち切りを通告してくることがあります。

この場合も、弁護士なしの場合には、保険会社からの治療費の打ち切りが妥当なのかどうかがわかりません。しかし、こうした場合でも、弁護士に相談することで、治療費の打ち切りが妥当として通院をやめるか、それとも治療費の打ち切りが不当としてもっと通院した方がよいのか見極めることができます。

また、弁護士に相談することで、賠償金の増額も期待できます。弁護士なしでは増額に応じてくれない場合でも弁護士が交渉することで増額に応じてくれることも多くあります。

なお、示談交渉などを弁護士に依頼する際には弁護士費用が必要となりますが、ご加入の任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用をそちらから賄うことができる可能性があります。

弁護士費用特約についてくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

弁護士費用特約は保険に入っていない人でも補償範囲になる?利用できるケースを解説

【まとめ】被害者に過失がない場合の保険会社の示談交渉は「非弁行為」にあたる

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 非弁行為とは、弁護士資格を持たない人が、一定の法的サービスを提供する行為をいいます。
  • ご加入の自動車保険に示談交渉サービスが付いていれば、保険会社が示談交渉を代行しても非弁行為になりません。
  • ただ、事故についてご自身に一切過失がない場合などは、示談交渉サービスを利用することができず、事故の相手方との示談交渉は基本的に自分自身で行う必要があります。
  • 行政書士や司法書士(一部を除く)、示談屋が示談交渉を代行する行為は非弁行為にあたるため、依頼するのは控えるのが得策です。
  • 事故の賠償金などに関して、自分自身で相手方保険会社と示談交渉するのは容易ではありません。この場合、弁護士費用特約を利用するなどして、示談交渉を弁護士に依頼するのがおすすめです。

保険会社の示談交渉代行サービスを利用できない場合には、被害者自身で示談交渉をしなければなりません。

ただ、相手が加害者側の大手保険会社であれば、損をするようなことにはならないだろうと安心されているかもしれません。しかし、大手の保険会社が対応している場合でも、治療費の打ち切りを通告してくるケースもあります。

弁護士が対応することで、治療費の打ち切りが妥当として通院をやめるか、それとも治療費の打ち切りが不当としてもっと通院した方がよいのか見極めることができます。

また、慰謝料の増額を期待できるケースもあります。一度、弁護士へご相談をおすすめします。

交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。

すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。

また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。

※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。

(以上につき、2024年9月時点)

交通事故の被害にあい、加害者側の保険会社に対する賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。

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