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相続放棄が認められない事例とは?成功させるポイントや対処法を解説

作成日:
川手雅

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「亡くなった親に借金があったことがわかったので、どうしても相続放棄したい。そもそも認められないケースなんてあるの?」 

相続放棄は、故人の財産を相続する権利を放棄する手続です。 

放棄する財産には、借金のようなマイナスの財産だけでなく、預貯金や不動産といったプラスの財産も含まれます。 

そこで、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が大きい場合には、相続放棄を検討することになりますが、なかには相続放棄が認められない事例も存在するようです。 

知らず知らずのうちに、相続放棄が認められなくなる行為をしている可能性もあるため、あらかじめ相続放棄の際に注意すべきポイントについて、しっかり把握しておくとよいでしょう。 

この記事を読んでわかること 

  • 相続放棄が認められない場合 
  • 相続放棄が認められなかったときの対処法
  • 相続放棄を成功させるためのポイント 

ここを押さえればOK!

相続放棄とは、故人の財産を相続する権利を放棄する手続きで、これが認められると最初から相続人ではなかったことになります。
これにより、故人の負債を相続しなくて済む一方、故人の預貯金や不動産も相続できなくなります。
相続放棄は基本的に認められるのが原則で、家庭裁判所は特に却下すべき理由がない限り申述を受理します。
令和4年の統計では、相続放棄の却下率は約0.15%と低く、認められる確率は約97.6%です。
しかし、相続放棄が認められない場合もあります。例えば、相続開始を知った時から3ヵ月以内に手続きを行わなかった場合や、法定単純承認に該当する行為を行った場合です。法定単純承認とは、相続財産を処分するなどの行為を行った場合に相続を承認したとみなされることです。
また、提出書類に不備があり、家庭裁判所の求めに応じて不足書類を提出しなかった場合も相続放棄が認められない可能性があります。
相続放棄を成功させるためには、時間に余裕を持って手続きを行うこと、相続財産には手をつけないこと、不足書類の追加や照会書には迅速に対応することが重要です。
特に相続財産を処分すると法定単純承認とみなされるため、注意が必要です。弁護士に相談することで、手続きの進行や家庭裁判所とのやり取りをスムーズに行うことができます。
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

相続放棄とは? 

相続放棄とは、故人(「被相続人」といいます)の財産を相続する権利を放棄する手続です。 

相続放棄が認められると、そもそも最初から相続人ではなかったことになります。 

そのため、被相続人の負っていた借金を相続しなくて済むようになるだけでなく、被相続人の所有していた預貯金や不動産も相続することができなくなります。 

(1)相続放棄の申述は受理が原則 

相続放棄は、基本的に認められるのが原則です。 

却下すべきことが明らかな場合でない限り、家庭裁判所は相続放棄の申述を受理すべきだとされています(東京高裁平成22年8月10日決定)。 

これは、一定の利害関係を有する人であれば、相続放棄が認められたあとでも、裁判で当該相続放棄の有効性を争うことができる一方、相続放棄が却下されると、相続放棄を希望した人は相続放棄の効果を主張できないという大きな不利益を被る点に配慮した結果です。 

そのため、相続放棄は基本的に認められることが前提の手続であるといえます。 

(2)相続放棄の却下率は約0.15% 

実際、令和4年の司法統計によると、相続放棄の総数(既済事件)は25万8,933件、そのうち却下された件数は400件、認容された件数は25万2,742件となっています。 

却下率は約0.15%である一方、認められる確率は約97.6%です。却下される確率はかなり低いといっていいでしょう。 

参照:令和4年司法統計年報 3家事編 第3表 家事審判事件の受理、既済、未済手続別事件別件数|裁判所 

相続放棄が認められない事例とは? 

相続放棄の申述が却下される可能性はかなり低いとはいえ、ゼロではありません。 

次にご紹介するような場合には、相続放棄が認められない可能性があります。 

(1)3ヵ月の熟慮期間を経過している場合 

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内にしなければならないのが原則です。 

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、原則として相続人が次の2つのことを知った時のことをいいます。 

  • 相続開始の原因である事実(例:被相続人が死亡したこと) 
  • これにより自分が法律上相続人となったこと

したがって、この3ヵ月の間(熟慮期間といいます)に、相続財産を調査するなどして、相続放棄をするかどうかを決めなければなりません。 

※のちほどご説明するように、熟慮期間の伸長が認められる場合もあります。 

(2)法定単純承認に該当する場合 

法定単純承認とは、法律で定められた一定の行為をしてしまうことにより「相続を承認した」とみなされ、法律上、相続放棄ができなくなることです(民法第921条)。 

たとえば、次のような行為をすると、相続放棄が認められなくなる可能性が高いです。 

  • 被相続人の預金を引き出して、自分のために使ってしまう 
  • 被相続人がほかの人に貸していたお金を取り立てて、自分のために使ってしまう
  • 被相続人が持っていた株式の議決権を行使する
  • 被相続人が他人に貸していたマンションの家賃の振込口座を自分名義の口座に変更する
  • 他の相続人との間で遺産分割協議をする  など 

もっとも、法定単純承認に該当するかどうかについては、判断が難しい場合も多く、法的知識が必要になります。「これをやっても大丈夫か」などと迷うことがあった場合には、速めに弁護士に相談するとよいでしょう。 

(3)不足書類や必要な対応を怠った場合 

提出書類に不備があったにもかかわらず、家庭裁判所の求めに応じて不足書類を追加で送付するなどの対応をしなかった場合には、相続放棄が認められない可能性があります。 

なお、提出書類は相続放棄の申述書のほか、被相続人の住民票除票や戸籍附票、相続放棄したい人の戸籍謄本などです。 

ただし、被相続人との関係や、戸籍の状況などによって提出すべき書類が変わってくることがあるため、詳しくは提出先の家庭裁判所にご確認ください。 

参照:相続の放棄の申述|裁判所 

また、家庭裁判所から照会書への回答を求められたにもかかわらず、回答しなかった場合も同様に、相続放棄が認められない可能性があります。 

照会書とは、家庭裁判所が、当該相続放棄について確認したいことを問い合わせてくる文書です。 

相続放棄の申述書を提出したからといって、必ず照会書が送られてくるわけではありませんが、もし照会書が送付されたら、すみやかに回答するようにしましょう。 

書類の追加提出や照会書の回答にはある程度の時間的猶予があるため、そこまで心配する必要はありません。 

ただし、海外出張など、長い間不在にする予定がある場合には、手続を弁護士に任せておいたほうが安心でしょう。 

相続放棄が認められなかったときの対処法 

それでは、相続放棄が認められなかった(あるいは、認められそうにない)ときの対処法をご紹介します。

(1)3ヵ月を過ぎていても相続放棄が認められる可能性がある 

先ほど、相続放棄は3ヵ月の熟慮期間内にしなければならないとご説明しましたが、この期間は伸ばすことができる可能性があります。 

相続人などの利害関係者の申立てにより、家庭裁判所は3ヵ月の熟慮期間を伸長することができます。 

ただし、この熟慮期間内に相続人が相続財産の状況を調査しても、相続放棄をすべきかどうかなどを決定できない場合でなければなりません。 

また、この申立ては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内にする必要があります。 

参照:相続の承認又は放棄の期間の伸長|裁判所 

さらに、そういった手続をしていなくても、事情によっては熟慮期間経過後の相続放棄が認められることもあります。 

たとえば、被相続人の相続財産がまったくないと信じていて、そのように信じたことについて相当な理由がある、といった場合です。 

そのような場合には、熟慮期間の起算点を「相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時(または通常これを認識しうべき時)」として、その時点から3ヵ月以内であれば相続放棄が認められる可能性があります。 

(2)2週間以内であれば即時抗告も可能 

相続放棄の申述が却下された場合、即時抗告をすることが認められています(家事事件手続法第201条9項3号)。 

即時抗告とは、とても簡単に言うと、不服申立ての一種で、審判の告知を受けた日から2週間以内にしなければなりません(同法第86条)。 

即時抗告は、2週間以内という短期間で行う必要があるうえ、即時抗告をする理由を示す証拠書類などを提出する必要があります。 

却下されてから弁護士を探していると、その間に2週間が経過してしまうでしょう。 

参照:即時抗告|裁判所 

相続放棄を成功させる3つのポイント 

それでは、相続放棄を成功させるために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。 

(1)時間に余裕を持って手続をおこなう 

3ヵ月という熟慮期間を超えてしまわないよう、戸籍謄本などの提出書類の収集にはすみやかに取りかかりましょう。 

一般の方が、戸籍謄本などを集める機会はそう多くありませんから、場合によっては手間取ってしまいかねません。 

また、そもそも相続放棄をするかどうかについて迷っている場合には、あらかじめ熟慮期間の伸長の申立ての準備をしておくべきでしょう。 

相続財産を調査し、相続放棄をすると決めてから提出書類を集めていたのでは、間に合わないかもしれないからです。 

(2)相続財産には手をつけない 

先ほどもご説明したように、相続財産の全部または一部を処分してしまうと、「法定単純承認」とされ、相続放棄ができなくなります。 

そのため、被相続人の財産には、基本的に手を付けないようにしましょう。 

ただし、被相続人の預金から一般的な葬儀費用を支出したといった場合であれば、相続財産を処分したとはいえず、相続放棄ができなくなることはないと考えられます。 

(もちろん、葬儀費用があまりに高額であれば問題になり得るため、ご注意ください。) 

とはいえ、相続放棄の可能性がある状況で、被相続人の預金を使うことにはリスクがあるうえ、どの程度の金額であれば葬儀費用として問題ないとえるのかは、とても難しい問題です。 

そのため、被相続人の預金から支出する場合には、念のため弁護士に相談しておくことをおすすめします。 

また、領収書や明細などはきちんと保存しておくようにしましょう。 

(3)不足書類の追加や照会書には迅速に対応する 

相続放棄の申述をしたあと、家庭裁判所から不足書類について指摘された場合や、照会書への回答を求められた場合には、なるべく迅速に対応するようにしましょう。 

不明点があれば家庭裁判所に問い合わせることになりますが、裁判所が対応してくれるのは通常、平日の昼間だけです。 

その点、相続放棄の手続を弁護士に依頼すれば、家庭裁判所とのやり取りなども含めて任せてしまうことができます。 

【まとめ】相続財産を勝手に使うと、相続放棄できなくなるおそれあり 

今回の記事のまとめは次のとおりです。 

  • 相続放棄とは、被相続人の財産を相続する権利を放棄する手続で、相続放棄をするとプラスの財産もマイナスの財産も一切相続できなくなる 
  • 相続放棄が認められない可能性は極めて低い 
  • 相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内にしなければならない 
  • 法律で定められた一定の行為をしてしまうと、「相続を承認した」とみなされ、法律上、相続放棄ができなくなる(法定単純承認) 
  • 相続放棄を成功させるポイントは次の3つ(時間に余裕を持って手続をおこなう、 相続財産には手をつけない、 不足書類の追加や照会書には迅速に対応する) 

アディーレ法律事務所では、相続放棄に関するご相談は何度でも無料です。 

また、アディーレ法律事務所に相続放棄をご依頼いただいたにもかかわらず、相続放棄のお手続が完了しなかった場合(相続放棄の申述が受理されなかった場合)、弁護士費用は、原則として全額返金となりますので、安心してご依頼いただけます。 

(※以上につき2024年12月時点)  

アディーレ法律事務所では、相続放棄をはじめ遺産相続についての問題を積極的に取り扱っています。 

相続放棄でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。 

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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