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【弁護士が解説】相続の一部放棄は可能?代替策と対処法を徹底解説 

作成日:
s.miyagaki

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

相続で「この財産だけは引き継ぎたくない」と思ったことはありませんか? 

借金や管理が難しい不動産など、相続を躊躇する財産に直面した時、「相続の一部放棄ができないか」と考えます。 

しかし、法律上それは認められていません。 

では、どうすればいいのでしょうか? 

本記事では、弁護士が、相続の一部放棄に代わる対処法と、円満な相続を実現するための重要なポイントを解説します。 

相続の悩みを抱える方々に、役に立つ情報をお届けできれば幸いです。

ここを押さえればOK!

相続の一部放棄は法律上認められていませんが、特定の財産を引き継がないための対処法があります。主な方法として、限定承認、遺産分割協議、相続分の譲渡の3つがあります。

限定承認は、プラスの相続財産の範囲内でのみ債務を相続する方法です。
遺産分割協議は、相続人全員の合意によって相続財産の分配を決める方法で、特定の相続人が特定の財産を相続しないよう取り決めることができます。
相続分の譲渡は、自分の相続分の一部または全部を他の相続人または第三者に譲ることです。

相続放棄や限定承認を検討している場合は、相続財産に手を付けないことが重要です。
これらの手続きは、原則として相続開始を知ってから3ヶ月以内に行う必要があります。
また、2023年4月27日からスタートした相続土地国庫帰属制度を利用することで、相続や遺贈で取得した管理が困難な土地を国庫に帰属させることができます。

相続問題については、早期に弁護士などに相談し、適切な対処法を選択することが重要です。アディーレ法律事務所では、相続放棄や遺産分割協議など、相続問題について積極的に相談・依頼を受け付けています。
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

相続の一部放棄が法律上認められない理由 

相続の一部放棄は、法律上認められていません。 

例えば、 

  • Aさん(仮名)が父親から1000万円の預金と500万円の借金を相続する場合、預金だけを相続して借金を放棄することはできません。
  •  Bさん(仮名)が母親から評価額不明の価値のあまりない不動産と1000万円の株式を相続する場合、株式だけを相続し、不動産を放棄することはできません。 

民法915条では、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定められています。 

相続の放棄の効果は、民法939条に定められています。 

「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」 

つまり、相続放棄すると、もはや相続人ではありませんから、亡くなった方の財産も、借金も、一切相続することはありません。 

相続放棄は、一切の相続を拒否することです。 

相続したい財産がある場合には、相続放棄ではなく、別の選択肢を検討する必要があります。 

これらの選択肢については、下記で詳しく解説します。 

相続の一部放棄に代わる対処法 

相続の一部放棄は認められませんが、一部の財産を引き継がないための対処法があります。 

主な方法として、限定承認、遺産分割協議、相続分の譲渡の3つがあります。これらの方法を適切に活用することで、柔軟な相続が可能となるでしょう。以下、それぞれの方法について詳しく解説します。 

(1)限定承認:プラスの相続財産の範囲で債務も相続する方法 

限定承認は、プラスの相続財産の範囲内でのみ被相続人の債務を相続する方法です(民法922条)。 

これにより、債務があるものの、相続人の特定の遺産を引き継ぎたい場合、その財産を守ることができます。その価値以上の債務は相続しないので、相続により借金だけを引き継ぐということは避けることができます。 

例えば、被相続人に1000万円の債務があり、プラスの相続財産が500万円の場合、限定承認により相続人は500万円の範囲でのみ債務を引き継ぎます。 

【手続きの流れ】 

  1. 相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に限定承認の申述 
  2. 同時に相続財産を調査して作成した目録も裁判所に提出
  3. 相続人が数人ある場合は、裁判所が相続人の中から相続財産の清算人を選任する
  4. 債権者と受遺者に対し、限定承認をした・請求の申出をすべき旨の公告を行う
  5. 公告の期間が満了したら、債権者に相続財産から債権額の割合に応じて弁済

【メリット】 

  • 相続債務がプラスの相続財産を上回ることはない 
  • 相続財産の範囲が明確になる 

【注意点】 

  • 全相続人の同意が必要 
  • 単純承認とみなされる行為をすると限定承認できなくなる 
  • 3ヶ月の期間は、3ヶ月の期間内に家庭裁判所に延長を申述することで延長が認められることがある
  •  手続きが複雑で相続問題を扱う弁護士などへの相談・依頼が推奨される 

相続放棄や限定承認をしたいなら遺産の処分は厳禁 

相続財産を処分してしまうと、単純承認=相続を選んだとみなされ、相続放棄や限定承認ができなくなる可能性があります。 

例えばHさん(仮名)が母親の相続で、預金口座からお金を引き出して自分の生活費として使用した場合を考えます。あとで借金があることが判明して相続放棄したいと思っても、単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなるのです。 

【相続の承認とみなされる行為の例】 

  • 被相続人の預金を引き出して使用した場合
  • 相続した不動産を売却した場合 
  • 相続した経済的価値のある動産を処分した場合 

ただし、相続財産の範囲や価値を把握するための調査は問題ありません。また、共同相続人の一人が処分した場合、その相続人の行為が単純承認とみなされるかが問題になりますが、他の相続人の相続放棄の権利は影響を受けません。 

誤解されることも多いのですが、生命保険金は、受取人固有の財産なので、受け取っても相続放棄・限定承認は可能です。 

相続したくない遺産があるのに、単純承認したとされて、相続放棄や前提承認ができなくなったら大変です。相続財産を調査する際には、次の点に注意しましょう。 

  • 相続放棄や限定承認を検討している場合は、相続財産に手を付けない 
  • 不明な点がある場合は、相続問題を扱っている弁護士などに専門家に相談してから行動する 

(2)遺産分割協議:特定の財産を相続しない合意形成 

遺産分割協議は、相続人全員の合意によって相続財産の分配を決める方法です(民法907条)。 

基本的には、相続人全員が話し合って、特定の相続人が、特定の財産を相続しないよう取り決めることができます。 

例えば、相続人のうち、Cさん(仮名)が土地を、Dさん(仮名)が預金を相続するなど、相続人の希望に応じた財産分割が可能です。 

【遺産分割協議の流れ】 

  1. 相続人全員で話し合いを行う 
  2. 各相続人の取得する財産を決定 
  3. 遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印 
  4. 各々必要な名義変更などの手続きを行う 

【メリット】 

  • 協議成立まで限定承認のような法的な期間制限がなく、柔軟な対応が可能 
  • 各相続人の意向を反映しやすい 

【デメリット】 

  • 相続人全員の合意が必要で、意見の相違がある場合は調整が難しく、争いが生じることも 
  • 遺産分割協議で債務は相続しないとされても、債権者には対抗できないので、法定相続分に応じた借金の返済を迫られる可能性あり 

(3)相続分の譲渡:自分の相続分を他の相続人に譲る 

相続分の譲渡は、自分の相続分の一部または全部を他の相続人又は第三者に譲ることです(民法第905条)。 

例えば、Eさん、Fさん、Gさん(それぞれ仮名)の相続人がいる場合で、事業を承継するために事業を引き継ぐEさんへ相続を集中させたいとします。EさんとFさんは賛成しているが、Gさんだけ反対している場合、Fさんは自分の相続分をEさんに譲渡することで、実質的に相続から外れることができます。後はEさんとGさんの話し合いになるので、相続トラブルから距離を置くことができるのです。 

【手続き】 

  1. 譲渡する相続分を決定 
  2. 譲渡先の相続人と合意 
  3. 相続分譲渡契約書(証明書)を作成し、署名・押印 

【メリット】 

  • 相続放棄よりも柔軟な対応が可能 
  • 自分の相続分を、相手との話し合いで譲渡することができる 
  • 有償で譲渡すれば、遺産分割協議がまとまる前に金銭を取得できる 

【注意点】 

  • 債権者には対抗できないので、法定相続分に応じて借金の返済を求められる可能性
  •  相続税の計算上は、譲渡した相続分も自分のものとして計算される 
  • 譲渡に対価がある場合は、その対価について譲渡人に相続税が課される可能性 

これらの方法を状況に合わせて選択することで、ある特定の財産を引き継がない効果が得られます。 

ただし、それぞれに法的な手続きや税務上の影響があるため、弁護士や税理士などに相談することをおすすめします。 

相続したくない不動産への対処法|相続土地国庫帰属制度 

相続財産の中には、管理が困難な不動産など、相続したくない財産が含まれることがあります。このような不動産に対しては、法律で定められた特別な対処法があります。 

2023年4月27日からスタートした相続土地国庫帰属制度を利用することで、相続や遺贈で取得した管理が困難な土地を、国庫に帰属させることができます。この制度は、何度も相続を繰り返すことで所有者が不明となり、管理できなくなった土地が増えたことから、所有者不明の土地の解消を目的としています。 

【手続きの流れ】 

  1. 土地が所在する法務局の不動産登記部門窓口に対して申請を行う 
  2. 土地一筆あたり14000円の収入印紙を申請書に貼って費用を納付 
  3. 法務局による審査
  4.  承認された場合、30日以内に10年分の土地管理費用を納付
  5. 国庫への帰属 

【国が引き取ることができない土地】 

  • 建物がある 
  • 担保権や使用収益権が設定されている 
  • 他人の利用が予定されている 
  • 土壌汚染されている 
  • 境界が明らかでない 
  • 土壌汚染されている 
  • 一定の高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる 
  • 地下に、土地の管理・処分を難しくする埋蔵物がある
  •  地上に、土地の管理・処分を難しくする有体物がある など 

【メリット】 

  • 土地を管理する負担や固定資産税の負担から解放される 
  • 次の相続に引き継ぐことなく、不要な土地を処分できる 
  • 相続放棄と異なり、他の相続財産は相続できる 
  • 制度開始前に取得した土地についても、制度を利用できる 

【注意点】 

  • 相続や遺贈で土地を取得した人のみ申請できる 
  • すべての土地が対象となるわけではなく、細かい決まりがある 
  • 土地を実際に見聞するなど審査に一定の時間がかかり、すぐに結果はわからない 
  • 承認されても、10年分の管理費用の納付が必要 

例えば、山間部の利用価値の低い土地を相続した場合など、この制度を利用することで国庫に帰属させ、管理負担から解放される可能性があります。 

参考:相続土地国庫帰属制度について|法務省 

まとめ 相続の一部放棄に代わる適切な対処法の選択が重要 

本記事のまとめは次の通りです。 

  1. 相続の一部放棄は法律上認められない。 
  2. 相続の一部放棄に代わる対処法 
    • 限定承認:プラスの財産の範囲内でのみ債務も相続 
    • 遺産分割協議:相続人同士で、自分が特定の財産を相続しない合意をする
    •  相続分の譲渡:不要な財産を他の相続人に譲る 
  3. 相続の放棄と限定承認は、原則として相続開始を知ってから3ヶ月以内に行う必要がある。
  4. 不要な不動産については、相続土地国庫帰属制度を利用して手放すことができることもある。 

相続の一部放棄は法律上認められません。 

相続したいけれども、一部の財産は引き継ぎたくないという場合、限定承認、遺産分割協議、相続分の譲渡などの方法が選択肢として考えられます。 

相続放棄と限定承認は相続開始を知ってから原則3ヶ月以内に行わなければならないため、時間的に余裕があるとはいえません。 

そこで、相続問題については、早期に弁護士などに相談し、適切な対処法を選択することが重要です。 

アディーレ法律事務所は、相続放棄や遺産分割協議など、相続問題について積極的にご相談・ご依頼を承っております。 

「もしうまくいかなかったら弁護士費用無駄になってしまうんじゃない?」 

ご安心ください、アディーレには 「損はさせない保証」 というものがあります。 

すなわち、アディーレ法律事務所では、弁護士にご依頼いただいたにもかかわらず、結果として一定の成果を得られなかった場合、原則としてお客さまの経済的利益を超える費用はご負担いただいておりません。 

なお、ご依頼いただく内容によって、損はさせない保証の内容は異なりますので詳細はお気軽にお問い合わせください。 

※以上につき2024年11月時点 

相続問題についてお困りの方は、アディーレ法律事務所(フリーコール「0120-554-212」)にご相談ください。 

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。