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交通事故で脳挫傷を負うとどうなる?後遺症や賠償請求について解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「交通事故にあい、「脳挫傷」と診断された。この後、どうなるんだろう……」

脳挫傷とは、頭部への強い衝撃で脳に断裂やむくみ(浮腫)、出血などの損傷が生じる状態をいいます。
脳の組織が一部損傷するという点で、脳しんとうより深刻な状態であり、後遺症も残りやすくなります。

脳挫傷は、頭部を強打することにより起こります。そして、脳挫傷をはじめとする頭部外傷による死亡の多くは、交通事故が原因であるといわれています。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 交通事故で脳挫傷を負った場合の症状
  • 脳挫傷により起こりうる後遺症
  • 脳挫傷を負った場合の損害賠償請求

この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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脳挫傷の主な症状

最初に、脳挫傷を負うとどんな症状が現れるのか、見ていきましょう。
まず、脳の出血や浮腫により頭蓋骨の内側の圧が高まることで、次のような症状が起こります。

  • 激しい頭痛
  • 吐き気・おう吐
  • 意識障害
  • 手足などの半身麻痺
  • 感覚異常(痛みや熱さなどの感覚が鈍くなる)
  • 言語障害

また、脳挫傷により、脳の中にある境界や隙間から脳組織の一部がはみ出してしまうことがあります。この状態を「脳ヘルニア」といいます。
脳ヘルニアによって脳幹が圧迫されると、呼吸障害が生じ、最悪の場合は死に至る場合もあります。

その他には、脳細胞の死滅によって、脳の活動が低下し錯乱を起こしたり、脳の電気信号が流れにくくなり、体のけいれん発作が起きるなどの症状が現れます。

脳挫傷の治療法

では、脳挫傷を負った場合、治療はどのように行われるのでしょうか。

実は、一度損傷した脳そのものを元に戻す方法はありません。そこで、次のような対症療法とリハビリテーションが主な治療となります。

  • 急性期
    交通事故直後の急性期では、手術や脳圧下降剤の点滴注射によって脳圧を低下させたり、手術によって血腫を除去するなどの対症療法が行われます。
  • 回復期
    その後、発症・手術から1~2ヶ月が経ち、病状が安定しはじめた回復期では、歩行訓練や嚥下訓練、発声練習などのリハビリにより脳機能を回復させていく治療が中心となります。

同じ症状でも、回復するか後遺症が残るかは個人によって大きく異なります。

脳挫傷と診断されたときの対処

交通事故による脳挫傷が疑われた場合、どのように対処すべきでしょうか。

まず、CT検査やMRI検査などの精密検査を受け、損傷個所の早期発見、早期治療につとめます。症状が現れていない場合でも、これらの精密検査で発見されることもあります。そこで、交通事故により頭部を強打したような場合には、早めに精密検査を受けることをおすすめします。

また、検査結果の画像は、後日事故の加害者に賠償を請求する際に重要な証拠となるため、適切に管理する必要があります。そして、証拠の保全や後日の示談交渉・賠償請求の準備のため、早いタイミングで弁護士に相談することが重要です。

脳挫傷で起きやすい後遺症

ご説明したように、脳挫傷による脳の損傷部分は基本的に元に戻すことはできません。そのため、後遺症が残ることが多くなります。


脳挫傷によって起きやすい後遺症は次の3つです。

高次脳機能障害

外傷性てんかん

遷延性意識障害

それぞれご説明します。

(1)高次脳機能障害

「高次脳機能」とは、知識に基づき行動を計画・実行するといった、脳の機能の中でも比較的高度なものをいいます。
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって、脳が担う知的活動に障害が生じる症状をいいます。交通事故による高次脳機能障害の場合、例えば次のような症状が現れます。

  • 記憶障害
    新しいことを覚えられない、何度も同じ質問を繰り返すなど
  • 注意障害
    作業を長く続けることができない、単純作業にミスが多くなるなど
  • 遂行機能障害
    段取りをつけて物事を行うことができない、指示をされないと行動できない
    など
  • 社会的行動障害
    すぐに他人を頼る、子供っぽくなるなど
  • 病識欠如
    自分の障害に対する認識ができない、障害がないかのようにふるまうなど

高次機能障害は画像で確認できない場合も多く、「見過ごされやすい障害」という特性があります。
そのため、後で述べる自賠責保険の後遺障害認定で不利な等級認定を受けて、正当な補償が受けられない場合もあります。

適正な等級認定を受けるためには、医師や弁護士と相談し、あらゆる証拠の収集及び主張を行うことが重要となります。交通事故が起きたとき、早めに弁護士に相談するメリットの1つはここにあります。

(2)外傷性てんかん

てんかんは、脳内の神経細胞の過剰な電気的興奮に伴って、意識障害やけいれんなどを発作的に起こす慢性的な脳の病気です。
外傷性てんかんは、交通事故などで脳に損傷が生じ、それに伴って発症する病気のことをいいます。

大部分は抗てんかん薬の服用で発作が抑制され、通常の社会生活を支障なく送れます。しかし、一部で抗てんかん薬では発作を抑制できず、専門的な治療を必要とする場合があります。

(3)遷延性意識障害(植物状態)

遷延性意識障害とは、いわゆる植物状態のことで、重度の昏睡状態が続く症状をいいます。交通事故の後遺障害の中でも極めて重篤な後遺障害のひとつです。

日常生活すべてにおいて介護支援が必要となり、本人や家族に多大な負担と苦痛を伴うことになります。
日本脳神経外科学会の定義によれば、次のような状態が3ヶ月以上継続している場合のことをいいます。

  • 自力で移動できない
  • 自力で食べることができない
  • 大小便を失禁してしまう
  • 目はものを追うが認識はできない
  • 簡単な命令には応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通ができない
  • 声は出すが意味のある発語はできない

遷延性意識障害について詳しくはこちらをご覧ください。

交通事故で家族が遷延性意識障害になった場合の対応方法についてアディーレの弁護士が解説

脳挫傷が起きた場合に受け取れる賠償金

交通事故により脳挫傷を負ってしまった場合、事故の相手方に対して請求できる賠償金のうち、代表的なものは次の4つです。

治療関係費

入通院費や手術費など、治療のために病院に支払った費用などです。

休業損害

交通事故により働くことができず、収入が減少したことによる損害です。
専業主婦(主夫)の方も、けがのために家事労働に従事できなかった期間について休業損害を請求できます。

後遺症逸失利益

「逸失利益」とは、被害者が将来にわたって得られるはずだったのに、後遺症があるために失った利益のことをいいます。

慰謝料

精神的苦痛に対する慰謝料です。

交通事故の相手方に請求できる慰謝料の種類は次の3つです。

慰謝料の算出基準についての注意点

交通事故での慰謝料は、迅速な処理や当事者間の公平を保つため、あらかじめ決められた一定の基準に従って金額が計算されます。
慰謝料の算定基準には、自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、弁護士の基準の3つの基準があります。

自賠責保険は、最低限の被害者の救済を目的としていますので、3つの基準の中では、通常は一番低額になります(※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、ご自身の過失割合が大きい場合など、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります)。

任意保険会社の基準は各会社によって異なりますし、公表されているわけではないので、明確な基準はこれということはできませんが、基本的には自賠責の基準に近いです。

例えば、後遺症慰謝料についての自賠責の基準と弁護士の基準との差は次のとおりです。

このように、弁護士の基準と自賠責の基準では慰謝料額に大きな差があります。

しかし、弁護士基準を使うには、弁護士への依頼が必要となるのがほとんどです。

なぜなら、交通事故の相手方に賠償金を請求する場合、通常は、相手方が加入している任意保険会社と金額を交渉することになります。そして、被害者が自分自身で交渉すると、相手方保険会社は、金額の低い自賠責保険の基準や任意保険の基準で金額を提示してくることが多いからです。

これに対して、相手方保険会社との交渉を弁護士が行う場合、金額が最も高い弁護士の基準を使って交渉することが通常です。その結果、弁護士の基準に近い金額で示談できることもよくあるのです。

交通事故により脳挫傷の被害にあい後遺障害が残ったという場合には、慰謝料や逸失利益が極めて高額になることも多いです。
弁護士に依頼した場合には、過去の裁判例などを参考に、適切な金額を算出しますので、弁護士に依頼することで、最終的に受け取ることのできる賠償額が増額する可能性があります。

【まとめ】交通事故で脳挫傷を負うと高次脳機能障害などの後遺症が起きる可能性がある

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 脳挫傷により脳の出血や浮腫により頭蓋骨の内側の圧が高まることで、激しい頭痛、吐き気・おう吐、意識障害、手足などの半身麻痺などの症状が生じる可能性がある。
  • 脳挫傷によって起きやすい後遺症には、高次脳機能障害、外傷性てんかん、遷延性意識障害がある。
  • 交通事故により脳挫傷を負った場合、治療関係費、休業損害、慰謝料、後遺障害逸失利益などの賠償金を請求できる。
  • 慰謝料には入通院慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料がある。
  • 慰謝料の基準は、自賠責の基準、任意保険の基準、弁護士の基準の3つがあるが、被害者の過失が大きいなどの事情がなければ通常は弁護士の基準による場合が1番高額になる。
  • 交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、最終的に受け取れる賠償金が高額になる可能性がある。

交通事故により脳挫傷が起きると、後遺症が残ることが多いです。

その際、まず後遺障害等級の認定を受ける必要がありますが、適正な等級認定を受けるためには、証拠の集め方などに経験・工夫が要ります。そこで、適正な等級認定を受けるためにも、後遺障害の等級認定に詳しい弁護士に早いタイミングで相談することが重要です。

交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。

すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。

また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。

※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。

(以上につき、2024年9月時点)

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