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打撲など交通事故によるケガで仕事を休む際、受けられる補償とは?

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Mさんは休日に自動車を運転中、脇道から飛び出してきた車に衝突され腕の骨を折るケガを負ってしまいました。入通院のため1ヶ月ほど会社を休んだのですが、その分の給料は差し引かれることに。Mさんは、差し引かれた給料分を事故の相手方に請求したいと考えています。
この記事では、交通事故のケガにより仕事を休まざるを得なくなった際に、

  • 加害者に対して休業損害を請求できる場合
  • 休業損害の計算方法
  • 休業損害の請求方法

について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。同年よりアディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが身近な存在となり、依頼者の方に、水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

交通事故の治療で仕事を休んだ場合、加害者やその保険会社に休業損害を請求できる

交通事故によるケガで仕事を休んだ場合、被害者は、加害者(または加害者が加入する保険会社)に対して休業損害を請求することができます。
休業損害とは、交通事故によるケガで働けなかったことによる収入減を補償するものです。

休業損害が認められる条件

前提として、被害者が交通事故の発生時に仕事に就いていなければなりません。
無職の人や生活保護受給者、年金受給者など、仕事をしていない人の場合は原則として休業損害は認められないことになります(なお、後で述べるように、専業主婦(夫)は休業損害を請求することができます)。
ただし、事故発生時に就業していなくても、例えば内定をもらっているなど、近い将来に就業する可能性が高かった場合は、就職開始予定日以降に得られたはずの給料・収入分を請求できます。

打撲などの軽傷で長期間休んだ場合、休業損害が認められない可能性がある

休業損害が認められる期間は、ケガの治療を開始してから終了するまでです。
入院や手術により明らかに休業しなければならない場合のほか、ケガで仕事に支障をきたすために休業しなければならない場合に請求できます。
他方、単なる打撲など軽傷の場合は休業損害が認められないこともあります。
なお、治療の必要がないほどの軽傷であれば、仕事を休んだとしても休業損害は支払われません。

休業損害の計算方法

休業損害の金額を計算する際には、

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準(裁判所基準ともいいます)

という3つの基準があります。
どの基準を適用するかによって金額が大きく変わることもあります。
以下、3つの基準について具体的に見ていきましょう。

(1)自賠責基準

自動車損害賠償保障法(自賠法)により定められた基準です。
自賠責基準では、

休業損害=6100円×休業日数

で計算されます(2020年4月1日以降に起きた事故の場合)。

実際の収入額に関わらず、1日あたりの収入を6100円として計算されるのが特徴です。
実際の収入額がこれに満たない人でも1日6100円で計算されるため、収入の低い人にとっては有利といえます。
実際の収入が1日6100円を超える人の場合、実収入を証明できれば上限が1日1万9000円まで引き上げられます。
ただし、自賠責基準では、休業損害以外の治療費や入通院慰謝料など、ケガによる損害すべて含めて120万円までという支払い上限があります。

(2)任意保険基準

任意保険会社が独自に定める基準です。
任意保険基準では、

休業損害=1日あたりの収入×休業日数

で計算されます。
1日あたりの収入の計算方法や、休業日数をどう捉えるかは、各保険会社によって異なります。
一般的には、金額は自賠責基準と同程度かやや多めとなりますが、次に説明する弁護士基準よりは少なくなります。

(3)弁護士基準

過去の裁判例に基づいて定められた基準です。
弁護士が、事故の相手方と示談交渉をしたり、裁判をする際に用いられる基準です。
弁護士基準でも、

休業損害=1日あたりの収入×休業日数

で計算します。
「1日あたりの収入」の計算方法は、会社員・自営業・主婦など、働き方の形態や立場によっても変わってきます。
以下で、被害者の業態・立場ごとの「1日あたりの収入」の計算方法を説明します。

(3-1)給与所得者

給与所得者(会社員や公務員、パート・アルバイトなど、毎月一定額の給料を得ている人)の1日あたりの収入は

事故前3ヶ月分の給与額の合計÷90(※)

(※)実際に出勤した日数で割ることもあります。

で算出します。
事故前3ヶ月分の給与額には、本給と付加給(=時間外手当・通勤手当などの各種手当)を含みます。
賞与(ボーナス)も加味したい場合は、事故前1年分の給与額から1日あたりの収入を計算することもできます。
これに、休業日数をかけたものが休業損害の額となります。

【具体例】
5月10日に交通事故で受傷、入通院のため6月中旬まで会社を休んだ(休業30日)。

2月の給与:25万8000円
3月の給与:30万4400円
4月の給与:23万5000円

1日あたりの収入……(25万8000円+30万4400円+23万5000円)÷90=8860円
休業損害額……8860円×30=26万5800円

(3-2)事業所得者

事業所得者(自営業の人)の1日あたりの収入は、

事故前年の確定申告書に記載された所得金額の合計÷365(※)

(※)実際に稼働した日数で割ることもあります。

で算出します。確定申告をしていない場合は、預金通帳の入金状況などから収入を証明します。
これに、休業日数をかけたものが休業損害の額となります。

(3-3)会社役員

会社役員(取締役など)の休業損害の計算はやや複雑です。
会社役員の報酬は、次の2つの部分からなります。

  • 利益配当部分:役員の地位に対して支払われるもの
  • 労働対価部分:実際に労働をしたことに対して支払われるもの

利益配当部分は、労働に対してではなく、役員という「地位」に対して支払われるものです。これは休業中でも支払われるため、休業しても休業損害とは認められません。
したがって、休業損害が認められるのは労働対価部分のみとなります。
報酬全体に占める労働対価部分の割合は、会社の規模や収益・報酬額・職務内容・年齢などさまざまな事情を考慮して算出することになります。
これにより1日あたりの収入を算出し、それに休業日数をかけたものが休業損害の額となります。

(3-4)家事従事者

専業主婦や専業主夫でも、ケガなどにより家事ができなかった期間の休業損害を請求できます。
この場合、1日あたりの収入は、本人の性別に関わらず

事故が発生した年の女性平均年収÷365日

で算出します。
女性平均年収は、毎年発表される厚労省の賃金構造基本統計調査(=「賃金センサス」といいます)の数値を用います。
例えば、2019年度の女性平均年収は388万円なので、家事従事者の1日あたりの収入は、

388万÷365=1万630円

となります。
これに、家事ができなかった日数をかけたものが休業損害の額となります。
なお、就労もしている兼業主婦(夫)の場合は、就労による1日あたりの収入と、上で述べた家事従事による1日あたりの収入を比べ、損害の大きい方を請求することもできます。

(3-5)学生・無職者など

学生や無職者・失業者など、事故時点で仕事に就いていなかった場合、原則として休業損害は請求できません。
ただし、事故時点で就職の内定をもらっていたり、近い将来に就業する可能性が高かった場合は、職業別の賃金センサスや予定就職先の給与推定額から1日あたりの収入を算出し、就職が遅れた日数分の休業損害を請求することができます。

(4)休業損害は、一般に弁護士基準が最も高額となる

以上、3つの計算基準について見てきましたが、休業損害は

1日あたりの収入×休業日数

で計算するのは3つの基準いずれも共通といえます。
しかし、自賠責基準には1日あたりの収入は6100円(上限は1万9000円)、ケガ関連の賠償全てを含めて支払い上限120万円までという制約があります。
他方、任意保険基準には1日あたりの収入の上限などはありませんが、保険会社は自社からの支払いを抑えるため、休業損害額を少なく計算することがあります。
例えば、1日あたりの収入を低く算出したり、治療はすでに終わっていたなど主張して、休業日数の一部を認めないなどです。
これに対し弁護士基準によれば、1日あたりの収入・休業日数それぞれについて適正な評価がなされ、他の2つの基準を用いた場合よりも、一般に休業損害が高額となります。
被害者が、自分自身(または加入している保険会社の示談代行サービス)で示談交渉を行うと、相手方の保険会社は、自賠責基準や任意保険基準による低い金額を提示し、話をまとめようとしてきます。
これに対し、被害者に代わって弁護士が示談交渉を行う場合は、弁護士基準が用いられます。これにより、休業損害額の増額が期待できます。

休業損害の請求方法

次に、休業損害の請求に必要な書類や、請求先について説明します。

(1)休業損害の請求に必要な書類

休業損害を請求するためには、実際に仕事を休んだ日数や、いくら収入が減ったのかを証明する書類が必要となります。

【会社員など給与所得者の場合】
勤務先が発行してくれるものとして

  • 休業損害証明書
  • 源泉徴収票
  • 給与明細書

などが必要となります。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

休業損害証明書とはどのようなもの?基礎知識から記載項目までを解説

【自営業者など事業所得者の場合】
事故の前年の収入を証明するものとして、

  • 前年の確定申告書
  • 納税証明書

などが必要です。

【専業主婦(夫)の場合】

  • 家族構成を説明するための住民票
  • 本人の非課税証明書
  • 配偶者の源泉徴収票や課税証明書

などが必要となることがあります。

また、上記いずれの場合にも休業の必要性を証明する共通の資料として、医療機関が発行する

  • 入院証明書
  • 診断書
  • 診療報酬明細書

などが必要となります。

(2)休業損害の請求先

休業損害証明書の用紙は、通常は相手方の保険会社から送られてきます。
これを勤務先に提出し、必要項目を記入してもらったら、その他の添付書類と一緒に保険会社に提出します。
なお、事業所得者や専業主婦(夫)の場合は、休業損害証明書の提出は不要です。

交通事故で仕事を休む際に有給休暇を使っても休業損害を請求できる

有給休暇により仕事を休んだ場合、その日については給料が出ます。
そうすると、ケガの治療のために有給休暇を取得した場合、休業補償は請求できないようにも思えます。
確かに有給休暇を使った場合、収入は減少しません。しかし、事故によるケガのため、本来使う必要がなかった有給休暇を取得せざるを得なくなったわけですから、有給休暇期間も休業日数にカウントされます。
したがって、有給休暇を使って休んだとしてもその期間の休業損害は請求できます。

休業損害がもらえるタイミング

休業損害は、ケガが治癒もしくは症状固定して相手方と示談が成立した後、1週間~1ヶ月程度で治療費や慰謝料などとともに振り込まれるのが通常です。
ただし、後遺障害が残ると、後遺障害の認定手続きが別途必要になるため、示談交渉開始までに時間がかかったり、交渉が長引くことがあります。
その結果、休業損害の受け取りも遅くなることがあります。
この場合、相手方の保険会社と交渉して、休業損害の一部を先払いしてもらう方法もあります(これを「内払い」ともいいます)。

休業損害の他にも請求できるものがある

交通事故でケガを負った場合は、休業損害の他に次のような賠償金も請求することができます

(1)実際にかかった支出に対する治療費など

入通院にかかった治療費です。
また、治療費だけでなく、入院や通院にかかった交通費や、治療のため子どもを施設に預けなければならなくなった場合の費用なども請求できます。

(2)交通事故で精神的な苦痛を受けたことに対する慰謝料

ケガにより入通院を余儀なくされたことについての精神的苦痛(=痛い・辛いなど)に対する賠償金です。
金額は、ケガを負ってから治療が終わるまでにかかった期間をもとに算出されます。
その他、ケガにより後遺症を負ってしまった場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益(=後遺症により得られなくなった将来の収入)を請求できる可能性があります。

保険会社が休業損害の支払いに応じてくれない場合の対処法

休業損害をめぐっては、金額などについて相手方の保険会社と折り合いが付かず、支払いに応じてもらえない場合は少なくありません。
その場合、交通事故紛争処理センターなどに相談すると、和解のあっせんをしてもらえます。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

交通事故紛争処理センターとは?業務内容や利用方法を解説

もっとも、紛争処理センターはあくまでも中立的な立場であり、被害者の味方になってくれるというわけではありません。
ご自身の有利な条件で示談交渉を進めたい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

【まとめ】交通事故によるケガで会社を休んだ際の休業損害請求は弁護士へご相談ください

交通事故によるケガで会社を休んだ場合、事故の相手方(加害者)に対して休業損害その他の賠償金を請求できます。
休業損害の金額については、通常は加害者が加入する保険会社と示談交渉することになります。
もっとも、加害者側の保険会社は、休業損害を低く算出して提示してくることが少なくありません。
加害者側が提示する休業損害の額に納得がいかない、または加害者側が休業損害の支払いに応じてくれないときは、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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