交通事故の被害に遭った後、物忘れが激しくなる、人格が変わってしまった、すぐ疲れてしまう、などの症状があることがありませんか。
このような症状がみられる場合、「高次脳機能障害」かもしれません。
交通事故により高次脳機能障害が生じた場合には、後遺障害1~9級の等級が認定される可能性があります。
ただし、高次脳機能障害であれば必ず後遺障害等級が認められるわけではありません。後遺障害等級に認定されるためには、認定基準を満たす必要があります。
高次脳機能障害で賠償金請求をされる前に、後遺障害等級の認定基準について知っておきましょう。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 高次脳機能障害とは
- 高次脳機能障害の後遺障害等級と認定基準
- 高次脳機能障害の後遺症慰謝料の相場
- 後遺障害等級の認定までの流れ
- 高次脳機能障害の等級アップのポイント
岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
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高次脳機能障害とは
「高次脳機能障害」とは、視覚、聴覚の感覚機能や手足の運動機能に大きな障害が認められないものの、大脳の機能に障害が認められ、社会適合性を大きく欠く症状のことをいいます。
例えば、周りを見たり、音楽を聴いたり、手足も普通に動くなどの動作には問題はなくても、作業の要領が覚えられない、すぐに忘れてしまう、キレてしまうなどの症状がある場合をいいます。
交通事故を原因として高次脳機能障害は、主に、脳に強い外力を受けたことによる脳外傷を原因としています。
高次脳機能障害の特徴的な5つの症状
高次脳機能障害の特徴的な症状としては、主に次の5つの症状があります。
特徴的な症状 | 具体的な症状 |
---|---|
1.記憶障害 | ・物をどこに置いたかわからない ・約束を忘れてしまう ・新しいことを覚えられない ・何度も同じ質問を繰り返す なお、高次脳機能障害の中では、記憶障害は被害者自身も認識しやすい症状といえます。ただし、高齢者の方は、認知症など経年性変化との区別が必要になることがあります。 |
2.注意障害 | ・作業を長く続けることができない ・単純作業にミスが多くなる ・すぐに疲れる ・他の人の行動にちょっかいを出す ・2つのことを同時に行えない |
3.遂行機能障害 | ・段取りをつけて物事を行うことができない ・指示されないと行動できない ・物事の優先順位がつけられない |
4.社会的行動障害 | ・依存:すぐに他人を頼る ・退行:子どもっぽくなる ・欲求コントロール低下:我慢ができない、何でも欲しがる、浪費する ・感情コントロール低下:怒りっぽくなる、急に笑う、暴れる ・固執:ひとつのこと(物)に異常にこだわる ・対人関係障害:相手の立場や気持ちを考えられない、よい人間関係が作れない ・意欲・発動性低下:自分から何かをしようとしない、ボーっとしている ・抑うつ:憂鬱な状態が続く、何もしない |
5.病識欠如 | ・自分の障害に対する認識ができない ・障害がないかのようにふるまう、言う |
高次脳機能障害の症状の疑いがある場合、早期に医師の診断を受けることをおすすめします。
高次脳機能障害は、一見してその症状を外部から発見することは難しい場合もあり、医師でも気づかない場合も少なくありません。そのため、被害者の事故前の人格を知っている、かつ、事故後も被害者とコミュニケーションをとっているご家族しか、高次脳機能障害による変化に気づかない場合もあります。
高次脳機能障害で認定される可能性のある後遺障害等級とは
ここでは、後遺障害等級と高次脳機能障害で認定される可能性のある後遺障害等級について説明します。
(1)後遺障害・後遺障害等級とは
後遺症について、自賠責保険の基準で障害の等級を認定されたものを「後遺障害」といいます。医師の治療および症状固定の診断を受けた後、所定の機関(損害保険料率算出機構など)に対し等級認定の申請をすると、「後遺障害等級」が認定されます。
後遺障害は、症状の部位と程度・深刻度によって、1~14級(および、要介護の1級・2級)の等級に分類されます。1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。
(2)高次脳機能障害において認定される可能性のある後遺障害等級とその認定基準
高次脳機能障害については、その症状の重さ・程度によって、後遺障害1級(要介護)、2級(要介護)、3級、5級、7級、9級に認定される可能性があります。
そして、高次脳機能障害があれば必ず後遺障害等級が認定されえるわけではありません。それぞれに後遺障害等級の認定基準が定められています。
等級 | 神経系統の機能または精神の障害 | |
---|---|---|
別表第一 (要介護) | 1級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ⇒身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生命維持に必要な身の回りの動作に全面的な介護を必要とするもの |
2級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの ⇒著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されており、身体動作的に排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身の回りの動作に、家族からの声かけや看視を欠かすことができないもの | |
別表第二 | 3級3号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの ⇒自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されておらず、また、声かけや介助なしでも日常の動作を行えるが、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があり、一般就労が全くできないか、困難なもの |
5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの ⇒単純なくり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能であるが、ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業が継続できなくなったりする問題が生じ、このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないもの | |
7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの ⇒一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの | |
9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの ⇒一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業維持力などに問題があるもの |
高次脳機能障害の後遺症慰謝料の相場
後遺症が残った場合、後遺症が残ったことにより受けた精神的ショックを償うために「後遺症慰謝料」が支払われることになります。
ここでは、後遺症慰謝料の3つの基準と内臓の機能障害による後遺症慰謝料の相場について解説します。
(1)後遺症慰謝料の3つの基準
後遺症慰謝料の慰謝料の相場を知るためには、慰謝料の3つの基準について知っておく必要があります。なぜなら、どの基準を使うかによって慰謝料の金額が大きく変わってくるからです。
慰謝料の3つの基準とは、「自賠責の基準」「任意保険の基準」「弁護士の基準」です。くわしくは、次のとおりです。
算定基準 | 概要 |
---|---|
自賠責の基準 | 自賠責の基準は、自動車保有者が加入を義務付けられている「自賠責保険」で採用されている基準です。 自賠責の基準は被害者への最低限の補償を目的として設けられているので、慰謝料の基準額は基本的に3つの算定基準のうち最も低くなります。 ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。 |
任意保険の基準 | 任意保険の基準は、各保険会社が独自に設定している非公開の算定基準です。 加害者側の任意保険会社は、通常は任意保険の基準をもとにして慰謝料を提示してきます。基準額は、自賠責の基準と同程度か、やや高い程度であると推測されます。 |
弁護士の基準 | 弁護士の基準は、過去の裁判例をもとに設定された基準です。弁護士に示談交渉を依頼した場合などに使われる算定基準です。 弁護士の基準による慰謝料金額(目安)は3つの算定基準のうちでは基本的に最も高額となります。 |
3つの基準の賠償額を比較すると、一般的に、次のようになります。
この図のように、基本的に、自賠責の基準よりも弁護士の基準の方が高額となりやすい傾向にあります。では、実際の後遺症慰謝料の相場について見ていきましょう。
(2)後遺症慰謝料の相場
高次脳機能障害の後遺症慰謝料の相場は、次のとおりです。
等級 | 自賠責の基準 | 弁護士の基準 | |
---|---|---|---|
別表第一 (要介護) | 1級1号 | 1650万円、被扶養者がいる場合1850万円 (初期費用として別途500万円も支払われる) | 2800万円 |
2級1号 | 1203万円、被扶養者がいる場合1373万円 (初期費用として別途205万円も支払われる) | 2307万円 | |
別表第二 | 3級3号 | 861万円、被扶養者がいる場合1005万円 | 1990万円 |
5級2号 | 618万円 | 1400万円 | |
7級4号 | 419万円 | 1000万円 | |
9級10号 | 249万円 | 690万円 |
この表を見ると、自賠責の基準の相場よりも弁護士の基準の相場の方が高額であることがお分かりになるでしょう。
弁護士の基準を使うには弁護士へ依頼することがおすすめです。
というのも被害者本人が加害者側の保険会社と示談交渉すると、加害者側の保険会社は自賠責の基準や任意保険の基準による低い慰謝料額を提示してくるのが通常です(被害者本人が弁護士の基準で交渉しても通常、応じてくれることは難しいでしょう)。これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉を行う場合は、基本的には最も高額な弁護士の基準を使いますので、弁護士の基準に近づけた形での示談が期待できます。
弁護士への依頼でもらえる示談金について詳しくは、こちらをご覧ください。
後遺障害等級申請の方法&認定までの流れ
後遺障害等級の認定の判断は、損害保険料率算出機構(加害者側の保険会社が加盟している場合)や自賠責保険・共済保険紛争処理機構が行います。
申請手続の方法としては、加害者側の保険会社を通じて行う「事前認定」という方法と、被害者自身(被害者が依頼した弁護士を含む)が行う「被害者請求」という方法があります。
流れとしては次のようになります。
事前認定
被害者請求
(1)事前認定
「事前認定」とは、加害者側の任意保険会社が主体となって後遺障害等級の認定に必要な資料を用意し、加害者側の自賠責保険会社に後遺障害等級認定の申請を行う手続きのことをいいます。
「事前認定」は、加害者の保険会社を通じて行いますので、被害者自身には手間がかからないというメリットがあります。
しかし、申請の際に必要となる資料を提出するのは加害者側の保険会社になりますので、提出する資料を被害者や弁護士がチェックすることはできません。
そして、加害者側の保険会社にとっては、後遺障害等級が上がればその分だけ支払う賠償金が増えてしまいますので、より高い等級の認定を受けることに、必ずしも協力的ではありません。
高次脳機能障害の場合、一見障害がないように見えることもありますので、加害者側の保険会社が十分な資料を提出せずに、後遺障害等級が認定されないということも十分にありえます。
(2)被害者請求
「被害者請求」とは、被害者が主体となって、後遺障害等級の認定に必要な資料を収集し、加害者側の自賠責保険会社に対し、後遺障害等級の認定の申請を行う手続きのことをいいます。
「被害者請求」は、被害者の方が自ら申請に必要な資料を収集し、提出するといった負担がありますが、提出する資料を被害者自身や被害者から依頼を受けた弁護士がチェックできるといったメリットがあります。
後遺障害等級の認定に有利となる資料をさらに提出したり、不利となりそうな資料については補う資料を提出したりすることができます。
高次脳機能障害の場合、一見障害がないように見えることもあるため、どのような資料を提出するかによって、後遺障害等級の認定結果が大きく変わる可能性があります。提出前に資料チェックができる被害者請求を行うことをおすすめします。
後遺障害等級認定の申請手続について弁護士に依頼した場合には、交通事故に精通した弁護士これまでの経験を踏まえて、後遺障害の認定が適切になされる資料や書類を揃えて、申請を行います。弁護士が医師と相談の上、診断書の記載内容を検討することもあります。
被害者請求に必要書類また申請方法についてくわしく知りたい方はこちらをご覧ください。
明確な画像所見がなくても高次脳機能障害の後遺障害等級は認められる場合がある
従来、「高次脳機能障害」はCTやMRIなどではっきりとした画像所見がない限り、後遺障害等級が認められないという運用がなされていた時がありました。
実際、このように加害者側の保険会社から説明を受けた人もいるかもしれません。
しかし、CT画像やMRI画像所見上明らかに異常が認められないが、事故態様やその症状過程から脳外傷による高次脳機能障害を認めるべき場合があるというケースが多数存在しており、CT画像やMRI画像所見上明らかな異常がなくても高次脳機能障害を認めるべきとする裁判例が見られるようになりました。
【画像所見がなくても高次脳機能障害を認めるべきとした裁判例】
- 大阪高裁判決平成21年3月26日(自保ジャーナル1780号掲載)
事故後約3週間経ってから、高次脳機能障害をうかがわせる症状が発症した事案です。自賠責保険の認定においては、MRI画像などで外傷性の内病変や脳萎縮といった画像所見がないことなどを理由に、外傷による高次脳機能障害を否定し、後遺障害14級にとどまると診断され、大阪地裁もこれを支持しました。
しかし、大阪高裁は、この判断を覆し、「各検査で異常所見が認められていないことを考慮しても、…本件事故後の症状は、高次脳機能障害の症状であると認めることができる。」として、脳外傷による高次脳機能障害(9級相当)の後遺障害を認定しました。
そのため、2011年4月1日より、自賠責の認定システムでも、高次脳機能障害の後遺障害等級の認定については充実が図られるようになりました。
高次脳機能障害で後遺障害等級に認定されるための3つのポイント
高次脳機能障害は、外から見えにくい病気であるため、後遺障害等級の認定が難しいのが実情です。
そこで、高次脳機能障害について後遺障害等級の認定を得るためには、次に紹介する3つのポイントを押さえておくことをおすすめします。
【高次脳機能障害で後遺障害等級認定のポイント】- 提出資料のチェックする
- 「日常生活状況報告書」には別紙を使用する
- 医師の所見はしっかりと記載してもらう
(1)提出資料のチェックする
後遺障害等級の認定を得るためには、提出資料を事前にチェックすることをおすすめします。
特に、高次脳機能障害の後遺障害等級認定の資料として重要なのが、次の4つの資料です。
【後遺障害等級認定で重要な提出資料】
- 被害者(被害者家族)が作成する「日常生活状況報告書」
- 医師が作成する「神経系統の障害に関する医学的所見」
- 医師が作成する「脳外傷による精神症状などについての具体的な所見」
- 医師が作成する「各種神経心理学的検査結果」
医師は後遺障害等級認定の専門家ではありません。そのため、医師に任せきりにしておくと、後遺障害等級認定に必要な記載に漏れがあったり、曖昧な表現で記載されてしまったりすることもあります。
そのため、医師作成の提出資料であっても自分の症状がきちんと記載されているかを、よくチェックすることをおすすめします。また、各種資料間で整合がとれているかなどもチェックしておきましょう。
(2)「日常生活状況報告書」には別紙を使用する
「日常生活状況報告書」とは、被害者の事故後~症状固定までの生活状況を詳細に記載し、事故後の被害者の障害の程度および症状の経過を示す資料です。
これは、被害者本人で認識できることに限界がありますので、被害者を見守るご家族の方々の真摯な協力が必要となります。
「日常生活状況報告書」には、通常用いられる雛型がありますが、この空欄に諸症状を書ききることはおよそ不可能です。
そのため、諸症状や被害者の行動・事件事故などを具体的詳細に示すためには、「別紙」として、ご家族が文章にして、「陳述書」というかたちで提出することがおすすめです。
なお、各種神経心理学的検査結果と、日常生活状況の報告内容に齟齬がないことが重要になります。
(3)医師の所見はしっかりと記載してもらう
「神経系統の障害に関する医学的所見」、「脳外傷による精神症状等についての具体的所見」については、専門家である医師が作成するものです。
そのため、一般に、これらの提出資料の記載内容には信頼性があるといえますが、診察室で限られた時間のみ被害者と対面している医師が、毎日被害者のそばで生活をしているご家族同様に、患者の症状を把握しているとはなかなかいえないでしょう。
そこで、これらの所見を医師にきちんと記載してもらうためには、被害者や被害者のご家族が作成した日常生活状況報告書の内容をあらかじめ医師に見てもらい、患者の具体的症状を医師にしっかり理解してもらうことが重要です。
「記載不備」が理由で後遺障害等級が認定されないこともありますので、医師に十分かつ的確な「所見」を記載してもらえるようお願いすることが、後遺障害等級認定を受けるためのポイントです。
【参考】日常生活状況報告書
【参考】神経系統の障害に関する医学的所見
【参考】脳挫傷による神経症状等についての具体的な所見
高次脳機能障害の賠償金請求について弁護士への依頼をおすすめする5つの理由
高次脳機能障害は、後遺障害等級も高く、他の後遺障害と比べて、賠償額が高額となります。そのため、加害者側との交渉が難航する可能性が高いでしょう。
そのため、適正な賠償金を得るためには、交渉を弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士に交渉を依頼することのメリットは次の5つです。
【弁護士に交渉を依頼するメリット】- 後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高められる
- 過失割合を有利に修正できる可能性がある
- 賠償金の請求漏れを防ぐことができる
- 後遺障害等級認定や示談交渉などの負担を軽減できる
- 弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配ない可能性がある
詳しく説明します。
(1)後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高められる
弁護士に依頼することで、後遺障害等級の認定を受けられる可能性を高めることができます。
そもそも、後遺症があれば、誰でも後遺障害等級の認定を受けることができるわけではありません。後遺障害等級の認定を受けるためには、どのような資料を提出するのか、資料にどのような記載をするかが重要になります。
もっとも、後遺障害等級認定の申請を何度も行う人はそういません。後遺障害等級認定の申請におさえておくポイントやコツを知っている人はそうそういません。
しかし、交通事故問題に精通した弁護士は、後遺障害等級認定の申請のポイントやコツを知っています。弁護士が医師の作成した診断書や資料の記載内容をチェックすることもあります。
弁護士に依頼することで、適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができます。
特に、高次脳機能障害は、判断が難しく、不利な等級認定を受けてしまうことも珍しくありません。適正な等級認定を受けるためには、早めの弁護士への相談をおすすめします。なぜなら、交通事故案件の経験が豊富な弁護士は、適正な等級認定を受けるために、どんな資料を集めればより効果的かを知っているからです。
(2)過失割合を有利に修正できる可能性がある
弁護士に依頼することで過失割合をあなたに有利な形に修正できる可能性があります。
そもそも「過失割合」とは、簡単にいえば、「交通事故が起きたことについて、どっちが、どのくらい悪いのか」ということを示すものです。
例えば、被害者に20%の過失・加害者に80%の過失があるとされた場合には、過失割合は被害者:加害者=20:80とされ、被害者が受けとれる賠償額が20%分減額されることになります。
ただ、ここで注意が必要なのが、加害者側の保険会社の提示する過失割合は、被害者に不利な形になっているケースも少なくないことです。
例えば、事故当事者の主張(信号の色など)が異なる場合には、被害者の主張ではなく、加害者の主張する事実に基づいて過失割合を提案してきている可能性があります。
- 信号が赤で加害者が交差点を進入してきたのに、加害者が青で進入したと主張している
- 本来徐行すべきところを徐行せずに進行していたのに、加害者は徐行していたと主張している など
このような場合に、過失割合について検討せずに示談を成立させてしまうと、被害者が本来受け取るべき示談金を受け取れなくなるおそれがあります。
交通事故の経験が豊富な弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士は、道路状況や車の損傷部分や程度などのさまざまな証拠をもとに正しい事故状況を検討します。そして、弁護士はその結果を基に保険会社と交渉します。これにより、妥当な過失割合で保険会社と示談できる可能性が高まります。
過失割合とは何か、過失割合がどのようにして決まるのかについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(3)賠償金の請求漏れを防ぐことができる
弁護士に依頼することで請求漏れを防ぐことができます。
例えば、交通事故でケガをし、仕事を休んだ場合には「休業損害」を請求できますが、保険会社からの提示額には休業損害が含まれていなかったり、本来請求できる金額よりも安かったりすることがあります(例:自営業や主婦には休業損害は請求できないとする保険会社もあります)。
しかし、弁護士に依頼することで、保険会社からの提示額に被害者が請求できるお金が全て含まれているかを確認します。
そのため、弁護士に依頼することで請求漏れを防ぐことができるのです。
(4)後遺障害等級認定や示談交渉などの負担を軽減できる
後遺障害の認定を受けるための手続きは複雑で、大きな精神的・身体的・時間的負担がかかります。弁護士に依頼すれば、これらの手続きを任せられ、ご自身は治療に専念できます。
重度の高次脳機能障害の場合、障害年金など社会保険との調整が必要となったり、将来介護費を請求できる場合もあります。被害者が若年の方の場合には定期金賠償を請求する必要があるかもしれません。それらについては、ご自身と加害者側の保険会社との交渉で、不安なく納得してまとめることは難しいでしょう。
(5)弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配ない可能性がある
弁護士に依頼すると弁護士費用がかかってしまいます。
しかし、弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用を心配しなくてもよい可能性があります。
「弁護士費用特約」とは、弁護士に相談や依頼する費用を保険会社が代わりに負担する制度のことをいいます(※)。この制度を利用すると、被害者が弁護士に相談・依頼しても、弁護士費用は保険会社が負担してくれますので、被害者自身は弁士費用の心配なく、弁護士に相談・依頼することが可能になります。
弁護士費用特約は被害者自身が加入する保険に弁護士費用特約が付いている場合だけでなく、被害者の家族が加入する保険に弁護士費用特約が付いている場合も利用できるケースがあります。被害者自身が加入する保険以外にも、ご家族が加入する保険にも弁護士費用特約が付いていないかどうかをチェックしてみましょう。
※保険会社が負担する金額には上限があります(一般的に、弁護士費用は上限額300万円、法律相談費用は上限額10万円程度)。
弁護士費用特約について詳しくは、こちらをご覧ください。
【まとめ】人格が変わってしまったなどの症状があれば「高次脳機能障害」かも|疑いがあれば早めに受診を!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 「高次脳機能障害」とは、視覚、聴覚の感覚機能や手足の運動機能に大きな障害が認められないものの、大脳の機能に障害が認められ、社会適合性を大きく欠く症状のこと。
- 高次脳機能障害で後遺障害等級に認定されるための3つのポイント
- 提出資料のチェックする
- 「日常生活状況報告書」には別紙を使用する
- 医師の所見はしっかりと記載してもらう
- 高次脳機能障害の賠償金請求について弁護士への依頼をおすすめする理由
- 後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高められる
- 過失割合を有利に修正できる可能性がある
- 賠償金の請求漏れを防ぐことができる
- 後遺障害等級認定や示談交渉などの負担を軽減できる
- 弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配ない可能性がある
高次機能脳障害は外から見えづらい病気のため、加害者側保険会社から賠償が認められづらいのが実情です。そのため、加害者側保険会社が提示する金額が実は、本来受けとるべき賠償額よりも低いということも少なくありません。
しかし、弁護士に相談することで、保険会社が提示する金額が妥当なものか、増額できる可能性がないのかをきちんとチェックしてもらうことができます。
交通事故の被害による賠償金請求や後遺障害等級認定をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年3月時点)
交通事故を原因として高次機能脳障害となり、加害者側に対して賠償金請求を検討している場合には、アディーレ法律事務所に相談してください。