交通事故による手足のしびれは後遺障害?後遺障害認定のポイントも解説

  • 作成日

    作成日

    2023/07/28

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    2023/07/28

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目次

交通事故によるケガの後遺症は、「後遺障害」と認められると、被害者は加害者に対して後遺障害が残ったことに対する賠償金を請求することができます

では、交通事故が原因で手足のしびれが残ってしまった場合、「後遺障害」として認定されるのでしょうか?

手足のしびれであっても、「後遺障害」として認定され、後遺症慰謝料を受け取れる可能性があります。

手足のしびれで賠償金を請求する前に、手足のしびれの後遺障害等級の認定のポイントについて知っておきましょう。

この記事では、次のことについて弁護士が詳しく解説します。
  • 手足の痺れの原因
  • 手足の痺れと後遺障害等級
  • 手足の痺れの後遺障害慰謝料の相場
  • 手足の痺れと逸失利益

手足のしびれについて考えられる主な5つの原因

手足のしびれについて考えられる原因としては、主に次の5つが挙げられます。
1.むち打ち症
2.椎間板ヘルニア
3.胸郭出口症候群
4.脊髄損傷
5.外傷性脳損傷
それぞれ説明します。

(1)むち打ち症

「むち打ち症(むち打ち損傷)」とは、外部からの衝撃により、日常生活では起こりえない不自然な力を受けて、頸部(首)が大きく「しなる」結果、頸部の筋肉、靭帯、椎間板等の軟部組織や骨組織などが損傷することをいいます。

症状としては,頭・首・肩・腕・背中等の痛み,めまい・しびれ・知覚異常・倦怠感,吐き気・微熱・睡眠障害・情緒不安定等があります。

(2)椎間板ヘルニア

「椎間板ヘルニア」とは、背骨をつないでクッションの役割をしている椎間板が一部外に飛び出して神経を圧迫し、手足の痛みやしびれを生じさせることをいいます。

腰に負担をかける作業を行う人がなりやすいケガとして知られていますが、交通事故によって首や腰を痛めることによっても椎間板ヘルニアになることがあります。

(3)胸郭出口症候群

「胸郭出口症候群(TOS)」とは、腕や肩の運動や感覚にかかわる神経や血管が損傷を受け、肩や腕、手の痛みや痺れを生じさせることをいいます。

外傷によって生じるケースとなで肩や筋肉質などのもとある体質に交通事故による損傷が契機となって発症するケースがあります。

(4)脊髄損傷

「脊髄損傷」とは、脊髄に外部から強い力が加わったことにより、脊髄に損傷を受けることをいいます。脊髄が損傷し、脳からの信号を身体に伝達できなくなった結果、身体に麻痺が生じ、手足のしびれも生じさせることがあります。

(5)外傷性脳損傷

「外傷性脳損傷」とは、交通事故や転倒などによって外部から強い力が加わったことにより、脳の組織が損傷を受けることをいいます。脳が損傷したことにより、身体の麻痺や感覚障害、記憶障害などの障害が生じることがあります。

手足のしびれが残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級

後遺障害は、症状の部位と程度・深刻度などによって、1~14級(および、要介護の1級・2級)の等級に分類されます。
1級の症状が最も重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます。
交通事故により手足のしびれが残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級としては、主に次のとおりです。
後遺障害等級 症状の内容
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの
なお、その他の障害が同時に生じた場合は、より上位の等級が認定されることもあります。

では、手足のしびれが後遺障害認定されるための具体的な要件について説明します。

(1)後遺障害12級13号に認定されるための要件

後遺障害12級13号の認定を受けるためには、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する必要があります。

「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、自覚症状の他に他覚的所見(検査結果など客観的な資料に基づく医師の判断)があることを要します。
つまり、患者本人が訴える「しびれる」「痛い」といった症状を、検査結果や画像などに基づいて医師が客観的に裏付けることをいいます。

(1-1)むち打ち症や椎間板ヘルニアといった神経根症状の場合

通常、MRI画像による神経根の圧排(=圧迫され押し出されること)所見と、腱反射の異常所見が必要です。後遺障害認定では、腱反射以外の神経伝導検査などは、事実上、補助的にしか評価していないようです。

事故が激しく、被害者が経年性のヘルニアを生じないような若年者(20代)で、ヘルニアによる神経根の圧排がMRI画像ではっきりしている場合には、腱反射の異常所見がなくとも、画像所見と治療経過のみで認められることがあります。

(1-2)神経根症状以外の画像所見のある神経症状の場合

骨折後の変形癒合、偽関節(遊離骨片)、腱板断裂その他靭帯損傷、半月板損傷その他軟骨変形損傷は、レントゲン(XP)やMRIで画像所見がはっきりしている場合、神経症状の客観的証拠となります。

しかし、中高年の腱板や半月板は、経年性の変化や長年の酷使によって事故前から損傷していることがあります。そのため、程度によっては14級とされたり、事故後のMRI画像に所見があっても、それが事故原因によるものなのか、経年性の変化によるものなのか、争われたりすることがしばしばあります。

(1-3)MRI画像所見のない神経症状の場合

むち打ち症・神経根症状以外の神経症状は、MRI検査ではっきりと異常を確認することが困難な場合があります。上肢の場合、神経伝導検査や筋電図検査によって、神経根、肩、肘、手首のどこの間に神経損傷があるのかを特定することになります。
受傷状況、受傷から治療中の症状経過、腱反射とそれらの客観的な電気的検査を総合して、神経損傷を客観的に立証できている場合にのみ12級13号が認定されます。

(2)後遺障害14級9号に認定されるための要件

後遺障害14級9号は、等級表によると「局部に神経症状を残すもの」とされます。
「局部に神経症状を残すもの」とは、医学的な説明ができること(事故によって生じた症状が一貫していることなど)を要します。
後遺障害12級13号とは異なり、医学的な証明」はできなくても、「医学的な説明」ができれば、14級9号に認定されることになります。

例えば、椎間板の膨隆はあっても神経根を常時圧排していない場合や、尺骨神経に麻痺があるのにMRI検査や神経伝導検査などの異常がはっきりせず、神経症状の存在を立証できない場合は、「医学的な証明」には足りないとされます。

しかし、受傷がありうる事故態様で、事故直後から症状の訴えがあり、6ヶ月ないし相当期間医師が治療しても症状が残存していると認められる場合には、神経症状の存在が「医学的に説明できる」とされる可能性があります。

この意味からも、事故後すぐに受診し、医師に対して症状を詳しく説明しておくことが重要です。
手足のしびれが残っているのに、後遺障害に認定されない!?
手足のしびれが残っているにもかかわらず、次のようなケースでは後遺障害として認定されない(=非該当)となってしまうことがあります。
・MRI検査などの精密検査で異常が見られず、また医学的な説明もできない場合
・事故から治療開始まで4日以上期間が開いていたり、治療期間が短かったり(6ヶ月未満)、通院を長期間(4週間以上)中断している場合
・事故態様が軽微(駐車場内の事故の場合など衝突速度が低速の場合やバックによる逆突事故の場合)の場合

手足のしびれで後遺障害認定を受けるための4つのポイント

交通事故による手足のしびれで後遺障害の等級認定を受けるのは、容易なことではありません。

後遺障害認定をとるためには、次の4つのポイントを意識する必要があります。
1. 交通事故直後に精密検査を受ける
2. 少しよくなったとしても通院は継続する
3. 後遺障害診断書診断書をきちんと作成してもらう
4. 被害者請求で後遺障害等級認定の申請をする
順番に説明します。

(1)交通事故直後に精密検査を受ける

後遺障害として認定されるためには、その障害が交通事故によって引き起こされたものであることを証明する必要があります。そのため、交通事故直後にどのような症状があったのかが重要となるのです。

交通事故直後から主治医に自分の症状をきちんと伝え、精密検査も行い、交通事故直後、どういった症状があったのか、その証拠を残しておくことが大切です。
後遺障害の等級において必要な検査項目について部位別にこちらにまとめておりますので、後遺障害の等級申請を行う前に確認しておきましょう。

(2)少しよくなったとしても通院は継続する

少しよくなった場合、仕事や家事などが忙しく、通院をしなくなってしまうことがありますが、通院は必ず継続してください。

後遺障害認定を受けるためには、将来も「回復困難と見込まれる精神的または身体的な障害」である必要があります。そして、受傷直後から継続して通院している場合には、まじめに通院していたにもかかわらず、治らない、つまり、「残存した症状が将来も回復困難」と認められやすくなります。

少なくとも通院期間が1ヶ月以上あいてしまうようなことはしないでください。

(3)後遺障害診断書診断書をきちんと作成してもらう

被害者は、自覚している症状について、具体的かつ正確に、医師に伝えたうえで、医師に後遺障害診断書(※)に記載してもらう必要があります。

※ 「後遺障害診断書」とは、後遺障害等級認定の申請に必要な書類です。後遺障害等級認定の結果を左右する重要な書類となります。

後遺障害等級の認定のためには、自覚症状が、受傷直後から一貫・継続して存在することが必要ですので、「毎回言わなくてもわかるだろう」「勘違いかもしれない」と思ったりせず、具体的な症状を診察の度にしっかり伝える必要があります。

例えば、次のようなことを意識して伝えるようにするとよいでしょう。
具体例
・痛みを感じる場所・頻度
・どのようなときに特に痛みを感じるのか
・しびれを感じる場所
・めまいの有無
・どのような時に特にめまいを感じるのか
・耳鳴りの有無 など
自分の身体の自覚症状について一番わかるのは自分自身ですので、しっかりと医師に伝えるようにします。

(4)被害者請求で後遺障害の申請をする

後遺障害等級認定の申請手続きは「被害者請求」で行うことをおすすめします。

後遺障害等級申請の手続きには、
・ 事前認定:相手方の任意保険会社に後遺障害等級認定手続きを依頼する方法
・ 被害者請求:自分で後遺障害等級認定手続き行う方法
という2つの方法があります。

事前認定と被害者請求の違い、メリット・デメリットは次のとおりです。

目に見えにくい神経症状といった後遺症の場合には、特に、「被害者請求」によって後遺障害の申請を行うべきでしょう。
「被害者請求」は、被害者自身が後遺症に関するレントゲンやMRIの画像や診断書を集めて、提出しなければならないという手間はかかりますが、被害者にとって有利となる資料を提出することが可能で、適切な後遺障害等級が認定されやすくなります。

交通事故による手足のしびれで慰謝料はどうなる?

交通事故による手足のしびれ(末梢神経障害)が後遺障害として認定されると、加害者に対し、後遺症慰謝料を請求することができるようになります。

後遺症慰謝料の金額(相場)を決める基準には、次の3つがあります。
• 自賠責の基準……自動車損害賠償保障法(自賠法)で定められた、必要最低限の賠償基準
• 任意保険の基準……各保険会社が独自に定めた賠償基準
• 弁護士の基準……弁護士が、加害者との示談交渉や裁判で用いる賠償基準(「裁判所の基準」ともいいます)
どの基準を用いるかによって慰謝料の額が変わります。
3つの基準を金額の小さい順に並べると、一般的に次のようになります。
後遺障害12級または14級が認定された場合の後遺症慰謝料(目安)を、自賠責の基準と弁護士の基準で比べてみると、下の表のようになります。
後遺障害12級 後遺障害14級
自賠責の基準 94万円 32万円
弁護士の基準 290万円 110万円
(2020年4月1日以降に起きた事故の場合で、ご自身に過失がない場合)

12級・14級いずれの場合にも、弁護士の基準(目安)のほうが自賠責の基準(目安)よりも3倍以上の金額になることがお分かりでしょう。慰謝料の算定には基本的に、弁護士の基準の利用がおすすめになります。ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、加害者側になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。

弁護士の基準を利用して算定した慰謝料を請求するためには、弁護士への依頼がおすすめです。
被害者が、自分自身(または示談交渉代行サービス)で示談交渉を行うと、加害者側の保険会社は、自賠責の基準や任意保険の基準を用いた低い金額を提示してくるのが通常です。これに対し、弁護士が被害者の代理人として交渉する場合、金額の最も高くなりやすい弁護士の基準を使うことになります。

また、弁護士に交通事故の解決を依頼すると、次のようなメリットも得られます。
• 加害者との示談交渉において、法的な知識不足によって不利益を被る心配がない
• 被害者請求で行う場合、弁護士に依頼すれば、弁護士が、本人の代わりに後遺障害認定を目指して必要な書類を入手し、内容をチェックすることができる(その結果、後遺障害認定される可能性を高めることができる)
• 加害者側保険会社との面倒な交渉について弁護士に丸投げし、治療に専念できる

交通事故による手足のしびれで逸失利益も請求できる

交通事故による手足のしびれが後遺障害として認定されると、加害者に対して逸失利益を請求することができます。

「逸失利益」とは、後遺障害によって得られなくなった将来の利益のことをいいます。
例えば、ピアニストとして生計を立てている人が、交通事故による手のしびれのためピアニストとしての仕事ができなくなってしまった場合、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入をいいます。

【まとめ】手足のしびれは後遺障害12級・14級に認定される可能性|認定のためには4つのポイントに注意

今回の記事のまとめは次のとおりです。
  • 手足のしびれについて考えられる主な原因
1.むち打ち症
2.椎間板ヘルニア
3.胸郭出口症候群
4.脊髄損傷
5.外傷性脳損傷
  • 手足のしびれが残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級
・ 後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
⇒自覚症状の他に他覚的所見(検査結果など客観的な資料に基づく医師の判断)があること
・ 後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの
⇒医学的な説明(事故によって生じた症状が一貫していることなど)ができること
  • 手足のしびれで後遺障害認定を受けるための4つのポイント
1. 交通事故直後に精密検査を受ける
2. 少しよくなったとしても通院は継続する
3. 後遺障害診断書診断書をきちんと作成してもらう
4. 被害者請求で後遺障害の申請をする
  • 後遺症慰謝料の金額の目安
・後遺障害12級13号:290万円(自賠責の基準の場合94万円)
・後遺障害14級9号:110万円(自賠責の基準の場合32万円)
その他、交通事故の賠償金を請求される方がよくされる質問についてこちらにまとめておりますので、こちらをご覧ください。
後遺障害が認定されるかどうかは、加害者に対して後遺症慰謝料や逸失利益を請求できるかどうかに関わるため、非常に切実な問題です。
手足のしびれが後遺障害に認定されるためには、適切な治療・検査の受け方、後遺障害診断書の書き方にも工夫が必要です。また、後遺障害に認定された後、加害者側との示談交渉を弁護士に依頼すれば、賠償額を増額できる可能性が高まります。

交通事故被害による手足のしびれでお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修弁護士

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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