交通事故の治療費が打ち切りになる?自費通院を回避する方法を弁護士が解説

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    作成日

    2023/05/19

  • 更新日

    更新日

    2023/05/22

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目次

交通事故の治療費が打ち切りになる?自費通院を回避する方法を弁護士が解説
交通事故によるケガの治療費は、通常加害者側の任意保険会社に支払ってもらうことができます。
しかし、治療期間が長期間にわたると、任意保険会社が、「治療費の支払いを打ち切ります。今後の治療費は支払いません」と言ってくることがあります。
このように治療費の打ち切りを打診されて、今後どうすればよいのか困っている被害者は少なくありません。
そこで、今回の記事では、治療費を支払ってもらえる仕組みや、治療費の打ち切りを打診されるケース、治療費の打ち切りを打診された場合の対処方法などについて、弁護士が解説します。

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交通事故の治療費の打ち切りとは

交通事故に遭ってケガをした被害者は、不法行為に基づく損害賠償請求として、ケガの治療に要した治療費など、ケガによって生じた損害について加害者に請求することができます。
通常、加害者は自賠責保険の他に、任意で自動車保険に加入していますので、被害者は、加害者が加入する任意保険から治療費を受け取ることになります。
実際には、被害者が治療費を支払うことなく治療を受けて、保険会社が直接医療機関へ治療費を支払う形になります。これを、「一括対応」といいます。
交通事故の状況や過失割合に争いがある場合には、任意保険会社が一括対応をせずに、治療費を支払ってくれないことがあります。その場合には、被害者がいったん自身で立替払いして、後で、自賠責保険や任意保険会社に支払いを請求します。
被害者の立場からすれば、治療して効果が感じられる限りは、きちんと治療費を支払ってほしいと考えるのは当然のことです。
しかしながら、あまり重くないケガで治療に長期間かかっている場合などでは、任意保険会社から、「治療費の打ち切りをします。今後の治療費は支払いません」と言われ、治療費を打ち切られてしまうことがあります。

(1)治療費が打ち切りになると自費で通院することになる

このように、任意保険会社から医療機関に支払われていた治療費について、今後の支払いを拒否されて支払われなくなることがあり、これを「治療費の打ち切り」といいます。
治療費が打ち切られてしまうと、被害者は、治療費を自費で支払って治療せざるを得なくなります。

(2)保険会社による打ち切りには目安がある

ケガは、治療により完治すればよいのですが、残念ながら後遺症が残る場合があります。
あるときを境に、いくら治療を続けても痛みが変わらないなど、治療の効果が感じられなくなってしまうことがあるのです。
このような状態を、「症状固定」といいます。
医学上一般に認められた治療を行っても、これ以上の効果が期待できない、残存した症状の回復・改善が期待できなくなった状態になると、医師は、「症状固定」と判断し、残った症状は後遺症と考えるのです。
保険会社が支払う治療費は、ケガが完治するまで又はこの症状固定までに治療した分のみであり、症状固定後に発生する治療費は原則として自己負担となります。
ケガの部位や程度などによって、任意保険会社には、ケガが完治した又は症状固定したと考えて、治療費の打ち切りを打診する一応の目安があるようです。
打ち切りの目安は、打撲であれば1ヶ月程度、軽いむち打ち症は3ヶ月程度、骨折6ヶ月程度と言われています。
なお、後遺症については、別途後遺症慰謝料や逸失利益として、損害賠償を受けることになります。

「一括対応」とは

交通事故でケガをした被害者に支払われる治療費に対する補償は、自賠責保険と任意保険の二階建て構造となっており、被害者はいずれの保険会社に対しても支払いを請求することができます。
しかしながら、通常は、任意保険会社が被害者の治療費を支払っています。
これは、任意保険会社が、まず医療費を医療機関に対して全額支払い、後で自賠責保険が補填すべき分について自賠責保険に対して請求するという形をとっているためです。
このように、交通事故の加害者側の任意保険会社が、自賠責保険と任意保険の賠償金を一括して取り扱い、被害者に対して支払いを行うサービスのことを「一括対応」といいます。

(1)交通事故の治療費は任意保険会社から医療機関に直接支払われる

この任意保険会社の一括対応というサービスにより、被害者は、病院で治療のたびに治療費を支払う必要がないというメリットがあります。
ケガにより収入を失い、経済的な事情で治療費が支払えず必要な治療ができなくなる事態が生じることを防ぐために、実務上生まれた仕組みです。

(2)一括対応してもらうために

一括払いのサービスを受けるためには、任意保険会社が提示する個人情報に関する同意書に署名する必要があります。
この結果、任意保険会社は個人情報である治療の内容や治療経過、既往症などを知ることができ、診断書や診療報酬明細書を受け取ることができますが、治療費を支払う根拠として必要な情報ですので、やむを得ないことです。
任意保険会社は、診療報酬明細書に記載された金額、傷病名、症状経過、検査、治療日数等の情報に従って、治療費の支払いをします。

(3)一括対応には法的な義務はない

本来であれば、被害者自身が治療費を負担して、事後的に、加害者に対して治療費などかかった損害について損害賠償請求をして賠償金を受け取るという形をとります。
しかしながら、被害者の負担を考慮して、実務上、治療費などについては、任意保険会社が一括対応により医療機関に対して直接支払うというサービスが行われるようになりました。
したがって、任意保険会社には、治療費を一括対応して支払うべき法的義務はありません。
つまり、任意保険会社は、一括対応を継続するのも、一括対応をやめて治療費の支払いを打ち切るのも、自由に判断することができます。

交通事故の治療費の打ち切りで自費通院を避ける方法

任意保険会社から治療費の支払いを打ち切られたとしても、治療の必要性や症状固定の有無を判断するのは医師ですので、治療をやめなければならないわけではありません。
むしろ、医師が必要だと考える限り、治療を継続する必要があります。
そのため、治療費の支払いを打ち切られた後であっても、健康保険などを利用して自費で治療を継続する被害者は少なくありません。
打ち切り後の自費負担分の治療費については、交通事故による損害と認められれば、任意保険会社と示談が成立した後や訴訟を提起して賠償金額が確定した後に、任意保険会社が負担します。
しかしながら、治療費の自費負担は高額になることもありますので、できれば任意保険会社に一括対応を継続してもらいたいところです。
そこで、完治又は医師による症状固定の判断まで、治療費の打ち切りを避けるための方法を紹介します。

(1)任意保険会社からの打ち切りの申し出を受けない

任意保険会社が一括対応をやめて治療費の打ち切りをしたい場合、「通常かかる治療期間は終わった」「症状固定と考えます」などと言って、打ち切りの打診をしてきます。
任意保険会社から打ち切りを打診されても、すぐにその申し出を受けないようにしましょう。
ただし、被害者本人が「まだ治療が必要だ」と反論しても、主観的な判断にすぎず任意保険会社はその根拠を確認できませんので、治療費の支払いを継続してもらうには不十分です。
本人が治療の効果を感じている場合には、医師に対して、現在の症状や治療の効果を感じていることを説明し、治療の必要性や症状固定の有無について相談することが大切です。
そのうえで、医師が「治療の必要性あり」「症状固定はまだ先」と診断した場合には、任意保険会社に対して、医師の意見を根拠に「まだ治療が必要である」旨を明確に伝えるようにしましょう。
その結果、任意保険会社が治療費の支払いを継続してくれることがあります。

(2)弁護士に任意保険会社との延長交渉を依頼する

医師が「症状固定の状態には至っていない」と判断しても、任意保険会社が独自に症状固定に至ったとして、早期に治療打ち切りを進めるケースもあります。
しかし、症状固定に至るまでは、原則として、治療費の全額を保険会社に請求することができます。そこで、交通事故に強い弁護士に任意保険会社との交渉を依頼して、代わりに話し合ってもらう方法もあります。
弁護士は、医師から必要な情報を聞き、診断書の作成を依頼したりすることができますし、また、任意保険会社に対して治療が必要な根拠を示して一括払いを継続するよう交渉することができます。
その結果、任意保険会社が治療費の支払いを継続してくれることがあります。

(3)病状固定と診断されたら、後遺障害認定を申請する

医師から症状固定の診断を受けると、通常保険会社の一括支払いによる治療費負担は打ち切られますので、それ以後通院して治療を受けたとしても、治療費を負担してもらえることはありません。
そこで、症状固定の診断を受けたら、後遺障害の等級認定の申請を行います。
後遺障害認定を受けると、後遺障害分の損害として、後遺症慰謝料及び逸失利益の賠償を請求することができます。

(3-1)後遺障害認定とは

症状固定後に残存した後遺症について、自賠責保険は、第1~14級までの等級に類型化し、等級が認定された後遺症について特に「後遺障害」と呼び、後遺症慰謝料などの支払いをすることとしています。
等級に該当しないとされた後遺症については、基本的に任意保険会社も後遺症慰謝料などの損害賠償を行いませんので、後遺障害に認定されることが非常に重要になります。

(3-2)後遺障害認定の申請は弁護士への依頼がおすすめ

後遺障害認定の手続きは、次の二つの方法があります。
適切な後遺障害認定を受けるには、それぞれの等級の認定要件を満たすことについて根拠をもって説得的に示す必要がありますので、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。
弁護士に依頼すれば、被害者請求の手続きをとることが多いと思いますが、事情によっては、事前認定で保険会社を通じて手続きを取ることもあります。
1. 被害者請求 被害者自身が、病院からケガについての画像等(レントゲン写真、CT、MRI等)や、医師記載の後遺障害診断書を、加害者が加入している自賠責保険会社に提出する方法です。
メリットは、自分で資料を準備することで、資料を確認して選別し、納得のいくものを提出することができる点にあります。
また、後遺障害に認定されれば、自賠責保険から直接、速やかに保険金を受け取ることができます。
ただ、審査には時間がかかります。むち打ち症の場合には、平均して2~3ヶ月程度、それ以外の場合には半年以上かかる場合もあります。
症状固定の診断を受けたら、早めに資料を準備して請求するとよいでしょう。
2. 事前認定
加害者の任意保険会社に後遺障害診断書を提出し、認定の手続きを依頼する方法です。
メリットは、本人の負担が少ないことです。
本人は、医師に書いてもらった後遺障害診断書を準備するだけでよく、病院から他の資料を集める必要はありません。
しかしながら、デメリットもあります。任意保険会社は損害賠償金を支払う側であり、被害者とは基本的に利害が対立します。
そのため、任意保険会社が、被害者にとって利益となる資料(後遺障害等級認定が重くなるような資料)を積極的に収集してくれることは、あまり期待できません。
また、審査の結果、後遺障害に認定されても、すぐには賠償金を受け取ることができません。示談できれば示談後に、訴訟で争った場合には判決確定後に、任意保険会社から支払いを受けることになりますので、被害者請求よりも遅くなります。

(4)打ち切り後の治療費を請求する

治療費の打ち切り後も自費で通院治療し、後に症状固定と診断された場合には、任意保険会社に対して、症状固定日までの未払いの治療費を支払うよう求めましょう。
任意保険会社との交渉により、打ち切り後の治療費も交通事故による損害であるとされて示談が成立すると、症状固定日までの治療費が支払われます。
保険会社が支払いに応じない場合には、裁判所に未払いの治療費を含めた損害賠償を請求する訴訟を提起して、最終的に裁判所に症状固定日や賠償額を判断してもらうことになります。

【まとめ】交通事故の治療費打ち切りや自費通院回避の相談は弁護士へ

任意保険会社は、一括対応のサービスを行って治療費を支払ってくれることが多いのですが、治療期間が長くなると、この治療費の支払いを打ち切られてしまうことがあります。
打ち切りを避けたいときには、任意保険会社からの申し出をそのまま受けず、主治医に相談するようにしましょう。
交通事故の被害者は、治療費だけでなく、仕事ができなくて収入が減った分は補償してもらえるのか、後遺障害が残って働けなくなったときはどんな補償が受けられるのかなど、不安になることも多いです。
交通事故被害によるお怪我をしてお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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この記事の監修弁護士

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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