交通事故で骨盤骨が変形してしまった場合には、変形の程度に応じて、後遺障害8級、10級11級、12級、14級の等級に認定される可能性があります。そして、等級に応じて、次の後遺症慰謝料(相場)を受けとれる可能性があります(弁護士の基準による)。
- 後遺障害8級:830万円
- 後遺障害10級:550万円
- 後遺障害11級:420万円
- 後遺障害12級:290万円
- 後遺障害14級:110万円
ただ、これはあくまでも目安の金額であって必ずこの金額が受けとれるわけではありません。
実は、保険会社が提示する慰謝料額は、これよりも低い金額であるなど、弁護士が適切と考える金額よりも低いことが少なくないのです。
適切な慰謝料を受けとるためには、被害者自身が後遺障害の認定基準や慰謝料の相場についてきちんと理解してし、保険会社に任せたままにしないことがとても大切です。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 後遺障害とは
- 「骨盤骨変形」とは
- 骨盤骨変形で後遺障害等級が認められる基準
- 骨盤骨変形の後遺症慰謝料・逸失利益の相場
- 慰謝料などの賠償金を少しでも多く獲得する方法
岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
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「骨盤骨変形」とは
交通事故で骨盤を骨折するなどし、骨盤骨が変形してしまうことがあります。
ここでは、骨盤骨の範囲と骨盤骨変形の原因について説明します。
(1)「骨盤骨」の範囲とは
交通事故での後遺障害等級の認定においては、左右一対の寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)・仙骨を合わせて「骨盤骨」と扱います(尾骨は除く)。
骨盤骨は、「両足からの力を受け止める」「背骨が支える荷重を両足に伝える」「(女性の場合は)産道」などの機能を有しています。
(2)「骨盤骨変形」の原因
交通事故による骨盤骨変形の原因には、大きく分けて次の2つがあるとされています。
- 骨盤骨折した箇所の癒合の状態が悪かった
- 身体の他の部位に移植するために骨盤骨を採取した
骨盤骨変形で「後遺障害等級」が認定されるには
「後遺障害等級」とは、後遺障害の症状に応じて1~14級に振り分けられたものです。そして、後遺障害等級に応じて、後遺障害に対する慰謝料額(後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償金額)の基準となります。
ただ、ここで知ってほしいことは、骨盤骨変形があれば、必ず後遺障害等級が認定されるわけではありません。後遺障害等級が認定されるためには、次の骨盤骨変形に関して次の症状があることが必要になります。
症状 | 認定される可能性のある後遺障害等級 |
---|---|
1.骨盤骨に著しい変形が残った | 12級5号 |
2.骨盤骨変形がもたらす痛み・しびれ等の神経症状が残った | 12級13号もしくは14級9号 |
3.骨盤骨変形によって、正常分娩が困難になった | 11級10号 |
4.骨盤骨変形によって、股関節の可動域に制限が生じた | 8級7号、10級11号もしくは12級7号 |
後遺障害等級が認められる基準についてくわしく見ていきましょう。
(1)骨盤骨に著しい変形が残った:12級5号
骨盤骨折や腸骨採取などによって骨盤骨に著しい変形が残った場合は、後遺障害12級5号に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
12級5号 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの ⇒「著しい変形」とは裸体になったときに変形していることが明らかにわかるものをいいます。変形がエックス線写真によってはじめて発見しうる程度のものはこれに該当しません。 |
(2)骨盤骨変形がもたらす痛み・しびれ等の神経症状が残った:12級13号・14級9号
骨盤骨変形が原因で痛みやしびれなどの神経症状が残った場合は、後遺障害12級13号もしくは14級9号に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの ⇒自覚症状の他に他覚的所見(検査結果など客観的な資料に基づく医師の判断)があることを要します。 つまり、患者本人が訴える「痛い」「しびれる」といった症状を検査結果や画像などに基づいて医師が客観的に裏付けることが必要になります。 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの ⇒症状を医学的に説明できること(交通事故によって生じた症状が一貫していることなど)を要します。 |
(3)骨盤骨変形によって、正常分娩が困難になった:11級10号
骨盤骨変形により産道が狭くなった場合は、正常な分娩が困難になった場合、後遺障害11級10号が準用され、認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
11級10号 | 腹胸部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの ⇒狭骨盤または比較的狭骨盤(産科的真結合線が10.5cm未満または入口部横径が11.5cm未満のもの)にあたるもの |
(4)骨盤骨変形によって、股関節の可動域に制限が生じた:8級7号・10級11号・12級7号
骨盤骨変形で股関節(足の付け根の関節)の動かせる角度(「可動域」といいます)が影響を受けた場合は、症状に応じて次の後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
8級7号 | 1下肢の3大関節(※)中の1関節の用を廃したもの ⇒股関節が次のいずれかの状態に当てはまる場合をいいます。
|
10級11号 | 1下肢の3大関節(※)中の1関節の機能に著しい障害を残すもの ⇒股関節が次のいずれかの状態に当てはまる場合をいいます。
|
12級7号 | 1下肢の3大関節(※)中の1関節の機能に障害を残すもの ⇒関節の可動域が腱側の可動域角度(正常な側の角度)の4分の3以下に制限されているもの |
骨盤骨変形の後遺症慰謝料の相場とは
交通事故で、骨盤骨変形で後遺障害等級のいずれかに認定されると、交通事故の相手方(加害者)に対して後遺症慰謝料を請求できます。
後遺症慰謝料の相場について知るためには、慰謝料の3つの基準について知っておく必要があります。なぜなら、どの基準を使うかによって慰謝料の金額が大きく変わってくるからです。
慰謝料の3つの基準とは、「自賠責の基準」「任意保険の基準」「弁護士の基準」です。くわしくは、次のとおりです。
算定基準 | 概要 |
---|---|
自賠責の基準 | 自賠責の基準は、自動車保有者が加入を義務付けられている「自賠責保険」で採用されている基準です。 自賠責の基準は被害者への最低限の補償を目的として設けられているので、慰謝料の基準額は基本的に3つの算定基準のうち最も低くなります。 ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、加害者側になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。 |
任意保険の基準 | 任意保険の基準は、各保険会社が独自に設定している非公開の算定基準です。 加害者側の任意保険会社は、通常は任意保険の基準をもとにして慰謝料を提示してきます。基準額は、自賠責の基準と同程度か、やや高い程度であると推測されます。 |
弁護士の基準 | 弁護士の基準は、過去の裁判例をもとに設定された基準です。弁護士に示談交渉を依頼した場合などに使われる算定基準です。 弁護士の基準による慰謝料金額(目安)は3つの算定基準のうちでは基本的に最も高額となります。 |
3つの基準の慰謝料額のイメージを比較すると、一般的に、次のようになります。
この図のように、基本的に、自賠責の基準よりも弁護士の基準の方が高額となりやすい傾向にあります。では、実際の後遺症慰謝料の相場について見ていきましょう。
等級 | 自賠責基準(※) | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級7号 | 331万円 | 830万円 |
10級11号 | 190万円 | 550万円 |
11級10号 | 136万円 | 420万円 |
12級5号・12級7号・12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
この表を見ると、自賠責の基準の相場よりも弁護士の基準の相場の方が高額であることがお分かりになるでしょう。
弁護士の基準を使うには弁護士へ依頼することがおすすめです。
というのも被害者本人が加害者側の保険会社と示談交渉すると、加害者側の保険会社は自賠責の基準や任意保険の基準による低い慰謝料額を提示してくるのが通常です(被害者本人が弁護士の基準で交渉しても通常、応じてくれることは多くはないでしょう)。これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉を行う場合は、基本的には最も高額な弁護士の基準を使いますので、弁護士の基準に近づけた形での示談が期待できます。
弁護士費用特約の補償範囲について詳しくは、こちらをご覧ください。
骨盤骨変形による後遺障害で逸失利益も請求できる
交通事故による骨盤骨の変形で後遺障害が認定されると、加害者に対して逸失利益も請求することができます。
逸失利益とは、後遺障害によって得られなくなった将来の利益のことをいいます。
例えば、タクシードライバーとして生計を立てている人が、交通事故での骨盤骨変形によりドライバーの仕事ができなくなってしまった結果、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入ことをいいます。
後遺障害による逸失利益は、次のように計算します。
- 基礎収入:原則として事故発生前の収入の金額が採用されます。
- 労働能力喪失率:後遺障害により労働能力がどれだけ失われたのか、その割合をいいます。後遺障害等級ごとに目安が定められています。
- ライプニッツ係数:被害者が将来得られたはずの利益を前もって受け取ったことで得られた利益(利息など)を差し引くための数値です。
逸失利益についてさらにくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
骨盤骨変形の賠償金請求は弁護士への相談がおすすめ!
交通事故による骨盤骨変形が後遺症として残った場合には、弁護士への相談がおすすめです。
なぜなら、これまで説明したとおり、弁護士に依頼することで、弁護士の基準を使い、慰謝料の増額が期待できるほか、次の3つのメリットがあるからです。
- 適切な後遺障害等級の認定が受けられる可能性が高い
- 被害者が損をしない形での示談が期待できる
- 弁護士費用特約が利用できれば、弁護士費用の心配がない可能性も
(1)適切な後遺障害等級の認定が受けられる可能性が高い
弁護士に依頼することで、後遺障害等級の認定を受けられる可能性を高めることができます。
そもそも、後遺症があれば、誰でも後遺障害等級の認定を受けることができるわけではありません。後遺障害等級の認定を受けるためには、どのような資料を提出するのか、資料にどのような記載をするかが重要になります。
ここで、知ってほしいことは、後遺障害等級認定の手続は保険会社に任せることも出来ますが、保険会社はあなたのために積極的に動いてくれるわけではありません。そのため、保険会社に任せたままにしておくと、納得のできない後遺障害等級認定結果となってしまう可能性があります。
しかし、交通事故問題に精通した弁護士に依頼すると、後遺障害等級認定の申請のポイントやコツをアドバイスしてくれます。弁護士に依頼をすれば、弁護士が医師の作成した診断書や資料の記載内容をチェックしてくれるでしょう。
弁護士に依頼することで、適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性を高めることができます。
(2)被害者が損をしない形での示談が期待できる
弁護士に依頼することで、被害者が損をしない形での示談が期待できます。
保険会社の提示する示談金は、実は、被害者が損をする形になっていることが多いです。
例えば、これまで説明したとおり、保険会社の基準は弁護士の基準よりも低く、弁護士が交渉すると、賠償金が増額することはよくあります。また、逸失利益の計算で、労働能力喪失率や労働能力喪失期間が被害者に損する形で設定されていることがあります。
その点、弁護士に依頼すれば、過去の裁判例や実務経験に基づき、適正な労働能力喪失率・期間の主張をすることが可能となります。
弁護士に賠償金請求を依頼することで、被害者は賠償金請求を弁護士に任せ、被害者にかかる負担を軽減することができ、さらに被害者にとって損をしない形での示談が期待できます。
(3)弁護士費用特約が利用できれば、弁護士費用の心配がない可能性も
弁護士に依頼すると弁護士費用がかかってしまいます。
しかし、弁護士費用特約を利用できれば、弁護士費用を心配しなくてもよい可能性があります。
「弁護士費用特約」とは、弁護士に相談や依頼する費用を保険会社が代わりに負担する制度のことをいいます(※)。どういうことかというと、あなたに代わって保険会社が弁護士費用を支払ってくれる制度です。
弁護士費用特約を利用するには、被害者や被害者家族が加入している保険に弁護士費用特約がついている必要があります。被害者自身が加入する保険以外にも、ご家族が加入する保険にも弁護士費用特約が付いていないかどうかをチェックしてみましょう。
※保険会社が負担する金額には上限があります(一般的に、弁護士費用は上限額300万円、法律相談費用は上限額10万円程度)。しかし、通常の案件で弁護士費用が上限額を超えることは多くはありません。
弁護士費用特約を使用しても保険料が値上がりする心配や保険の等級が下がるということはありませんので安心してください。
【まとめ】骨盤骨変形は後遺障害8~14級に認定される可能性あり
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 骨盤骨変形により認定される可能性がある後遺障害等級一覧
- 後遺障害8級7号:股関節の用を廃したもの
- 後遺障害10級11号:股関節の機能に著しい障害を残すもの
- 後遺障害11級10号:狭骨盤または比較的狭骨盤にあたるもの
- 後遺障害12級5号:骨盤骨に著しい変形を残すもの
- 後遺障害12級7号:股関節の機能に障害を残すもの
- 後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの
- 骨盤骨変形による慰謝料の相場
- 後遺障害8級:自賠責の基準331万円・弁護士の基準830万円
- 後遺障害10級:自賠責の基準190万円・弁護士の基準550万円
- 後遺障害11級:自賠責の基準136万円・弁護士の基準420万円
- 後遺障害12級:自賠責の基準94万円・弁護士の基準290万円
- 後遺障害14級:自賠責の基準32万円・弁護士の基準110万円
- 骨盤骨変形の賠償金請求について弁護士への依頼をおすすめする理由
- 適切な後遺障害等級の認定が受けられる可能性が高い
- 被害者が損をしない形での示談が期待できる
- 弁護士費用特約が利用できれば、弁護士費用の心配がない可能性も
交通事故のことは保険会社に任せておけばよいと思われているかもしれません。
しかし、実は、保険会社に任せたままにしておくと弁護士が交渉する賠償金額よりも低い金額になっていることがあります。
実際、過去にアディーレ法律事務所に相談された方から「(弁護士に依頼したことで)賠償額が変わった」のとの声をいただいています。少しでも多くの賠償額を受けとりたいとお考えの方は、弁護士への相談をおすすめします。
交通事故の被害による賠償金請求や後遺障害等級認定をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2024年9月時点)
交通事故の被害にあい、加害者側の保険会社に対する賠償金請求や後遺障害等級認定でお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。