交通事故で賠償金請求は、基本的に、示談交渉ですすめられることになります。しかし、示談交渉がまとまらない場合には、交通事故裁判となることがあります。
もっとも、いざ交通事故裁判となると、
「交通事故裁判は、どのような流れになる?」
「どれくらい費用がかかる?」
など、裁判に対して、知りたいことがたくさん出てきますよね。
裁判は、訴状を出すことではじまり、その後は月に一度程度のペースで開かれ、和解もしくは判決という形で終了することが一般的です。
そして裁判をする場合、裁判所に対して払う費用や、(裁判を弁護士に依頼する場合は)弁護士に払う費用も発生します。
示談は互いが納得しない限り解決には至らないのに対し、裁判は最終的には裁判官に判断を委ねることになるため、たとえ相手方が納得していない場合であっても、解決することが可能です。
また、裁判をすることで示談交渉時よりも、もらえる賠償額を増やせることもあります。
交通事故裁判を起こす前に、交通事故裁判の流れや費用、ポイントについて知っておきましょう。
この記事では、交通事故の賠償について裁判を起こした場合の
- 裁判の解決事例
- 裁判の流れ
- 裁判にかかる費用
- 裁判のメリット、デメリット
- 裁判の解決事例
について、弁護士が解説します。

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
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交通事故裁判の解決事例
まず、裁判の具体的なイメージを持っていただくために、実際にあった交通事故の民事裁判の解決事例をいくつかご紹介しましょう。
(1)死亡逸失利益で画期的な判決!賠償金は6300万円以上に増額成功
【Uさん(女性・40歳・会社員・仮名)のケース】
私の妻であるUは、乗用車を運転していたところ、対向車線を走行していた乗用車がセンターラインをオーバーし、正面衝突される交通事故の被害にあいました。この事故で、Uは脳損傷を負い、すぐに搬送先の病院で手術を受けましたが、意識が戻ることはなく、翌日に亡くなりました。
その後、私は、加害者側の保険会社から示談金の提示を受けましたが、それが適正な金額であるかどうかがわからず、交通事故の被害に詳しい弁護士に示談交渉を依頼することにました。
依頼後、弁護士はすぐに相手方の保険会社と増額交渉を開始してくれましたが、保険会社は交渉に消極的でした。特に、死亡逸失利益(Uが生きていれば将来得ていたはずの収入)の金額について弁護士の考えと大きな差がありました。
弁護士と加害者側の保険会社の金額に関する具体的な話し合いはなかなか進むことはなく、加害者側の保険会会社から「交渉を打ち切りにしたい」との回答をされました。
示談交渉が打ち切りとなったことから、弁護士とも相談し、私は子供と一緒に、加害者側に対して損害賠償を請求する裁判を起こすことにしました。
裁判では、死亡逸失利益の生活控除率(Uが生きていれば将来かかったはずの生活費を逸失利益から差し引くこと)が最大の争点となりました。
保険会社は、私たち夫婦が共働きでUが仕事を辞める予定もなかったことから、Uが家族の生計を支えていたとし、一家の支柱が死亡した際の基準となる生活費控除率40%を主張してきました。
一方、弁護士は、現代では夫婦共働きが一般的で、一人親が働いて生活することを前提とした基準は適切ではなく、共働きの家庭に適した生活費控除率が認められるべきだとして、生活控除率40%は適切ではないと反論しました。
その結果、裁判官は、私とUのどちらが生計の柱とも言い難いことから、生活控除率を35%とするべきであるという判断を下し、死亡逸失利益は5900万円以上、死亡慰謝料は2700万円となり、私と子供の二人に対して、総額6300万円以上の賠償金が支払われる判決が下されました。
(2)綿密な調査にもとづく主張で賠償額が3倍に増額
【Cさん(男性・24歳・会社員・仮名)のケース】
私は、交通事故で左鎖骨骨折、顔面挫創、急性硬膜下血腫という重いケガを負い、後遺障害7級の認定を受けました。
その後、加害者側の保険会社との示談交渉で示談金の提示を受けましたが、提示された金額(約2250万円)に納得がいかず、弁護士に依頼することにしました。
弁護士が保険会社と協議をしたところ、弁護士と保険会社の主張の開きが大きく、その主張の開きを埋めることが極めて困難だと思われました。
そのため、弁護士とも相談して、私は示談交渉を早期に打ち切り裁判を起こすことにしました。
裁判では、保険会社側から、私が事故後に職場復帰を果たし、就労を続けていることから、7級の認定は不相当であるとの主張が出てくることが予想されました。
そこで、弁護士は、事故前後の私の就労状況の変化や職場の就業サポート体制について、職場の方々の協力を得て証拠化を進めるなど、私の現状を正確に伝えるための事前調査を重ね、就労は周りのサポートがあってこそであって、7級の認定が不相当とはいえないことを主張しました。
その結果、裁判所より和解の提案がなされ、最終的にほぼ私の主張どおりの賠償(約7000万円)を受けることができました。
(3)弁護士による示談交渉→裁判の2ステップで賠償額がさらに増額
【Tさん(男性・43歳・会社員・仮名)のケース】
私は、赤色信号のため交差点の手前で停車中、前方不注意の車両に後方から激しく追突されるという事故にあいました。その後、自宅近くの整形外科や接骨院に約8ヶ月間通院しましたが、頭部の痛みや両足のしびれといった後遺症が残ってしまい、それぞれ14級9号の後遺障害等級が認定されました。
加害者側の保険会社から示談金額が提示されましたが、その示談金額は、入通院慰謝料と後遺症慰謝料・逸失利益合わせて135万円というものでした。
私は、この金額は妥当なものかよく分からず、自分で交渉するのも不安だったため、弁護士に交渉を依頼することにしました。
依頼後、弁護士は、約4ヶ月間にわたり、保険会社と粘り強く交渉を重ねてくれました。その結果、保険会社からは、入通院慰謝料については弁護士基準(裁判をしたら認められる基準)の8割前後まで、後遺症慰謝料・逸失利益についても6割程度まで、それぞれ増額を認めさせることができました。しかし、保険会社は「これ以上は一切譲歩しない」という姿勢を見せてきたのです。
そこで弁護士から、この金額で納得するか、それともこれ以上の賠償を得るために裁判を起こすか、それぞれのメリットとデメリットについて説明してもらいました。私は、弁護士の話を聞き、裁判を起こすことに決めました。
裁判を起こしてから約半年が経ったころ、裁判所から和解案が提示されました。提示された和解案は入通院慰謝料が弁護士基準の9割以上、後遺症慰謝料・逸失利益が満額、というもので、結果的に、当初保険会社が提示してきた額(約330万円)から約155万円もアップした約485万円を賠償金の総額とするものでした。
私は和解案に十分に納得し、相手の保険会社も諦めて承諾し、和解成立となりました。
交通事故裁判になりやすい4つのケース
交通事故による賠償問題の多くは、示談交渉やADRの利用によって解決していますが、中にはそれらの手段で解決できずに裁判になりやすいケースがあります。
交通事故の被害を受けたとき、裁判になりやすいケースを4つご紹介しましょう。
- 示談交渉が決裂して当事者間で決着がつかないケース
- 損害賠償を大きく増額できる可能性があるケース
- 後遺障害の等級認定に不満があるケース
- 過失のある被害者に、人身傷害保険が付帯しているケース
それぞれ説明します。
(1)示談交渉が決裂して当事者間で決着がつかないケース
加害者側の示談交渉が決裂して、当事者間では決着がつかない場合には、裁判となりやすいです。
通常、交通事故で被害を負った場合、まずは当事者どうしで(通常は、被害者と加害者側の保険会社との間で)賠償に関する示談交渉を行います。もっとも、被害者と加害者側の主張に大きな開きがある場合やこちらの証拠が揃っているのに、こちらの主張を頑なに認めないケースなど納得のいく結論にならないことがあります。
こういった場合には、裁判を起こして裁判官に判断を仰ぐことが有効です。
なぜなら、示談交渉の際に合意できないと言っていた条件でも、裁判で出た判決には従わなければならないからです。
つまり、裁判は相手方との合意がなくても紛争を解決できる手段なのです。
なお、当事者どうしの交渉のみでは折り合いが付かない場合、ADRという方法もあります。
ADRとは、Alternative(代替的)Dispute(紛争)Resolution(解決)の略で、裁判外紛争解決手続ともいいます。
ADRには、第三者が間に入って当事者どうしの話し合いを円滑にする「あっせん」や「調停」、仲裁人が解決内容を判断する「仲裁」の3種類があります。
実際には、交通事故紛争処理センターによる和解あっせんや、裁判所による調停が多く利用されます。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
(2)損害賠償を大きく増額できる可能性があるケース
示談交渉ではなく裁判とすることで賠償金額を大きく増額でき可能性がある場合、裁判となりやすいです。
そもそも、交通事故における後遺障害慰謝料など、賠償金を算出する基準が3つあります。
算定基準 | 基準の内容 |
自賠責の基準 | 自賠責保険により定められている賠償基準です。必要最低限の救済を行うことを目的としており、一般的に支払額は3つの基準の中でもっとも低く設定されています。ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、過失が70%以上になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。 |
任意保険の基準 | 各損害保険会社が定めている自社独自の支払基準です。一般的に自賠責の基準以上ではありますが、弁護士の基準と比べると、かなり低く設定されています。 |
弁護士の基準(裁判所の基準) | これまでの裁判所の判断の積み重ねにより認められてきた賠償額を目安として基準化したものです。裁判所の基準とも呼ばれます。一般的に、自賠責の基準や任意保険の基準と比べて高額になります。 |
3つの基準を金額の順に並べると、一般的に次のようになります(一部例外もあります)。

賠償金の金額について、被害者が自分自身(または自身が加入している保険会社の示談代行サービス)で相手方と示談交渉を行うと、相手方の保険会社は、自賠責の基準や任意保険の基準を用いた低い金額を提示し、話をまとめようとしてくることがあります。
これに対し、被害者に代わって弁護士が示談交渉や裁判を行う場合は、通常最も高額な弁護士基準が用いられることが一般的です。
なお、示談の場合は、遅延損害金をもらえることはほぼありませんが、裁判で勝訴すれば「遅延損害金」(=支払いが遅れたことのペナルティーとしての金銭)を受け取ることができます。
弁護士に依頼することで賠償金が増額される可能性について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
(3)後遺障害の等級認定に不満があるケース
後遺障害の等級認定に不満があるケースでも裁判になりやすいです。
というのも、自賠責後遺障害等級は、自賠責保険の損害調査事務所で審査され認定されます。
自賠責保険は、全国の多数の事件について、公平かつ迅速に審査を行う関係上、その審査基準は硬直的で画一的になっていますので、どうしてもある程度の取りこぼしは生じます。
激しい事故で、重大な後遺障害が明らかに残存しているのに、自賠責保険の審査基準があまりにも画一的で硬直的なために、適切な後遺障害等級が認定されないような場合には、証拠を集めて裁判所に訴えて、裁判所による総合判断で適切な後遺障害等級の認定と、その認定等級に基づく損害の賠償を求めることができます。
よくあるのは、
- 労災保険の認定等級と自賠責保険の認定等級に差がある場合
- MRI画像所見のない、高次脳機能障害、外傷性てんかん、脊髄損傷の場合
- 20年前にむち打ち14級の認定があるために同じ14級の認定が受けられなかった場合
などです。
(4)過失のある被害者に、人身傷害保険が付帯しているケース
過失のある被害者に人身傷害保険が付帯しているケースでも裁判になりやすいです。
まず、人身傷害保険は、加害者が正当な損害を支払わない場合や、不注意で加害者側になってしまった場合に使える、自分や家族の人身損害のための損害保険です。
そして、人身傷害保険が付帯している場合には、自分の側に運転上の不注意があったため、自分や家族のケガの損害について過失割合で減額されてしまう場合にも、その減額分を人身傷害保険の保険金で充当することで、加害者側の支払分と合わせて損害の100%の賠償を受けることができます(いわゆる人身傷害保険の「訴訟基準差額説」:最高裁判決平成24年2月20日(民集66巻2号742頁、判時2145号103頁)。
ただし、このような過失分への人身傷害保険の充当と支払は、「訴訟での判決」、「訴訟上の和解」または「調停」でないと、約款上認められません(保険会社ごとに、約款は微妙に違っていますので、確認が必要です)。
被害者側の損害と過失割合がそれなりに大きく、過失で減額される金額が100万~200万円を超えているような場合は、訴訟する価値が出てくることが多いようです。
被害者が知っておくべき3つの裁判の基礎知識

交通事故の被害者が知っておくべき交通事故裁判の基礎知識は、次の3つです。
- 交通事故の被害者は、金銭賠償を求める民事裁判を起こせる
- 弁護士なしで裁判にのぞむこともできる
- 賠償金の支払を求める判決が確定すると、加害者は賠償金を支払う義務が生じる
それぞれ説明します。
(1)交通事故の被害者は、金銭賠償を求める民事裁判を起こせる
交通事故の被害者が加害者に直接問うことができるのは民事責任(金銭の賠償責任)のみです。
まず、交通事故の加害者が問われる責任は次の3つです。
- 刑事責任:刑罰を受ける(道路交通法違反、危険運転致死傷罪など)
- 民事責任:金銭で損害を賠償する(民法、自動車損害賠償法)
- 行政責任:運転免許の取消しなどを受ける
これら3つの責任はそれぞれ独立しており、例えば加害者が刑罰を受けたら、加害者は被害者に必ず賠償金を支払わなければならない、ということにはなりません。
そして、民事裁判には、次の特徴があります。
- 訴訟のための費用が必要(弁護士費用とは別に)
- 原則として手続きが公開される(誰でも自由に傍聴できる)
- 判決が確定したら双方が従わなければならない
- 裁判の途中で裁判所が和解案を提示してくることもある
(2)弁護士なしで裁判にのぞむこともできる
日本では、弁護士に依頼せずに、当事者本人だけで裁判にのぞむことができます(これを「本人訴訟」といいます)。
もっとも、本人訴訟であれば、弁護士費用を支払わなくて済みますが、よほどの法律知識がない限り、弁護士のサポートを受けずに裁判にのぞむことは難しいです。
というのも、法律上の根拠に基づく主張ができなかったり、手続きにうまく対応できなかったりすると、敗訴となるリスクが高まってしまうからです。
(3)賠償金の支払を求める判決が確定すると、加害者は賠償金を支払う義務が生じる
「加害者は被害者に対して〇〇円を支払え」というような判決が確定した場合、加害者は被害者に対して賠償金を支払う義務が生じます。
この「支払う義務」とは、裁判所が加害者から賠償金を取り立ててくれるという意味ではありません。加害者が被害者に賠償金を支払わない場合には、被害者は加害者の財産を差し押さえるための手続きを申し立てることが必要です。
なお、交通事故裁判では、遅延損害金(賠償金の支払いが遅滞した場合に支払うお金)も請求することができます。
交通事故裁判の流れ
次に、交通事故裁判の流れについて見ていきましょう。
交通事故の裁判の流れは、一般的に次のようになります。
【交通事故裁判の流れ】

(1)訴状の提出
まず、裁判を起こす側(「原告」といいます)が、裁判所に訴状(請求したいことを記載した書類)を提出することからスタートします。
裁判所に訴状が提出されると、裁判所から裁判を起こされた側(「被告」といいます)のもとに訴状の写しが送付されます。
被告は、「訴状の内容を認めるか、反論するか」を記載した答弁書を提出します。
(2)口頭弁論
被告が答弁書を提出した後、「第1回口頭弁論」が行われます。
「口頭弁論」とは、いわゆる皆さんがイメージする裁判になります。法廷に裁判官・原告・被告が一堂に集まり、話しをすることになります。
実務上では、第一回目の口頭弁論は、被告は出廷せずに、原告のみ出廷し、裁判官に対し、訴状の内容をそのまま述べるだけのケースが多いです。
その後の口頭弁論は約1ヶ月に一度のペースで行われるのが一般的です。
口頭弁論では、原告・被告がそれぞれ裁判所に出向き、主張・反論を行います。期日の日までに、前もって主張・反論を記した書面(「準備書面」といいます)と証拠を提出します。
なお、口頭弁論は公開の法廷で行いますが、「弁論準備」と言って、裁判所の小さな会議室で、非公開で書面をやり取りすることもあります。弁論準備期日は、電話会議の形式で行うこともできます。リモート会議システムを使うこともあります。

(3)和解勧告・和解協議
民事裁判では、裁判の途中で裁判官が和解を提案してくることがあります(これを、「和解勧告」または「和解の勧試」といいます)。和解勧告のタイミングは、個々のケースにより異なりますが、主な主張・立証が完了したタイミングで行われることが多いです。
和解案が提案されると、当事者双方が和解案について話し合いをします。その結果、当事者双方が和解に至ることができれば和解が成立し、裁判は終了します。
なお、交通事故の事件に限って見ると、2018年に全国の地方裁判所に提起された交通事故訴訟のうち、判決により終了した事件は約20.1%、和解により終了した事件は74.9%と、和解で終了する割合は高くなっています(裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第8回)資料2-1-1より)。
<コラム> 和解であっても、判決と同じ効力がある!?
裁判上で和解が成立すると、「和解調書」を作成することになります。
和解調書には、判決と同じく強制執行力があります。これにより、相手方が和解調書に記載された合意内容を守らず支払いをしてこない場合は、預金や給料などを差し押さえる手続きを取ることができます。
和解のメリット、デメリットについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
(4)証人尋問・本人尋問
和解が成立しなかった場合、証人尋問や本人尋問が行われる流れとなることが一般的です。
※尋問をする前に、対象となる証人や本人は、尋問で立証したい事実を「陳述書」として提出します。
- 証人尋問:事故の目撃者や治療を担当した医師などが出廷して、質問に答える
- 本人尋問:原告本人、被告本人が質問に答える
尋問では、尋問を申請した側からの「主尋問」と、相手側からの「反対尋問」が交互に行われます。双方の尋問のあと、裁判官からも尋ねたいことがあった場合には「補充質問」がされます。
交通事故裁判の尋問が不安です……。どのようなことが聞かれるのでしょうか?
交通事故の民事裁判の尋問では、それぞれ次のような内容について尋問することが多いといえます。
- 原告本人(被害者):1.事故の状況(過失割合)、2.被害の状況(損害額)
- 被告本人(加害者):1.事故の状況(過失割合)
原告被告以外の証人が呼ばれることはあまりありません。
(5)判決
尋問の後で再び和解の提案がある場合もありますが、それでも和解できなければ、最終的に判決が下されます。
なお、2018年における全国の交通事故裁判(第一審)の平均審理期間は12.4ヶ月となっています(裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第8回)資料2-2-1より)。
(6)控訴・上告
判決に納得がいかなければ、不服申立てをすることができます。
第一審の判決に対する不服申立てを「控訴」、第二審の判決に対する不服申立てを「上告」といいます(ただし、上告できるのは憲法違反・法令違反・判例違反・重大な事実誤認などの場合に限られます)。
これらの場合、新たな証拠を準備したり、戦略を練り直したりした上で、次の審理にのぞむことになります。
なお、第二審で和解することもできます。(民事裁判の場合、判決書の送達または受領から14日以内に控訴状(または上告状)を提出することが必要です。印紙も必要です)。
(7)判決の確定
控訴・上告がなければ、判決が確定し、裁判は終了します。
交通事故裁判にかかる費用
ここで、裁判にかかる費用についても見ておきましょう。
裁判にかかる費用については、主に次の2つがあります。
- 裁判所に対して納める費用
- 弁護士費用
それぞれ説明します。
(1) 裁判所に対して納める費用
裁判所に対する費用は、訴訟を起こす側が負担する必要があります。
裁判所に対して納める費用としては大きく3つのものがあります。
- 手数料
- 相手方などに書類を送る郵送費
- (必要な場合)鑑定費用
説明します。
(1-1)手数料
まず、訴えを提起するためには、裁判所に対して手数料を納める必要があります。
手数料は、訴状に収入印紙を貼ることによって納めます。
金額は、相手方への請求額(「訴額」といいます)によって変わります。
訴訟提起をする場合に、裁判所に対して納める手数料は次のとおりです(2021年9月現在)。
相手方への請求額(訴額) | 手数料 |
~100万円 | 10万円ごとに1000円 |
~500万円 | 20万円ごとに1000円 |
~1000万円 | 50万円ごとに2000円 |
~1億円 | 100万円ごとに3000円 |
参考:手数料額早見表|裁判所 – Courts in Japan
なお、裁判に勝訴すれば、判決文で示される負担割合に応じて、所定の訴訟費用を相手方に請求できるケースもあります。
(1-2)当事者に書類を送る切手代
訴訟提起をする場合、裁判所から当事者に対して各種の書類を送るための切手代が5000〜6000円程度かかります。
被告が複数ある場合は、切手代が増やされます。
裁判所ごとに必要となる費用が異なるため、詳しくは各地の裁判所にお問い合わせください。
(1-3)鑑定費用
専門性の高い分野について、学識経験を有する第三者に意見を求める場合(これを「鑑定」といいます)には鑑定費用がかかることもあります。
交通事故事件の場合は、工学鑑定、医療鑑定がありますが、最低でも30万~50万円程度かかることもあります。
(2)弁護士費用
交通事故裁判について弁護士に依頼する場合には、弁護士費用も必要となります。
もっとも、自動車保険や損害保険に弁護士費用特約が付いて、当該交通事故に利用可能であれば、保険会社が全ての弁護士費用を支払ってくれます(一定の補償限度がります)。
ご自身が加入している弁護士費用特約だけでなく、一定のご家族が加入している弁護士費用特約が利用できる場合もありますので、ご自身が加入している保険だけでなく、ご家族の保険についても確認しましょう。
弁護士費用については、こちらもご覧ください。
なお、裁判に勝訴すれば、弁護士費用として、相手方に賠償額の10%程度の範囲で請求できるケースがあります。
交通事故で裁判を検討するポイント
裁判にはメリットだけでなくデメリットやリスクもあり、どんなケースでも裁判を起こせばよいというわけではありません。
メリットとデメリットを比較した上で、交通事故裁判を起こすのかどうかを検討することをおすすめします。
これまで説明を踏まえると、裁判のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
|
|
交通事故裁判を検討される際には、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すれば、「そもそも裁判を起こすべきか」という部分から、客観的かつ法的な視点で考えてもらえます。
もちろん裁判になった場合、訴訟を起こす手続きから証拠・証人探し、主張・立証までをサポートしてもらえます。
【まとめ】交通事故裁判をすると、示談交渉よりも適切な賠償金を受け取れる可能性がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 被害者が知っておくべき交通事故裁判の基礎知識
- 交通事故の被害者は金銭賠償を求める民事裁判が起こせる
- 弁護士なしで裁判にのぞむこともできるが、弁護士に依頼しないと難航することも
- 賠償金の支払を求める判決が確定すると、賠償金を支払う義務が生じる
- 交通事故裁判の一般的な流れ
- 訴状の提出
- 口頭弁論
- 和解勧告・和解協議
- 証人尋問・本人尋問
- 判決
- 控訴・上告(控訴・上告がなければ、判決の確定)
- 交通事故裁判にかかる費用
- 裁判所に対して納める費用
- 弁護士費用
- 裁判のメリット・デメリット
【メリット】
- 裁判は、裁判官に最終的な判断を委ねることができるため、示談交渉よりも適切な賠償金を受け取れる可能性がある
- 遅延損害金も請求できる
- 裁判で解決(判決・和解)することで、相手方の財産を強制執行することができる
【デメリット】
- 示談交渉よりも期間が長期化してしまう
- 裁判に提出する資料や証拠など準備が大変
- 費用がかかる
- 裁判官が判決することになった場合、納得のできない結果で確定してしまう可能性がある
交通事故裁判を検討される際には、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すれば、「そもそも裁判を起こすべきか」という部分から、客観的かつ法的な視点で考えてもらえます。
もちろん裁判になった場合、訴訟を起こす手続きから証拠・証人探し、主張・立証までをサポートしてもらえます。
交通事故の被害に遭った方が、賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという完全成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりお客様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2021年10月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
