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ホワイトカラーエグゼンプションの意味と意義、問題点を解説

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ホワイトカラーエグゼンプションとは、主に頭脳労働をするホワイトカラーを対象に、労働時間等の規制をなくす制度です。
ホワイトカラーエグゼンプションにより、労働者は時間を柔軟に使えるようになるというメリットがある反面、残業代がもらえなくなるなどのデメリットもあります。

日本でもホワイトカラーエグゼンプションを参考に、「高度プロフェッショナル制」が導入されています。

ホワイトカラーエグゼンプションのメリット・デメリットなどについて弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

ホワイトカラーエグゼンプションはアメリカ発の制度

「ホワイトカラーエグゼンプション」はアメリカで生まれた制度で、欧米諸国で導入されています。
日本でもホワイトカラーエグゼンプションを参考にした制度として「高度プロフェッショナル制」が導入されています。

では「ホワイトカラーエグゼンプション」とはどのような制度なのでしょうか。
ホワイトカラーエグゼンプションについてご説明します。

(1)ホワイトカラーエグゼンプションの意味

ホワイトカラーエグゼンプション(英:white collar exemption)は、アメリカで1938年にその原型が生まれました。

このホワイトカラーエグゼンプションは、主にホワイトカラー労働者の一部(専門職、管理職、経営コンサルタントなど)を対象にしており、主に労働時間の規制の適用が免除されます。

例えば、通常の労働者に対しては、「最長〇時間までしか労働させてはならない」、という法律があったとしても、ホワイトカラーエグゼンプションの対象となる労働者に対しては、「何時間働いても違法とならない」、といった制度を定めることが可能になります。

ホワイトカラーエグゼンプションの制度のもとでは、企業は、働いた時間ではなく、成果で評価することが可能になります。

労働者は決まった労働時間にとらわれず自分で労働時間を決めることが可能になりますが、労働時間等につき、法による保護を受けることができなくなります。

参考:諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間規制の適用除外|厚生労働省

(2)欧米におけるホワイトカラーエグゼンプションの状況

それでは、ホワイトカラーエグゼンプションは、欧米ではどのように取り入れられているのでしょうか。
国ごとにご説明します。

参考:労働政策研究報告書 No.36 諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間法制に関する調査研究│独立行政法人 労働政策研究・研修機構
参考:諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間規制の適用除外|厚生労働省

(2-1)アメリカ

アメリカにおける、ホワイトカラーエグゼンプションの概要は次の通りです。

【内容】
ホワイトカラーエグゼンプションの対象となる労働者は、以下の規制が適用されず、法による保護を受けることができません。

  • 最低賃金
  • 割増賃金(残業代)
  • 実労働時間に関する記録保存義務

【対象の労働者】
腕力・身体的技能及び能力を用いて、主として反復的労働に従事する肉体的労働者その他のブルーカラー労働者ではないこと

【対象職種】
対象職種は多岐にわたります。

  • 管理職
  • 金融サービス業の従事者・経営コンサルタントなどの運営職、管理職や運営職の秘書、
  • 学識を必要とする専門職、一部の教師、弁護士、公認会計士、医師、看護師、歯科衛生士、コンピューター関連職、俳優、ミュージシャンなど

【俸給要件】
1週間あたり455ドル以上の率で支払われていることが必要、など

1999年の調査で、アメリカの賃金・俸給払い雇用者のうちホワイトカラーエグゼンプションの対象者は21%であり、現在ではさらに増加していると考えられます。

(2-2)ドイツ

ドイツにおける、ホワイトカラーエグゼンプションの概要は次の通りです。

【内容】
ホワイトカラーエグゼンプションの対象となる労働者は、以下の労働時間法の規制を受けず、法による保護を受けることができません。

  • 最長労働時間
  • 休憩時間、休息時間
  • 深夜労働
  • 日曜・祝日労働
  • 労働時間の記録

【対象職種】
一定の要件を満たす管理的職員(人事部長など)が対象であり、アメリカと比べると比較的狭い職種に限定されています。

1970年代の研究によると、ドイツの全労働者に占める管理的職員の割合は2%と推計されています。

(2-3)フランス

フランスにおける、ホワイトカラーエグゼンプションの概要は次の通りです。

【効果】
ホワイトカラーエグゼンプションの対象となる労働者は、労働時間、休息、休日等の諸規定の規制の適用がなく、法による保護を受けることができません。
ただし、年次有給休暇の規定は適用されますので、ホワイトカラーエグゼンプションの対象となっても、年次有給休暇を取得することはできます。

【対象職種】
一定の要件を満たす経営幹部職員

(2-4)イギリス

イギリスにおける、ホワイトカラーエグゼンプションの概要は次の通りです。

  1. 測定対象外労働時間のみの労働者の場合

【対象職種】
労働働時間の長さが測定されていない労働者など(幹部管理職など)

【効果】
ホワイトカラーエグゼンプションの対象となる労働者は、以下の規制が適用されず、法による保護を受けることができません。

  • 法定労働時間
  • 休息、休日
  • 深夜労働
  • 労働時間の記録保存義務

ただし、年次休暇の規定は適用されますので、ホワイトカラーエグゼンプションの対象となっても、年次有給休暇を取得することはできます。

  1. 通常の労働時間と測定対象外労働時間がある労働者

【対象職種】
労働時間の中に、その長さが測定されている部分などがあるものの、使用者に要求されることなしに、労働時間が測定されていない時間などがある労働者

【効果】
労働働時間の長さが測定されていない等の労働部分
→労働時間規則の法定労働時間、深夜労働の規定の適用を受けません。
ただし、休息、休日、休憩時間、労働時間の記録保存義務の規定は適用されます。

日本の「高度プロフェッショナル制」はホワイトカラーエグゼンプションを参考にしたもの

日本においても、ホワイトカラーエグゼンプションを参考にして、「高度プロフェッショナル制」というものが創設されています。
高度プロフェッショナル制の概要と対象者などを説明します。

参考:労働政策の展望 ホワイトカラーエグゼンプションの日本企業への適合可能性|独立行政法人 労働政策研究・研修機構
参考:「高度プロフェッショナル制度」の創設について|厚生労働省
参考:高度プロフェッショナル制度 届出にあたって|厚生労働省

(1)高度プロフェッショナル制度の創設の経緯

日本の賃金制度は、労働時間に応じて賃金が支払われることが原則とされてきました。
しかし、成果でなく労働時間で評価される賃金制度の下では、ダラダラと働いて残業代をもらおうとする労働者もいる、という弊害もありました。

また、労働時間で管理するシステムは、ホワイトカラーの就業実態には必ずしも合致していませんでした。
ホワイトカラーは「考えること」が重要な仕事の一つであり、労働時間と成果が比例しないためです。

そこで2005年、日本経済団体連合会(経団連)が、日本におけるホワイトカラーエグゼンプションの導入を提案するに至りました。

参考:ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言|一般社団法人 日本経済団体連合会

その後、様々な議論を経て、2019年4月から順次施行されている「働き方改革法」の一環として、「高度プロフェッショナル制度」が創設されるに至りました。

(2)高度プロフェッショナル制の概要

高度プロフェッショナル制度とは、

  • 高度の専門的知識を有する労働者については、要件を満たせば、
  • 労働時間を労働者の裁量で決定できる反面、
  • 労働時間、休憩・休日、深夜の割増賃金に関する労働基準法上の保護を受けない

という制度です(労働基準法第41条の2)。

深夜の割増賃金に関する労働基準法上の保護も受けない、という点で管理監督者とは異なります。

(3)高度プロフェッショナル制度の適用対象となる業務

高度プロフェッショナル制度の適用対象となる業務は、
「高度の専門知識が必要」
    
「性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるもの」
という性質を満たすものです。

具体的にどの業務を高度プロフェッショナル制の対象とすることができるのかは、厚生労働省令で次の通り定められています(労働基準法施行規則34条の2第3項)。

  • 金融商品の開発の業務
  • 金融商品のディーリング業務
  • アナリスト業務(企業やマーケットの高度な分析業務)
  • コンサルタント業務(事業・業務の企画運営に対する高度な提案等の業務)
  • 研究開発業務

対象業務への労働時間について、使用者から具体的な指示を受けて行うものであってはなりません。

(4)高度プロフェッショナル制度の対象となる人の要件

高度プロフェッショナル制の対象となる人は、次の要件をいずれも満たす労働者です。

  1. 使用者との間の書面による合意(※)に基づき職務が明確に定められていること
    ※以下の事項につき書面による合意が必要です。
    • 業務の内容
    • 責任の程度
    • 求められる成果
  2. 使用者から確実に支払われる予定の賃金額が少なくとも年1075万円以上
    →例えば、支給時期近くになってみないと、いくら払われるのか全く分からない賞与は、「使用者から確実に支払われる予定の賃金額」には含まれません。
  3. 原則として、対象業務に常態として従事していること
    ※対象業務以外の業務にも常態として従事している場合は対象労働者となりません。

(5)高度プロフェッショナル制では健康確保措置を取る必要あり

高度プロフェッショナル制では、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金などに関する法による保護を受けることができません。
そのため、高度プロフェッショナル制の対象労働者が働きすぎにより健康を害することが懸念されます。
そこで、高度プロフェッショナル制においては、使用者は、以下の健康確保措置を取る必要があります。
下記の内、1~3の措置を取らなかった場合には、高度プロフェッショナル制は適用されません。

  1. 健康管理時間の把握
  2. 休日の確保
  3. 選択的措置
  4. 健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

次に1~4の詳細をご説明します。

(5-1)健康管理時間の把握

……健康管理時間とは、原則として、以下の合計時間を指します。
<事業場内にいた時間>+<事業場外で労働した時間>
使用者は、原則として、タイムカード、パソコンの使用時間の記録などにより、健康管理時間を客観的に把握しなければなりません。

(5-2)休日の確保

……1年につき104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日の確保

(5-3)選択的措置

次のいずれかの措置を、後述の労使委員会の決議で定め、実施する必要があります。

選択的措置1
24時間につき11時間以上の継続した一定時間以上の休息時間
    +
1ヶ月につき深夜業は4回以内

選択的措置2
1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合
→その超えた健康管理時間が、1ヶ月で100時間以内又は3ヶ月で240時間以内にすること

選択的措置3
年1回以上の継続2週間の休日を与える
※労働者本人が請求した場合は継続1週間×年2回以上の休日を与える

選択的措置4
臨時の健康診断
※下記のいずれかの労働者が対象

  • 健康管理時間が1週40時間を超えた場合に、その超えた部分の合計時間が月80時間を超えた労働者
  • 申出をした労働者

(5-4)健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

健康管理時間の状況に応じて、次の措置の内いずれかを労使委員会の決議で定め、実施する必要があります。

13の選択的措置の内いずれか
※上記3選択的措置において使用者が講ずるとした措置以外のもの

2医師による面接指導
※なお、健康管理時間が週40時間を超え、その超えた部分の時間が月100時間を超えた対象労働者については、労働安全衛生法に基づき、医師による面接指導を行わなければなりません。

3特別な休暇または代償休日の付与

4心身の健康問題について相談窓口の設置

5適切な部署へ配置転換

6産業医等による助言・指導または保健指導

(6)高度プロフェッショナル制の導入手続き

対象労働者に高度プロフェッショナル制を適用して、対象業務に従事させるためには、以下の手続きを踏む必要があります。

STEP 1労使委員会の設置

※労使委員会は以下の要件を満たす必要があります。
・労働者側の代表委員が半数を占めている
・委員会の議事録を作成+保存+事業場の労働者に周知

STEP 2労使委員会の決議(5分の4以上の多数による決議)

※決議内容

  • 対象業務
  • 対象労働者の範囲
  • 対象労働者の健康管理時間の把握、その把握方法
  • 対象労働者に年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を付与
  • 対象労働者の選択的措置
  • 対象労働者の健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置
  • 対象労働者の同意の撤回に関する手続
  • 対象労働者の苦情処理の実施及びその具体的内容
  • 同意をしなかった労働者への不利益な取扱い禁止
  • 決議の有効期間 など

STEP 3決議を労働基準監督署長に届け出

STEP 4書面による対象労働者の同意

※書面の内容

  • 同意をした場合には労働基準法第4章(労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金)の規定が適用されないこと
  • 同意の対象期間
  • 同意の対象期間中に支払いが見込まれる賃金の額

なお、使用者はSTEP2の労使委員会の決議の後6ヶ月以内ごとに、以下の事項の実施状況を労働基準監督署長に報告する必要があります。

  • 対象労働者の健康管理時間の把握
  • 対象労働者に休日を与えること
  • 対象労働者の選択的措置及び、健康・福祉確保措置を実施

ホワイトカラーエグゼンプションを導入する意義

では、ホワイトカラーエグゼンプションを導入する意義(メリット)は何でしょうか。

(1)生産性が向上する

成果で評価されるので、だらだらと長時間労働することがなくなり、生産性が上がることが期待できます。

(2)多様な働き方が可能になる

ホワイトカラーエグゼンプションの対象になると、基本的に労働者の裁量で出社・退社の時間や休暇のタイミングを決定できます。

その結果、通勤時間をずらしたり、在宅勤務をしたり、早く成果を出して早く帰ったりと自分に合った形で柔軟に働けるようになり、育児や介護との両立がしやすくなることが期待されます。

ホワイトカラーエグゼンプションの問題点

その反面、ホワイトカラーエグゼンプションの問題点(デメリット)もあります。

(1)長時間労働が促進される可能性がある

労働時間の規制がなくなると長時間労働が増加するおそれがあります。
ホワイトカラーエグゼンプションの発祥国アメリカでは、組織の構造上担当業務がもともと明確であることや、比較的転職がしやすいために長時間労働を強いられた場合に転職という手段を取りやすいことから、長時間労働の問題は比較的起こりづらいといわれています。
しかし日本では、個々のホワイトカラーの職務内容や職責が明確ではなく、完全に自分の裁量だけでは業務を進めづらい場合もまだまだ多いのが現状です。
また、日本でも転職という文化が普及してきたものの、まだ終身雇用の側面が残っています。
こうした特性の違いから、日本でホワイトカラーエグゼンプションを導入した場合、長時間労働を促進しかねない側面があります。
また、日本のホワイトカラーエグゼンプションの対象業務には、研究開発など、すぐに成果が出るとは限らない業務も含まれており、無理に短期間での成果を求めることが長時間労働の増加につながる可能性もあります。

(2)長く働いても割増賃金がもらえない

労働時間の規制がなくなると、時間外労働という概念もなくなります。
そのため、法定労働時間を超えて働いた場合にも、残業代や休日出勤手当など、時間外労働への補償がおこなわれません。
この問題点から、高度プロフェッショナル制度は「残業代ゼロ法案」「定額働かせ放題法案」などと批判されることがあります。

【まとめ】ホワイトカラーエグゼンプションにはメリットとデメリットがある

ホワイトカラーエグゼンプションを労働者側から見たとき、多様な働き方という面ではメリットがありますが、かえって長時間労働が促進されるおそれもあり、もし長時間労働が促進された場合も割増賃金がもらえないというデメリットがあります。
日本でも、ホワイトカラーエグゼンプションを参考に高度プロフェッショナル制が導入されましたが、今後の労働者に与える影響が注目されるところです。
高度プロフェッショナル制での働き方にお悩みの方は、各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーなどにご相談ください。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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