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年俸制も残業代は出る?支払われないケースや労働時間の考え方も解説

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「年俸制だと、1年間の給料が、年度初めにまるっと決められているし、残業代は出ない?」

いいえ、それは間違いです。

年俸制であることと、残業代が支払われるか否かは、関係ありません。
そのため、年俸制でも残業代が払われるケースと、払われないケースがあります。

年俸制における残業代について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

年俸制とは

年俸制とは、給与総額の合意・更改を1年単位で行なう給与の決め方であり、1年間の仕事の成果を翌年度の賃金額に反映させるシステムです。

年俸制における給与総額を年俸額と呼びます。
年俸額の決め方は、会社によって異なります。
1年ごとに給与額が決まるからといって、支払いも1回というわけではありません。
労働基準法24条2項では、賃金支払いについて「原則として、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払うこと」を定めています。
そのため、年俸制であっても月給制と同じように分割した額が毎月支払われます。

年俸制でも残業代は出る?出ない?

年俸制というのは、あくまでも給与の決め方であるため、「年俸制だから残業代が出る・出ない」の結論には直結しません。
したがって、年俸制の労働者であっても、自身が残業代を請求できる条件に該当すれば、他の労働者と同様に権利を主張できます。

年俸制で残業代が出ないケースとは?

以下のケースに該当する場合、会社は、年俸制の労働者に残業代の全部または一部を支払う義務がない可能性が高いです。

(1)みなし残業制(固定残業制)の場合

年俸制の中には、残業の有無にかかわらず、一定時間の残業をしたとみなして、あらかじめ固定の残業代を年俸に組み込んでおく制度をとられていることがあります(みなし残業制、または固定残業制)。

例えば、5時間分の残業(時間外労働)の残業代(割増賃金。割増率1.25)として、給与に月5万円の時間外労働の手当(固定残業代)が含まれる場合です。

この場合、年俸に組み込まれた残業代に相当する時間を下回る時間しか、残業していなければ、別途残業代は払われません。
上記例でいえば、5時間以内の残業だと、別途残業代は出ません。

もっとも固定残業代において想定されていた残業時間を超えて残業をした場合には、会社は超えた分の残業時間に対し、別途残業代の支払いが必要です。
上記例でいえば、7時間の時間外労働をすると、2時間分の時間外労働の割増賃金の支払が必要となります。

固定残業制を隠れ蓑にして、超過分の残業代を支払わずに違法残業を強いるケースが散見されるため、この点についても注意が必要です。

また、固定残業制自体が無効であり、固定残業代として払っていたものが、残業代の支払として認められず、結果として未払い残業代が多く発生していることがあります。

例えば次のような場合、固定残業制が無効である可能性があります。

  • 固定残業代の性格を持つことが明示されていない
    例)会社は固定残業代を「店長手当」「業務手当」という名目で支払っているとするものの、労働契約書や就業規則などで、固定残業代の支払であることが明示されていない場合、会社と労働者との間で、そうした手当が固定残業代であるとの合意が成立していたとはされない可能性があります。
  • 営業手当など「〇〇手当」が「固定残業代+別の性格を持つ賃金(インセンティブ)」として支給されることがありますが、この手当の内いくらが、固定残業代なのか容易には判別できない場合
  • 「基本給には、固定割増賃金として、40時間分の法定時間外労働・休日労働・深夜労働分の対価を含む。」と定められているが、いくらが時間外手当で、いくらが深夜手当、休日手当に当たるのか判別することができない場合
  • 固定残業費が最低賃金を下回っている場合

実は固定残業時間制が無効であるという会社は、少なくないのが実態です。

(2)管理監督者の場合

年俸制の労働者が管理監督者にあたる場合、労働基準法上、会社は深夜労働の割増賃金以外の残業代を支う義務はありません。
管理監督者とは、経営者と一体的な職務内容・権限があり、自分の勤務時間に裁量があり、管理職にふさわしい待遇があるなどの条件を満たす人のことです。
管理職の肩書があるからといって、管理監督者に該当するわけではありません。
実態から管理監督者であるかが決まります。
管理監督者の実態がない、名ばかり管理職の場合は、残業代全般が支払対象となります。

例えば、

  • 年俸が、平社員とほぼ同等の金額
  • 出社退社時間が決まっている
  • 仕事の内容が平社員とほとんど同じ

といった場合には管理監督者ではない可能性が高いです。

店長等の肩書がついていても、名ばかり管理職であるということは少なくありません(レストランビュッフェ事件 大阪地裁判決昭和61年7月30日 労判481号51頁など)。

(3)業務委託契約に変わった場合

非常に稀なケースであるが、近年ではいままで正社員だった従業員を業務委託契約に切り替える企業もあります。
契約内容を詳しく確認していない場合、従来と同じような契約だと思い込んでいる方もいます。
しかし業務委託契約というのは、雇用から外れて、個人事業主になることです。
業務委託契約に変わった場合は、労働基準法が適用されないため、会社に残業代を支払う法律上の義務は発生しません。
今まで年俸制だった人が業務委託契約への切り替えを打診された場合は、報酬の支払われ方などの各種条件を必ず確認しましょう。
また、業務委託契約の中で超過時間に対する報酬の支払い義務が規定されていれば、支払い条件に合致する限り、超過時間分に対する報酬の支払いが受けられることも頭に入れておくべきです。

年俸制における残業代計算のポイント

年俸制の労働者でも、法定労働時間(原則1日8時間・1週間40時間)を超えた時間外労働分(残業時間)に割増賃金として残業代が支払われるという考え方は同じです。
また、所定労働時間を超えるものの、法定労働時間を超えない「法内残業」についても、
少なくとも所定労働時間内の賃金と同じ単価にて残業代が支払われます。

具体的な残業代の計算では、以下の項目の数字をかけて算出します。
残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間数×割増率

ここでは各項目のポイントを解説します。

(1)1時間あたりの基礎賃金

基礎賃金とは、所定労働時間に対する賃金から、以下の賃金を控除した金額になります。

  1. 個人の事情に基づき払われている賃金(家族手当、通勤手当など)
  2. 臨時に支払われた賃金(結婚手当、出産手当など)
  3. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)
    (※年度初めに年俸額を決定し、その一部として賞与を払う場合、賞与は控除されません)
  4. 割増賃金の趣旨にて支払われる賃金(所定労働時間が深夜帯にかかることに対する手当)

なお、どれが控除されるのかは、名称で決まるわけではなく、その内容で決まります。

基礎賃金は、時給に直して計算する必要があります。
年俸制の場合、次のような計算方法になります。
1時間当たりの基礎賃金=1年間の基礎賃金÷1年間の所定労働時間

所定労働時間は、就業規則で定められているのが一般的です。

(2)残業時間数

残業時間数は、出退勤記録やタイムカードから集計します。
後述の通り、法内残業なのか、時間外労働なのか、深夜労働なのか、休日労働なのか等によって、割増率が異なりますので、後述の割増率の種別ごとに、残業時間数を集計する必要があります。

(3)割増率

残業代の計算では、先述の「1時間あたりの基礎賃金」×「残業時間数」で算出した数字に、以下の割増率をさらにかけます。

基本的な割増率は次の通りです。

残業の種類割増賃金が発生する条件(※1)最低限度の割増率
時間外労働1日8時間・週40時間のいずれかを超えて労働。
(法定休日の労働時間は含まず。)(※2)
時間外労働が月60時間までの部分1.25倍
時間外労働が月60時間を超えた部分1.5倍
(※3)
深夜労働22~5時の間の労働1.25倍
休日労働原則週1回の法定休日における労働1.35倍
重複する部分時間外労働が0時間を超えて月60時間までの部分と、深夜労働が重複する部分1.5倍
時間外労働が月60時間を超えた部分と、深夜労働が重複する部分1.75倍
(※4)
法定休日に深夜労働した部分1.6倍

※1 残業時間として認められるためには、「会社の指示によって労働させられた」ことが必要です。
※2 時間外労働の例外
常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作は除く)、保険衛生業、接客業については、週44時間を超えた労働
※3 次に該当する中小企業(以下同じ)は、2023年3月末までは、最低の割増率は1.25倍となります。

  • 小売業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が50人以下
  • サービス業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下または常時使用する労働者が100人以下
  • その他:資本金3億円以下または常時使用する労働者が300人以下

※4 中小企業では2023年3月末までは、最低の割増率は1.5倍となります。

年俸制の残業代請求には証拠が重要

年俸制であっても、原則として労働者には残業代を支払ってもらう権利があります。
労働者側から残業代の請求をするときには、証拠が必要です。

証拠としては、例えば次のようなものがあります。

  • 雇用されたときの書類
    ……雇用契約書
      労働条件通知書など
  • 就業規則、賃金規程のコピー
  • 給与明細
  • 労働時間が分かる資料のコピー
    ……出勤簿
      タイムカード
      WEB打刻のスクリーンショット
      業務用メールアカウントや会社のFAXの送受信記録履歴
      帰宅時のタクシーの領収書など
  • 残業時間中の労働内容を立証する資料の写し
    ……業務日報
      トラック運転手の方はタコメーター(タコグラフ)
  • 会社の指示によって残業させられたことを示す資料
    ……残業指示書など

現時点で残業代の支払い金額に少ないなどの問題がある場合は、自分の権利をきちんと主張するためにも、これらの証拠をきちんと保管しておきましょう。

時効に要注意

ただし、残業代は、請求しないまま一定期間が経過すると、会社側が時効を主張することで、残業代を請求する権利を失ってしまいます。
民法改正の影響で、残業代の時効には、次の2種類があります(2021年1月18日時点)。

  • 2020年3月31日までに支払日が到来する残業代→時効は2年
  • 2020年4月1日以降に支払日が到来する残業代→時効は3年

時効の起算日は、本来、各残業代が支払われるべきであった日の翌日です。

例えば2020年2月20日に支払日が到来する残業代については、その支払日の翌日から2年経過すると、会社側が時効を主張することで、これを請求する権利が消滅することになります。

このように残業代には時効がありますので、勤務期間が2年以上で、月給制の場合は、古い
残業代から順番に、毎月、時効が成立している可能性があります。
そのため、残業代を請求したいと思ったら、早めに請求することが大切です。

【まとめ】年俸制の残業代請求でお悩みの方はアディーレ法律事務所へご相談ください

年俸制はあくまでも、1年単位で総額の合意や更改を行なう給与の決め方です。
そのため、「年俸制だから残業代が出る・出ない」ではなく、労働契約の内容(例:固定残業制)や役職(例:管理監督者)などの条件を総合的にみながら、残業代請求可能かどうかを考えていく必要があります。
年俸制の残業代請求でお悩みの際には、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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