パスポートの発給や婚姻届の提出などで自分の戸籍を取り寄せたことのある人は多いでしょう。
自分の本籍地のある市町村役場に行けば、その場で戸籍を取得できます。
また、自分の戸籍に限らず、自分の両親・祖父母(直系尊属)や子ども・孫(直系卑属)の戸籍も取得できます。
取得するのに制限があるのは、兄弟姉妹や叔父・叔母、甥・姪の戸籍を取得する場合です。
このうち一般的に取得する可能性の最も高い兄弟姉妹の戸籍について取得方法を説明します。
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
兄弟姉妹が未婚のケース
通常、戸籍には両親と未婚の子どもの情報が掲載されます。
そのため、兄弟姉妹がまだ結婚していない場合には親の戸籍に掲載されている可能性が高いでしょう。
もし自分も結婚していなければ、自分の戸籍を取得することで親の戸籍と兄弟姉妹の戸籍を同時に手に入れることができます。
また、自分が既に結婚している場合でも過去の自分の戸籍に親・兄弟姉妹が掲載されていることがあります。もっとも、結婚した後に両親が引っ越して転籍している場合には、過去の自分の戸籍を取得しても、現在の兄弟姉妹の状況はわからないので、別の手段を検討しましょう。戸籍の改製が行われ自分の名前が戸籍から削減されている場合にもこの手段は採れません。役所に問い合わせれば戸籍の改製がいつ行われたかを知ることができます。
以上のことを整理すると、兄弟姉妹が未婚の場合には次の流れで確認すると良いでしょう。
- 自分も結婚していない場合
⇒ 自分の戸籍を取得する - 自分が結婚している場合
⇒ 自分の結婚後に親が転籍した場合、親の戸籍を取得する
⇒ 自分が結婚した年以降に戸籍の改製が行われた場合、親の戸籍を取得する
⇒ 親が転籍しておらず戸籍の改製も行われていない場合、過去の自分の戸籍を取得する
もっとも、相続の手続きであれば親の戸籍が必要なケースも多いので、過去の自分の戸籍を取得することなく親の戸籍を取得しても良いでしょう。
兄弟姉妹が自分や親の戸籍に記載されていれば、兄弟姉妹の委任状は必要ありません。
兄弟姉妹が既婚のケース
兄弟姉妹が既に結婚している場合には、両親の戸籍から抜けているため、手続きが少々面倒です。
兄弟姉妹から「代わりに取得して欲しい」と委任状をもらえれば話は簡単です。
また、兄弟姉妹の了承が得られなくても両親や祖父母、甥・姪、つまり兄弟姉妹からみて直系の親族に取得してもらえれば、それほど話は難しくありません。
問題は、兄弟姉妹含め親族の協力を得られなかった場合です。
兄弟姉妹なのに赤の他人の戸籍を取得するのと同様の手続きを経なければならないのです。
これを「第三者による戸籍謄本等の請求(第三者請求)」といいます。
この場合、必要な資料を提出して正当な利用目的を証明する必要があります。
相続で兄弟姉妹の戸籍が必要になったケースを想定すると、提出資料は以下のとおりです。
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍謄本)
- 請求者の現在戸籍
- 請求の理由を記載した書面
加えて、相続関係図を添付すると、より分かりやすく説明できるでしょう。
次のような事情が兄弟姉妹の戸籍を取り寄せる正当な利用目的にあたります。
- 遺産分割協議のため法定相続人を確定する必要がある
- 不動産などの相続手続きをする必要がある
- 故人名義の銀行口座の解約、名義変更をする必要がある
「相続のため」といった抽象的な理由ではなく、具体的な理由が必要です。
たとえば、このように記載すると良いでしょう。
私、田中一郎の父田中正が令和2年5月15日死亡しました。つきましては、遺産分割協議を行うにあたり、田中正の次男で、私の弟である田中次郎の戸籍謄本が必要です。
相続財産には、被相続人名義の預貯金(XX銀行 池袋東支店 普通 XXXXXXX)が存在しており、その名義変更・払戻しのため、田中次郎の戸籍謄本を提出する必要があります。
上記の理由から、田中次郎の戸籍謄本を請求します。
ここでご紹介した手段でご自身でも兄弟姉妹の戸籍を取得することはできます。もっとも、相続人調査や遺産分割協議書の作成など相続に関する処理が面倒だと感じたならば、弁護士に相談するのも1つの手でしょう。