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【弁護士監修】労災認定について知っておきたい3つの知識について

作成日:
kiriu_sakura

仕事でケガをしてしまったけれども、会社が労災申請をしてくれない、労災申請したけれども、労働基準監督署から労働災害とは認定されなかった、という方はいらっしゃいませんか。

労災だと思っていたのに、労災の認定が受けられなければ、労災による補償が受けられなくなります。「労災認定されなかったけれどもどうしたらよいのだろう?」と、途方に暮れてしまうのではないかと思います。

会社が労災申請してくれない場合は、自分で労災申請ができます。
労災申請したけれども認定されなかった場合には、労災保険審査請求制度という制度があります。

この記事では、

  • 労災認定を受けるための要件
  • 会社の労災隠しによって労災申請できない場合の対応
  • 労災申請をしたものの労災認定を受けられなかった場合の対応

などを弁護士がわかりやすく説明します。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

労災補償を受けられる人と範囲

仕事をしていたことが原因で怪我をしたり、通勤途中にけがをした場合、これらの事故が労災(労働災害)と認められると、労災保険による補償を受けることができます。
労災保険は、労働災害に遭った労働者に対して、国が給付を行なう公的制度です。
では、労災補償はどのような人が受けられるのでしょうか。
まず、労災保険加入の対象者について説明します。

(1)会社は、すべての労働者を労災保険に加入させなければならない

会社は、雇用した労働者すべてを労災保険に加入させる義務があります。
全ての労働者が労災保険の強制加入の対象です。

  • フルタイム労働者(正社員・契約社員)
  • パートタイマー・アルバイト
  • 日雇い労働者
  • 派遣労働者(派遣元で加入)
  • 海外出張者(国内事業者に所属している場合)

など名称を問わず、どのような労働形態であっても、全ての労働者は労災保険に加入しなければなりません。
そして、加入義務は会社にあります。
労災保険の保険料は全額会社負担で、労働者は一切負担することはあり得ません。

なお、事業主や役員は「労働者」にあたらないため、「特別加入」が必要です。
すなわち労災保険は、本来、労働者の保護を目的とした制度です。よって、事業主、会社役員、自営業者、家族従事者など労働者ではない者は、保護の対象とはなりません。
しかし、労働者でない方の中には、業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護することがふさわしい方がいます。

そこで、これらの者に対しても、特別に任意加入することを認め、労災保険による保護を図ることとしたのが労災保険の特別加入制度です。
例えば、執行役員という肩書がある場合、「役員」という名称がついていますが、実際には従業員(労働者)であることも多いです。
執行役員は、次の事情などがある場合に労働者と判断され、労災保険が適用される可能性があります。

  • 雇用契約に基づいて会社に雇われている
  • かつ、取締役会などの決定に基づいて業務を執行している
  • かつ、役員報酬ではなく給与として賃金が支払われているなど

特別加入の可否は、実質的に労働者性が認められるか否かで決まります。
ご自身が特別加入の要件を満たすかについては、人事労務関係に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

参考:労働者の取り扱い|厚生労働省

労災とは?労災保険の認定基準や申請方法を解説

(2)労働災害の種類と認定基準

それでは、労働災害とはどのようなものでしょうか。
労働災害の種類と認定基準について説明します。

労働災害は、業務中に起きた業務災害と、通勤途中に起きた通勤災害の2種類に分けられます。

業務災害とは、労働時間内に業務上の行為や事業場の施設設備などが原因で発生した傷病です。
通勤災害とは、業務外の「仕事場間の移動」、「自宅と仕事場の往復」、「自宅と単身赴任先の往復」で発生した傷病です。

それでは、どのような場合に労働災害と認定されるのでしょうか。
認定基準について説明します。
まず、業務災害の労災認定基準として、業務起因性と業務遂行性の有無があります。

業務起因性とは、傷病が業務に起因したものかどうか、です。
業務遂行性とは、労働者が雇い主の支配管理下にあったのかが基準となります。

では、どのような場合に、業務災害や通勤災害に認められるのでしょうか。具体的には次のように考えられます。

  1. 業務災害
    出張中の怪我は、業務遂行性が認められ、業務災害が認定されることが多いといえます。出張中は、全体として会社の支配下にあると認められるからです。
    休憩中の怪我であっても、会社施設内にいる限りは業務遂行性が認められ、施設や設備の欠陥・不備を原因とするものであれば、業務起因性も認められ、業務災害に認定されるケースがあります。
    他にも仕事で、荷物の積み込み中に指をはさんで負傷した、 業務中にトイレに向かおうとして、階段から落ちた、昼休み中に社内の給湯室で火傷した、出張先のホテルの浴室で転び、腰を打ったなどのケースは、業務災害に認定されることが一般的です。

    一方、 休憩時間中に営業所の外に出て喫煙場に向かう際に怪我をした、 昼休み中に社外にランチに出かけた際に怪我をしたなどは、会社の支配下にはなく、業務遂行性が認められず、業務災害にはならないと考えられます。

  2. 通勤災害
    通勤災害は、「仕事場間の移動」、「自宅と仕事場の往復」、「自宅と単身赴任先の往復」で発生した傷病です。そして、通勤経路を逸脱・中断すると、その間は勿論のこと、その後の移動も「通勤」と認められなくなる可能性があるため、注意が必要です。
    例えば、帰宅途中に立ち寄ったコンビニのドアに指を挟んで負傷したという場合は、通勤の経路上にあるコンビニで日用品の購入を行うことは、通勤の中断にあたるため、通勤災害にはならないと考えられます。
    また、自宅から単身赴任先へ向かう道中で怪我をしたという場合は、単身赴任者の移動であって、通常の通勤に先行して行われるものである場合には、通勤災害になると考えられます。

(3)労災給付の種類と時効

では、労災給付にはどのような種類があるのでしょうか。
主なものは次の8つです。

  1. 療養(補償)給付
  2. 休業(補償)給付
  3. 障害(補償)給付
  4. 遺族(補償)給付
  5. 葬祭料(葬祭給付)
  6. 傷病(補償)年金
  7. 介護(補償)給付
  8. 二次健康診断等給付

以下、それぞれについて説明します。

  1. 療養補償給付(通勤災害の場合は療養給付)
    怪我や病気が治るまで、労働者が無料で診察及び治療等が受けられるようにするものです。

  2. 休業補償給付(通勤災害の場合は休業給付)
    怪我や病気のため労働者が働けず賃金を得られないときには、働けなくなった日の4日目から、休業(補償)給付として給付基礎日額の60%相当額、休業特別支給金として 20%相当額が支給されます。ただし業務災害による休業の場合には、最初の3日間分は、労働基準法第76条に基づいて、使用者が平均賃金60%を補償します。

  3. 傷病補償年金(通勤災害の場合は傷病年金)
    療養を開始してから1年6ヶ月を経過しても怪我や病気が治らないときなどに、それまで支給されていた休業補償 給付は打ち切られ、傷病による障害の程度に応じて年金が 支給される場合もあります。この他に傷病の程度に応じて傷病特別支給金が支給されます。

  4. 障害補償給付(通勤災害の場合は障害給付)
    怪我や病気が治っても障害が残ったときには、その程度に応じて障害(補償)年金あるいは障害(補償)一時金が 支給されます。このほかに障害の程度に応じて障害特別支給金が支給されます。

  5. 遺族補償給付(通勤災害の場合は遺族給付)
    怪我や病気により死亡した場合は、遺族(補償)年金、あるいは遺族(補償)一時金が支給されます。このほかに 遺族特別支給金や遺族特別年金等が支給されます。

  6. 葬祭料(葬祭給付)
    業務災害、複数業務要因災害または通勤災害により死亡した人の葬祭を行うときに支給されます。

  7. 介護保険給付
    労災によって重い後遺障害を受け、介護が必要になった場合に支給されます。
    支給されるためには、次の全ての要件を満たす必要があります。

    ア 障害(補償)年金または傷病(補償)年金の第1級の方すべて、または第2級で精神神経・胸腹部臓器に障害を残し、常時あるいは随時介護を要する状態にあること
    イ 民間の有料介護サービスなどや親族、友人、知人から、現に介護を受けていること
    ウ 病院または診療所に入院していないこと
    エ 介護老人保健施設などに入所していないこと

  8. 二次健康診断等給付
    労働安全衛生法によって行われる雇入れ時の健康診断、定期健康診断などの『一次健康診断』の結果、異常の所見が見つかり、脳血管疾患および心臓疾患の疑いがある場合に行われる保険給付です。過労死を未然に防止する目的で行われています。

参考:労災保険給付の概要|厚生労働省
参考:労災保険給付の概要(フローチャート)|厚生労働省

また、それぞれの給付金の申請期限は次のとおりです。

給付金時効
療養(補償)給付療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
休業(補償)給付賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
遺族(補償)年金被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
遺族(補償)一時金被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
葬祭料(葬祭給付)被災労働者が亡くなった日の翌日から2年
未支給の保険給付・特別支給金それぞれの保険給付と同じ
傷病(補償)年金監督署長の職権により移行されるため請求時効はない。
障害(補償)給付傷病が治癒した日の翌日から5年
介護(補償)給付介護を受けた月の翌月の1日から2年
二次健康診断等給付金一次健康診断の受信日から3ヶ月以内

参考:7-5 労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。|厚生労働省

労災の申請期限についてはこちらをご覧ください。

労災の申請期限はいつ?給付金別の申請期限と申請手続きについて

“労災隠し”が行なわれて労災申請できない

では、会社が労災申請をしてくれないため、労災認定されない場合、どうしたらよいでしょうか。

そもそも、労働災害が発生した場合、必ず労災保険の申請・請求をしなければなりません。
それにもかかわらず、会社が労災の申請を行わない場合、会社が「労災隠し」をしていると考えられます。

「労災隠し」とは何か、説明します。

(1)労災隠しとは?

会社が適切に労働災害を労働基準監督署に報告しないことを“労災隠し”といいます。
労災隠しの代表例としては、次の5つがあります。

  1. そもそも労災保険に加入していない
  2. 労災の事実を報告をしなかった
  3. 労働者に労災の事実を口止めした
  4. 虚偽の内容を報告した
  5. 健康保険で治療するよう指示した

「5 健康保険で治療するよう指示した」というのは、労働災害の傷病に健康保険は使ってはいけないことから、労災隠しの常套手段です。
これは、健康保険は、労災保険とは関係のない怪我や病気に対して支給される保険であるからです。

健康保険を使って治療を受けてしまった場合は、健康保険から労災保険への切替手続きが必要になります。

労災隠しについてはこちらをご覧ください。

労災隠しとは?企業が労災隠しをする理由や対処方法について解説

(2)自分で労災申請することも可能

それでは、会社がどうしても労災申請をしてくれない場合、どのように対処すればよいでしょうか。
どうしても会社が労災申請してくれない場合は、自分で労働基準監督署に申請することも可能です。したがって、労災申請について、労働基準監督署に相談することが考えられます。

また、社会保険労務士や、労働問題に精通した弁護士に相談するのも解決の糸口となるケースがあります。
自分で交渉して期待した結果を得られなくても、社労士や弁護士に依頼するとスムーズに会社が応じてくれる場合もあります。

労働基準監督署に労災認定されなかった

次に、労災申請をしたものの、労働基準監督署によって労災認定されなかった場合は、労災保険審査請求制度を利用して不服の申立てができます。
労災保険審査請求制度について説明します。

(1)審査請求

審査請求とは、労働基準監督署が行った労災認定の決定に不服がある場合、この決定に対して審査を請求できる、という制度です。労働者の方が、労災認定しないという決定に不服がある場合、労災認定しないという決定に対して審査の請求をすることができます。

審査請求は、労働基準監督署の決定があったことを知った日の翌日から3ヵ月以内に行なわなければなりません。
審査請求先は、労働基準監督署を管轄する労働局の労働者災害補償保険審査官です。
労働者災害補償保険審査官は、労災認定(原処分の取消し)を行うか、審査請求の棄却を決定します。

(2)再審査請求

審査請求を棄却された場合などでも、その決定になお不服がある場合は、労働保険審査会に再審査を請求することができます。

再審査請求は、審査請求に対する結論として作成した決定書謄本(労働災害補償保険審査官が作成する決定書謄本)の送付日の翌日から2ヶ月以内に行なわなければなりません。

(3)行政取消訴訟

再審査の結果にも不服が残る場合は、最終手段として、行政訴訟を起こして裁判官による判断を仰ぐことになります。

この行政訴訟は、労基署が行った補償給付等不支給処分の取消しを求めて訴訟を提起します。
不支給処分を取り消すという裁判所の判決が確定すると、労基署は判決に従い、不支給処分を取り消した上で、支給決定を行います。

行政訴訟は、労基署の不支給処分に対する審査請求を労働者災害補償保険審査官に対して行い、1.審査請求が棄却されたとき、2.審査請求をした日から3ヶ月を経過しても決定がないとき(審査請求が棄却されたとみなすことができる)、に裁判所に訴訟を起こすことができます(労働者災害補償保険法38条2項、40条)。
ただし、裁判で労災非認定が覆る可能性は高いものではありません。

労災認定に対する審査請求、行政訴訟の検討、手続きにあたっては、知識や手続きのノウハウを持つ弁護士に相談・依頼することをご検討ください。

【まとめ】労災認定を受けられなかったら労災保険審査請求制度を利用して不服を申立てる

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 労災認定を受けるには、業務災害か通勤災害のいずれかに該当することが必要
  • 会社の労災隠しによって労災申請できない場合は、労働基準監督署に相談すると良い
  • 労災申請をしたものの労災認定を受けられなかった場合は、労災保険審査請求制度を利用して不服を申立てると良い

労災申請や労災認定でお困りの方は、労働基準監督署(公的機関)や弁護士へご相談ください。

参考:全国労働基準監督署の所在案内|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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