遺言・遺産相続の弁護士コラム

法定相続人の相続順位とは?遺産相続の基本と遺言書がある場合の扱い

「遺言がない場合の相続は、誰がどのような順番で財産を受け継ぐのだろう?」

2020年7月から、法務局で自筆の遺言書を預かる「自筆証書遺言書保管制度」が開始したこともあり、近年、遺言書を書くという方も増えています。
2023年7月時点で、遺言書保管制度を利用した遺言書の保管申請は累計で5万7396件でした。

とはいえ、まだまだ一般的には遺言書を残さずに死亡する方が多いです。
そこで、今回は、『遺言書がない場合の相続人の相続順位や相続割合』などについて、弁護士がご説明します。

この記事でわかること
  1. 遺産相続における法定相続人とは何か
  2. 法定相続人の範囲と相続順位
  3. 相続順位と法定相続分について

遺産相続における法定相続人とは?

「法定相続人」とは、民法のルールに基づいて、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する権利を有する方のことです。

被相続人が死亡すると相続が発生し、基本的には法定相続人が被相続人の遺産を相続します。
法定相続人の範囲やその順位は、民法で決められています。民法の定める法定相続人以外の方は、被相続人の財産を「相続」しません。

他方、被相続人は、「遺言」により法定相続人以外の方に遺産を譲ることができます(遺言によって法定相続人以外の方に財産を受け継がせることを「遺贈」と言います)。

遺言がない場合には、基本的には法定相続人間で遺産をどのように分け合うかを協議し、協議に基づいて遺産を分けることになります。

被相続人の遺産を相続する可能性のある法定相続人は、次のとおりです。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人の子
  • 被相続人の親・祖父母など直系尊属
  • 被相続人の兄弟姉妹
  • 被相続人の兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪) など

たとえば、被相続人の伯父(叔父)・伯母(叔母)・いとこ・またいとこなどは法定相続人ではありません。
ですから、これらの方が、被相続人の遺産を、直接「相続」することはありません。

参考:自筆証書遺言書保管制度|法務省

法定相続人の範囲と相続順位

法定相続人の範囲(誰が法定相続人となるか)や、相続の順位についてご説明します。

被相続人の配偶者は常に法定相続人となる

被相続人の配偶者は、常に法定相続人となります。

ただし、法定相続人となる配偶者は、法律婚(※戸籍法に基づく婚姻届を提出・受理され法律上の婚姻をしていること)をしている配偶者のみで、事実婚(内縁)の配偶者は法定相続人にはなりません。

【法定相続人となる「配偶者」】

被相続人との関係法定相続人になる?
配偶者(法律婚)
別居中の配偶者(法律婚)
離婚調停/裁判中の配偶者
事実婚の配偶者×
離婚した元配偶者×

たとえば、事実婚の夫婦に子供がいる場合、夫婦の一方が死亡しても法定相続人になるのは子供のみです。
事実婚の配偶者は法定相続人ではなく、被相続人の財産を相続する権利はありません。

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事実婚(内縁関係)の配偶者に遺産を遺したいという場合には、遺言により財産を贈与することが大切です!

配偶者以外の法定相続人の相続順位

配偶者は常に法定相続人となりますが、配偶者以外の人も次の順位で法定相続人となります。

第1順位:子
第2順位:親などの直系尊属
第3順位:兄弟姉妹

第1順位の人がいれば、第2順位や第3順位の人は相続しません。
第1順位の人がいない場合には、第2順位の人が相続します(第3順位の人は相続しません)。
第1順位、第2順位の人がともにいなければ、そのときに初めて第3順位の人が相続します。

配偶者以外の法定相続人の範囲とその相続順位について、解説します。

第1順位|被相続人の子

亡くなった方(被相続人)に子がいる場合には、子が第1順位の法定相続人となります。
子が複数人いる場合には、その複数の子全員が法定相続人となります。

法定相続人になる「子」は、次のとおりです。

【法定相続人となる「子」】

被相続人との関係法定相続人になる?
配偶者(法律婚)との子
配偶者(事実婚)との子
離婚した配偶者との子
養子
非嫡出子
(婚姻関係にない男女の間に生まれた子のこと)
〇(※)
第三者と「普通養子縁組」をした子
第三者と「特別養子縁組」をした子×
  • ただし、父親が被相続人となる場合で、非嫡出子を認知していない場合には、そのままではその子は相続人にはなりません。 非嫡出子を認知せずに父親が死亡した場合、認知の訴えを提起して死後認知が認められれば法定相続人となります。

第三者と「特別養子縁組」をした子は、被相続人の実子であっても、特別養子縁組によって、被相続人との親子関係が終了しますので、被相続人が死亡しても法定相続人にはなりません(※死亡時に特別養子縁組をした養親と離縁している場合を除く)。

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被相続人の死亡時に配偶者(法律婚)と子がいる場合は配偶者と子が、配偶者がおらず子のみがいる場合には子のみが被相続人の遺産を相続します。

なお、相続が開始したときに子がすでに死亡している場合には、さらにその子(被相続人の孫)が代わりに法定相続人となります(このことを代襲相続と言います)。

また、子や孫もすでに死亡しているが孫の子(ひ孫)は生きているという場合には、そのひ孫が代わりに法定相続人となります(このことを再代襲と言います)。

第2順位|被相続人の親などの直系尊属

被相続人に子や孫、ひ孫等の直系卑属がいない場合や被相続人の子が相続放棄をした場合など、第1順位の相続人がいない場合は、被相続人の親(父母)が第2順位の法定相続人となります。

被相続人に配偶者と親の両方がいる場合には、その両者が法定相続人です。
もし親が亡くなっており、かつ、親の親(祖父母)が存命であれば、その親の親(祖父母)が法定相続人となります。

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夫が亡くなりました。夫に子供はいません。夫の父(義父)は生きていますが、夫の母(義母)は死亡しています。その場合、夫の母方の祖父母が、義母の分を相続するのですか?

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いいえ、両親のどちらか一方が生きている場合には、生存している親(質問の件は夫の父)が直系尊属の相続分をすべて相続します。父母の両方が死亡している場合に初めて、一代上の祖父母が相続します。
ですので、今回の事例では、あなたと義父の2人が相続人となります。

第3順位|被相続人の兄弟姉妹

被相続人に、子、孫、ひ孫がおらず(第1順位の相続人がいない)、また、親、祖父母などの直系尊属のいずれもいない場合(第2順位の相続人がいない)や被相続人の子や直系尊属が相続放棄をした場合などは、第3順位の法定相続人である被相続人の兄弟姉妹が遺産を相続します。

被相続人に配偶者と兄弟姉妹がいる場合には、その両者が法定相続人となります。

兄弟姉妹が亡くなっているものの、兄弟姉妹の子(甥・姪)が存在する場合には、兄弟姉妹の子が兄弟姉妹に代わって法定相続人となります(代襲相続)。

なお、兄弟姉妹や兄弟姉妹の子(甥・姪)がともに亡くなっており、甥や姪の子が存命の場合には、その者が再代襲相続をするということはありません。
兄弟姉妹については再代襲は発生しないというのが法律のルールです。

遺言がある場合の遺産相続

法定相続人は民法のルールで定められた相続人ですが、被相続人が「遺言」を残した場合には、基本的にはその遺言の内容が優先されます。

遺言では、法定相続人ではない者も含めて、誰にでも遺産を分け与えることができます。
たとえば、次のような方に対しても、遺言によって遺産を分け与えられます。

  • 事実婚(内縁)の配偶者
  • 離婚した元配偶者
  • 養子の連れ子
  • 配偶者の親など
  • 慈善団体
  • 親しい友人 など

ただし、遺言によって、法定相続人の「遺留分」が侵害された場合、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求ができます。

相続順位と法定相続分について

誰が相続するか(法定相続人)という問題のほかに、誰がどの割合で相続するか(法定相続分)という問題があります。
法定相続分の概要や、複数の法定相続人があるときの法定相続分などについてご説明します。

法定相続分とは?

「法定相続分」とは、法定相続人が相続できる財産の基本的な割合のことです。
法定相続分は、法定相続人の種類に応じて定められています。

法定相続人が配偶者しかいない場合(子、親、兄弟姉妹などがいない場合)には、配偶者の法定相続分は、100%となります。

配偶者がいる場合には、法定相続人と法定相続分との関係は、基本的には次のとおりとなります。

相続人の範囲法定相続分
配偶者+子配偶者1/2、子1/2
(子が複数いる場合には、複数の子で合計1/2)
配偶者+直系尊属配偶者2/3、直系尊属1/3
(直系尊属が複数いる場合には、合計1/3)
配偶者+兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
(兄弟姉妹が複数いる場合には、複数の兄弟姉妹で合計1/4)

たとえば、被相続人が900万円を遺して死亡した場合、次のような割合で相続します。

法定相続人相続分
配偶者+子1人・配偶者が450万円
・子が450万円 
配偶者+子2人・配偶者が450万円
・子はそれぞれ225万円ずつ 
子1人・1人で900万円全額 
子2人・それぞれ450万円ずつ 
配偶者+両親・配偶者が600万円
・父が150万円
・母が150万円  
配偶者+両親の一方・配偶者が600万円
・両親の一方(父又は母)が300万円 
配偶者+兄1人・配偶者が675万円
・兄弟が225万円  
配偶者+兄2人(※)・配偶者が675万円
・兄はそれぞれ112万5000円ずつ 
  • 例外的に、第3順位である兄弟姉妹が相続人となる場合に、被相続人と父母を異にする兄弟姉妹(「半血兄弟姉妹」)といいます。)がいるときは、均等に割りません。この場合、半血兄弟姉妹の相続分は被相続人と父母を同じくする兄弟姉妹(「全血兄弟姉妹」といいます。)の2分の1として算出します。

たとえば、相続人が配偶者のほか、被相続人と父母を同じくする(全血の)妹1人、被相続人と父母を異にする(半血の)姉1人(たとえば、被相続人の親の前婚の配偶者との子ども)であるケースでは、まず配偶者が4分の3、姉妹が全員で4分の1を相続することとして考えます。

そのうち、姉妹については、半血の姉が全血の妹の2分の1の割合で相続するので、結局全血の妹が「4分の1×3分の2=6分の1」、半血の姉が「4分の1×3分の1=12分の1」をそれぞれ相続します。

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たとえば、被相続人が900万円を遺していたとすると、配偶者が675万円、全血の妹が150万円、半血の姉が75万円を相続します。

【まとめ】法定相続人の相続順位は、基本的には「子→親→兄弟姉妹」の順

この記事のまとめは次のとおりです。

  • 「法定相続人」とは、民法のルールに基づいて亡くなった方(被相続人)の財産を相続する方のこと。
  • 有効な遺言があれば、基本的には遺言が優先。ただし、法定相続人の遺留分を侵害するときは遺留分侵害額請求が可能。
  • 被相続人の配偶者(法律上の配偶者に限る)は常に法定相続人となる。
  • 配偶者以外の法定相続人は、子、親、兄弟姉妹。
    「第1順位:子」→「第2順位:親」→「第3順位:兄弟姉妹」の順で法定相続人となる
  • 法定相続分は、「子:2分の1」、「親:3分の1」、「兄弟姉妹:4分の1」という割合。

相続を考えるにあたって、法定相続人は誰か、法定相続分はどれだけかということは、考え方の出発点となる重要なポイントです。
ぜひ間違えることなく、しっかりと押さえておくようにしましょう。

相続についてわからないことがある場合には、相続を取り扱う弁護士に相談するようにしましょう。

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橋 優介
この記事の監修者
弁護士
橋 優介
資格
弁護士、2級FP技能士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

弁護士の職務として特に重要なことは、「依頼者の方を当人の抱える法的問題から解放すること」であると考えています。弁護士にご依頼いただければ、裁判関係の対応や相手方との交渉などは基本的にすべて弁護士に任せられます。私は、弁護士として、皆さまが法的な心配をせず日常生活を送れるように、陰ながらサポートできる存在でありたいと考えています。

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